変位と力の関係を表すグラフにおいて、仕事は”力変位”であるから、変位xが増大する方向へ物体がA点からB点に移動する場合の力の大きさより、行きの仕事は
同様に帰りの仕事は
となる。
したがって1サイクル振動する時の仕事は
この仕事が正負の場合により、以下のようになる。
のときエネルギが系から消散される
のときエネルギが系に入ってくる
Q8-4
他のフラッターとして失速フラッターはどのようなメカニズムでしょうか?
A8-4
失速角付近での気流のはく離によってひきおこされる、ねじり振動を主とする翼のフラッタである。ねじり振動を行う翼では、同じ迎え角でも、迎え角が増す場合と減る場合では、気流の状態が異なり、1回の振動中に翼に働く空気力のモーメントは図のようになる。空気力のなす仕事Wは、失速角以下では負であるのに対し、失速角付近では正となる。このため負減衰モーメントが働き、振り幅が増大する。
Q8-5
微小外乱にはどういったものがあるか?
A8-5
微小外乱とは自然界に存在する人体には感じられない程小さな外乱でもよいので、いろいろなものがある。フラッタの発生に影響の大きなものとして、微小な振動、風の変動、気温や熱の変化などがある。
Q8-6
減衰項、慣性項に非対角項がある場合はどうなるか?
A8-6
1.
減衰項に連成がある場合 この場合の方程式は
となり、
図に示すように連成項によってエネルギの伝達がなされる。の位相はそれぞれに対して進んでいる。
また、上記の条件から 系2の出力は系1から系2への伝達力に対して位相が遅れる。
したがってとが同符号であれば、伝達力が一周するごとに同位相の振動がもどり、
振幅が次第に増大する自励振動となる。
2.慣性項に干渉がある場合 連成項によってエネルギが伝達される場合である。
はとそれぞれ位相が異なっている。
この場合は復元項に連成がある場合と同様に考えてとが異符号であれば自励振動が生じる。
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減衰項に干渉がある場合の不安定機構 |
Q8-7
フラッタのエネルギ考察を理論的に行うとどうなるのか?
A8-7
エネルギ的にこの現象を的確にとらえるために2自由度の系全体の振動1周期のエネルギ、振動モードなどを計算する。2自由度系フラッタの運動方程式はマトリックスの形で次のように表される。
・・・(1)
ただし
系の安定性をエネルギの観点から調べるために、いま系が不安定を起こす振動モードのみに着目する。
そのモードに関する周期解を仮定して式(1)について振動1サイクルに消費されるエネルギは1周期をとすると、
となる。
第1項は運動のエネルギ、第2項は散逸エネルギ、第3項はポテンシャルエネルギである。
この式の各項を計算すると慣性項は、
ダンピングの項は
ただし、
復元力の項は
とすると、系の全エネルギは吸収エネルギを正にとれば不安定を引き起こす振動周期をとして、その周期で次式のように表すことができる。
・・・(2)
ここで
とすると式(1),(2)は
・・・(3)
したがって系の全エネルギは式(3)となる。
ここで式(1)の固有値を求め、安定性をエネルギ的に調べようとする根に対応する固有ベクトルを,位相角をとすると、式(4)が得られる。この系の全エネルギは真の解との差に対応する。
ただし、
となる。ここで式(1)の固有円振動を,固有ベクトルを,位相角をとおくと
となる。式(4)からわかるようには減衰係数の対角成分によるもので位相に関係なく常に減衰の方に作用する。
は減衰係数の非対角項成分の符号ととの位相差によって発散と減衰のエネルギのいずれかが来まる。
多くの自励振動系ではとが発散のエネルギとなり、系を不安定にするが、どちらの影響が多いかは系によって決まる。
Q8-8
Routh Hurwitzによる方法とはどういう方法か?
A8-8
ラウス・フルビッツの安定判別系の運動方程式が階の定係数線形微分方程式
・・・(1)
で表される場合を考える。 ここには時間tによるの階の微係数を表す。
(1)式の特性方程式は
・・・(2)
で与えられる。 この方程式の根が求められたとき、
それらの特性根をとすると(1)式の解は
・・・(3)
ここに:任意の定数で与えられる。
(3)式ののうちのどれか一つがとともに増幅すれば、
他の項は減衰としても、系の運動は増幅するので不安定となる。したがって系の運動が安定となるためには、
すべてのが減衰しなければならない。は実根となる場合と複素根となる場合があるが、
漸近安定になるためにはすべてのにたいしてとならなければならない
これは調速機のハンチングの安定問題を解析するために、ラウスとフルビッツが独立に提出した理論であって、次のようなものである。
特性方程式(2)式において、系が安定であるための必要十分条件は
1)係数がすべて間符号でを含まないこと。
2)次のフルビッツ行列式のすべてがでなく同符号をもつことである。
ただし、フルビッツ行列式とは
である。
ただし、の添字が以上または負になる係数はと置くものとする。
ラウス・フルビッツの判別条件は、特性方程式の解を求める必要はなく、その係数の積の計算だけですむから便利である。
Q8-9
揚力の発生が少なくなるような流体力学的配慮の例として、どのような方法が挙げられるか?
A8-9
揚力の発生を少なくするような構造は吊り橋などで用いられるが、その例として次のようなものが揚げられる
1)断面形状で前縁および後縁に気流を乱すようなものを取り付ける
2)断面の中央にスリットを入れて、上下面の圧力差が大きくならないようにする
Q9-1
摩擦振動とは?
A9-1
摩擦振動とは、摩擦の特性に起因する自励振動で、大きく2種類の現象がある。
その発生メカニズムはこれからの画面で説明する。
Q9-2
指数関数的に成長する振動とは?
A9-2
式で表現すると、振動の変位を、振動数、角振動数を とすれば、以下のような式で表現され、 により振動の振幅の成長の程度を表現できる。 が正なら振動は成長し、負なら減衰していく。
Q9-3
なぜ負荷の部分を打撃したか?
A9-3
問題となる振動のモード成分が大きいところを打撃すると、その振動がでやすい。
Q9-4
自励振動と強制振動の特徴は?
A9-4
- 自励振動の主な特徴
- 固有振動数で振動する。
- 加振力がなくても振動する。
- 非線形要素がなければ、振動振幅は指数関数的に増加する。
- 運動方程式の形として自励振動の原因となるものの代表的なものに、"負の減衰"と"剛性マトリックスの非対称項"がある。
- 加振力が存在する場合、その振動数が変化しても、一般的には、自励振動の振動数は変化しない。
- 強制振動の主な特徴
- 加振力が必ず存在する。
- 加振周波数あるいはそれに比例する振動数で振動する。
- 加振周波数が変化すれば問題となる振動の振動数もそれに応じて変化する。
- 加振周波数と固有振動数が近いと振幅が大きくなる。(共振)
Q9-5
摩擦は振動の減衰に効くのではないのか?
A9-5
確かに、摩擦を利用したダンパーなど減衰に効果のある場合もある。摩擦により振動エネルギを消散すれば、減衰になる。特に静止状態を中心に、速度の方向が変化するような場合には、減衰として効果がある場合が多い。ただし、後述の場合にように、摺動部摩擦により振動エネルギが流入する場合もある。その場合には、静止状態が中心ではなく摺動面が動いている状態を中心とした振動となる。
Q9-6
なぜ摩擦による自励振動と判断したのか?
A9-6
- 発生振動数とハンマリングによる固有振動数が近い。 ただし、静止時の固有振動有数と下降時の振動数、上昇時の振動数は微妙に異なる。その詳細は文献。
- 摩擦係数を変化させれば、振動の成長度に変化があった。
- 説明を省略したが、該当する加振源が見当たらなかった。
以上を総合して判断した。
Q9-7
摺動部の潤滑は、どのようになっているか?
A9-7
摺動部は最初はグリースによる潤滑がなされていた。2硫化モリブデンのスプレーを吹き付けると潤滑状態が改善した。
Q9-8
スティックスリップの例としては、どのようなものがあるか?
A9-8
油圧系では、油圧シリンダとロッドの間では油がもれないようにする必要がある。ロッドが動く時に、ロッドとシリンダとの間の摩擦によってスティックスリップが発生する場合がある。
バイオリンで音がでるのはスティックスリップによるものである。弓と弦の間の摩擦によって弦が振動して音がでる。現象としては、1自由度の場合よりも少し複雑になる。
Q9-9
事例の現象がスティックスリップではないと判定したのはなぜか?
A9-9
以下のような判定理由がある。
- スティックスリップでは、同じ動きを繰り返すリミットサイクルになるのが普通。一方、事例のほうでは、振動が指数関数的に成長している。一般的に、振動が指数関数的に成長するのは、問題となる固有振動モードにおいてモード減衰比(または対数減衰率)が、負になることによる自励振動などではこのような波形となる。(参考文献)
- スティックスリップでは、運動と静止を繰り返すので、速度波形は、滑らかな正弦波ではなく、図Bのような歪んだ波形となる。事例では、なめらかな正弦波であった。
- 上昇方向でも、摩擦は存在するので、静摩擦と動摩擦の差による単純なスティックスリップなら振動が発生してもよさそうであるが、上昇方向では振動は全く発生しなかった。
Q9-10
剛性マトリックスに非対称な項が、自励振動の原因になるのはなぜか?
A9-10
これは、回転機械における有名な自励振動であるオイルホイップなどと同様の現象である。詳細はレッスン5参照。
Q9-11
なぜ下降では自励振動が発生し、上昇では発生しないのか?
A9-11
上昇の場合には、2つの非対称項の符号は必ず等しいが、下降の場合には、条件を満たせば、2つの非対称項の符号が異なる。符号が等しければ、運動方程式を変形して対称な形に変形できるので、不安定になることはない。詳細は以下の文献参照。
桜井明、井上喜雄、筒井秀実、伊藤廣、しゅう動部摩擦を介した非対称連成力による自励振動に関する研究、日本機会学会論文集C編、60巻570号 (1994)p.380-385
Q10-1
誘導電動機の騒音が最近とくに問題になるのはなぜか?
A10-1
なぜ電磁騒音が問題になるかというと、騒音レベルもあるが、特定の周波数のところで大きな騒音が発生するため、これが人に不快な音として聞こえてくる。工作機械のような騒音は、特定の周波数というわけではなく周波数全体に騒音が発生している。このため、全体としての騒音を低減すればそれほど気にならない。
Q10-2
電動機の騒音はどのような原因から発生しているのか?
A10-2
ここに、モータの振動・騒音を分類してみた。この場合は、誘導電動機ばかりでなく、直流モータ、永久磁石モータなども対称になっている。このように多くの騒音があり、発生周波数、騒音源が異なるので注意が必要である。また対策も当然異なってくる。
Q10-3
電磁力が加振するメカニズムは?
A10-3
交番磁界によって回転子と固定子にある周波数を持つ周期性のある力が作用し、固定子からフレームに伝わってフレームを振動を発生させ騒音となる。
Q10-4
高調波成分とは?
A10-4
電気的な特性によって基本周波数がきまり、この整数倍の周波数を持つ成分のこと。たとえば2極の電動機の場合には関東地方では50Hz、関西地域では60Hzが基本周波数となる。
Q10-5
高調波成分が騒音の源となる原因は?
A10-5
基本周波数は一般に低く人間の耳にそれ程不快感を与えないが、高次成分になると周波数も高くなり、人間の耳に敏感に反応するため、大きかったり、いつまでも残るような音として不快感を感じる。
Q10-6
有限要素法や境界要素法とは何か?
A10-6
連続体を解析するときに用いられる解析手法。その使い方は解析目的によって異なるため、十分に注意が必要である。
Q10-7
実際の騒音はどの程度か?
A10-7
環境や時間帯によってそのレベルは異なるが、参考までに示すと、日常的に事務室で静かに感じるときは30から40dB、騒々しいと感じるときは40〜50dB、街頭では乗用車が通過すると60〜70dB、小型トラックで70〜80dB、大型トラックで80〜90dBである。電車や地下鉄の車内は65〜75dBである。(出典:機械騒音ハンドブック、日本機械学会編、産業図書、1991)
Q10-8
設計段階でシミュレーションはどの程度行われているのか?
A10-8
振動や騒音についてはまだまだシミュレーションの利用は少ないが少しずつ増えてきている。今後、設計のIT化が進むにつれて、開発期間短縮、コスト低減に向けてその割合は大幅に増加してくるものと予想される。ただし、この場合構造のモデル化が重要になる。
振動モデルを構築する場合には、その精度について十分検証しておく必要があるが、この場合は、モータを前ブラケット、後ブラケット、回転子、固定子(コイル-ハウジング)に分けた。それぞれに対して、打撃試験と計算から固有振動数とモードを求め、計算値が実測値に一致するまで、ヤング率や密度等を変化させる。このようにして求めたヤング率や密度等を用いてモータを組み合わせたときの固有振動数やモードを計算で求める。この組み立てたモータの計算値と実測値との差を求め、誤差が大きい場合は再度部品ごとの計算に戻る。このようにして、最終的にモデルの高精度化を確認する。
Q10-9
理想的な設計でのこれら2つの関係はどのようなものか?
A10-9
試作をしなくても低振動、低騒音モータの開発が可能になることが理想である。
Q10-10
円環次数とは?
A10-10
円環モードに下から順に番号付けしたものを円環次数と呼ぶ。
Q10-11
リブとは?
A10-11
身体でいえば骨のようなもので、やわらかいところを補強してかたくする役割を持つもの。
Q10-12
リブをつけることで得られる効果は?
A10-12
電磁力と構造の共振を避けることが可能となり、騒音が低減される。