Q1. 単蒸留では全ての液を蒸発させればある物質を濃縮することはできないのではないですか。
Q2. 一般に気液平衡は理想系として扱って良いのですか。
Q3. 蒸留によって混合物を分離できるのは何故ですか。
Q4. 蒸留は塔底のリボイラーで炊き上げて、塔頂のコンデンサーで冷やして凝縮させており、エネルギー的には無駄なように思いますが如何ですか。
Q5. Gillilandの相関等で還流比と理論段の関係を求めた場合、それらのどの還流比、理論段を用いて蒸留を行なっても所定の分離は可能ですか。
Q6. シーブトレイは、棚板に穴があいているので、液が漏れやすいのではないですか。
Q1
単蒸留では全ての液を蒸発させればある物質を濃縮することはできないのではないですか。
A1
その通りです。単蒸留において最初から最後まで蒸発させてしまうと、蒸発しない物質が含まれていれば別ですが、凝縮した液は蒸留する前の液と成分は変わりません。従って、単蒸留では、蒸留して最初に出てくる初留、次に出てくる中留、最後に出てくる後留という風に凝縮液を分けて取り出します。沸点の最も低い物質は初留に最も含まれ、次の沸点の低い物質は中留に多く含まれ、沸点の最も高い物質は、後留に最も多く含まれます。
Q2
一般に気液平衡は理想系として扱って良いのですか。
A2
一般に理想系として扱える場合は、性質が良く似た物質の混合物で、圧力が比較的低い場合のみです。例えば、理想系として扱えるのは、メタンやエタンなどの鎖状炭化水素で炭素数が近い物質の混合物で大気圧などの場合です。
Q3
蒸留によって混合物を分離できるのは何故ですか。
A3
物質の温度による蒸気圧はそれぞれ固有の値を持っています。混合物を蒸留で分離するというのはこの蒸気圧の差を利用する方法です。すなわち、一般には、同じ温度で蒸気圧の高い物質の方が蒸発しやすいので、蒸留することによって蒸気圧の高い成分を濃縮することができます。蒸留塔を用いて蒸留を行なえば、塔頂から蒸気圧の高い成分が濃縮されて出てきます。一方塔底からは蒸気圧の低い物質が出てきます。
Q4
蒸留は塔底のリボイラーで炊き上げて、塔頂のコンデンサーで冷やして凝縮させており、エネルギー的には無駄なように思いますが如何ですか。
A4
確かに蒸留塔では、下で熱を与え、上で熱を奪う操作をしており、エネルギーの無駄が多いと思います。しかし、これに替わる分離操作で良い方法がないために現在は蒸留方が多く使われています。従って、蒸留においては、できるだけ熱回収を行ない、熱効率をあげるような工夫がいろいろされています。レッスン12にこの工夫の例を示しました。
Q5
Gillilandの相関等で還流比と理論段の関係を求めた場合、それらのどの還流比、理論段を用いて蒸留を行なっても所定の分離は可能ですか。
A5
一応可能です。しかし、最小還流比に近い還流比を選んだ場合、理論段は無限大に近くなり、逆に、最小理論段に近い理論段を選んだ場合、還流比が無限大になり非現実的です。還流比と理論段は経済的、および運転上の観点から最適なものを選ぶ必要があります。一般には、還流比は最小還流比の1.05〜1.3倍程度が良いとされています。
Q6
シーブトレイは、棚板に穴が開いているので、液が漏れやすいのではないですか。
A6
シーブトレイの穴径は5〜25mmのものが使われます。25mm穴径というと液がません相当量漏れそうに考えられますが、実際にはそんなに漏れることはありません。蒸留塔の塔径、段間隔などを決める設計を行なうとき、液漏れ(ウィーピング)やエントレインメントなどの量があまり多くならないように設計をするわけです。