Q1.電子の遷移で放出される光の波長は、どんなものがあるのですか?

Q2.反転分布にすることを負温度にするというのはなぜですか?

Q3.共振器にはどんな種類があるのですか?

Q4.Q値とは何ですか?

Q5.レーザ加工において偏光面が問題になることはありますか?

Q6.共振器を長くするとなぜ大出力が得られるのですか?

Q7.混合物が発光するといいますが、媒質中の他の材料は発光しないのですか?

Q8.へき開面はなぜ鏡になるのですか?

Q9.どうやって発振波長を変えるのですか?

Q10.伝搬により光のエネルギーが減衰する理由は?

Q11.単色性を活かした技術にどんなものがありますか?

Q12.干渉性を活かした技術にどんなものがありますか?

Q13.干渉で波が打ち消し合い振幅がゼロになる時、エネルギーはどこへいくのですか?

Q14.指向性を活かした技術にどんなものがありますか?

Q15.横モードの呼び方を整理してください

Q16.レーザ加工機は、プロセス別に商品が販売されているのですか?

Q17.発振器と共振器の違いは何でしょうか?

Q18.CO2レーザ共振器の放電管の内部にN2やHeも封入するのはなぜですか?

Q19.無偏光だったビームが、共振器内で直線偏光に変換されてしまうのはなぜですか?

Q20.横モードを指定する際の表記TEMmnのm、nは何を意味するのですか?

Q21.パワー密度とエネルギー密度はどのように使い分けられているのですか?

Q22.金属では、温度が高いほど、電気伝導度が低いほど、吸収率が高くなるのはなぜでしょうか?

Q23.グラフを見ると、右上には何もマッピングされていません。なぜでしょうか?

Q24.材料の表面温度は、照射するレーザの種類によっても変わってくるのでしょうか?

Q25.化学反応プロセスは、実際のところ、発熱を一切生じないのでしょうか?

Q26.フェムト秒レーザが熱反応を起こす前に材料を飛散・剥離するのはなぜですか?

Q27.「薄板」「厚板」という言い方もありますが、板厚の分類はどのようになされているのでしょうか?

Q28.穴あけ、切断は、材料が金属の場合、溶融と蒸発のどちらの現象が支配的なのでしょうか?

Q29.アシストガスには何が使われていますか?

Q30.コストが割高というレーザ溶接は、実際にはどのような材料に適用されているのでしょうか?

Q31.ポロシティには、どのようなガス成分が含まれているのでしょうか?

Q32.一般的に、焼入れとアニーリング(焼きなまし)はどう違うのでしょうか?

Q33.従来の焼入れ法とレーザ表面焼入れとでは、冷却の仕方にどんな違いがありますか?

Q34.レーザアロイングとレーザクラッディングでは、同じ合金化でもどんな点が異なるのでしょうか?

Q35.レーザアロイングは、レーザグレージングと比較して、どんな点が優れているのでしょうか?

Q36.レーザCVDとレーザPVDでは、同じ薄膜形成でもどんな点で異なるのでしょうか?

Q37.印刷の多色刷りに相当することをレーザマーキングで行うことはできるのでしょうか? 

Q38.1つのレーザマーカでどんな材料にも対応できるのでしょうか?

Q39.亀裂はなぜビーム照射から遅れるのでしょうか?

Q40.レーザ割断が機械的な切断と比べて加工精度が劣る理由は何でしょうか?

Q41.レーザマイクロジェット法で注意すべき点は何でしょうか?

Q42.高分子材料にエキシマレーザを照射した場合に見られる現象はアブレーションですか?

Q43.フェムト秒レーザは必ずしも短波長とは限らないのに、アブレーションプロセスが可能なのはなぜですか?

Q44.JIS C 6802:2005の改正内容はどのようなものですか?

Q45.JIS以外の安全規格にはどんなものがありますか?

Q46.レーザによるやけどは普通のやけどとは違うのでしょうか?

Q47.レーザ光を受けてやけどした場合の応急処置はどうすればいいですか?

Q48.レーザ光を照射されたとき起こりうる眼障害について具体的に教えてください

Q49.鏡面反射物にはどのようなものがありますか?

Q50.人体への衝撃波の影響とはどのようなものですか?

Q51.JISでは保護めがねについてどのように規定していますか?

Q52.誤って発振器に触れて感電した場合、どのように対処すればいいですか?

Q53.レーザ加工技術の参考文献は?




Q1
電子の遷移で放出される光の波長は、どんなものがあるのですか?


A1

具体的にネオン原子の電子の遷移と自然放出の関係を眺めてみましょう。レーザ発振に関わるネオン原子のエネルギー準位には3s、3p、2s、2p、1s、基底の6つの状態があります。高いエネルギー準位に電子がある状態は不安定な状態で、より安定した低いエネルギー準位に移ろうとします。そして低いエネルギー準位に遷移する際に、その差となるエネルギーを光として放出します。たとえば電子が3sから3pに遷移する際には波長が3390nmの光、3pから1sに遷移する際には632.8nmの光、2sから2pに遷移するときには1153nmの光を出します。

Q2
反転分布にすることを負温度にするというのはなぜですか?


A2
反転分布の状態を、負温度状態であると表現することがあります。温度が負であるとはどういうことでしょうか?

温度Tの熱平衡状態にあるとき、原子がエネルギー準位Emにいる確率P(Em)はマックスウェル-ボルツマン分布で与えられます。

P(Em)=exp(-Em/kbT)

Kb:ボルツマン定数
T:絶対温度

通常、P(Em)はエネルギーの値の増加とともに減少します。しかし人為的に形成された反転分布の状態をこの式で表すと、エネルギーの値の増加にともない確率P(E)が増加する、つまり温度が負になったように見えることから、反転分布状態を負温度状態と呼ぶのです。

Q3
共振器にはどんな種類があるのですか?


A3

光を共振させるために、鏡を向き合わせに置いたものを共振器といいます。基本となるのが2枚の平面鏡を向かい合わせた平行平面型の共振器です。レーザ光は伝搬の過程で回折現象により光線の幅が広がります。そのため平行平面型では反射されて元に戻る光量が減少し損失が大きくなってしまう場合があります。そこで、損失をカバーするために鏡面を凹面にした共振器が作られています。共中心型は曲率の中心が一致した球面鏡を用いた共振器です。共焦点共振器 は焦点距離が等しく、かつ焦点が一致している二つの向かい合った球面鏡を用いた共振器です。また片方が球面鏡でその焦点の位置に平面鏡が置かれたものを半共焦点型といいます。レーザ媒質の特性やレーザの使い方に応じて、これらが使い分けられています。

Q4
Q値とは何ですか?


A4
Q値とは、どのくらい強く光を共振器の中に閉じこめることができるかを示す値で、共振器の品質を示す値という意味からQuality FactorのQをとってQ値と呼ばれます。具体的には、1周期あたりに共振で貯蔵されるエネルギーと失うエネルギーの比がQ値となります。Q値が大きいほど、内部に溜められる光のエネルギーが大きくなり、小さいほど内部に溜められる光のエネルギーが小さくなります。

Q5
レーザ加工において偏光面が問題になることはありますか?


A5
偏光は情報通信の分野などで光を細かく制御する際によく用いられます。しかし、レーザ加工においては、円偏光に変換した光を使うので偏光が問題になることはあまりありません。

Q6
共振器を長くするとなぜ大出力が得られるのですか?


A6
レーザは自然放出と誘導放出をレーザ媒質中で繰り返すことで光のエネルギーを大きくしていきます。共振器を長くすることでレーザ媒質の長さも長くできるので、光を出す機会がその分多くなります。そのため共振器のQ値を下げてもレーザ発振することができ、大出力を得ることができるのです。

Q7
混合物が発光するといいますが、媒質中の他の材料は発光しないのですか?


A7
レーザ光を励起エネルギー源とする場合は、特定波長の光だけが励起エネルギーとして与えられます。そのため励起する原子はその光のエネルギーと等しいエネルギー準位の差をもつ原子しか励起できません。この場合、他の原子は励起されないので発光しません。また励起エネルギー源が他の原子を励起させたとしても共振器は、半波長が共振器の長さの整数倍となる光しか共振させません。そのため他の原子が発光してもレーザ光として増幅されないのです。ルビーやサファイアなどの鉱物は、ほとんどがイオン結合性の化合物です。ここで発色に寄与するのはFe、Cr、Cuなど、d軌道に電子を持つ元素です。エネルギー準位は、原子の種類はもちろんのこと、配位数によっても変化します。他にもイオンの価数や周囲を取り巻く陰イオンの種類によっても変わります。

Q8
へき開面はなぜ鏡になるのですか?


A8
多くの結晶は叩くと平らに、決まった面で割れる性質をもっています。これを「へき開」といいます。へき開によって得られる面は、光学的にきわめて良好な平面となっています。つまり良い反射鏡となっているのです。また、つねに平行にへき開面を得ることができるという特徴もあります。そのため半導体レーザでは,共振器の鏡として利用できるのです。

Q9
どうやって発振波長を変えるのですか?


A9
半導体レーザや色素レーザ、固体レーザなどには、広い範囲での波長が発光できるレーザ媒質があります。色素レーザ、固体レーザを媒質とする場合には、プリズムを用いたり、回折格子などの装置を用いて共振器の長さを変えることで、希望する波長を取り出すことができます。また半導体レーザでは電圧を変えて発光層の屈折率を変えることで、発振波長を変えることができます。

Q10
伝搬により光のエネルギーが減衰する理由は?


A10
レーザ光は、波の性質も持っているために、ほんのわずかではありますが回折現象をおこします。そのため長い距離を伝搬するとビーム径がどんどん広がってしまいます。単位面積あたりで考えるとエネルギーが減衰してしまうのです。さらに伝搬中の吸収、散乱もレーザ光が減衰する理由のひとつです。

Q11
単色性を活かした技術にどんなものがありますか?


A11
単色で波長がそろっているため,特定の原子を選択的に励起したり電離できます。この特性を利用して同位体分離、蛍光分析、元素分析などに利用されます。また 非常に狭い領域に集光が可能なことから、CD、DVDのピックアップ、レーザ加工、レーザメス、レーザ顕微鏡などにも利用されています。

Q12
干渉性を活かした技術にどんなものがありますか?


A12
ホログラフィ、情報通信、干渉計測、変形・ひずみ・応力測定、探傷、3次元形状計測などに利用されています。

Q13
干渉で波が打ち消し合い振幅がゼロになる時、エネルギーはどこへいくのですか?


A13
ほとんどが放射モードとなって四方八方に広がって、外部に放出されていきます。

Q14
指向性を活かした技術にどんなものがありますか?


A14
指向性が強く、遠くへ伝送しても拡散しないことと、ミラ ーを使った遠隔伝送が可能なことから計測、測量で利用されています。また将来的にはエネルギー伝送、レーザで雷を発生させるレーザ誘雷などの利用が期待されています。

Q15
横モードの呼び方を整理してください


A15
横モードの中には、伝搬方向の電界ベクトルが垂直で、磁界ベクトルの無いものをTEモード、磁界ベクトルが垂直で、電界ベクトルのないものをTMモード、電界と磁界ベクトル両者とも伝搬方向に垂直なものをTEMモードといいます。レーザの多くはTEモードで発振します。モードの数え方は基本モード(シングルモード)以外は強度の一番小さい谷の部分を数えて1次モード、2次モードと呼んだり、その形状からドーナツモードとか、マルチモードなどといいます。

Q16
レーザ加工機は、プロセス別に商品が販売されているのですか?


A16
レーザ加工機は、個々のプロセスに特化した構成をとっていません。1台の装置で様ざまなプロセスに対応できるのが一般的で、汎用性の高い生産装置といえます。ただし、同じレーザ媒質を用いている加工機であっても、出力、ビーム特性などが商品ごとに異なります。切断用には集光性に優れた性能が必要になるといったように、プロセスによって加工機に求められる条件が異なりますので、実際の用途を考慮したうえで、導入するレーザ加工機を選択する必要があります。

Q17
発振器と共振器の違いは何でしょうか?


A17
共振器はレーザ光を取り出す装置単体を指します。発振器といった場合は、共振器だけでなく、電源、制御系、ガス循環系も含めます。レーザ光を共振・増幅させるためのシステムが発振器なのです。

Q18
CO2レーザ共振器の放電管の内部にN2やHeも封入するのはなぜですか?


A18
CO2とN2の分子振動の励起準位はきわめて近いため、CO2とN2が衝突すると、N2からCO2にエネルギーが移動し、CO2を効率よく励起することができます。それに対してHeは、CO2の励起をサポートする働きはありません。しかし、分子量が小さいことから冷却作用に優れ、レーザ発振に関与しない下位レベルの励起準位にあるCO2を基底準位に効率よくもどす働きがあります。

Q19
無偏光だったビームが、共振器内で直線偏光に変換されてしまうのはなぜですか?


A19
ビームの反射率が、金属表面(反射面)に対して直角に振動する波(P波)と平行に振動する波(S波)とで異なるためです。P波は反射面で吸収されますが、S波は反射面で反射されるという性質があります。したがって、共振器内でビームが何度も反射されるうちに特定の振動方向の成分だけが残り、直線偏光になってしまうのです。

Q20
横モードを指定する際の表記TEMmnのm、nは何を意味するのですか?


A20
TEMはTransverse ElectroMagnetic wave(横モード)の略です。それに対して、m、nはそれぞれ、x方向、y方向の分布強度の谷の数を表しています。なお、シングルモードは、x方向、y方向とも谷の数が0ですから、TEM00と表記されます。

Q21
パワー密度とエネルギー密度はどのように使い分けられているのですか?


A21
連続発振の場合にパワー密度、パルス発振の場合にエネルギー密度が用いられます。パワー密度の単位はW/cm2なのに対して、エネルギー密度の単位はJ/cm2です。単位時間当たりのエネルギーがW(ワット)であり(W=J/s)、パルス発振における単位面積当たりのエネルギーの密度は、実際にはパワー密度に時間(パルス幅)を乗算しないと比較できないことから、連続発振とパルス発振で言葉の使い分けがなされているのです。なお、レーザ全般のことを表現する場合は、パワー密度が用いられます。

Q22
金属では、温度が高いほど、電気伝導度が低いほど、光の吸収率が高くなるのはなぜでしょうか?


A22
光の吸収率は電気抵抗に比例し、電気抵抗は温度に比例するため、温度が高くなるほど吸収率も高くなります。また、反射率は電気伝導度の平方根に比例することが知られており、電気伝導度が小さくなると反射率も小さくなるため、結果的に、吸収率は大きくなります。

Q23
グラフを見ると、右上には何もマッピングされていません。なぜでしょうか?


A23

たとえば、加熱加工の場合で考えてみると、照射時間を同じにしてパワー密度を高めていくと、材料が溶融して、最終的には蒸発してしまい、加熱加工を行うことはできません。つまり、加工に使えるエネルギー密度は一定範囲にあり、それを超えると、利用に適さなくなってしまうためです。

Q24
材料の表面温度は、照射するレーザの種類によっても変わってくるのでしょうか?


A24
レーザ光の実体はエネルギーのかたまりともいえる光子であり、レーザ光自体が温度をもっているわけではありません。レーザ光が材料に照射されると、その一部が材料に吸収され、エネルギーが伝わります。材料はこのエネルギーを受けて発熱します。そして、その表面温度は、あくまでも材料の熱的な特性によって決まります。

Q25
化学反応プロセスは、実際のところ、発熱を一切生じないのでしょうか?


A25
紫外レーザ光で励起された分子の中には、その化学結合が切断されないまま、非放射遷移するものがごく一部あり、その際に放出されるエネルギーが熱に変換されます。例えば、パルス幅が数nmのエキシマレーザでは、ミクロン(μm)オーダーの熱拡散が生じると考えられています。

Q26
フェムト秒レーザが熱反応を起こす前に材料を飛散・剥離するのはなぜですか?


A26
材料内の原子の振動が熱に変わり周囲に伝わる熱反応が起こるには、一般的に数10ps以上必要です。フェムト秒レーザのパルス幅はこれよりも短く、熱反応の生じる時間的な余裕がないためと考えられています。

Q27
「薄板」「厚板」という言い方もありますが、板厚の分類はどのようになされているのでしょうか?


A27
JISで詳細に定められていないため、実際のところ、業界によって分類が異なります。したがって、業界が違えば、同じ「薄板」でも板厚が変わる場合があるのです。
例として、シートメタル業界の分類を以下に示しますので、1つの目安にしてください。

名称 板厚
区分 極薄板 箔〜0.5mm
薄板 0.5〜3.2mm
中厚板 4.5〜9.0mm
厚板 12.0〜25.0mm
極厚板 30.0mm〜

出典:『レーザー加工入門シリーズ(3) レーザー切断加工』新井武二、沓名宗春、宮本勇・著(マシニスト出版、1994年)

Q28
穴あけ、切断は、材料が金属の場合、溶融と蒸発のどちらの現象が支配的なのでしょうか?


A28
金属材料では、溶融状態になったら直ちにアシストガスで吹き飛ばされるため、蒸発の支配する割合はきわめて小さいと考えられます。

Q29
アシストガスには何が使われていますか?


A29
一般的に、O2あるいは不活性ガス(ArまたはN2)が利用されており、どのような切断を行うかで変わってきます。アシストガスの本来の目的は溶融金属を吹き飛ばすことにあります。ところが、O2をアシストガスに用いると、金属の酸化反応が起こり、その熱により加工速度を速めることができます。ただし、O2を用いると、酸化皮膜が形成されてしまうため、それを抑制したい場合はアシストガスに不活性ガスを使用します。

Q30
コストが割高というレーザ溶接は、実際にはどのような材料に適用されているのでしょうか?


A30
研究用や特殊な用途を除けば、レーザ溶接加工は薄板中心に普及しています。高出力レーザが開発されているため、厚板にも適用可能ですが、競合技術と比べてコストパフォーマンスが悪く、あまり利用されていないのが実情です。

Q31
ポロシティには、どのようなガス成分が含まれているのでしょうか?


A31
金属母材中にもともと含まれているCO2、N2、H2などが、ポロシティに含まれるガス成分となります。ポロシティはランダムに生成されるため、その量を低減することは可能でも、ゼロにすることはほぼ不可能と考えられています。

Q32
一般的に、焼入れとアニーリング(焼きなまし)はどう違うのでしょうか?


A32
焼入れは材料を急速に冷却するのに対して、焼きなましでは材料をゆっくりと冷却します。冷却速度を変化させると鉄の結晶構造への炭素原子の割り込み方が変わります。その結果、焼入れした鋼が硬くて脆くなるのに対し、焼きなましした鋼は軟らかくて伸びやかになります。

Q33
従来の焼入れ法とレーザ表面焼入れとでは、冷却の仕方にどんな違いがありますか?


A33
従来の焼入れ法では、一般的に、冷却剤を用いて材料を冷却するのに対し、レーザ表面焼入れでは、冷却材を用いず、自己冷却します。

Q34
レーザアロイングとレーザクラッディングでは、同じ合金化でもどんな点が異なるのでしょうか?


A34
レーザアロイングでは、母材も溶融して合金層を形成するのに対して、レーザクラッディングでは、添加した材料だけを溶融してクラッド層を形成します。したがって、レーザクラッディングの方は、クラッド層の組成が添加材と同じになり、添加材の母材への浸透も最小限に抑えられます。

Q35
レーザアロイングは、レーザグレージングと比較して、どんな点が優れているのでしょうか?


A35
レーザグレージングを適用できない材料に対しても、合金元素粉末を使用するレーザアロイングなら適用できることがあります。また、レーザアロイングは、合金元素を必要な箇所だけに添加して、耐摩耗性、耐食性などを局所的に高めることができます。

Q36
レーザCVDとレーザPVDでは、同じ薄膜形成でもどんな点で異なるのでしょうか?


A36
成膜材料を、化学的に生成するか、物理的に生成するかの違いです。レーザCVDでは、レーザ光照射で材料を化学的に分解し、その生成物を基板上に堆積させるのに対し、レーザPVDでは成膜材料をレーザ光で「たたき出し」、飛び出してきた原子を基板上に堆積させます。

Q37
印刷の多色刷りに相当することをレーザマーキングで行うことはできるのでしょうか?


A37
できません。レーザマーキングは、熱反応や化学反応を利用しながら材料表面に刻印する方式であり、原理的に単色となります。

Q38
1つのレーザマーカでどんな材料にも対応できるのでしょうか?


A38
発色や刻まれた印の鮮明度は、レーザ光の波長や材料の組み合わせによって変化するため、1つのレーザマーカであらゆる材料に対応できるわけではありません。

Q39
亀裂はなぜビーム照射から遅れるのでしょうか?


A39
レーザ割断が利用している熱ひずみとは、発熱部位の冷却過程で周辺部との間に生ずる応力ひずみだからです。ビーム照射から応力ひずみの発生まで少し時間差があるため、その分、亀裂の発生に遅れが生じます。

Q40
レーザ割断が機械的な切断と比べて加工精度が劣る理由は何でしょうか?


A40
応力任せで亀裂を生じさせ、切断しているため、加工精度を細かく制御できないからです。

Q41
レーザマイクロジェット法で注意すべき点は何でしょうか?


A41
水を勢いよく噴射するため、その力学的なエネルギーが材料に加わります。したがって、加工条件が適正値から少しずれてしまうと、断面にギザギザが生じたり、加工破片が生じたりすることがあります。

Q42
高分子材料にエキシマレーザを照射した場合に見られる現象はアブレーションですか?


A42
そうです。エキシマレーザはパルス発振しかできず、しかもその幅は最大で数10nsです。したがって、エキシマレーザを高分子材料に照射した場合、進行する反応は化学反応そのものであり、別の観点からとらえれば、アブレーションであるということができます。

Q43
フェムト秒レーザは必ずしも短波長とは限らないのに、アブレーションプロセスが可能なのはなぜですか?


A43

出力が同じなら、パルス幅が短いほどピークのパワー密度が高くなるためです。したがって、たとえば波長800nmのチタンサファイアレーザでも、超短パルス化することでアブレーションプロセスが可能になります。

Q44
JIS C 6802:2005の改正内容はどのようなものですか?


A44
主な改正内容は次の2点です。

1)レーザ製品のクラス分けにおいて、従来のクラス1、クラス2、クラス3がそれぞれ細分化されました。
2)生体組織に及ぼすレーザ光の影響について、熱的影響と光学的影響に分けることとしました。
これらの見直しに伴い、安全予防策の内容についての記載が修正されています。

Q45
JIS以外の安全規格にはどんなものがありますか?


A45
国際電気委員会によるIEC60825、欧州標準機関によるEN-60825、米国CDRHによるCFR1040などがあります。このうち、欧州におけるレーザ製品の安全に関する標準となっているEN-60825と、国際電気委員会によるIEC60825の内容はまったく同一です。また、JIS C 6802もこれらに準拠しています。

Q46
レーザによるやけどは普通のやけどとは違うのでしょうか?


A46
やけどとは、火や蒸気・化学物質・電気などの熱によって皮膚が損傷を受けることです。傷害の程度は、受けた熱の温度や作用時間によって決まります。レーザ光であるがための特殊性は、治療法も含めて特にありません。

Q47
レーザ光を受けてやけどした場合の応急処置はどうすればいいですか?


A47
小範囲のやけどの場合、すぐ冷水に浸けるか氷塊をあてて痛みがなくなるまで冷やし、必要に応じて病院で治療を受けます。

Q48
レーザ光を照射されたとき起こりうる眼障害について具体的に教えてください


A48
角膜傷害や白内障、網膜損傷などがあります。角膜傷害の代表的なものは、スキー場などでも起こる俗に言う「雪目」です。まぶしくてものが見えにくくなり、激しい痛みを伴います。白内障は、水晶体が濁って網膜に光が届かなくなるもので、視力が低下し、一旦低下したものは元には戻りません。網膜損傷には、水晶体によって集光された光により裂孔が生じるものや、出血を起こすものなどがあります。

Q49
鏡面反射物にはどのようなものがありますか?


A49
普段なにげなく身につけている鏡面反射物には、腕時計や指輪などのアクセサリー、ボールペンの金属部分などがあります。ふとしたきっかけでこれらが落下したりすると事故につながることがあります。

Q50
人体への衝撃波の影響とはどのようなものですか?


A50
高いエネルギーの衝撃波は、人体の組織を破壊することがあります。衝撃波による傷害には、網膜火傷、眼底出血などがあります。医療用として用いられ、腎臓などの結石を粉砕する衝撃波治療器も同じ作用を利用したものです。

Q51
JISでは保護めがねについてどのように規定していますか?


A51
JIS C 6802では、適切な保護めがねの選択の際に考慮すべき内容として次のものがあげられています。

a)運転の波長
b)放射露光または放射照度
C)最大許容露光量(MPE)
d)レーザ出力波長におけるめがねの光学濃度
e)可視光透過に対する要求
f)めがねに対する破損が起こる放射露光または放射照度
g)処方ガラスに対する要件
h)快適さおよび換気
i)吸収体の劣化または改修
j)物質の強度(対衝撃性)
k)周囲の視界に対する要求
l)すべての関連国内法規

Q52
誤って発振器に触れて感電した場合、どのように対処すればいいですか?


A52
生体が電気に触れたとき引き起こされる反応は、電流や電圧、通電時間によって異なります。また、直流・交流、接触部位の抵抗、通電経路なども関係します。たとえば電流については、5mAほどなら痛みを感じる程度ですが、100mA程度になると心室細動が起き、500mAとなれば電撃傷が生じ、1万mAでは呼吸が停止して死に至ります。応急手当の第一は、直ちに電源スイッチを切って、負傷した人を安全に電源から離すことです。そのうえで、脈や呼吸がなければ直ちに人工呼吸と心臓マッサージを行い病院へ運びます。

Q53
レーザ加工技術の参考文献は?


A53
本コースのレッスン5〜9は、主に

  • 『はじめてのレーザプロセス』新井武二著/工業調査会発行
  • 『高出力レーザプロセス技術』新井武二著/マシニスト出版発行

を参考、引用文献としました。


より専門的に学習したい人のための参考図書を紹介します。

  • 『レーザー工学』池田正幸編著/オーム社発行
    基礎から応用まで、レーザ加工全体を理解するのに適しています。

  • 『レーザー加工入門シリーズ』新井武二、沓名宗春、宮本勇著/マシニスト出版発行
    1. レーザー加工の基礎(上巻)
    2. レーザー加工の基礎(下巻)
    3. レーザー切断加工
    4. レーザー溶接加工

      他の機械加工との違いなど実際にレーザー加工に従事する際の学習に適しています。
  • 『精密加工実用便覧』精密工学会編/日刊工業新聞社
    精密加工に関する実用便覧です。レーザー加工については第6章にて説明されています。

レッスン10、11のレーザーの安全に関する参考図書

  • 『レーザー加工機の安全』中央労働災害防止協会編・発行
    レーザ加工機の管理と使用に関わる安全衛生基準を示し、解説したものです。

  • 『レーザ安全ガイドブック』光産業技術振興協会編/新技術コミュニケーションズ発行
    レーザ機器を使用する上での安全対策が詳しく解説されています。