ダイバーシティとインクルージョンが根づいた環境で
専門分野に留まらずグローバルな活躍を期待
三桜工業株式会社
技術本部 研究開発部
大宮 奈津子 氏(中)
技術本部 研究開発部
王 曄 氏(左)
博士(理学)
HAMS本部 キャリアデザイン室
クテケン ノエリ 氏(右)
三桜工業株式会社は自動車部品メーカーですが、電気自動車(EV)の普及による業界構造の変化に対応するために、エネルギーや半導体関連の新規事業立ち上げを積極的に推進しています。また、80カ所以上の海外拠点と、コーポレート部門だけでも約50名の外国籍社員を有するなど、ダイバーシティとインクルージョンが根づいていることも同社の特徴。このような環境において、博士人材には専門知識以外に、行動力やコミュニケーション力が期待されています。新しい分野を開拓する力と、周りを巻き込む力を持つ博士人材には、活躍のチャンスが多い環境となっています。
大宮 現在、三桜工業のメインとなる事業は、車輌配管の製造販売です。今後はガソリン車だけでなく電気自動車(EV)の普及も予想されるため、エネルギーや半導体関連の新規事業の立ち上げも行なっています。エネルギー関連分野としては、新しい電池や新型熱電発電素子、水素生成貯蔵技術などについて、半導体関連分野としては、窒化ガリウム(GaN)のような次世代半導体の基板加工やこれら半導体材料を用いたレーザー技術について、事業化に向けた取り組みを推進しています。これらの分野に興味を持っている人材にとって、活躍のチャンスが多い会社です。
クテケン 現在、三桜工業では20名以上の博士人材が活躍しています。そのうち約半数が研究開発部の所属です。
大宮 研究開発部は、新事業のシーズを事業化につなげる部門です。研究開発部で手がけていた内容が事業化に近づいた際は、事業部への移管や子会社の設立等を検討します。それに伴い、研究開発部から異動することもあります。
クテケン 当社の博士人材は、研究開発以外に、生産管理、サプライチェーンマネジメント、業務監査、人事、子会社経営など多様な業務に携わっています。個人の適性により、さまざまなキャリアパスの選択が可能です。
大宮 博士人材であっても、これまで研究してきた分野とは違う仕事をする場合もあります。最近、研究開発部に配属された方も、実際に担当した業務は、大学での研究とは異なる分野でした。けれども、その方は「分からないけれどやってみよう!」というチャレンジ精神で、主体性を持って取り組んでいます。たとえ専門外の分野であっても、こうすれば成果が出るというビジョンを持って行動に移せる点は、博士の強みです。新規事業を多く手がけている当社では、プロジェクトを推進し、育てていく力を博士人材に期待しています。
王 私は中国で博士号を取得した後に来日し、ポスドクを経て、2019年に入社しました。社内にはさまざまな勉強会があり、幅広く学ぶ支援体制が整っています。全くの異分野、例えば化学系を専門とする人が経営や財務などを勉強することもできます。博士号取得者は学習能力が高いので、学ぶ意欲さえあれば、これまで意識していなかった分野でもキャリアアップができるでしょう。
クテケン 三桜工業には、専門分野を超えて、知識やスキルを学び生かす風土があります。そのため、専門性だけでなく、ゼロから何かを生み出す発想力やフットワークの軽さなどにも注目して採用を行っています。
クテケン 採用時の特徴のひとつとして、国籍や日本語能力を重視しないという点が挙げられます。外国籍の社員は、たとえ日本語が流暢ではなくとも、日本人とは違う角度からものごとを見ることができるところが魅力です。現在、外国籍社員は、コーポレート部門だけでも博士人材も含めて約50名。国内の職場では日本語が必要なので、日本語が不得意な社員は、最初は同僚からのサポートを受けながら業務を進めていきます。三桜工業は、世界19カ国82カ所に拠点を持っており、海外売上高はもちろん、海外で活躍する人材もこれからさらに増えていくでしょう。日本はマザー工場になりますので、今後さらに海外との接点を増やしていかなければと感じています。
大宮 特に研究開発部では、積極的に海外と関わっていく方針です。新事業を立ち上げる際は、国内外を問わず、先行して技術開発する大学やベンチャー企業と連携する可能性を視野に入れることが必要です。
大宮 博士学生には、機会があれば大学と企業の共同研究に積極的に参加して欲しいと思います。それらの経験が採用につながりやすいことはもちろん、早い段階から企業との関わりをもつことで、会社で働くイメージが持ちやすくなるからです。大学側にも、企業との共同研究や企業と学生の交流の機会を多く設けて頂きたいと思っています。
クテケン 当社としても博士学生との接点として、数か月程度の研究インターンシップを通年で受け付けています。学生の研究分野と受け入れ部門のニーズを照らし合わせて、期間や内容をカスタマイズするのが、三桜工業のインターンシップの特長のひとつです。また、大学が主催する博士学生と企業との交流会にも積極的に参加しており、そこでの出会いが採用につながることもあります。
王 博士学生には、特にコミュニケーション能力を鍛えて欲しいと思います。企業で研究開発を推進するためには、自身のテーマを専門外である役員や他部門の方々に理解してもらう必要があります。自分の専門分野や研究テーマを誰にでも理解できる言葉で伝えるにはスキルと経験が必要ですから、ぜひ普段の生活の中でも分かりやすく伝えることを意識して欲しいと思います。
クテケン 研究は一人で進めることもありますが、企業活動の中では、何かを一人で成し遂げるのは困難です。そのため、相手の意見を取り入れながら柔軟に行動できる人材が望ましいと考えています。当社には、役員を含めて誰とでも話しやすい雰囲気があります。社長自身が博士号取得者なので、博士人材にとっては身近に感じられる存在かもしれません。社内でのコミュニケーションのとりやすさは、仕事の成果にもつながりやすいと思います。失敗を恐れず、コツコツ努力し、チームワークを重視できる博士人材には、とても働きやすい環境です。
記事の内容は、2022年3月取材時点の情報に基づき構成しています。