企業

研究を続けながら正社員として働ける環境を整備し

博士人材の強みを生かしたビジネスを展開

株式会社イデアラボ

代表取締役

澤井 大樹 氏

株式会社イデアラボは学術的な心理学の方法論を用いて、企業の問題解決や商品開発、サービス向上のサポートを行う研究開発コンサルティング会社です。研究員全員が博士号を保持し、正社員として勤務しながら、大学の講師や研究員として活躍している人も多数在籍。アカデミアへの転職者を任期終了後に再雇用するサバティカル制度、居住地・勤務時間を問わない完全リモートワーク・裁量労働制など、フレキシブルな雇用スタイルを次々に取り入れ、博士人材の研究とキャリア構築、ビジネスの両立を実現しています。

科学的なエビデンスに基づく心理学研究を企業の問題解決に応用

イデアラボでは、心理学の方法論、研究手法を用いて、様々な企業の研究開発コンサルティングを行っています。心理学のビジネス展開というとカウンセリングを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、イデアラボでは行動を数値で可視化することで、各企業の課題解決に取り組みます。科学的エビデンスのある心理学研究は、「ヒトとヒト」だけでなく、企業の問題解決やビジネス戦略などの「ヒトとモノ」や「ヒトとサービス」にも応用できるのです。

人の行動や感性を科学的に測定したいという企業より、商品やサービスの開発、コンセプトの立案、各種調査や分析など、様々な内容のご依頼をいただいていますが、学術的な心理学を応用して研究開発コンサルティングをする会社は、日本ではまだ私たちのみのようです。

研究員は全員博士号保持者。自身の研究と正社員の両立も可能

イデアラボの研究員チームは心理学の博士号を持つスペシャリストで構成されています。すべての研究員が、正社員としてクライアントの課題に向き合いながら、大学の講師や研究員を兼務しています。イデアラボとアカデミアの研究の違いは、学生に対して教育を行うかどうかという点、そして、アカデミアでは自分で問いを立てて問題にアプローチするのに対し、イデアラボではクライアントから持ち込まれた問いに対して、心理学の知見を用いて解決策を模索していくという点です。

研究員の募集は主にJREC-IN Portalで公募し、いつも多数の応募をいただいています。民間の企業に就職すると自分の研究を断念せざるを得ないというケースを耳にすることもありますが、イデアラボでは正社員でも自分の研究を続けることができます。博士人材にとっては、正社員雇用かつ自分の研究を続けられるという点が魅力的なのかもしれません。採用基準は、まず博士号を持っていることが条件。その上で、自身の研究の高度な理論を、非専門家に対してもわかりやすく説明できるか、といったプレゼンテーション能力も重視しています。そのため、採用面接では、志望動機などの一般的な質問よりも、研究内容や共同研究の経験について主に伺います。

また、大学での研究を重視したい方、博士課程で学んでいる方には非常勤研究員としてご登録いただき、適切な案件が発生次第、プロジェクトベースで業務を依頼しています。こちらも正社員と同様にJREC-IN Portalで公募しています。

サバティカル制度やリモートワークで博士のキャリアと研究を応援

イデアラボではサバティカル制度や完全リモートワーク、専門業務型裁量労働制など、フレキシブルに働ける勤務スタイルを採り入れています。

博士号を持つ社員の中には、会社を辞めてアカデミアに戻り、自分の研究に専念したいと考える人もいるでしょう。とはいえ、テニュアポジションを獲得するのは非常に狭き門です。そうした研究員のためにサバティカル制度を設け、アカデミアの任期付ポストに転出しても、その任期終了時に、転出時と同条件で再雇用することを約束しています。

また、完全リモートワークにしているため、居住地を問いません。会社は恵比寿にありますが、インターネット環境さえあれば世界中どこにいてもかまいません。その他にも、業務の進め方や時間配分などを個々の研究員の裁量に委ねる専門業務型裁量労働制を取り入れています。裁量労働制には超過勤務を強いるような悪例もありますが、私たちの制度は、社員が本当の意味で自由な働き方を実現できるよう、社会保険労務士と試行錯誤を重ねて作り上げたものです。

柔軟性に富んだ労働環境は、「ストレスなく働ける」と研究員たちからの評判も上々です。博士人材が働きやすい環境を整えることで、優秀なスペシャリストがイデアラボに集まります。それが、質の高い研究開発コンサルティングへとつながるのです。

人文系博士の雇用は海外では常識。人を科学して新業界を切り開く

人文系博士の日本の就職先は大学や公的研究機関が多く、企業は少数派です。しかし、海外ではGoogleに言語学者がいたり、Pixarに歴史学者がいたりと企業による人文系博士の採用は当たり前で、リサーチャーになるにも、その分野の博士号が求められます。博士は一般的な言葉を学術的な専門用語に変換し、課題解決に必要なスペシャリストへ的確に伝えることができるため、通常ではリーチできない高度な解決策を導き出すことが可能になるのです。

今後、イデアラボでは、研究開発コンサルティングという業界のプレゼンスを高め、心理学の博士人材はもちろん、他の人文系あるいは自然科学系博士との連携を視野に、より専門性の高いサービスを提供したいと考えています。

現在、博士課程で学ばれている方は、まずは自身の分野における王道の方法論をしっかり学んだ上で、共同研究やプレゼンテーション力強化に取り組むことをお勧めします。口頭でのプレゼンテーションだけでなく、掲載先のジャーナルに合わせてストーリーに変更を加えるなど、広義のプレゼンテーション力を柔軟性高く持つことが大切です。基礎力と柔軟な対応力が、博士号取得後のキャリア構築に役立つと考えます。

記事の内容は、2022年3月取材時点の情報に基づき構成しています。