Q1.アクチュエータとは何ですか。

Q2.内界センサとは何ですか。

Q3.外界センサとは何ですか。

Q4.ロボットの制御をパーソナルコンピュータで行う利点は?

Q5.リアルタイムOSの中でART-Linuxを選ぶ理由は?

Q6.マルチスレッドを用いる理由は?

Q7.この事例の教示システムでは、なぜ直接教示や、直接に遠隔操作をしていないのですか?

Q8.ティーチングプレイバックは、良くない方法なのですか?

Q9.接触力の計測以外の方法で動作する触覚センサはありますか?

Q10.マスタ・スレーブ・システムで、なぜ異構造が使われるのですか?

Q11.医療分野へのロボットの導入には危険があるのではないかと不安があるのですが?

Q12.ネットワーク・ロボティクスが実現すると、どんなことができるようになりますか?

Q13.地上から軌道上のロボットを遠隔操作すると、通信時間遅れはどのように影響するのですか?

Q14.遠隔操作技術にバーチャルリアリティ技術を応用することで、ネットワーク・ロボティクスにおける通信時間の遅れなど、あらゆる問題が解決されたのですか?

Q15.ネットワーク・ロボティクスを実現するために、バーチャルリアリティ技術の応用のほかに、どのようなものがありますか?

Q1
アクチュエータとは何ですか。


A1

各種の稼動エネルギーを機械的な変位や応力に変換する役割を果たすものをアクチュエータと呼びます。油圧のアクチュエータには、直線運動を実現する油圧シリンダと回転運動を実現する油圧モータがあります。油圧式は高トルク・高速性があります。空気圧は空気の圧縮製によって高トルク、高速性に劣っています。電気アクチュエータには、インダクションモータ、サーボモータ、パルスモータ、ムービングコイル系など多種類のものがあります。電気式は簡便であるが、強力性、高速性に欠けています。ニューアクチュエータには、圧電・電歪(わい)、磁歪、ER流体、および熱、光方式によるものがあります。

Q2
内界センサとは何ですか。


A2

外界センサに対応し、ロボットの内部状態を検出するセンサを内界センサといいます。たとえば、ロボットのマニピュレータの関節を制御するために用いられる並進変位、角度変位、それらの速度、加速度を検出するセンサ、移動ロボットの傾きや位置姿勢を計測する傾斜計、ジャイロなどを総称していいます。また、ロボットの内部運動状態の限界検出などに使用されるリミットスイッチ、マイクロスイッチ、ポテンショメータなども含みます。

Q3
外界センサとは何ですか。


A3

ロボットの作業実行に伴って必要とされる作業環境の状態を検出するセンサを外界センサといいます。視覚、近接角、触覚、力角、聴覚センサなどがあり、ロボットが環境の状態に応じて適応的に行動するなど、ロボットの知的機能を実現する際に重要な役割を果たします。

Q4
ロボットの制御をパーソナルコンピュータで行う利点は?


A4

パーソナルコンピュータを用いることで、高性能な演算能力や市販のさまざまな安価なデバイスをロボットの制御に利用することができます。また、ソフトウェアの面でも既存の豊富なソフトウェアを利用することが可能となります。さらに、Linuxを初めとするオペレーティングシステムを無償で利用できることも、パーソナルコンピュータを選択する理由のひとつとして考えられます。

Q5
リアルタイムOSの中でART-Linuxを選ぶ理由は?


A5

ART-Linuxでは、ユーザ空間でリアルタイムタスクを実行することができます。これによって、オペレーティングシステムのメモリ保護機能を利用して、開発を安全に進めることができ、また、既存のソフトウェア資産も有効に利用することができます。これらの点はカーネル空間でリアルタイムタスクを実行するRT-LinuxやVxWorksなどと大きく異なります。

Q6
マルチスレッドを用いる理由は?


A6

実際にロボットの制御を行っているリアルタイムの部分とそれ以外の非リアルタイムの部分とが連携してロボットの制御を行うためには、これら2つの部分が何らかの方法で通信しなければなりません。しかし、その通信方法はリアルタイム側の実時間性を損なわない方法でなければなりませんが、最も簡単でリアルタイム性を損なわない通信方法はメモリを介する方法です。マルチスレッドのプログラムでは、複数のスレッドがプロセス内のメモリを共有することができるため、このプログラミング手法を用いています。

Q7
この事例の教示システムでは、なぜ直接教示や、直接に遠隔操作をしていないのですか?


A7

原子力プラントなどの極限環境などは、人間がその場所に直接行けなかったり、惑星探査などの超遠隔では情報が到達するのに遅延が生じ、遠隔操作がしにくかったりします。これらの場合、ロボットへの 作業教示として、仮想環境を用いることが有効となります。また、作業の実行に力感覚やセンサの利用が必要で、直接教示や遠隔操作では教示や実行が難しい作業に対しても、この手法は有効です。故障修理や事故処理のように一回きりの作業であり、失敗が許されないような場合には、仮想環境で作業が教示でき、それが確実に実環境で実行できることが望ましいわけです。

Q8
ティーチングプレイバックは、良くない方法なのですか?


A8

ティーチングプレイバックは、おもに産業用ロボットに用いられている手法です。この方法を使う場合には、教示時の環境と実行時の環境を同じにするための環境整備を厳密に行なう必要があります。したがって、大量生産などで何度も同じ作業を繰返す場合、そしてその環境を時間をかけて厳密に整備ができる場合には有効に働きます。しかし、故障修理や事故処理のように一回きりの作業のための教示には向いていないといえます。

Q9
接触力の計測以外の方法で動作する触覚センサはありますか?


A9

接触する物体の誘電率を計測するものや、振動子を形成して物体の付着による共振振動数の変化を捉えるものなどがあります。ただし検出精度などは、接触する物体の物性に依存する場合が多いです。

Q10
マスタ・スレーブ・システムで、なぜ異構造が使われるのですか?


A10

使いやすいマスタができれば、それ1台を使っていろいろなスレーブ・ロボットを操作できるからです。そこで使いやすいマスタの実現をめざして、さまざまなマスタアームが開発研究されてきました。

「直角座標型マスタアーム」は、位置の3つの自由度が独立しているため、座標計算が容易であるので、初期のマスタアームではよく採用されました。「極座標型マスタアーム」は、直角座標型より制御が複雑になりますが、特に鉛直面に対して広い作業領域を確保できるという特徴があります。

「多関節型マスタアーム」は、回転関節のつながり方で、手先の動作範囲や運動学的な特徴をさまざまに構成できます。「パンタグラフ機構型マスタ」は、小さな設置面積の割に、手先の動作領域を広くできます。

「パラレルアーム型マスタ」は、運動学の解析解の導出が困難、動作領域が狭い、という欠点はありますが、手先の剛性が高くなるので、高速高精度で操作ができます。それぞれに特徴があり、用途にふさわしいマスタアームを利用することが大切です。

Q11
医療分野へのロボットの導入には危険があるのではないかと不安があるのですが?


A11

医療現場へのロボット技術の導入は、人間の代わりに行うというより、患者の治療をより促進するためです。またロボットアームが自律的に手術するのではなく、執刀するのはあくまで医師で、ロボットは高度な医療道具として使われます。 外科手術においてロボット技術やそれに関連するバーチャルリアリティ技術が有効とされるのは、 術前、手術中、術後の3つの段階に分けられます。

手術の前では、手術の方法や動作の検討や事前練習など、おもに手術の 計画を立てることに使われます。手術中では、センシングと術者への情報提示が期待されています。手術の後では、術後の経過観察のためのデータ管理です。将来には、遠隔地からの施術もできるかもしれません。

Q12
ネットワーク・ロボティクスが実現すると、どんなことができるようになりますか?


A12

例えば、身体行動が不自由で外出が難しい高齢者・障害者が、自宅・自室から移動ロボットを遠隔操作することで、博物館の観覧や美術館の鑑賞などができる、「遠隔体験・鑑賞システム」が考えられます。

高齢化社会を迎えて増加する、身体行動が不自由なために外出できない高齢者は、知的刺激が乏しいため、心理的・生理的な退化・老化が進み、社会への関心を失ってしまいます。そこで移動ロボットを遠隔操作し、 美術館や博物館など実際のさまざまな施設を利用し、現実のものを体験・鑑賞することで、知的・美的感覚の温存・発達を図るのです。

そのほかにも、サービス・センターや出先から高齢者・身障者に対する簡単な作業を支援する「遠隔サービス・サポート・システム」、管理センターから複数箇所のプラントの機器を保守・点検する「遠隔保守・点検システム」などが考えられています。

Q13
地上から軌道上のロボットを遠隔操作すると、通信時間遅れはどのように影響するのですか?


A13

たとえば、通信時間遅れが6秒だとすると、地上で指令を発信して軌道上のロボットが動き始めるまで3秒かかり、ロボットが動作するようすを地上で見るのはさらにその3秒後となります。すなわち、指令したことにより動いた結果が見られるまで、少なくとも6秒かかることになります。この間にロボットを動かすと、何かにぶつかって、ロボット自身や衝突の相手が壊れているかもしれません。そこで、少し動かして、その結果がわかるまで待って、またさらに少し動かして、という操作を繰り返すことになります。これをmove-and-wait動作といいます。

Q14
遠隔操作技術にバーチャルリアリティ技術を応用することで、ネットワーク・ロボティクスにおける通 信時間の遅れなど、あらゆる問題が解決されたのですか?


A14

バーチャルリアリティ技術を応用するだけで、ネットワークを介したロボットの遠隔操作に関する問題がすべて解決されたわけではありません。たとえばモデル化誤差の問題があります。人工の環境は、理想的な条件でモデル化されているため、実際の環境や作業対象と完全に同じものではありません。モデルにしたときに誤差があったり、時間が経って変化している場合もあります。たとえば、コップに水を 入れようとしたとき、コップの位置がずれていれば水は漏れてしまいます。

このようなことを避けるためには、キャリブレーションによる仮想環境と実際の環境との位置ずれの補正が必要です。さらに、人工の環境と実際の環境がずれていてもロボットが対応できるように力制御やコンプライアンス制御を導入する必要がある場合もあります。

Q15
ネットワーク・ロボティクスを実現するために、バーチャルリアリティ技術の応用のほかに、 どのようなものがありますか?


A15

たとえば、ネットワークを使うことにより、伝送できる通信量が制限されてしまいます。通信容量の制限の問題を解決する手法として、「タスク規範型データ伝送手法(task-based data exchange)」が提案されています。これは、ロボットが行う作業の内容や状況に応じて、優先度の高い情報を優先して伝送することで、操縦装置側と作業ロボット側との間で、データを効率的に伝送しようとするものです。

自由空間で物体を大きく移動するような作業では、作業状態や作業環境の変化を、操作者は視覚により的確に把握しなければならないため、制御情報より画像情報が重要です。それに対して軸穴挿入のように、環境と接触し運動が拘束される作業では、環境と物体の間の相互間力をうまく制御しなければならず、制御情報が重要です。

これらの性質を利用して、制御情報と画像情報をいつも同じ配分で伝送するのではなく、作業の内容に応じて、重要度の高い情報を優先して 伝送するのです。また、オペレータの遠隔操作とロボットの自律動作を融合して、ロボットの行動を制御する「自律と遠隔の融合制御(combination control)」の手法の研究開発も進められています。