企業

インターネット産業が求める

博士人材の即戦力としての可能性

株式会社サイバーエージェント 

AI事業本部 AI Lab研究員(Research Manager)

山口 光太 氏

Ph.D.

株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告、メディア、ゲーム、スタートアップの主に4つの領域で事業を展開しています。その中で、インターネット産業の核となるAI技術の進化を支える研究開発組織が、山口氏が牽引する「AI Lab」(エーアイ・ラボ)です。AI Labに在籍するリサーチサイエンティスト約40名のおよそ7割が博士号取得者で、国際会議での論文発表や社会実装、また産学連携の共同研究を通じて、事業発展のみならず、社会貢献に結びつく最先端の研究開発に取り組んでいます。

博士人材が活躍できる「AI Lab」

「AI Lab」はその名の通り、人工知能技術研究開発をメインにしている組織で、リサーチサイエンティストやリサーチエンジニアで構成されています。およそ7割が博士号取得者ですが、全員リサーチサイエンティストとして活躍しています。

仕事内容は人それぞれですが、基本的にはテクノロジーを使ったサービスの仕組みの設計や実装検証を行なっています。AI Labの特徴として、自社で開発しているサービスとの距離の近さ・連携の取りやすさがあります。研究テーマとなるビジネス課題の特定は、各サービスのエンジニアやデータサイエンティストと協働するケースもあれば、リサーチサイエンティストが独立したプロジェクトを立ち上げて、課題検証、課題解決に取り組むケースもあります。実証実験やアルゴリズムの改善など、課題解決のためのアプローチ方法はそれぞれの裁量で進めますので、博士課程で培った本質をとらえて自力で課題解決する力が期待されます。コンピュータサイエンス、データサイエンス、画像処理などに加え音声・ロボット・CG・経済学・強化学習など研究領域は幅広く、広告表現、言語処理、画像認識などのバックグラウンドも歓迎しますし、理論物理系の科学的な思考力も活かしていただけます。技術進化のスピードが速いインターネット産業は、ご自身の可能性を試すやりがいのあるフィールドだと思います。

熱意ある博士人材のWEB業界へのチャレンジを心待ちにしています

私自身も、デジタル広告表現についての研究を進めています。以前は、東北大学大学院において情報科学研究科の助教を務めていましたが、任期満了後のキャリアを考えた際に、複数の選択肢から選んだのが現職です。さまざまな話を聞き、自分のWebメディアの分析研究や情報理工学系の研究バックグラウンドが強みになると判断し挑戦を決意しました。

AI Labには、私のようなアカデミア出身者もいれば、企業からの転職者もいます。またユニークなケースでは、元公務員だった方に入っていただいたことで、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業を行政分野へ拡大することにつながった事例もあるなど、個人個人の経験・強みを活かすことができる多様性のあるチームとなっています。

インターネット産業への興味と熱意も重視していますので、一見違う分野のバックグラウンドでも活かしていただけるチャンスがあります。

博士学生限定のインターシップ制度から入社につながるケースも

博士人材のみなさんには、アカデミアや研究所だけではなく、さまざまな分野の企業で働くことも検討していただきたいです。そのためには企業での研究や業務を知っていただく必要がありますので、私たちもさまざまな制度を設け、その機会をつくっています。例えば、博士後期課程に在学中の学生のみを対象とする、2ヶ月間の「リサーチインターンシップ」では、博士学生の持つ能力に対する正当な評価として月額50万円の報酬でインターンシップに迎え入れています。さらに日本学術振興会特別研究員(DC1、DC2、PD)を対象とした「協働研究員」では、長期的な就業を通して、研究から社会実装まで一貫した実務経験を得ることを可能にしています。その他にも、2020年のコロナ禍においては、「テクノロジーと学びを止めない」をテーマとして、感染症拡大などの影響で海外留学や海外就職が頓挫した学生を対象にした特別就労プログラムなども用意してきました。インターシップはオンラインで実施しているので、海外の大学院からインターンシップに参加し、それをきっかけに入社したメンバーもいます。

試行錯誤も続けていますが、博士学生には、都合のよいタイミングでインターンシップに参加できるようカスタマイズしていますので、是非積極的にチャレンジしていただきたいです。また、メガベンチャーでの仕事内容や風土を体感し、就職にまつわる不安な点も周りの社員に遠慮なくぶつけて解消していただきたいと思います。

一つの研究課題にフルタイムでコミットできるのは大学院時代だけ

社会に出ると、一つのプロジェクトだけに集中して取り組むことはなかなかできません。博士課程は、一つの課題とじっくり向き合いながら、課題解決スキルを身に付けられる貴重な時間だと思います。そうした意識を忘れずに、悔いのないよう研究に取り組んでいただきたいです。ただし、博士課程が人生の全てではなく、その後に続く人生をどう過ごすかもイメージし、視野を広く持っておくのも大切だと思います。

技術進化が速く、スピード感あふれるWEB業界では、需要予測、マーケットデザイン、画像認識や対話システムなど、さまざまな分野で、ご自身のバックグラウンドを活かしたチャレンジが可能です。さらにインターネット産業の特性でもありますが、開発した最先端技術を秘匿せず、オープンにすることが、社会や業界の発展に寄与します。研究開発成果をどんどん社会に共有していけるのもやりがいです。社会貢献につながる最先端の技術開発を実現し、ノウハウを蓄積しながら、共にデジタル社会を創っていきましょう。

記事の内容は、2022年3月取材時点の情報に基づき構成しています。