Q1. 高分子膜に使用される材料は

Q2. 膜分離の今後の有望分野は

Q3. ルーズRO膜とは

Q4. かん水

Q5. 表流水

Q6. ファウリングを防ぐ方法は

Q7. お米のとぎ汁から有価成分を回収したい

Q8. 分画分子量のマーカー分子とは

Q9. 再生セルロース、酢酸セルロース

Q10. デッドエンド濾過とクロスフロー濾過の実用上の使い分けは

Q11. イオン交換膜はイオンを「交換」しているのですか

Q12. 海水の淡水化には逆浸透と電気透析のどちらが有利なのでしょう

Q13. アミノ酸は電気透析できるのですか

Q14. アノード、カソード、アニオン、カチオン


Q1
高分子膜に使用される材料は


A1
もちろん高分子材料はたいへん種類が多く、膜材料としても過去ほとんど試されています。しかし例えば逆浸透膜では塩の阻止率を基準にして99.3%という高い性能で競争をした上で、現在の CA と芳香族ポリアミドだけが市販品として残っています。 UF, MF はこれより多少種類が多く、メーカーの得意な素材で作られますが、それでもPVA, PVDF, ポリスルフォン、 PTFE 程度しか素材の種類がありません。

Q2
膜分離の今後の有望分野は


A2
今後は浄水がターゲットとなります。クリプト対策として、精密濾過でも大口径(数μm)の膜が大量に使われます。またナノ濾過膜の応用も食品、浄水の分野で有望です。

Q3
ルーズRO膜とは


A3
現在はナノ濾過膜とよばれています。

Q4
かん水


A4
英語では水中の塩分濃度で
potable water 飲料水 500 mg/L
< fresh water 1,000 mg/L
< brackish water かん水2000-15,000 mg/L
< saline 塩水 15,000-30,000 mg/L
< sea water 海水35,000 mg/L
< brine 濃縮海水、
とされています。
一方、日本語では淡水に対して塩分を含む水を一般的に「かん水(鹹水)」と呼んでいます。天然ガス業界では塩分を含む地下水(海水混じりの地下水、海水より薄い濃度)を「かん水」と呼び、製塩業界では海水を濃縮した塩水を「かん水」とよんでいます。(さらに、食品業界ではラーメンつくりに欠かせないアルカリ成分(炭酸カリウムや炭酸ナトリウム)を溶かした水を「かん水」とよびます。)
このため、brackish water を「かん水」と訳すには注意が必要です。

Q5
表流水


A5
surface water の訳。地下水ground water に対する地表面の河川、湖沼水のこと。表層水と訳すと深層水との対比で湖水・海水の意味に誤解されやすいので注意。

Q6
ファウリングを防ぐ方法は


A6
膜表面に堆積し、透過流束を低下させるファウリング物質は、タンパク質や油脂です。これらは疎水性なので、ポリスルフォンなどの膜材料と親和性があるためファウリングを起こしやすいのです。膜表面を親水化することで低ファウリング性の膜が製造されています。

Q7
お米のとぎ汁から有価成分を回収したい


A7
洗米排水中の成分は澱粉粒子(1μm)、水溶性タンパク質、脂肪酸と、大きさの違う成分が混在しています。またそのためファウリングも大きい液です。どの有価成分を回収するかをみきわめて適用の膜を選定することになります。

Q8
分画分子量のマーカー分子とは


A8
分子量と分子径が厳密に計算できる球状の糖、タンパク質が用いられます。
限外濾過膜の分離特性を調べるためのマーカー分子
 分子量 [g/mol]分子径(推算) [nm]
スクロース3401.1
ラフィノース5901.3
ビタミンB121,3601.7
Bacitracin1,4101.7
インシュリン5,7002.7
チトクロームC13,4003.8
ミオグロビン17,0004.0
α-chymotrysinogene25,0004.6
ペプシン35,0005.0
オバアルブミン43,0005.6
Bovine アルブミン67,0006.4
aldolase142,0008.2
γグロブリン150,0008.4

Q9
再生セルロース、酢酸セルロース


A9
紙の原料であるパルプは木材からつくられ、ほぼ純粋なセルロース繊維からなります。これを溶媒などで溶解し、化学的変化を加えずに繊維状にしたものが「再生セルロース」です。再生繊維と呼ばれます。このときのパルプの溶解方法には種類があります。(ビスコース法(商品名:レーヨン)、銅アンモニア法(商品名:キュプラ))(セルロースを直接溶解できる溶媒にはN-メチルモルホリン-N-オキシドがあります。)
一方、パルプを無水酢酸で反応させ、アセチル化したものが酢酸セルロースないしアセテートです。化学組成が変化しているため半合成繊維と呼ばれます。セルロースのグルコース単位には水酸基が3つありますから、これを完全にアセチル化したものが三酢酸セルロースで、ジクロロメタンに溶解します。アセチル化の程度が3のうち2.45が酢酸セルロースで、アセトンに溶解します。

Q10
デッドエンド濾過とクロスフロー濾過の実用上の使い分けは


A10
精密濾過においてデッドエンド濾過とはプリーツ式カートリッジによるものです。その特徴は、
・カートリッジを1回で使い捨てる
・カートリッジが大量生産されているので安価である
・システムが簡単
・粒子濃度の薄い水(除菌、ジュース)の処理に適当
です。これに対して、クロスフロー濾過では平膜ないしスパイラルモジュールを用います。その特徴は、
・定期的に洗浄することで膜を長期間使用できる
・洗浄系の設置などシステムが高価である
・粒子濃度の濃い水(汚水、廃水)の処理に適当
です。

Q11
イオン交換膜はイオンを「交換」しているのですか


A11
イオン交換膜はイオン交換樹脂と同じものを膜にしているので、このような名称になっています。イオンを「通す・通さない」という機能ですので「イオン交換」はしていません。ですからイオン交換樹脂のように再生操作は必要なく、何年でも連続して使用できます。

Q12
海水の淡水化には逆浸透と電気透析のどちらが有利なのでしょう


A12
塩水から飲み水をつくるコストは塩分濃度と処理法によります。図は海水淡水化のコストを塩分濃度をもとに比較したものです。現在は逆浸透法がもっともコストが低くなっています。従来からの多重効用蒸発法も発電所に併設するなど熱源供給が安価であれば競争力があります。これに対して電気透析法は塩濃度に比例した電気消費量が必要ですので、海水程度以上の塩濃度では高コストとなります。

Q13
アミノ酸は電気透析できるのですか


A13
アミノ酸の分子の大きさはイオン交換膜を通過できる大きさです。アミノ酸は酸性のカルボキシル基と塩基性のアミノ基を持つ両性の電解質であり、溶液のpHにより荷電が変わります。そのため電気透析法で分離可能かは溶液の条件次第です。実際例としては魚介類の煮汁から調味料をつくるプロセスに電気透析法が使われています。この場合はアミノ酸を除去するのではなく、煮汁中のアミノ酸、タンパク質、脂質のエキスを残し、塩のみ除去することが必要です。そのため溶液のpHをアミノ酸の等電点に調節して、アミノ酸は原水中に残す操作がおこなわれます。

Q14
アノード、カソード、アニオン、カチオン


A14
英語と日本語では電極とイオンの陰・陽が反対になりますが、日本語のほうは「陽−陰がひきあう」という原則で理解できます。
英語日本語
anode(アノード)電解糟の陽極、電池の負極
cathode(カソード)電解糟の陰極、電池の正極
anion(アニオン)陰イオン
cation(カチオン)陽イオン