Q1.水の比熱は1cal・g-1・℃-1と習ったが、4,200J・kg-1・K-1とかなり数値が違うのは。

Q2.国際単位系とは。

Q3.輻射伝熱と放射伝熱はどのように違うのか。

Q4.1次元系以外の熱流れとは。

Q5.「定常」、「均一または一様」の語句の違いは。

Q6.平板であればどんな場合でも、定常状態の温度分布は直線となるのか。

Q7.層流、乱流とは。

Q8.攪拌や管内流動における混合の強さはどのように表すのか。

Q9.熱の流れる方向に伝熱面積が変化する場合、伝熱面積をどのように求めるのか。

Q10.光学的特性の波長依存性の応用例は。

Q11.放射冷却とは。

Q12.水蒸気などの高温流体が流れる配管の外表面にアルミニウム板が巻かれているのは。

Q13.放射熱伝達係数とは。

Q14.伝熱抵抗とは。

Q15.沸点より低い温度では蒸発は起こらないのか。

Q16.熱電対の補償導線とは。

Q17.シース熱電対とは。

Q18.放射温度計は、全放射エネルギーを計測するのか。

Q19.対数平均値とは。

Q20.既存の熱交換器(伝熱面積が既知)を用いた場合の流体の出口温度はどのように求めるのか。

Q21.加熱流体に飽和水蒸気を用いて熱交換する(凝縮を利用するので高温流体の温度が一定である)場合、並流式と向流式の所要伝熱面積は異なるか。

Q22.多管式熱交換器における伝熱管の配置の方法。

Q23.断熱材の熱伝導率が温度上昇とともに高くなるのは。

Q24.超断熱で、熱伝導率が空気の値より低くなるのは。

Q25.対流伝熱促進とは。

Q26.エクセルギーとは。

Q27.燃焼温度とは。

Q28.COPとは。

Q29.現在、コンピュータにはスーパーコンピュータからパーソナルコンピュータまで色々なものがあるが、シミュレーションにはどのコンピュータが用いられるのか。

Q30.伝熱シミュレーションのためのプログラム言語には何を使うのか。

Q31.前進差分と後進差分とは何か。

Q32.離散化のための格子点の間隔は等しくしなければならないか。

Q33.シミュレーション結果が正しいかどうかの判定はどのようにすれば良いのか。

Q34.丸め誤差を小さくする方法は。


Q1
水の比熱は1cal・g-1・℃-1と習ったが、4,200J・kg-1・K-1とかなり数値が違うのは。


A1
単位が違うからである。cal も J もエネルギーの単位を表しており、前者は熱量から、後者は運動エネルギーから規定されている。工学単位系では、1 g の水を1 ℃ (厳密には24.5から25.5 ℃ まで) 温めるのに要する熱量を 1 cal と定義しており(英国制単位では、1 lb の水を 1 ゚F 温めるのに要する熱量を 1 Btu (British thermal unit) と定義している。)、水の比熱は一般に1 cal・g-1・℃-1となる。一方、国際単位系では、1 Nの力が作用して 1 m 動くときのエネルギー(熱量)を 1 J と定義しており、この J を用いて水の比熱を表すと上記の数値となる。

Q2
国際単位系とは。


A2
単位の国際的な統一を目的とした単位系のことで、SIとも呼ぶ。国際単位系では、基本単位にm(長さ)、kg(質量)、s(時間)、 K(温度)などを用い、 計算を容易とするために、基本単位の単位量(1 m、1 s、1 kgなど)に基づいて誘導単位(速度、力、熱量など)を定義している。例えば、1 kg の質量に 1 m・s-2 の加速度が作用する場合の力を 1 N と定義する。

Q3
輻射伝熱と放射伝熱はどのように違うのか。


A3
どちらも同じである。現在の科学技術用語では放射伝熱が使われているが、輻射伝熱を使うこともよくある。

Q4
1次元系以外の熱流れとは。


A4
本レッスンでは問題を簡略化するために1次元系の例を取り上げたが、実際には熱はあらゆる方向に流れ、比較的単純な系でも熱流れは2次元、3次元的となる。平板系の場合でも、縦横のサイズに比べて厚さが大きい場合、端部付近では2次元、3次元的熱流れとなる。

Q5
「定常」、「均一または一様」の語句の違いは。


A5
いずれも、ある系において着目する特性(例えば、温度)の状態を表す語句である。「定常(非定常)」は「時間的に変化しない(する)」、「均一または一様(不均一または一様でない)」は「空間的に変化しない(する、分布がある)」ことを表す。なお、いずれの語句も伝熱に限定されているわけではない。

Q6
平板であればどんな場合でも、定常状態の温度分布は直線となるのか。


A6
厳密には違う。定常状態ではどの場所でも伝熱速度が一定であるので、フーリエの法則における物性値である熱伝導率が温度に対して一定ならば(一定とみなせるならば)、温度分布は直線となる。熱伝導度の温度依存性が大きい物質の場合では、温度分布は曲線となる。

Q7
層流、乱流とは。


A7
流体が固体壁に沿って流れるとき、壁付近では壁に平行な層状の流れとなる。これを層流という。一方、壁から離れると、各位置での時間的変動が大きく乱れた状態で流れる。これを乱流という。なお、低流速あるいは高粘性の流体では、壁から離れた場所でも層流ができる。一般に、直径 D [m] の円管内の流れでは、レイノルズ数(D u ρ / μ)が約2,300 より小さいときは層流で、約10,000 を越えると乱流となる。この間では層流と乱流が混在した遷移的な領域となる。

Q8
攪拌や管内流動における混合の強さはどのように表すのか。


A8
流動系における粘性力に対する慣性力の比であるレイノルズ数を用いて、混合の強さを表す。攪拌する場合のレイノルズ数は ReD2 n ρ / μD:攪拌機の翼径 [m]、n:回転数 [s-1])で表される。

Q9
熱の流れる方向に伝熱面積が変化する場合、伝熱面積をどのように求めるのか。


A9
中空円筒や中空球の半径方向に熱が定常状態で流れる場合、簡易的に平均伝熱面積 Am を用いる。それぞれの例で外表面積を A1、内表面積を A2 とすると、中空円筒では両者の対数平均 Am = (A1 - A2) / ln (A1 / A2)、中空球では幾何平均 を用いる。なお、両面積の比が小さい場合(0.5 < A1 / A2 < 2)では、算術平均Am = (A1 + A2 ) / 2 を用いても誤差は小さい。

Q10
光学的特性の波長依存性の応用例は。


A10
吸収率などの光学的特性を波長によって変えることができる。ソーラーコレクターの集熱板には、比較的短い波長域の吸収率が高く、長い波長の射出率が低い膜(選択吸収膜と呼ばれる)が塗布されている。この膜のため、波長の短い太陽光は吸収されやすく、集熱板からの放射放熱は少なくなる。また、紫外線(UV)カットのサングラスや日傘では、紫外線域の反射率が高い材質が使われている。

Q11
放射冷却とは。


A11
昼間(太陽と面している側)では、地表面で受ける太陽からの放射伝熱速度の方が地表面から宇宙空間への放射伝熱速度より高く、正味として地表面は太陽から放射により熱を受けている。しかし、夜間(太陽と面していない側)では、地表面からの放射伝熱速度の方が高くなり、多くの熱が宇宙空間に散逸して地表面の温度が下がる。

Q12
水蒸気などの高温流体が流れる配管の外表面にアルミニウム板が巻かれているのは。


A12
アルミニウムの射出率は 0.04 〜 0.1 (表面状態によって射出率が変わる)と低く、配管表面からの放射による放熱速度を低くするためである。特に、外気温度が低い冬の夜間に有効である。

Q13
放射熱伝達係数とは。


A13
例えば、平板間の放射伝熱速度は Qφ A σ (T14 - T24) と表される。温度の部分を因数分解して、対流伝熱の式のように書き換えると、Qφ A σ (T12 + T22) (T1 + T2) (T1 - T2) = hr A (T1 - T2) となり、右辺における hr を放射熱伝達係数と呼ぶ。

Q14
伝熱抵抗とは。


A14
伝導および対流の伝熱速度の式をオームの法則(電流=電圧/抵抗)のように、(伝熱速度)=(温度差)/(伝熱抵抗)と考えると、伝熱速度が電流、温度差が電圧に相当して、各伝熱速度式の右辺における温度差以外の部分の逆数、d / kA1 / hA が伝熱抵抗となる。

Q15
沸点より低い温度では蒸発は起こらないのか。


A15
液体表面上では液体の蒸気は飽和蒸気圧になっており,その周囲にある気体中の蒸気圧が飽和蒸気圧よりも低いときは,両者の差を推進力とする蒸気の物質移動(蒸発)が起こる.温度が高いほど飽和蒸気圧は高くなり,外圧と飽和蒸気圧が等しくなる温度を沸点と呼ぶ。

Q16
熱電対の補償導線とは。


A16
熱電対は通常の導線より高価であるため、熱電対の長さをできるだけ短くして、標準温度または温度補償回路の接続端までの間を熱起電力的性質が類似した他の安価な金属線で代用する。この金属線が補償導線で、各熱電対に対応した補償導線が用意されている。

Q17
シース熱電対とは。


A17
シース熱電対は、外見上は1本の金属線(金属棒)のように見えるが、金属のシース管の中に熱電対の素線が封入されており、両極の素線同士または素線とシース管とが接触しないように電気絶縁体で絶縁されている。シース径が1 mm 以下の細いものも開発されており、取り扱いは容易である。しかし、用途に応じた種類の熱電対が封入されたシース熱電対を選択する必要がある。高温測定の際には、電気絶縁体の絶縁効果が低下して測定誤差を生ずることがあるので、注意が必要である。

Q18
放射温度計は、全放射エネルギーを計測するのか。


A18
多くの放射温度計では、ある特定の波長のみを通すフィルターを用いて、その波長におけるエネルギーだけを検知して温度を求めている。そのときの波長は、対象となる温度範囲、光センサーとして用いられる検知器の感度が高い波長領域、大気中の水蒸気や炭酸ガスによる吸収がない波長領域などを考慮して決められる。なお、2つの波長のエネルギーを2種類のフィルターを用いて測定し、その相対強度比から温度を求める方法(2色法)もある。

Q19
対数平均値とは。


A19
指数関数的に変化する特性に対して用いられる平均値である。二重管式熱交換器での対数平均温度差は、微少部分での伝熱速度を全伝熱面積にわたって積分することによって導出される。

Q20
既存の熱交換器(伝熱面積が既知)を用いた場合の流体の出口温度はどのように求めるのか。


A20
レッスン8で説明した方法に基づき、流体の出口温度を仮定して対数平均温度差を求めて計算を行う試行錯誤法(得られた出口温度と仮定値を比較して、両者が近似するまで同様の計算を繰り返す)でも求めることができるが、このような場合に対しては熱効率を用いる方法(ε - NTU 法)が用意されている。詳細は参考図書を参照されたい。

Q21
加熱流体に飽和水蒸気を用いて熱交換する(凝縮を利用するので高温流体の温度が一定である)場合、並流式と向流式の所要伝熱面積は異なるか。


A21
加熱流体として飽和水蒸気を用いる場合には、熱交換によって高温流体から凝縮潜熱が奪われて相変化(凝縮)が生じ、その温度は一定に維持される。したがって、並流式でも向流式でも、対数平均温度差は等しくなり、所要伝熱面積も同じとなる。

Q22
多管式熱交換器における伝熱管の配置の方法。


A22
伝熱管の径は、その中を流れる流体の流速から決定されるが、25 mm 前後のものがよく使われる。伝熱管は正三角形あるいは正方形配置され、ピッチ(管中心間の距離)は伝熱管外径の1.25 倍以上とする。

Q23
断熱材の熱伝導率が温度上昇とともに高くなるのは。


A23
断熱材は多くの気体を含んでいる(多いものでは、体積割合で90 % 以上の気体を含んでいる)。この気体の中では放射の形態でも熱移動が行われ、このときの伝熱速度は絶対温度の4乗に比例するので、これが見かけの熱伝導率増大の大きな要因となる。気体の熱伝導率が温度上昇とともに高くなることも理由のひとつである。

Q24
超断熱で、熱伝導率が空気の値より低くなるのは。


A24
固体相に超微粒子または薄片(膜)を用いることにより、熱伝導面積が極めて小さくなる。気体相は真空度を高くすることにより、気体の熱伝導率が低くなる。また、固体相表面の反射率を高める処理を施すことにより、放射熱損失も少なくなり、これらの総合的な効果として、見かけの熱伝導率が著しく低くなる。

Q25
対流伝熱促進とは。


A25
対流伝熱速度を高めるためには、乱流プロモーターやフィン等の設置、振動や撹拌、電場、超音波などを加える方法がある。この基本的な考え方は、伝熱面積の拡大と境界層を薄くすることにある。しかし、これらの方法で伝熱促進を行うと、流動抵抗が大きくなって輸送動力が増大したり、振動などを与えるための付加的なエネルギーが必要となり、極端な場合ではエネルギー消費が増大することもある。ただし、熱負荷が極めて大きく、高速の加熱または冷却が要求される場合には、伝熱速度を極力大きくする工夫が必要となる。

Q26
エクセルギーとは。


A26
エネルギー変換を行うときの有効なエネルギー量のことである。例えば、室温より10 K 高い水100 kgと50 K 高い水20 kg とを比較すると、両者の持つ顕熱は等しいが、熱機関を駆動させる場合には熱力学的に温度差が大きいほど変換効率が高くなるので、後者の方がエネルギーの質は高い。具体的に顕熱の持つエクセルギー e は、基準温度をT0、物体温度をT1、比熱をCpとすると、次式で求められる。

Q27
燃焼温度とは。


A27
燃料を完全燃焼させたとき、発生した熱が、燃焼によって生成した炭酸ガスや水蒸気などの温度上昇にすべて使われる場合に到達する最高温度を理論燃焼温度という。しかし、実際の燃焼では、過剰の空気が用いられることが多く、また周囲への放熱が生じたり、高温の燃焼ガス中ではガス分子の解離が起こるので、燃焼温度は理論温度より低くなる。

Q28
COPとは。


A28
成績係数(coefficient of performance)の略称で、ヒートポンプの性能指標として用いられる。機械式ヒートポンプは、熱媒体の断熱圧縮・膨張を利用して外界から熱を取り込む、あるいは放出することにより、投入する機械エネルギー以上の熱や冷熱を得ることができる。このときのCOP は、投入した機械エネルギーに対する得られた熱エネルギーの比で定義される。外界と授受する熱エネルギーは未利用エネルギーの活用であり、投入エネルギーはエネルギー資源の消費が伴うという観点から、COP は投入したエネルギー以上にどれだけのエネルギーが得られたかを示しており、COP が1以上で大きいほど省エネルギーの効果が高くなる。これに対して、化学式ヒートポンプでは、燃料等の燃焼が投入エネルギーとして利用されることもあるが、廃熱を利用することができるならば、熱媒の輸送以外に新たなエネルギー資源を必要としない。このとき、投入エネルギーは零となりCOP を定義できないので、便宜上ヒートポンプへ吸収される全エネルギーを基準として、取り出されるエネルギーの比で定義されている。したがって、化学式のCOP は1以下となることも多く、COP だけでは機械式と化学式の性能評価の優劣を単純には比較できない。

Q29
現在、コンピュータにはスーパーコンピュータからパーソナルコンピュータまで色々なものがあるが、シミュレーションにはどのコンピュータが用いられるのか。


A29
どのコンピュータでもシミュレーションはできる。シミュレーションのためにはプログラムを作成する必要があるので、プログラム言語をコンピュータが直接計算処理できる機械語へ変換する機能(コンパイラ)の付いたものが便利である。最近では、パーソナルコンピュータでも、かなりのシミュレーションが可能になっている。

Q30
伝熱シミュレーションのためのプログラム言語には何を使うのか。


A30
科学技術計算に向いているプログラム言語の代表例はフォートランで、数学関数を計算する色々なライブラリパッケージが用意されている。最近では、文法上の制約が少ないベーシックやC言語などもよく使われる。使用者にとって使いやすい言語で良いが、そのプログラム言語のコンパイラがコンピュータに入っている必要がある。特に最近では、このようなプログラム言語を使わずに、パーソナルコンピュータの表計算ソフトなどによって比較的簡単なシミュレーションもできるようになっている。

Q31
前進差分と後進差分とは何か。


A31
それぞれ差分の陽解法と陰解法に相当する。

Q32
離散化のための格子点の間隔は等しくしなければならないか。


A32
必ずしもその必要はない。間隔が等しければプログラムも簡単になるが、伝熱現象の変化が大きい部分では間隔を小さくした方が計算精度が高くなるので、間隔を変えることもある。すべての格子点を最も小さい間隔に合わせると計算時間が増大するので、場所によって間隔を変えた方が有利となる場合がある。

Q33
シミュレーション結果が正しいかどうかの判定はどのようにすれば良いのか。


A33
簡単ではないが、予測が簡単な結果となる初期条件と境界条件を入れて計算して結果を対比したり、条件をいくつか変えて計算を行って結果の傾向が妥当であるかどうかで総合的に判断する。このためにはある程度の経験が必要となる。

Q34
丸め誤差を小さくする方法は。


A34
最も簡単な方法は、計算プログラムを倍精度(数値の桁数を倍にする)または必要に応じて4倍精度にすることであり、倍精度での計算がよく行われる。一方、繰り返し計算しなければならない部分では、桁数が極端に異なる数値同士の演算をしない工夫をする。