1.失速フラッタ
(stall flutter)
(ヘリコプタ、ロータ、タービン、軸流送風機の翼) |
失速角付近での気流のはく離によってひきおこされる、ねじり振動を主とする翼のフラッタである。ねじり振動を行う翼では、同じ迎え角でも、迎え角が増す場合と減る場合では、気流の状態が異なり、1回の振動中に翼に働く空気力のモーメントは図のようになる。空気力のなす仕事Wは、失速角以下では負であるのに対し、失速角付近では正となる。このため負減衰モーメントが働き、振り幅が増大する。 |
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2.調速機のおどり
(hunting)
(蒸気タービンの速度制御) |
蒸気流量の絞り弁を制御するための調速機の振動、ばねの質量からなる調速機の振動系と蒸気機関との2自由度系において、蒸気機関の応答のおくれのために生ずる自励振動。 |
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3.弁の振動 |
ガソリンエンジンの燃料注入量を制御するためのばねと質量よりなる燃料噴射弁において、燃料の流れに対するベルヌーイの定理によって弁の外側の圧力が低下すると弁がしまり、流量が低下する。流量の低下により圧力が上がり、弁が上昇する。流れと弁の振動とに位相おくれがあるとき、弁の固有振動数に等しい振動数で自励振動を起こす。 |
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4.サージング(surging)(送風機と配管系、ポンプとタンク) |
流量の増加と共に圧力が減少する領域では平衡点は安定であるが、逆の領域(サージング領域)では平衡点が不安定となり、外部配管やタンクの体積変化、流体の慣性、絞り弁の圧力降下等と圧縮機またはポンプの不安定特性とが連成して系固有の振動数で不安定振動を起こす。 |
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5.回転軸のふれ回り
(オイルウィップ(Oil whip)スチームホワール(Steam whirl) ) |
すべり軸受台の油膜の流体力が回転のために水平方向と垂直方向の連成力を生じる不安定(オイルウィップ)と蒸気タービン等の非接触シール部門の流体力の連成によって生じる不安定(スチームホワール)、いずれもレッスン8の斉次方程式の剛性マトリックスの非対角成分Δkα,ーΔkhが主な不安定の原因となる。
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6.回転軸の内部減衰による不安定 |
ローターの軸の減衰がある場合、減衰力は危険速度より大きな回転速度になると不安定力として働き始める。この力もレッスン8の斉次方程式のΔkα,ーΔkhの項の連成による。 |
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7.回転ベルト上の物体の振動 |
ベルトと物体の間の静摩擦係数が動摩擦係数より大きい場合、ベルトに物体が静止してあるところまでばねが引張られると、摩擦力よりもばね力が大きくなって、物体は滑り出すが、動摩擦係数が小さいため、平衡点を越えて、物体はばねの縮む方向に来て静止する。この繰り返しを行う振動である。 |
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8.切削時のびびり振動
(チャッタ(Chatter) )
(旋盤、フライス盤) |
切削工具が図のような振動系となっている場合、切削抵抗が切削速度に逆比例する特性を有する領域での不安定振動。
この現象は、回転ベルト上の物体の振動・と同様な原理による。 |
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9.シミー運動
(Shimmy) |
自動車の前輪や航空機の車輪においてタイヤに働く摩擦力の作用による車輪支持機構(ばね、質量系)の首振り運動、横ゆれ、片ゆれ、横変位の自励振動。 |
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10.車輪の蛇行
(nosing)
(鉄道車両) |
車両がレールを走行中、輪軸中心がレール中心からずれると、車輪踏面の勾配とレールとタイヤフランジの間に隙間があるための車両の上下運動と横方向への慣性力による左右振動と垂直軸まわりの蛇行動を生じる。1軸によって起こる1軸蛇行動と台車による2軸蛇行動がある。 |
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