■塑性加工概論

Q1-1.鋼の熱間加工を再結晶温度450℃よりもずっと高い1,200℃で行うのはなぜですか?

Q1-2.引抜きはなぜ熱間で行われないのですか?

Q1-3.材料歩留まりとはどういうことですか?

Q1-4.型費用や設備費が比較的安価となる塑性加工にはどんなものがありますか?

Q1-5.引張試験では10%も伸びずに破断する材料でも引抜き加工では長さが30%も長くなるのはなぜですか?

Q1-6.応力-ひずみ曲線について、実際の材料では引張試験と圧縮試験とで少し食い違う、というのはどういうことですか?

Q1-7.静水圧を加えながら変形させると、なぜ破壊が起こりにくくなるのですか?

Q1-8.塑性変形すると、表面が粗くなるのはなぜですか?

Q1-9.応力(単位面積当たりの力)について、力が面に垂直でない場合はどうしたらよいですか?

Q1-10.長さがL0 からLになったときのひずみを、 e = (L -L0)/L0 として、求めてはいけないですか?
ε= log(L /L0) とどうちがうのですか?


Q1-11.公称ひずみよりも真ひずみのほうが合理的であるとはどういうことですか?

Q1-12.伸び縮みの変形のひずみは分かりましたが、実際のもっと複雑な変形はどう表すのですか?

■材料

Q2-1.もし転位がない完全結晶体の金属に塑性変形を与えようとするとどの程度の力が必要となりますか?

Q2-2.転位によらない塑性変形にはどのようなものがありますか?

Q2-3.引張試験のほかに力学的特性を調べる試験方法としてはどのようなものがありますか?

Q2-4.変態組織強化鋼のひとつにTRIP鋼があると聞きますが、どのような材料ですか?

Q2-5.外力の付加形態が変わることによって特性が変化する現象として、バウシンガー効果という言葉をよく聞くことがありますが、どのようなものでしょうか?

Q2-6.ストレッチャーストレイン(S-Sマーク)とは何ですか?

Q2-7.アルミニウム合金では,ミルシートに合金種別を示す記号の後に,O,H,Tなどの記号が付いていますがこれは何ですか?

Q2-8.塑性加工では,加工時の温度によって熱間加工,温間加工,冷間加工と分類されますが,材料の性質との関係を教えて下さい

■圧延

Q3-1.圧延でどこまで薄い板ができますか

Q3-2.圧延でどこまで厚い板ができますか

Q3-3.H形鋼はどの位の大きさが製造されていますか?

Q3-4.形鋼の表面に突起が着いているものはあるのでしょうか?

Q3-5.どの様な形状の形鋼が製造し難いのですか?

Q3-6.形鋼は圧延によってのみ製造されるのですか?

Q3-7.線材は最小で何ミリまで圧延することができるでしょうか?

Q3-8.棒線材にはどのような種類があるのでしょうか?

Q3-9.素材から穴をあける方法としては他にどんな方法がありますか?

Q3-10.パイプで荷重計算をするときに注意するところはどこですか?

■せん断加工

Q4-1.切断加工と分断加工の違い、およびその特徴は?

Q4-2.打抜き加工と穴あけ加工は、製品とスクラップの関係が互いに異なるだけですか?

Q4-3.ICリードフレームやコネクターなどの高精度せん断型は、どんな特徴を持っていますか?

Q4-4.精密打抜き法において、板抑えに環状の突起を設け、 せん断部に高い静水圧を作用させて材料の延性を高めるとありますが、どんな意味ですか?

Q4-5.せん断金型の種類の中に、よく用いられる順送金型が含まれていないのはなぜですか?

Q4-6.せん断加工とレーザー切断の違い、選択のポイントは?

Q4-7.棒材のせん断加工には、どのようなものがありますか?

Q4-8.クリアランスが小さい場合には二次せん断面が形成されるとありましたが、二次せん 断面がどういうものかよく分かりません。

Q4-9.各種ストリッパ構造が紹介されていましたが、 その使い分けが紹介されていませんでした。どういったものなのでしょう?

Q4-10.「プレス加工」と「板金加工」の違いを教えてください?

■鍛造加工

Q5-1.私たちの身の回りにある鍛造品には、どの様なものがありますか。

Q5-2.金属を打撃したり、圧縮すると、金属に何か変化がおきるのですか。

Q5-3.自動車の部品は、何割ぐらい鍛造で作られているのですか。

Q5-4.鍛造は色々な温度で行われますが、どうしてですか。

Q5-5.鍛造加工用材料には、焼入れなどの熱処理特性がなぜ重要なのですか。

Q5-6.加工機械には色々なものがありますが、なぜですか。

Q5-7.切削と比べると冷間鍛造はどこが有利なのですか。

Q5-8.熱間鍛造は鋳造と同じような目的で使用されませんか。

Q5-9.ネットシェイプ鍛造とはどの様なことですか

Q5-10.鍛造製品が最も多く用いられているのは自動車ですが、2番目は何ですか。

Q5-11.熱間鍛造の温度は材料によって異なるのではありませんか。

Q5-12.鍛造加工を行うことによって製品にどのような変化が起こるのでしょうか?また、 熱間、温間、冷間の違いと使い分けをどのように考えればよいのでしょうか?

■板成形

Q6-1.直径200mm、板厚1mm、降伏応力150MPa、引張強さ300MPaの円形素板から、直径100mmの円筒容器を絞り成形したいのですが、必要なしわ押え力はどのようになりますか?

Q6-2.絞り成形において、パンチとダイスのクリアランスはどの程度にすべきでしょうか?

Q6-3.円筒絞り容器の耳の発生原因と対策を教えて下さい。

Q6-4.潤滑剤の粘度を高くすると絞り性が向上するのはなぜですか。

Q6-5.プレスシミュレーションによって、最適な成形条件を得ることが出来ますか?

Q6-6.さまざまな特殊成形法が開発されるのは、どのような必然性があるからなのでしょうか?

Q6-7.深絞り限界を向上させるための特殊成形法による対策を教えてください。

Q6-8.絞り加工において,しわ抑え板を使わなくても円筒容器を成形できる条件があれば教えて下さい。

Q6-9.パンチとダイのクリアランスの適正値について教えて下さい。

Q6-10.「しごきダイスに半径方向超音波振動を加えることにより、加工性が向上し・・・」とありますが、 振幅はどのくらいを取られているのでしょうか?この振幅があまりにも大きいと、 折角のしごき加工でも寸法精度を悪くする原因となってしまう気がするのですが・・・?

Q6-11.「n値」の説明をして下さい。

Q6-12.潤滑の観点から,成形性を向上させるための金型の最適な表面粗さや表面性状について教えて下さい。

■曲げ加工

Q7-1.スプリングバックは曲げ加工特有のものでしょうか。

Q7-2.板厚3.2mm、幅(曲げ線長さ)10mmの板の曲げ加工を行ったところ、曲げ線部が鞍形に反ってしまいました。曲げ型が悪いのでしょうか。

Q7-3.伸び代に大きな影響を与える曲げ内R(ir)の大きさは何で決まるのですか?

Q7-4.伸び代を正確に求める他の方法はありますか?

Q7-5.円管の曲げ加工でマンドレルを使用することのメリットとデメリットは何でしょう?

Q7-6.形材の圧延曲げはどうして曲がるのですか?

Q7-7.どうして設計段階で、曲げ加工部分について注意する必要があるのでしょうか?

Q7-8.「自由曲げ」と「エアベンド」は同じ曲げのことでしょうか?

Q7-9.「プレス」と「プレスブレーキ」はどこが違うのでしょうか?

Q7-10.曲げ線が直線の場合でも,曲線の場合でも同じ曲げのようにみえるのですが,どこが違うのでしょうか?

Q7-11.最近のプレスブレーキには油圧式ではなく,サーボモータとボールねじを組み合わせた形式や,サーボモーター で油圧ポンプの回転と制御をおこなう形式のものがあると聞きますが,どんな利点,特徴があるのでしょうか?

■チューブフォーミング

Q8-1.チューブフォーミングはなぜ今、注目されているのですか?

Q8-2.チューブフォーミングは他の加工法との大きな違いはどこにあるのでしょうか?

Q8-3.管の曲げ加工で加工精度や加工限界を向上するために、管内部に挿入するマンドレルにはどのようなものがあるのでしょうか?

Q8-4.丸管以外に、正方形管や角管などの異形管、さらにアルミサッシ等の複雑断面形状の押出し形材を曲げることはできるのでしょうか?

Q8-5.ハイドロフォーム加工(バルジ加工)での必要な加工内圧pは簡単に見積もることはできるのですか?

Q8-6.ハイドロフォーム加工(バルジ加工)でなぜ、軸圧縮力を内圧と同時に加えるのですか?

Q8-7.口広げ加工や口絞り加工の目的および用途はどういうところにあるのでしょうか?

Q8-8.シームレス管の製造法のうち、「中空ダイス方式」と 「ポートホール方式」との関係はどうなっているのでしょうか?

Q8-9.管は軽量効果が大きいとのことですが, その参照図の中にある同一曲げ強度と同一曲げ 剛性の式はどのようにして求められたのでしょうか?

■FEMシミュレーション

Q9-1.FEMは塑性加工解析にしか利用できませんか?

Q9-2.FEMではどんな大きさ、形、材料のものでも解析できますか?

Q9-3.FEM解析の結果はすべて正解ですか?

Q9-4.FEM解析にパーソナルコンピュ−タ(PC)の利用は可能でしょうか?

Q9-5.FEM以外に塑性加工の解析法はありませんか?

Q9-6.FEMに似た名前のBEMは塑性加工の解析に利用されますか?

Q9-7.圧延シミュレーションで述べられた材料の組織とは何でしょうか?

Q9-8.材料を要素分割する時に注意することはありますか?

Q9-9.塑性加工シミュレーションを行う場合、どのような材料データが必要となりますか?

Q9-10.FEMではどのような要素が用いられるのですか?

Q9-11.FEM解析に材料の加工硬化を考慮することができますか?

Q9-12.剛塑性FEMと弾塑性FEMの使い分けを教えてください。

■金型

Q10-1.プレス機械に金型を間違いなく取付け、稼動する為の確認事項は?

Q10-2.順送り型かトランスファ型かを選定する上での要点は?

Q10-3.金型設計に当たり、プレス部品図(製品図)の検討事項は?

Q10-4.ダイセットの選定基準を知りたいのですが?

Q10-5.パンチ、ダイの材質を決めたいのですが?

Q10-6.プレス加工工程設計での注意点は?

Q10-7.ストリップレイアウト設計での注意点は?

Q10-8.ダイレイアウト設計の要点は?

Q10-9.CAD/CAMを有効に活用したいのですが?

Q10-10.金型の保守点検の要点は?


■塑性加工概論

Q1-1
鋼の熱間加工を再結晶温度450℃よりもずっと高い1,200℃で行うのはなぜですか?


A1-1
450℃は再結晶が起こる最低の温度で、再結晶は起こるけれども非常に時間がかかります。実際 の熱間加工では、加工中あるいは加工直後に速やかに再結晶が起こってほしいから、加工温度を高 くしています。そうすれば、変形抵抗は小さくなり、延性は増大します。

Q1-2
引抜きはなぜ熱間で行われないのですか?


A1-2
細い線材では熱間は不可能です。表面が酸化すると、中身が急激に減ってしまうし、1,200℃に 加熱しても、低温のダイスと接触すると、すぐに温度が下がってしまいます。引抜きのダイスは長 時間ずっと擦られますから、すぐに傷んで持ちません。押出しのコンテナーやダイスも加工物と接 触したままですから、大変です。断熱を兼ねたガラス潤滑法によって鋼の熱間押出しが可能になっ たのです。圧延では、ロールは1回転に一度材料と接触するだけで、それも転がり接触的で、すべり は小さい。そして、次の接触までに冷却するチャンスがありますから、熱間でも可能です.

Q1-3
材料歩留まりとはどういうことですか?


A1-3
製品体積/素材体積を材料歩留まりといいます。切削加工では切屑の分だけ歩留まりが悪くな り、製品形状によっては50%以下になったり、航空機機体の切削加工では10%以下になります。塑性 加工では切屑は出ませんが、歩留まり100%というわけではありません。板の加工ではブランキング で抜き屑が出ますし、成形後のトリミングでも抜き屑が出るからです。冷間鍛造では、切・研削に よる仕上げが不要になれば、歩留まり100%の可能性があります。

Q1-4
型費用や設備費が比較的安価となる塑性加工にはどんなものがありますか?


A1-4
簡単な設備でいい仕事をする鍛冶屋のように、一気ではなく少しずつ成形していけば、時間はか かりますが、小さな設備と動力ですみます。目次5で示したスピニングは、ベテランの手作業がNC化 され、フレキシビリティに富む加工法です。銅の平板から鍋や花瓶をたたき出す技術があります。 このような手法をインクリメンタル加工(レッスン6板成形を参照)と呼ぶようになりました。塑性 加工は大量生産に適した加工法ですが、少量生産への対応、設備の軽量化、などを目指した取り組 みもなされています。

Q1-5
引張試験では10%も伸びずに破断する材料でも引抜き加工では長さが30%も長くなるのはなぜですか?


A1-5
引抜き加工は引張って伸ばしているように見えますが、実は、ダイスと材料の間にはたらく圧縮 応力が主役で、それによって直径を縮められ、その結果、軸方向に伸びているのです。ですから、 引抜きを繰り返せば、10倍、100倍に伸ばすことができます。これと似ているのが板の深絞り加工 で、引張試験ではほとんど伸びずに破断する板でも深絞りでカップに成形できます。一方、張出し 成形では、板は引張応力で伸ばされてカップに成形されますので、引張試験で伸びの小さい板では 成形困難となります。

Q1-6
応力-ひずみ曲線について、実際の材料では引張試験と圧縮試験とで少し食い違う、というのはどういうことですか?


A1-6
まず、実際の材料は、完全に等方性であるわけではなく、変形の方向・向きに よって抵抗が異なることがあります(一種の異方性)。たとえば、引抜きで仕上げら れた棒材の変形抵抗は、圧縮される場合のほうが引続き伸ばされる場合よりも若干低 くなります(一種のバウシンガー効果)。

次に、等方・均質な材料であっても、通常無視されている静水圧(静水応力)の降伏 条件への影響が考えられます。たとえば、結晶内のすべり抵抗は、その面に作用する 圧力によって変化し、圧力が高いほど、内部摩擦のためにすべり抵抗ひいては変形抵 抗が高くなるという考え方があります。これによれば、変形抵抗は引張試験よりも圧 縮試験のほうが多少高くなることになりますが、塑性加工用材料では問題とされてい ません。

最後に、測定技術上の問題もあります。圧縮試験では、端面摩擦によって生じる不均 一変形の影響を完全に取り除くことは困難ですから、応力とひずみの測定精度に多少 の心配が付きまといます。

Q1-7
静水圧を加えながら変形させると、なぜ破壊が起こりにくくなるのですか?


A1-7
たとえば、延性材料を引張試験すると、途中でくびれが発生して、くびれ部に変 形が集中して、やがて破断します。この場合、破断に先立って内部に小さな空孔(ボ イドという)が発生し、それが合体・成長して、ついには破壊に至るということが分 かっています。したがって、周りから高い圧力を加えながら変形させれば、空孔(ボ イド)の発生が抑制されますから、破壊が起こりにくくなると考えられます。実際、 高圧容器の中で高い静水圧を加えながら引張試験すると、くびれてから破断するまで の伸びが増大することが確かめられています。ただし、くびれが発生するまでの伸び は変わりません。

Q1-8
塑性変形すると、表面が粗くなるのはなぜですか?


A1-8
塑性変形は結晶内部のすべりによって生じます。機械・構造物に用いられている通常の金属材料 は多結晶体で、結晶粒の大きさはざっと10μmです。すべり方向やすべり量が結晶粒ごとに少しずつ ちがうため、表面を形成している結晶粒の間に相対的な隆起と沈降が起こり、それが表面粗さとし て測定されるようになるのです。工具と接触しない表面の粗さは塑性変形量(相当ひずみ)と結晶 粒径に比例して増大することが分かっています。

Q1-9
応力(単位面積当たりの力)について、力が面に垂直でない場合はどうしたらよいですか?


A1-9
そのまま、力を面積で割ってもいいです。それを応力ベクトルとか合応力といいます。力を垂直 成分と接線成分に分解して、それぞれを面積で割れば、前者は垂直応力成分、後者はせん断応力成 分ということになります。合応力を垂直成分と接線成分に分解しても同じです。このように、材料 内に1つの面を考えると、それには垂直応力とせん断応力が作用していることになります。さらに、 材料内に小さなさいころを考えると、6つの面にそれぞれ垂直応力とせん断応力が作用していること になります。さいころの向きをうまく採ると、垂直応力だけになることが分かっています。

Q1-10
長さがL0 からLになったときのひずみを、 e = (L -L0)/L0 として、求めてはいけないです か。ε= log(L /L0) とどうちがうのですか?


A1-10
e = (L -L0)/ L0 を公称ひずみ(あるいは慣用ひずみ)といい、 ε= log(L /L0)を真ひずみと いいます。弾性変形のようにひずみが小さい場合は、どちらでも同じになります。たとえば、L /L0 = 1.001とすると、e = (L -L0)/L0 = 0.001= 0.1%、 ε= log1.001= 0.0009995ですから、同じで す。しかし、L /L0 = 2.0とか、L /L0 = 10とか、 L /L0 = 100という風に大きな変形になると、e = (L -L0)/ L0 = 1.0と ε= log(L /L0)= 0.69、 e = (L -L0)/ L0 = 9.0と ε= log(L /L0)= 2.3、e = (L -L0)/ L0 = 99.0とε= log(L /L0)= 4.6、という風に非常に大きな違いが出てきます。

Q1-11
公称ひずみよりも真ひずみのほうが合理的であるとはどういうことですか?


A1-11
たとえば、第一班が長さを2倍にし、第二班がさらに2倍にして、結局、長さが4倍になったもの を課長が見たとします。
 課長:e = (L - L0)/ L0 = 3.0、ε= log(L /L0)= log4 = 1.39
 1GL :e 1= (L1- L0)/ L0 = 1.0、ε1= log(L1/L0)= log2 = 0.69
 2GL :e 2= (L2- L1)/ L1 = 1.0、ε2= log(L2/L1)= log2 = 0.69
公称ひずみでは、e 1+ e 2 = 2.0ですから、これはe = 3.0と合いません。
真ひずみにすれば、ε1+ε2 = 2log2 =ε= 1.39となり、話が合います。

Q1-12
伸び縮みの変形のひずみは分かりましたが、実際のもっと複雑な変形はどう表すのですか?


A1-12
とても難しい質問です。このレッスンの目次11の画面にあるように、実際の加工における変形は 場所ごとに違いますから、場所ごとに小さなさいころを考えて、それぞれの変形の様子を数字で表 すことを考えねばなりません。伸び縮みの変形のほかに目に付く変形は、ゆがみ・角度の変化・せ ん断変形です。直角であったところがθだけ変化したら、そのtanをとって、γ= tanθでせん断変 形の大きさを表します。これをせん断ひずみといいます。材料内に小さなさいころを考えると、一 般には、3方向に伸び縮みのひずみεがあり、3方向にせん断ひずみγがあることになります。

■材料

Q2-1
もし転位がない完全結晶体の金属に塑性変形を与えようとするとどの程度の力が必要となりますか?


A2-1
転位が存在しない完全結晶の状態で、すべり変形を生じさせるために必要な応力は、 降伏点と呼ばれる塑性変形に必要な最低応力の1900〜7500倍の応力が必要となります。 たとえば、銅の塑性変形に必要な応力は、降伏点の6400倍になります。

Q2-2
転位によらない塑性変形にはどのようなものがありますか?


A2-2
代表的なものに双晶変形と超塑性変形があります。双晶変形は、変形域がすべり面とは異なりある幅で存在する現象で、 変形後の原子の配列がある面(双晶面)を境に鏡映の関係になります。双晶による変形では大きな塑性変形は不可能で, Ti、MgやZnなどちゅう密六方晶金属でよく見られる現象です。 超塑性変形は、非常に結晶粒の小さな合金を特定の温度とひずみ速度域で変形すると著しい伸びを生じる現象で、 結晶粒界の相対的なすべりに起因する現象と、 変形中に材料の組織が変態することによって生じる場合があります。前者は微細粒超塑性,後者は変態超塑性と呼ばれています.

Q2-3
引張試験のほかに力学的特性を調べる試験方法としてはどのようなものがありますか?


A2-3
JISに規定されている試験方法としては、金属材料の曲げ試験方法(JIS Z 2248)、加工硬化指数測定方法(JIS Z 2253)、 金属薄板の塑性ひずみ比測定方法(JIS Z 2254)、金属材料衝撃試験方法(JIS Z 2242)、 クリープ及びクリープ破断試験方法(JIS Z 2271)、疲れ試験方法(JIS Z 2273)、 種々の硬さ試験方法(JIS Z 2243ブリネル硬さ、JIS Z 2244ビッカース硬さ、 JIS Z 2245ロックウェル硬さ、JIS Z 2246ショア硬さ、JIS Z 2251ヌープ硬さ)、 金属薄板の成形性を知るためのエリクセン試験方法(JIS Z 2247)、 コニカルカップ試験方法(JIS Z 2249)などがあります。 これ以外に規格になっていない試験方法も広く利用されています。 また、加工法に応じた評価試験方法もあります。 塑性加工要覧、鉄鋼便覧、プレス加工便覧などに紹介されていますので、参照してください。

Q2-4
変態組織強化鋼のひとつにTRIP鋼があると聞きますが、どのような材料ですか?


A2-4
TRIPとはTRansformation Induced Plasticity変態誘起塑性の頭文字から作られた言葉です。 化学成分や製造条件を制御して、普通常温では存在しないオーステナイト相をフェライト相の 中に残留させた鋼材をTRIP鋼といいます。変形によって残留オーステナイトがマルテンサイト組織に変態し、 高い延性を保持しながら高強度特性を有する材料です。高強度鋼の中でも加工性が優れた材料として注目されています。

Q2-5
外力の付加形態が変わることによって特性が変化する現象として、 バウシンガー効果という言葉をよく聞くことがありますが、どのようなものでしょうか?


A2-5
バウシンガー効果とは、最初の負荷と逆方法の負荷を材料に与えると、逆方向の降伏応力が低下する現象をいいます。 曲げ−曲げ戻し変形のように、加工時に最初の変形後、逆方向の応力が作用するような場合にはバウンシンガー効果が生じるため、 スプリングバックを予測するための成形シミュレーションなどでは、バウンシンガー効果を定量的に正確に知ることが望まれます。

Q2-6
ストレッチャーストレイン(S-Sマーク)とは何ですか?


A2-6
S-Sマークには二種類あります.Type Aと呼ばれるものは,変形の初期に現れる現象です。 一般的に焼きなまし状態の金属を引っ張ると不均一な変形である降伏点現象を示しますが, このとき表面に発生するしま状のひずみ模様をストレッチャーストレインと呼びます。 板成形においても現れ,外観不良となるため製品に使えません。 これを避けるために,スキンパス圧延やローラーレベラーが使われます。 引張試験で観測される不均一変形域をリューダース帯(Luders’ band)といいます。 これ以外に,Mgを多く含む5000系アルミニウム合金などでは変形量が大きい領域で現れるひずみ模様があります. 引張試験では,引張力-伸び曲線が鋸歯状になります。 これはType BのS-Sマークと呼ばれ,動的なひずみ時効が原因とされています。

Q2-7
アルミニウム合金では,ミルシートに合金種別を示す記号の後に,O,H,Tなどの記号が付いていますがこれは何ですか?


A2-7
アルミニウム合金の場合,合金成分が同じでも,製造後の加工,熱処理などにより性質が大きく変化します。 使用目的に応じた性質を得るための調整を調質と呼び,調質の種類を質別といって,記号で表します。 代表的なものとして,製造のままをF,焼きなまして軟らかくしたものをO,加工硬化したものをH, これ以外の調質をTで表します。H,Tの後についている数字はそれぞれの調質による硬さの度合いを表します。 マグネシウム合金でも同じような質別記号が使われます.詳細はJIS H 0001を参照して下さい。

Q2-8
塑性加工では,加工時の温度によって熱間加工,温間加工,冷間加工と分類されますが,材料の性質との関係を教えて下さい


A2-8
塑性変形により生じたひずみをもつ金属を適当な温度に加熱すると,ひずみのない新しい結晶粒ができますが, これを再結晶といい,そのときの温度を再結晶温度といいます。 再結晶温度以上に加熱して加工することを熱間加工といいます。変形抵抗が小さくなり, 伸びも大きいために加工が容易になります.再結晶温度以下における加工を冷間加工といいます。 材料は加工により硬化します。冷間加工の内,比較的高い温度でかつ再結晶温度以下での加工を温間加工といいます。 再結晶温度は材料により異なり,融点の高い材料ほど高くなります。鋼材では,350〜450℃,アルミニウムでは250℃程度です。 鉛は再結晶温度が室温程度ですので,常温での加工は熱間加工になります。

■圧延

Q3-1
圧延でどこまで薄い板ができますか


A3-1
いくつかの圧延の要因が最小板厚を決定します。 材料幅の外側の上下ロール部分が互いに接触しあうと圧延荷重が大きくなってしまいそれ以上板厚が薄くなりません。 この特性は、ロール径が大きいと特に顕著になります。 また、ロール径が大きかったり、摩擦が大きい圧延の場合には、ロールの弾性扁平量が大きくなって、 見かけのロール形状が円筒から平面に近くなり、圧延荷重が大きくなって圧延ができなくなることもあります。 上の二つの例をみても、非常に薄い板を圧延するには、ロール径が小さいことが必要です。 また、潤滑を良くしたり、大きな張力を付与したりすることも有効です。 ステンレスの量産品では約20μmの箔がセンジミア圧延機で製造されています。

Q3-2
圧延でどこまで厚い板ができますか


A3-2
一パス圧延での減厚量(板厚の減少量)はロール径によって限界があります。 これは、噛み込み限界といって、ロールに最初に接する角度が大きくなって材料が滑ってしまい ロールに噛み込まなくために起こります。鋳造素材の厚さによりますが、 厚くなると相対的に一パスの圧延歪が小さくなり、表面のみが大きな歪になります。 このため、鋳造時の板厚中心部の欠陥が残ってしまう場合もあり、 このような品質上の問題によって圧延で製造可能な板厚が決まっています。 連続鋳造による素材からの圧延では220mm程度までの製品があります。 それ以上の厚さでは、鋳塊を分塊圧延によって製造したり、鍛造によって製造したりするスラブを素材とします。

Q3-3
H形鋼はどの位の大きさが製造されていますか?


A3-3
一般的にはウェブ高さ90mm×フランジ幅300mm程度迄ですが、 特殊用ジャンボH形鋼としてウェブ高さが1mを超えるものもあります

Q3-4
形鋼の表面に突起が着いているものはあるのでしょうか?


A3-4
一般的には表面がフラットなものが主流ですが、縞模様や圧延方向突起、 圧延直角方向突起を付けた形鋼もあります。 これらの突起はユニバーサル圧延ロールに設けた形状を転写することにより形成されます

Q3-5
どの様な形状の形鋼が製造し難いのですか?


A3-5
複雑な形状を有したものが製造し難いことは容易に理解できますが、 簡単な形状でも断面が非対称のものは反りの問題があるため、以外に製造し難い形状と言えます。

Q3-6
形鋼は圧延によってのみ製造されるのですか?


A3-6
圧延以外にもロール成形法として鋼帯から連続的に冷間成形を行い、 軽量形鋼やハット形鋼が製造されます。また、板を溶接してH形鋼を製造する方法もあります

Q3-7
線材は最小で何ミリまで圧延することができるでしょうか?


A3-7
線材は5mmφまで圧延することができます。 粗、中間、仕上げと連続圧延することが多いので、 最終の仕上げブロックミルにおいては線材の圧延速度は100m/secを超えるほど高速になります。 したがって、最小圧延可能な直径は最終速度やあるいは線材を巻き取る装置の 制約(例えば巻き取り重量等)から最小で5mmφとなっています。 これ以下の細さの線はダイス引き抜きといった加工方法によって製造されます。

Q3-8
棒線材にはどのような種類があるのでしょうか?


A3-8
棒線材の製品の断面形状は丸が一般的ですが、それ以外にも4角、 六角、平、異形等があります。鉄筋を除き熱間、温間の二次、三次加工を経て製品になります。 主な用途は、鉄筋、ボルト、ロープ、軸受け、針など種々にわたり、材質も一般構造用鋼から、 橋梁のロープなどのように強度を要する部材には高強度鋼が使用されています。

Q3-9
素材から穴をあける方法としては他にどんな方法がありますか?


A3-9
マンネスマン穿孔のほかには、押出しによるものなどがあります。 押出しの場合には小さい孔を開けておき、その後で大きな芯金を用いてパイプにすることがあります。 圧延では3ロール方式や樽型ではなく、円錐型のロールを用い、呼び名は異なりますが、 素材がらせん状に進みながら穴をあけるという機構は同じです。

Q3-10
パイプで荷重計算をするときに注意するところはどこですか?


A3-10
まず板の計算式を思い出してください。 ここで幅とは何をさすでしょうか? パイプの場合はロールに形作られた孔型に接触している長さ、 つまり大抵の場合はロールバイト出側断面でのロールと素材の接触長さになります。 次に圧下力関数Qpですが、これは定式化されていないことが多いです。 従いまして、実際に圧延を行い、その荷重からQpを逆算して他の圧下量の計算に用います。 ただし形鋼の場合もそうですが、孔型圧延ではQpを孔型形状係数Qkとの積に置き換えて考えることが一般的です。 その際はQpを良く知られているものを用いて、先ほどと同じように実測荷重からQkを逆算する手法が用いられます。

■せん断加工

Q4-1
切断加工と分断加工の違い、およびその特徴は?


A4-1
切断加工はスクラップを出さずにせん断し、分離する加工方法であり、材料の歩留まりは最高に高まるが、 切断された左右のかえりは逆向きのまま製品に残ります。また、一つの線で切るため、 加工時に生じる曲げモーメントによって材料が跳ね上がり、切り口が斜めになるため、 その対策が必要となります。一方、分断加工はある幅を持ったパンチで材料をせん断、分離する加工法で、 スクラップが生じ材料歩留まりは悪くなります。しかし、分断した左右のかえりの方向は揃い、 また、材料の跳ね上がりが生じないため、切り口面の品質は切断加工よりも良くなります。

Q4-2
打抜き加工と穴あけ加工は、製品とスクラップの関係が互いに異なるだけですか?


A4-2
穴あけ加工と打抜き加工とでは、製品とスクラップの関係が異なるだけでなく、 金型の条件設定が異なる。図に示すように穴あけ加工では、 穴寸法とパンチ寸法がほぼ等しくなることから、パンチ寸法(=穴寸法)を基準にして、ダイにクリアランスを取ります。 一方、打抜き加工では、図中のスクラップが製品とりますが、 製品寸法はダイ寸法とほぼ等しくなるため、ダイ寸法(=製品寸法)を基準にして、 クリアランスを考慮したパンチ寸法に設定します。

Q4-3
ICリードフレームやコネクターなどの高精度せん断型は、どんな特徴を持っていますか?


A4-3
せん断製品はパンチ、ダイの形状が転写されるため、製品寸法許容差に対応したパンチ、 ダイの形状・寸法精度が必要になる。しかし、ICリードフレームやコネクターなどのように 製品の材料板厚が薄いものはクリアランスも小さく、 これを均一に維持することの方がさらに困難、かつ重要です。薄い材料をせん断することを前提に金型を考えると、 「クリアランスが小さい→パンチ・ダイの形状精度/面粗度→ パンチ、ダイの位置精度→ガイドの作り込み」といった連想で金型のあるべき姿が見えてきます。

Q4-4
精密打抜き法において、板抑えに環状の突起を設け、せん断部に高い静水圧を作用させて材料 の延性を高めるとありますが、どんな意味ですか?


A4-4
金属がせん断のような大きな塑性変形を受けると、内部に微小な破壊とも言える空孔が集積し、 これが合体、成長してクラックになります。数千〜数万気圧の高い静水圧が作用していると、 その空孔の発生が抑制されるので、結果として、破壊するまでに金属はより大きな塑性変形をするようになります。

Q4-5
せん断金型の種類の中に、よく用いられる順送金型が含まれていないのはなぜですか?


A4-5
このレッスンでは、金型単体の基本構造による分類、つまりパンチのダイの位置関係、ストリッパの有無、使い方で分類した。 順送金型は、プレス機械、金型、搬送機器、周辺機器などを含んだ加工システムの分類に入る。 加工システムの分類には、単発型、順送型、トランスファ型、ロボット型が入る。

Q4-6
せん断加工とレーザー切断の違い、選択のポイントは?
A4-6
現在、金属の切断ではCO2レーザー加工機が、 また、半導体関係では、YAGレーザー加工機が多く使われています。 機械的切断法であるせん断加工と比較して、 熱的切断法であるレーザー切断には、 次のような特徴があります。レーザー切断は、レーザー光をよく反射する銅、 アルミニウムは苦手とされますが、せん断加工で行うと工具の摩耗が大きいステンレスの切断や、 セラミックスなどの脆性材料の切断には適しています。 また、製品のロット数が少なく、形状が複雑な場合には、 せん断加工では金型の種類が多くなり、かつ製作費が非常に高くなります。 よってNCプログラムの変更だけで対応できるレーザー切断が向いています。 さらに、大型かつ比較的数量の少ない製品で、 3次元的な切断が必要とされる場合にもレーザー切断が用いられます。

Q4-7
棒材のせん断加工には、どのようなものがありますか?
A4-7
切り口面の状態は、切削切断法に比べかなり劣りますが、 生産速度や材料歩留まりの点で優れているため、 冷間鍛造用素材の多くは、棒材をせん断加工して得られています。 しかし、せん断加工のままでは切り口端面のゆがみ、 傾き、だれ、かえり等の不良が発生し、鍛造用素材とするためには、 せん断加工後、予備据込みや切削除去が行われます。 このように棒材のせん断加工は、板材に比べはるかに難しく、 これらの不良を低減するために、鋼材ではせん断速度を上げた高速せん断法、 非鉄金属では棒材を周囲から拘束する拘束せん断法が実用化されています。

Q4-8
クリアランスが小さい場合には二次せん断面が形成されるとありましたが、二次せん 断面がどういうものかよく分かりません。
A4-8
通常せん断は,だれ,せん断面が形成され,パンチおよびダイの 刃先付近の引張応力場から発生したクラックが合体して, 一気に破断に至る過程を経ます.しかし,クリアランスが小さいと, 引張応場が形成されにくいため,クラックが発生しても一気に合体貫通せず, 途中でクラックが停留した状態になりやすく, その間,パンチは下降して,第ニのせん断面が形成されます。 ただし,クリアランスが小さくても薄板のせん断では発生しません。 また,厚板のせん断であっても精密打抜き加工のように, 材料の拘束状態を強め圧縮応力場でせん断を行った場合も発生しません。 厚板をせん断機(シヤー)を使ってクリアランス過小の状態でせん断した 場合などに発生しやすい現象です。下記の断面図を参照してください。

Q4-9
各種ストリッパ構造が紹介されていましたが、 その使い分けが紹介されていませんでした。どういったものなのでしょう?
A4-9
ストリッパの働きとしては,その名称のとおり, せん断過程の終了時にパンチについてくる(1)素材を剥ぎ落とす効果, せん断時にパンチに作用する側方力で(2)パンチの心ずれが生じるのを 一定量に抑えるための案内としての効果,(3)せん断時の材料跳ね上がり やせん断側方力による材料の横ずれを抑える効果があげられます。 これらの効果のすべてをストリッパに持たせると,ストリッパ構造は複雑になり,当然,高価な金型になります。

すなわち,
ストリッパレス構造:すべてなし(雑もの,極少量生産向き)
固定ストリッパ構造:(1),(2)のみ(雑もの,少・中量生産向き)
可動ストリッパ構造:(1),(2),(3)(高精度,高速,大量生産向き)
下型可動ストリッパ構造:(1),(2),(3)(材料送り,曲げ,成形を含む加工には,干渉の問題があり適さない)
となります。

Q4-10
「プレス加工」と「板金加工」の違いを教えてください。
A4-10
いずれの方法も被加工材は薄板材です。 プレス加工はプレス機械を用い,専用の型を使って抜き, 曲げ,絞りなどの加工を行います。型が高価なためある程度量が まとまっていないとコストが会いません。工業会は日本金属プレス工業協会です。 板金加工は,比較的単純な形状の汎用型を用いて抜き,曲げ,絞り(深さの浅いもの) などの加工で,比較的大きな薄板製品を作ることができます。 製品としては,ダクト,バスの料金箱,自動販売機,配電盤, エレベータなどです。使用する機械は,タレットパンチングプレス (レーザー切断機を含む),プレスブレーキ,各種ベンディングマシンなどで, 試作品など少量生産加工が主体です。工業会は板金工業会です。

■鍛造加工

Q5-1
私たちの身の回りにある鍛造品には、どの様なものがありますか。


A5-1
ほとんどの鍛造製品は自動車のボンネットの中や床下にあります。ボルト、ナット、釘、ピンなどは冷間鍛造で作られます。 自転車のペダルの部分や車軸の部分なども鍛造品です。台所では包丁が鍛造製品ですが、 電気釜の釜も厚いものでは鍛造品があります。コインも鍛造品です。

Q5-2
金属を打撃したり、圧縮すると、金属に何か変化がおきるのですか。

A5-2
金属の冷間鍛造では変形によって結晶格子の変化(転位)が増えて硬くなり、強度が高くなります。 室温で変形した鉄鋼材料を800℃程度以上に加熱すると、 新しい結晶(再結晶)が生じて、軟らかくなります。熱間鍛造では硬化とほぼ同時に軟化が生じていますので、 加工後には硬化は残りません。材料を溶かして固めた材料(鋳造材)では、 大きな結晶粒になったり不純物が集積したりして材質的に好ましくない金属組織(鋳造組織)になりますが 、熱間鍛造によりこれが壊され材質が良くなります。

Q5-3
自動車の部品は、何割ぐらい鍛造で作られているのですか。


A5-3
1800ccクラスの乗用車は1トン程度の重さがあります。この中で、熱間鍛造品が約100kg、 冷間鍛造の部品と冷間鍛造で作られたボルトナットが50kg程度あります。 従って重さで約15%が鍛造製品であると言えます。

Q5-4
鍛造は色々な温度で行われますが、どうしてですか。


A5-4
昔から行われていた熱間鍛造は加工力が小さいため加工が容易ですが、 精度が余り高くなく、切削で仕上げ加工をしないと製品になりません。 一方、室温で行う冷間鍛造は仕上げ加工を余り必要としない精度の良い製品を高速加工ができるのですが、 加工力が高いため製品の大きさに制限があります。また、常温では変形能が小さく割れやすい材料もあります。 このため、冷間鍛造できる小型の製品以外は、温度を上げた温間鍛造や熱間鍛造が使われています。

Q5-5
鍛造加工用材料には、焼入れなどの熱処理特性がなぜ重要なのですか。


A5-5
鍛造製品は強度を必要とする部品の製造に使われるため、多くの場合は鍛造後に強化するための熱処理をします。このとき、 熱間鍛造での加熱を使って、うまく冷却すると鍛造と熱処理が同時にできます。加熱のためのエネルギーコストが大きいため、 鍛造のままで熱処理できると、コストダウンに役に立ちます。

Q5-6
加工機械には色々なものがありますが、なぜですか。


A5-6
鍛造製品の生産量や製品に要求される精度などによって、最も生産コストを低くできる機械が異なって来ます。 機械プレスは最も精度が高く、生産速度も高いのですがプレスが高価であるため大量生産にしか向きません。 一方、ハンマーは生産速度、製品精度が低いのですが、機械が比較的低価格ですので、少量生産に向いています。 そのほか、各々の機械が得意とする製品などもあります。

Q5-7
切削と比べると冷間鍛造はどこが有利なのですか。


A5-7
冷間鍛造は加工速度が非常に高いことが特徴です。冷間鍛造では1分間に100個程度生産するのは当たり前ですが、 切削では1分間で1〜2個が普通です。このため、冷間鍛造は大量生産に適しています。一方、 鍛造製品の寸法誤差は20〜100ミクロンのことが多いのですが、 切削の精度が1ミクロン以下の誤差で加工できます。このため、冷間鍛造と切削を組み合わせて製品を作ることも良く行われます。

Q5-8
熱間鍛造は鋳造と同じような目的で使用されませんか。


A5-8
塊状の製品を作る方法としては、鍛造と鋳造が代表的ですので、競合することもあります。 熱間鍛造製品は高強度で材質に信頼性があることから、高強度の製品を作るために熱間鍛造が使われます。 鋳造で用いられる鋳鉄やアルミニウムは、強度は高くないのですが、複雑な形状に鋳造することができますので、 複雑な形状が求められる時に鋳造がよく用いられています。最近では鋳造したアルミニウム素材を鍛造で仕上げるといったことも行われています。

Q5-9
ネットシェイプ鍛造とはどの様なことですか。


A5-9
「ネット」は「真の」ということですので、ネットシェイプは最終製品の形状という意味です。 ネットシェイプ鍛造とは切削や研削などの仕上げ加工なしで、最終製品を直接得るような鍛造方法のことです。 鍛造の最終目標ですが、最近では歯車のように非常に精度の高い加工が可能になってきました。 これには特殊な鍛造方法と加工機械、精度の高い金型製作、金型の弾性変形や熱変形の予測と制御などを必要とします。

Q5-10
鍛造製品が最も多く用いられているのは自動車ですが、2番目は何ですか。


A5-10
統計がないため正確な数字は分かりませんが、 日本では各種の産業機械(建設機械、農業機械など)に比較的多く使われています。 米国では航空機部品の鍛造が多いと思われます。

Q5-11
熱間鍛造の温度は材料によって異なるのではありませんか。


A5-11
その通りです。鋼では1100℃〜1250℃で熱間鍛造をしますが、 チタンでは900℃付近、アルミでは400〜500℃の温度が用いられます。

Q5-12
鍛造加工を行うことによって製品にどのような変化が起こるのでしょうか?また、 熱間、温間、冷間の違いと使い分けをどのように考えればよいのでしょうか?


A5-12
鍛造温度によって製品に与える影響が異なります。
(1)熱間鍛造では鋳造などで生じた内部欠陥を押しつぶして、製品が破壊しにくくします。 また、熱間では再結晶によって新しい結晶粒になりますが、うまく条件を選ぶと微細な結晶になって、 製品を高強度高靱性にします。また、鍛造後の冷却速度を調整して、熱処理の効果を持たせて(鍛造焼き入れ、 非調質鋼の鍛造など)高強度な製品にすることができます。熱間鍛造は大型製品の加工に用いますが、 精度が出しにくいことや表面に脱炭層ができやすいので、後で切削をします。
(2)冷間鍛造では加工硬化により材料が強化されます。この効果を積極的に使って高強度材料を得る場合と、 冷間鍛造後に焼き鈍し処理をする場合とがありますが、これは用途によって異なります。
冷間鍛造は加工圧力が高いので小型精密部品の製造に用いますが、精度や表面状態が良いのでそのまま用います。 (3)温間鍛造は冷間鍛造では難しい少し大きい製品や高強度材料の精密鍛造に用います。コストの点からは、 冷間鍛造ができないかを考え、だめなら温間、さらに熱間と温度を上げることを考えます。

■板成形
Q6-1
直径200mm、板厚1mm、降伏応力150MPa、引張強さ300MPaの円形素板から、直径100mmの円筒容器を絞り成形したいのですが、 必要なしわ押え力はどのようになりますか?


A6-1
しわ押え力の目安は、フランジ部の単位面積当たりの面圧 が、降伏応力 と引張強さの平均値の1%程度になるように設定します。 例えば円筒絞りの場合、しわ押え力 は次式より算定できます。

(1)
例えば、ダイス肩丸味半径が のときは、式(1)より

となります。

Q6-2
絞り成形において、パンチとダイスのクリアランスはどの程度にすべきでしょうか?


A6-2
クリアランスは板厚 の 1、1〜1、3 倍にとることが推奨されています。 ちなみに成形後の円筒容器の最大板厚 はほぼ次式で見積もれます。
(5)
従って、容器の側壁にしごきを加えたくない場合は、クリアランスの大きさを以上にとるべきです。

Q6-3
円筒絞り容器の耳の発生原因と対策を教えて下さい。


A6-3
面内異方性を有する素板から円筒容器を絞り成形すると耳が発生します。一般に耳の高さと位置は、 r値の異方性の度合いを示す と相関があります。 は次式で定義されます。

ここで、r0、 r45、 r90はそれぞれ圧延方向、圧延45°方向、圧延直角方向のr値ですが大きい材料ほど耳が大きく発生します。 また一般に、r値が大きい方向では耳に、r値が小さい方向では谷になります。 耳の発生を防ぐには、異方性がなるべく小さい材料を使いましょう。別の方法としては、 素板形状を非円形形状にすると(耳が発生する方向に素板寸法を小さく、谷が発生する方向に素板寸法を大きくとる)、 絞った後の容器深さを比較的均一にできます。

Q6-4
潤滑剤の粘度を高くすると絞り性が向上するのはなぜですか。


A6-4
絞り加工中の工具と被加工材との間の潤滑油の量は、主として動粘性効果によって支配されます。 要するに潤滑油の粘度が高いほど摩擦界面に取り込まれる潤滑油の量が増えます。 この結果、高粘度油ほど絞り加工中の工具と被加工材との間に潤滑油が多く存在するようになり、 流体潤滑領域を拡大し、摩擦が小さくなり、結果的に絞り性が向上します。

Q6-5
プレスシミュレーションによって、最適な成形条件を得ることが出来ますか?


A6-5
一般的に"プレスシミュレーション"というと、ある一組の設定に対してどのような成形結果が得られるのかを、 コンピュータ上の仮想空間で実行して確認するものであり、最適(ないし初期条件より改善された) 結果を得るためには、解析者の手で条件を変えながら何度か計算を繰り返す必要があります。  このプロセスを、数学的最適化手法を組み込んでプログラム化したものもあり、 プレスシミュレーションにこのようなプログラムを組み合わせることで、比較的少ない回数で(与えられた条件下での) 最適な成形条件を得ることも期待できます。ただしこの場合でも何回かの繰り返し計算は行いますので、 計算時間は1回のシミュレーションの数倍から数十倍かかる可能性があります。

Q6-6
さまざまな特殊成形法が開発されるのは、どのような必然性があるからなのでしょうか?


A6-6
薄板から各種の三次元形状を成形する場合、その形状に合わせた専用の金型が用いられています。 そのため少量生産部品の成形には、金型コストをいかに削減するか、 1工程における成形限界をいかに向上させるかが重要となります。 そのため、特殊成形法が開発される目的の一つに、金型の汎用化が挙げられます。 また、フランジ部の変形抵抗を減少させ、破断危険部の変形抵抗を向上させて成形限界を向上させることも、 特殊成形法を開発することの大きな目的の一つです。

Q6-7
深絞り限界を向上させるための特殊成形法による対策を教えてください。


A6-7
深絞り限界は、フランジ部およびダイ肩部に発生する縮み抵抗、曲げ抵抗、摩擦抵抗を減少させ、 成形側壁部やパンチ頭部における材料の強度(変形抵抗)を増加させれば向上します。フランジ部における抵抗を減少させる方法としては、 加熱や超音波振動などによる材料の軟化、強制潤滑による摩擦抵抗の減少などが挙げられます。 破断危険部の変形抵抗を増加させるには、局部的な熱処理による硬化、破断危険部をパンチに押し付けることによる摩擦抵抗の利用、 フランジ外周部からの押込みなどが挙げられます。

Q6-8
絞り加工において,しわ抑え板を使わなくても円筒容器を成形できる条件があれば教えて下さい。


A6-8
一定の絞り比 Z において,素板の板厚 t がダイ穴径 d d に対してある程度以上大きい場合, しわ抑えなしで絞り加工ができることが実験的に確認されています.その条件式(しわ限界)は次式で与えられます。
      
ここで,ZD/dd(絞り比),D:ブランク直径です.係数 K の値は材料および潤滑条件によって異なりますが, その差は大きくありません.複数の研究者の報告によれば,平面ダイによる円筒絞りにおいては0.09≦K≦0.16の範囲にあるようです。 (例えば,中村和彦・桑原利彦:基礎から学ぶ実践プレス加工シリーズ:プレス絞り加工,(2002),日刊工業新聞社,19ページ参照.)

Q6-9
パンチとダイのクリアランスの適正値について教えて下さい。


A6-9
パンチとダイのクリアランスは,板厚 t の1.1〜1.3倍にとることが推奨されています。 また成形後の円筒容器の最大板厚 t max はほぼ次式で見積もることができます。 (American Society for Metals: Workability Testing Techniques, ed. Dieter, G.E., (1984), 162.)
               t max = t (D/d)
従って,容器の側壁にしごきを加えたくない場合は,クリアランスの大きさを t max 以上にとるとよいでしょう。

クリアランスが t max より小さい場合は,容器の側壁はしごき加工をうけます。 しごき加工は,1工程中に絞りとしごきを同時に行う同時加工と,絞り加工した容器をあとで しごきダイを通す分離加工とに分けることができます。クリアランスを初期板厚の90%程度にとると (公称板厚減少率10%),通常の絞りに比較して,限界絞り比が最も向上することが報告されています。 (春日保男・音田一造:機論,69-568 (1966), 624-630.)

Q6-10
「しごきダイスに半径方向超音波振動を加えることにより、加工性が向上し・・・」とありますが、 振幅はどのくらいを取られているのでしょうか?この振幅があまりにも大きいと、 折角のしごき加工でも寸法精度を悪くする原因となってしまう気がするのですが・・・?


A6-10
半径方向に積極的に振動を加える方法は、日本工業大学の村川先生等の研究です。 無負荷時の振幅は20μmとしていますから、負荷時には半分程度になっていると推察されます。 この結果では、慣用しごき加工に比べて、条件によってはむしろ形状精度、表面精度が向上するのが確認されています。 潤滑効果の向上によると考えられていますが、超音波によるハンマリング効果も見逃せないと思います。 詳細は、日本塑性加工学会誌「塑性と加工」、41-470(2000)227を参照してください。 一方、軸方向への負荷は、九州大学の竹増先生等の研究です。 この場合、軸方向に5μmの振動を加えていますが、振動モードから、 半径方向には1μm程度の振動が発生しています。この結果でも、超音波の効果により、 条件によってはむしろ真円度等が良くなるという結果が出されています。 詳細は、日本塑性加工学会誌「塑性と加工」38-442(1997)1007を参照してください。

Q6-11
「n値」の説明をして下さい。


A6-11
「n値」は別名、ひずみ硬化指数、加工硬化指数と呼ばれています。 真応力 と対数ひずみ の関係がべき乗則( σ=cεn  )に従う場合の指数です。この値の大きさによって加工硬化、 つまり材料の強化の程度が変化します。一般に、「n値」は単軸応力状態で一様に変形できる限界、 「一様ひずみ」と等しくなるため、板材をどの程度まで変形できるか(伸びに対応)の一つの指標として 利用されています。また、プレス加工におけるひずみの一様性と相関があります。

Q6-12
潤滑の観点から,成形性を向上させるための金型の最適な表面粗さや表面性状について教えて下さい。


A6-12
一般に,ダイ面としわ抑え面に接触する素板部を潤滑することにより,絞り限界は向上します。 潤滑油の粘度増加,材料に適した極圧添加剤の添加,ポリエチレンフィルムなどの高分子フィルムの 挿入も有効です。
パンチ先端が平らな場合は,松脂を塗布するなどしてパンチ頭部の摩擦係数を上げると成形限界が向上します。
(例えば,中村和彦・桑原利彦:基礎から学ぶ実践プレス加工シリーズ:プレス絞り加工,(2002), 日刊工業新聞社,28ページ参照.)
ダイおよびしわ抑え板の表面あらは,高粘度の潤滑油を使用する場合は, 数μm程度の仕上げが最も絞り加工によいとされています。また表面粗さの仕上げ方向は, 材料の移動方向(金型の半径方向)に沿った方が絞り加工にはよい結果をもたらすようです。
(福井伸二・吉田清太・阿部邦雄・尾崎康二:塑性と加工,3-14 (1962), 207.)

■曲げ加工
Q7-1
スプリングバックは曲げ加工特有のものでしょうか。


A7-1
特有のものではありません。スプリングバックは金属の弾性回復現象に起因するもので、鍛造、 深絞り加工などすべての加工において生じます。ただ曲げ加工の場合、製品精度に直接関係する曲げ角度や、 曲げ半径などが大きく変化するため、特に注意をはらう必要があります。

Q7-2
板厚3.2mm、幅(曲げ線長さ)10mmの板の曲げ加工を行ったところ、 曲げ線部が鞍形に反ってしまいました。曲げ型が悪いのでしょうか。


A7-2
曲げ型が悪いわけではありません。ご質問の曲げ加工条件のように、板厚に比べて曲げ線長さが短い場合は、 曲げ線全体が馬の鞍のように反ってしまいます。原因は曲げの外側では周方向に伸ばされる結果、 曲げ線方向に収縮し、逆に、曲げの内側では周方向に収縮する結果、曲げ線方向に伸びるためです。

Q7-3
伸び代に大きな影響を与える曲げ内R(ir)の大きさは何で決まるのですか?


A7-3
曲げの内Rは、加工する時の曲げ条件によって生じる材料のひずみの大きさと加工硬化によって 決まってきます。 これらを支配しているのが、 パンチ先端Rの大きさ、 板厚、 材料定数(n乗硬化指数)、 V溝幅、 曲げ角度、 加工方法(エアーベンド、コイニング)などです。
これらの条件に基づいて曲げの内Rを計算する理論式はいろいろな参考書で紹介されていますので ご覧になってください。

Q7-4
伸び代を正確に求める他の方法はありますか?


A7-4
現在普及している有限要素を用いた解析ツールを利用する方法もあります。 また、実際の材料を曲げてみて、その加工条件での伸び値を求める 方法もあります。
    例えば、
     1.曲げる前の素材長さDを正確に測定する。
     2.適当なバックゲージ寸法Lで正確に90°曲げを行う。
     3.曲げ後のフランジ寸法(外寸)H1、H2を測定する。
     4.以上より 両伸び代=(H1+H2)−D、 片伸び代=両伸び代/2
    となります。
        

Q7-5
円管の曲げ加工でマンドレルを使用することのメリットとデメリットは何でしょう


A7-5
断面形状を円に保つことができます。 デメリット:偏肉がおおきくなります。また、管内面で摩擦が生じ、加工力が増える ことになります。マンドレルの位置きめを慎重にしないと、つっこみすぎて、かえっ て管を破断させかねませんので注意しましょう。

Q7-6
形材の圧延曲げはどうして曲がるのですか?


A7-6
曲げ加工では中立軸から外側(曲げ加工の概要(1)(2)参照)は引張りをうけるので、厚さ方向には薄くなります。形材の場合は中立軸か ら曲げ外側の部材で、減肉が顕著となります。(円管も同じ)圧延まげ、や叩き曲げでは中立軸の外側部分を強制的に薄くし、長手方 向(軸方向)に伸びを与えます。結果として、形材は曲がります。従ってこのような曲げ加工方法では被加工材に、曲げモーメントを 加えていません。

Q7-7
どうして設計段階で、曲げ加工部分について注意する必要があるのでしょうか?


A7-7
曲げに限らず、加工しやすいように設計をしないと、結果的に製品コストが高くなります。加工が難しい設計では、図面通りに加工 するために、余計な工程を必要とします。設計ではなるべく加工しやすいように考慮することは非常に重要です。

Q7-8
「自由曲げ」と「エアベンド」は同じ曲げのことでしょうか?


A7-8
「自由曲げ」と「エアベンド」は同じ曲げのことです. 「自由曲げ」もしくは「エアベンド」とは, パンチ先端とダイの左右肩部の3点に接して板が曲げられている状態での曲げ加工のことをいいます。 加工力が小さいことや,パンチの押し込み量によってさまざまな曲げ角度が得られる特徴をもっています。 しかしスプリングバックが大きいことや,曲げ半径が大きくなることから,厚板,大物の曲げに多用されています。

Q7-9
「プレス」と「プレスブレーキ」はどこが違うのでしょうか?


A7-9
「プレス」は連続運転を前提とした多量生産用機械です。 一行程運転をする場合もありますが,その場合も行程途中でスライドを停止することを前提としていません。 これに対して「プレスブレーキ」は曲げ加工専用機械で,一行程ごとに加工を終了していくことを前提としています。 つまり,一行程ごとに一箇所の曲げを行っていく加工形態となります。 また,パンチが板に接する直前で一旦スライドを停止させ,曲げ位置をパンチ先端に合わせられるようになっています。 プレスブレーキ作業では,通常,曲げる板の保持,搬送は人手によって行われます. したがって多品種少量生産を対象とした機械といえます。 プレスブレーキのボルスター(金型を取り付ける部分)形状は,幅が狭く, 長尺になっており,長尺板材の曲げが容易に行えるようなさまざまな工夫がなされています。

Q7-10
曲げ線が直線の場合でも,曲線の場合でも同じ曲げのようにみえるのですが,どこが違うのでしょうか?


A7-10
曲げ線が直線の場合と曲線の場合では全く違った加工となります。 曲げ加工とよべるのは曲げ線が直線の場合だけです。 曲げ線が曲線になると,板を延ばしたり,縮めたりしないと立体形状に変形させることができません。 板を延ばしたり縮めたりして所定の形状にする加工を成形加工といいます。 したがって曲げ加工と成形加工は区別され,別の加工となります。 見た目には同じように見える形状でも,全く別の加工で成形されているわけです。 これからは身近な製品がどのような方法で成形されたかを考えながら見るのも一つの楽しみになります。

Q7-11
最近のプレスブレーキには油圧式ではなく,サーボモータとボールねじを組み合わせた形式や,サーボモーター で油圧ポンプの回転と制御をおこなう形式のものがあると聞きますが,どんな利点,特徴があるのでしょうか?


A7-11
油圧方式は小さな出力の電動モータとポンプで、大きな出力(加圧力)を得ることができます。 加圧力としては数トンクラスの機械から800トンクラスの機械まで幅広く比較的安価に対応できる事ができます。 しかし電動モータとポンプが常に一定回転数で油を回路に流しつづける為に無駄が多く効率としてはあまり良く ありません。また油温上昇による機械本体の熱変形もあり、精度を維持するためには高度な制御技術が必要と なります。 もちろん他の油を使う機械同様に定期的な油交換も必要です。 サーボモータとボールネジの方式は、油をまったく必要としないため環境に対してクリーンな駆動方式と云えます。 制御性の良いサーボモータと高精度な送りを可能にするボールネジとの組合せでミクロンオーダーの位置決め を可能にし、機械の熱変形も少ないため安定加工を実現することができます。 しかし、油圧方式のような大出力は今のところ技術的に難しいので機種構成としては数トンクラスから100トン 前後のクラスまでとなっています。 サーボモータと油圧ポンプとの組合せの機械は、上記両者の良いところを組合せた方式と云えます。 制御性の良いサーボモータと大出力が得られる油圧方式により必要なときだけにサーボモータでポンプを回し 油を送ることにより無駄な発熱、消費エネルギーを抑えることができます。その結果、タンク油量を少なくでき、 油温も上がらないため機械の熱変形も最小に抑えることができます。高精度と対環境性を両立した方式と云え ます。もちろん、油圧を用いますので大出力の機械まで対応可能です

■チューブフォーミング

Q8-1
チューブフォーミングはなぜ今、注目されているのですか?


A8-1
管材を用いた製品は中空で断面が閉じているため、 軽量で剛性が高く、軽量化に適しており、現在大きな問題となっています地球環境問題に 対する有力な成形加工法と位置付けられているからです。 さらに管材から一体成形された製品は板材をプレス加工と溶接で作った製品より はるかに工程数を削減することができ、材料歩留まり、 コストダウンを達成できるなどの多くのメリットを持っているからです。

Q8-2
チューブフォーミングは他の加工法との大きな違いはどこにあるのでしょうか?


A8-2
それは素材が管であるため、管の内側から金型や工具を入れて加工するのが難しいところから、 その違いが生じています。板材や棒材であれば全周から金型や工具で力を加えたり、 変形を拘束して、金型への転写が容易にできますが、管ではそれが極めて難しいのです。 したがって、管の内側から外力を加える媒体は液体や気体や柔軟工具が多く用いられます。 よって加工精度は一般的にプレス加工より悪いと言われています。

Q8-3
管の曲げ加工で加工精度や加工限界を向上するために、管内部に挿入するマンドレルにはどのようなものがあるのでしょうか?


A8-3
マンドレル(心金)には以下のようにいろいろなタイプがあります。 作業性、要求精度、要求曲げ特性に応じて適切なものを選びます。 マンドレルの突出し量によって曲げ加工特性が大きく変化します。型設計が重要です。

Q8-4
丸管以外に、正方形管や角管などの異形管、さらにアルミサッシ等の複雑断面形状の押出し形材を曲げることはできるのでしょうか?


A8-4
丸管に比べて一般に難しいです。しかし、適切な金型や加工条件を選べば、 不整変形等を抑えながらきれいに曲げることができます。 押通し曲げや高周波誘導加熱曲げでは3次元に曲げることもできます。

Q8-5
ハイドロフォーム加工(バルジ加工)での必要な加工内圧pは簡単に見積もることはできるのですか?


A8-5
長い管に内圧のみを負荷する場合は、素管の材料特性として強度係数C、加工硬化指数n値および、 管の初期半径ro、肉厚to がわかれば、eを自然対数の底とすれば、 そのとき管の半径rmaxは、rmax=r0exp(n/2) で求められます。一次近似式として使えます。

Q8-6
ハイドロフォーム加工(バルジ加工)でなぜ、軸圧縮力を内圧と同時に加えるのですか?


A8-6
内圧だけでは、加工時の肉厚の減少が大きいため、 軸圧縮力または軸押込みを作用させることによって、 肉厚が薄くなるを抑えることができます。それによって、 破裂も遅らせ、大きく張出し成形できるからです。

Q8-7
口広げ加工や口絞り加工の目的および用途はどういうところにあるのでしょうか?


A8-7
主として、
1.他の管あるいは部材との結合・締結、
2.継手や配管部品の結合要素、
3.管の支持部材の位置決め用、
4.流路のノズル(スカート)(主として口広げ)、
5.カーリングでは製品取扱い上の管端部安全確保と、端部の補強用、のために行われます。

Q8-8
シームレス管の製造法のうち、「中空ダイス方式」と 「ポートホール方式」との関係はどうなっているのでしょうか?


A8-8
「中空ダイス方式」は一風変わったダイスを用いる押出し方式の総称です。 「ポートホール方式」は「中空ダイス方式」の一つで、その代表例です。 「中空ダイス方式」にはこのほか,「ブリッジタイプ」と「スパイダータイプ」があります。 これらは、使用する「お型」の形態が違います。 マンドレルを用いる「押出し方式」と「中空ダイス方式」の両者の本質的違いは、 はじめから管の状態で押出されるか(押出し方式)と、 押出された材料が一旦複数に分流され、その後一つになって、 閉じた断面の管になるか(中空ダイス方式)かです。

Q8-9
管は軽量効果が大きいとのことですが, その参照図の中にある同一曲げ強度と同一曲げ 剛性の式はどのようにして求められたのでしょうか?


A8-9
同一曲げ強度の式(1)は丸棒と円管の両者の断面係数Zが同じとしたときに求められます。 一方、同一曲げ剛性の式(2)は丸棒と円管の両者の断面二次モーメントIが同じとしたときに求められます。

■FEMシミュレーション

Q9-1
FEMは塑性加工解析にしか利用できませんか?


A9-1
いいえ、構造解析、振動解析、熱伝導解析、流体解析、磁場解析など様々な分野で利用されています。

Q9-2
FEMではどんな大きさ、形、材料のものでも解析できますか?


A9-2
航空機などの大きなものから肉眼では見えないような小さいものまで 様々な大きさの物でも解析することはできます。また複雑形状の問題でも、 小さな要素を利用したモデル化により解析も可能です。 またどのような材料でも、機械的性質がわかっていれば解析することができます。

Q9-3
FEM解析の結果はすべて正解ですか?


A9-3
すべての解析結果が正解になるとは限りません。 目的にあった解析手法(弾塑性FEMか、剛塑性FEMか・・・)を選択しなければなりませんし、 要素分割や境界条件の入力にも注意を払う必要があります。 解析結果を鵜呑みにせず、実験結果などとの比較検討も最小限行うことが必要です。

Q9-4
FEM解析にパーソナルコンピュ−タ(PC)の利用は可能でしょうか?


A9-4
パーソナルコンピュ−タの利用は可能です。 ただし、3次元FEM解析など複雑な解析には、 計算時間が長いことや結果の出力容量が大きいことを考慮して性能のよいコンピュータを選ぶ必要があります。

Q9-5
FEM以外に塑性加工の解析法はありませんか?


A9-5
いいえ、スラブ法、上界法、すべり線場法などがあります。 FEM解析を行うことは非常に煩雑ですが、 これらの解析法により解析することは比較的簡単です。 一方、材料形状がどんなに複雑でもFEMは、解析することができますが、 材料形状が比較的単純な場合のみしか、これらの解析法は用いることができません。

Q9-6
FEMに似た名前のBEMは塑性加工の解析に利用されますか?


A9-6
BEMは英語のBoundary Element Methodの頭文字を集めたものであり、 日本語では境界要素法と呼ばれています。FEMでは材料の周囲(境界)だけではなく材料の内部もまた要素分割します。 一方、BEMでは材料の境界だけを要素分割します。 塑性加工では材料内部の変形が複雑であるため、塑性加工の解析にBEMはほとんど利用されません。

Q9-7
圧延シミュレーションで述べられた材料の組織とは何でしょうか?


A9-7
鉄鋼材料の内部組織構造のことです。 熱間圧延過程では、材料内部において結晶粒成長、再結晶、回復、加工硬化、相変態などのミクロ組織の変化が生じます。 これらの変化は材料の応力、ひずみ(速度)、温度などに依存します。 そして、これらの変化を適切に制御することにより、強度および靱性の高い材料を得ることができます。

Q9-8
材料を要素分割する時に注意することはありますか?


A9-8
要素数を多くすると、計算精度は向上しますが計算時間も増加します。 そこで、ある要素数から要素数を増やした時に計算結果があまり変化しなければ、 その要素数は適切であると言えます。なお、材料の変形が大きいと予想される部分の要素分割を細かく、 そうでない部分の要素分割を粗くすれば、計算時間をあまり増加させずに計算精度を向上させることができます。

Q9-9
塑性加工シミュレーションを行う場合、どのような材料データが必要となりますか?


A9-9
弾塑性FEM解析を行う場合、一般的には下記に示す材料データが必要になります。
応力−ひずみ曲線(ヤング率、降伏応力、加工硬化係数)、ポアソン比 
ここで注意することは塑性ひずみが数十パーセント発生するような塑性加工シミュレーションでは、 応力−ひずみ曲線は真応力−真ひずみで表現される点です。 また、塑性発熱などの熱的特性も考慮する場合、熱伝導率、比熱、密度も必要になってきます。

Q9-10
FEMではどのような要素が用いられるのですか?


A9-10
平板の引張りなど二次元問題では、板厚が一定とした三角形要素あるいは四角形要素を用います。 丸棒の押出しや引抜き加工などの軸対称問題では、 三角形リング要素あるいは四角形リング要素を用います。 また三次元問題に対しては、弾性解析では4面体要素、塑性加工解析では六面体要素が一般的に使用されています。

Q9-11
FEM解析に材料の加工硬化を考慮することができますか?


A9-11
加工硬化を考慮し加工の際、荷重や変形状態をより正確に求めることができます。 加工硬化特性の硬化指数n値を含む数式を解析ソフトに入力するか、 あるいは引張り試験で得た応力−ひずみ線図のデータを直接入力します。

Q9-12
剛塑性FEMと弾塑性FEMの使い分けを教えてください。


A9-12
弾塑性FEMは名前のように弾性と塑性の性質を考慮したFEMです。 このFEMは弾性の影響を無視できない加工法や変形量が小さい引抜きや板の 曲げ加工などに使われています。 計算時間は難点ですが、求めた解の精度も高い上残留応力やスプリングバックの 検討もできます。一方剛塑性FEMは、前者より計算時間では有利となります。 剛塑性FEMは変形の大きい鍛造、圧延などの解析に使用します。

■金型

Q10-1
プレス機械に金型を間違いなく取付け、稼動する為の確認事項は?


A10-1
プレス加工荷重と金型の大きさがプレス機械に合っているかを確認します。 プレス加工荷重は材料をプレス加工する加圧力と、 スプリング等プレス加工荷重以外の加圧力の合計がプレス機械能力以下である事。 一般にはプレス加工力の1.5倍以上の能力を持つプレス機械を選定する事をお薦めします。 金型の大きさは、金型の外形が単純にプレス機械ベッドに収まり固定金具で確かに固定出来る事と、 金型を閉じた高さがプレス機械ラムの下死点高さ以下が必要です。 この時プレス機械のラムは上下調整を最上位置で検討します。 これを「ストロークダウン、アジャストアップ」と言います。 その他、金型下方に抜きカスやプレス加工終了品を落とす場合は、 プレス機械ベッド穴の大きさと位置を確認します。

Q10-2
順送り型かトランスファ型かを選定する上での要点は?


A10-2
プレス加工形状・工程数、生産数量、材料利用率を検討します。 プレス部品形状では、一般に平面的な形状は順送り加工、 深絞り等立体形状はトランスファ加工が適します。 特に深絞り加工は、順送り型では高度な技術・技能と経験を要し、 形状によっては不可能な場合がありトランスファ加工が有利です。 プレス加工工程数では順送り加工は制限されないが、 トランスファ加工はトランスファプレス機械のステージ数で決まり、 通常10〜15ステージ位です。生産数量はプレス機械の稼動速度(毎分ストローク数) から所要日数と生産計画を、また材料利用率はプレス部品の目標単価(金型金額含む)との合否を検討します。

Q10-3
金型設計に当たり、プレス部品図(製品図)の検討事項は?


A10-3
殆どのプレス部品はせん断加工を伴い必ずバリが生じます。 バリの方向と大きさを確認し、 形状によってはバリ方向の変更や打抜きコーナ部には極力円弧(R)を付ける等、 プレス加工に不適切な箇所の改善等を製品設計部門に申し出ます。 更に寸法精度の適正、要求される各幾何精度や仕上り面の性状等を確認します。 要は金型設計サイドがそのプレス部品の用途を良く理解する事が大切です。

Q10-4
ダイセットの選定基準を知りたいのですが?


A10-4
ダイセットはパンチとダイの位置を正確に合わせる事が基本機能ですが、 用途上から上下型の組立て精度を保つ事を主とする場合と、 稼動状態での上下型位置精度までダイセットに依存する場合が有ります。 前者は単型や比較的単純な順送り型に多く、 通常B、C、F形式、プレーンガイド方式も使用され、 上型はプレス機械ラムにシャンクやボルトで固定されます。 後者はプレス機械の上下動作精度だけに頼らず、 ダイセットで精度を保つ設計思想でD形式若しくは更にガイドポストを追加し、ボールガイド方式、 ローラガイド方式を用います。精密順送り型の主流で、上型とラムはフリーシャンクにする事もあります。

Q10-5
パンチ、ダイの材質を決めたいのですが?


A10-5
金型のツールであるパンチ、ダイに要求されるのは、耐摩耗性からの高い硬度と、 容易に座屈・折れ、欠損しない為の強靭性です。 特にパンチは細くて長い形体を必要とする事が多いので、高い靭性が要求されます。

耐摩耗性
合金工具鋼(SKD-11、1) プレス金型用パンチ、ダイ全般
超高合金 (V1〜V5)   打抜き、曲げ、絞り用パンチ、ダイ
セラミック        曲げ、絞り、しごき用ダイ

強靭性
高速度鋼(SKH-9)微細打抜き用パンチ

Q10-6
プレス加工工程設計での注意点は?


A10-6
材料の加工限界から加工比率(絞り率など)を楽にする方がプレス加工は無難ですが、 その分プレス加工工程数が多くなり、金型数や加工ステージ数が増え、金型金額、部品単価が高くなります。 しかし、後でプレス加工工程を追加するのは、特に順送り型は一度製作してしまうと大改造になるので、 やや楽な加工比率にしたり、時にはアイドルステージを設ける事もあります。 単型、トランスファ型はその様な被害は少ないので、最初から厳しく加工限界を設定します。 但しトランスファ型はトランスファプレス機械のステージ数が決まっているので、その限りではありません。

Q10-7
ストリップレイアウト設計での注意点は?


A10-7
通常ストリップレイアウトは打抜きによるブランクの形成からスタートし、 絞り、曲げ、穴明け等を経てトリミング(複数回の場合もある)され終了します。 ブランク打抜きでは、抜きカスがダイから浮上がるカス上がり対策が大切です。 単純な抜き形状や抜きの一部が開放されている形状はカス上がりし易くなります。 カス上り対策としては、完全に拘束された抜き形状の設計と、 抜きカスを強制的にダイ下方に押出すキッカーピンをパンチに装着すると有効です。 絞り・曲げでは、高さ方向の変形加工になるので、 プレス加工過程の形状を正確に想定して設計します。 特に金型の上昇過程で変形や干渉など問題となる事が多いです。 穴明けやトリミングは打抜き方向、バリの許容値から適正なせん断クリアランス値の設定、 プレス加工終了品の確実な取出しが重要です。

Q10-8
ダイレイアウト設計の要点は?


A10-8
ダイレイアウトはストリップレイアウトの設計と平行して進められます。 打抜き部はストリップレイアウトの所要パターンに対し、 加工方法と強度を熟慮してダイの大きさ、分割形状を決め、 曲げ・絞り部等はダイやパンチに付属するブランクホルダや 皺押えを伴う立体構造になる為、それらの動作や干渉の有無を確認します。 この段階で切刃部や摩耗部の再研削や部品交換等、保守方法を明確にして設計する 事が重要です。

Q10-9
CAD/CAMを有効に活用したいのですが?


A10-9
新商品を市場に出すには、金型の早期完成が重要な条件になります。 そのためには、まず製品設計のプレス部品設計部門に少しでも近づく事です。 つまりプレス部品設計部門のCADデータを直接金型設計CADに取込み、 更に金型設計CADデータはCAMにより各種NC加工機に直結された金型設計・製作システムを構築する事により、 CAD/CAMの効果を最大限に発揮できます。 このようなCADデータの一元化により、プレス部品設計段階から金型設計を同時進行させ、 更にCAMへ逐次対応して行くCADを武器としたコンカレントな取組みが主流となりつつあり、 金型納期短縮に大きく貢献しています。

Q10-10
金型の保守点検の要点は?


A10-10
金型の保守に当たっては状況把握が第一です。 現状での金型品位は最終プレス加工品に集約されており、 このプレス加工品やストリップレイアウトを調査する事により、 クリアランスの寄り、曲げや絞りパンチ・ダイの焼付き、金型の摩耗状態を確認し金型保守の方向付けを行います。 更に金型を点検し、詳細まで調査・確認します。