Q1.FMSが登場した背景は?
Q2.フレキシブルトランスファライン(FTL)、FMS、FMCのF[フレキシブル]は、何がフレキシブルなのか?
Q3.CIMとFMSの関係は?
Q4.FMSとFMCとの違いは?
Q5.ターニングセンタとマシニングセンタの違いは?
Q6.フローショップとジョブショップの違いは?
Q7.シミュレーションによる検討の難しさは?
Q8.FMSの設計で難しいのは?
Q1
FMSが登場した背景は?
A1
産業革命以降、自動化と生産性の向上を目標に技術革新が続けられ、専用機械を直列に配置して素材や部品を連続して流すトランスファラインによる大量生産(少品種多量生産)が、1960年代に実用化された。しかしこの方法では、取り扱う部品の種類が限定され、「中品種中量生産」や「多品種少量生産」には適さない。そこで市場の多様な要求に対応できるように、「中品種中量生産」に適した新しい自動化システムとして検討されたのがFMSである。自動工具交換装置を備えたマシニングセンタが登場したのが1958年、産業用ロボットが登場したのが1959年であり、プログラムによって部品の種類に応じた作業ができるようになったことから、1960年代にFMSの概念が登場したと考えられる。
Q2
フレキシブルトランスファライン(FTL)、FMS、FMCのF[フレキシブル]は、何がフレキシブルなのか?
A2
工場の生産形態は、生産する製品の種類と生産量によって決められる。これは、工場の自動化を考える上で、多種の製品を生産するための柔軟性と、多量の製品を生産するための生産性を両立することが難しいためである。フレキシブルトランスファライン、FMS、FMCはある程度の生産性を犠牲にしながら柔軟性を確保するための生産形態であり、多種の製品の生産に柔軟に対応できるという点が特徴である。この柔軟に対応できるという特徴が、フレキシブルと呼ばれる理由である。同じフレキシブルであっても、対応できる製品の種類や生産量が違うために、設備の規模や構成からフレキシブルトランスファライン、FMS、FMCと区別される。
Q3
CIMとFMSの関係は?
A3
CIM(Computer Integrated Manufacturing system)は、「コンピュータ統合生産システム」と訳され、生産に関わる設計、製造、管理、研究開発や財務管理も含む全ての企業活動をコンピュータで支援し、企業活動に関わる情報を一元的に管理することで、市場の要求に対応できる多種多様の製品を高品質、低コストでタイムリーに供給することを目指した、高度な生産システムのことである。FMSは工場の生産形態の1つであるが、多種多様の製品に柔軟に対応して効率よく製造するという点で、CIMを実現するための工場の自動化において不可欠である。
Q4
FMSとFMCとの違いは?
A4
設備の規模や構成によってFMSとFMCは区別されるが、明確な違いはない。FMSが実用化された当初は「FMCは規模の小さなFMS」と理解されていたが、FMSがモジュラー構成になるに従い、近年では「FMCはFMSを構成する中核モジュール」として考えられるようになってきた。すなわち、複数のFMCに無人搬送車(AGV)や自動倉庫を付け加えて統合し、全体をコンピュータによって統括的に制御・管理する工場システムがFMSと理解されるようになっている。
Q5
ターニングセンタとマシニングセンタの違いは?
A5
旋盤をベースに進化し丸物部品の加工を得意とするのがターニングセンタ。最近のターニングセンタは、2つの主軸を持ち、主軸回転角(C軸)の制御やY軸送りの制御が付加されて、フライス加工やドリル加工を必要とする複雑な形状の丸物部品でも段取り替えなしに加工ができるようになり、生産性が飛躍的に向上している。部品の取付け取外しにはロボットによるダイレクトローディングが用いられることが多い。
一方、フライス盤をベースに進化し角物部品や箱物部品の加工を得意とするのがマシニングセンタ。最近のマシニングセンタは主軸回転数が高速化し、生産性が飛躍的に向上している。部品の取付け取外しにはパレットチェンジャによるパレットローディングが用いられることが多い。
Q6
フローショップとジョブショップの違いは?
A6
フローショップ型のFMSでは、加工対象部品の加工工程がほぼ同じで、設備がライン状やループ状に配置され、部品は常に決められた方向に流されて処理される。加工対象部品の種類を限定して、多少の柔軟性を確保しながら大量生産並みの部品搬送を実現して高い生産性を達成したものがFTL[フレキシブルトランスファライン]である。
一方、ジョブショップ型のFMSは、ランダムアクセス型のFMSとも呼ばれ、多品種少量生産のためのFMSである。加工対象部品は多種多様で、それぞれの加工工程に従ってランダムに搬送され、生産が行われる。柔軟性は非常に高いが、部品のローディング/アンローディングや搬送に時間がかかるために、生産性はある程度低下する。
Q7
シミュレーションによる検討の難しさは?
A7
コンピュータによるシミュレーションは、FMSのような複雑なシステムの模擬的な運用を実現する上で非常に役に立つが、シミュレーションの結果はシステムを模擬するモデルの精度に左右される。特にFMSのシミュレーションでは、加工工程ごとの加工時間、部品のローディング/アンローディング時間や段取り替え時間といった設備に依存した時間の見積もりが重要である。新規に生産設備を設計する場合に、こうした時間の見積もりを間違うとシミュレーションの結果は信用できなくなる。生産設備がない段階で正確な時間を見積もることは難しいが、正確な時間を見積もる努力が必要である。
Q8
FMSの設計で難しいのは?
A8
加工対象部品をもとに加工分析、工程分析を行って工程設計を行うが、工程設計を正確に行うためには使用する工作機械や工具、ジグや取付け具に関する情報が必要となる。ところが新規に生産設備を設計する段階では、使用できる工作機械や工具、ジグや取付け具に関する情報は不十分である。すなわち、不十分な情報で行った工程設計の結果をもとに必要な生産設備やレイアウトを決定しなければならない。また、加工対象部品のFMS適合性を正しく判定することも難しい。本来は部品の加工性や搬送性、段取りの難易度などを総合的に評価して、FMSに適した部品を選択する必要がある。まだまだ、熟練した設計者の知識や経験に依存する部分はあるが、シミュレーションによる検討を十分に行って、工程設計やシステム設計を見直すことが必要となる。