レッスン1
Q1.都市ヒートアイランドの主な原因は何ですか。
Q2.都市化による熱環境の変化は都市に降る雨にどのような影響を与えますか。
Q3.ヒートアイランド現象は大都市にのみ発達するのですか。
Q4.ヒートアイランドはどのような天候状態で発達しやすいですか。
レッスン2
Q1.それぞれの熱の伝わり方の身近な例としてはどのようなものがありますか。
Q2.都市のヒートアイランド現象の一因を担う熱の伝わり方にはどのようなものがありますか。
Q3.実際の熱のやりとりには、横風などの阻害要因があると思いますが、これらの要因についてはどのように考えたらよいのでしょうか。
Q4.電磁波による熱エネルギー移動は、電子レンジの仕組みとは違うのですか。
Q5.夏の暑い日に熱くなったコンクリートに散水すると涼しく感じられますが、熱の伝わり方は変化しているのでしょうか。
レッスン3
Q1.短波放射と長波放射の違いについて教えて下さい。
Q2.舗装面での熱収支について教えて下さい。
Q3.微気象とはどのくらいの規模の気象のことでしょうか。
Q4.コンクリート舗装とアスファルト舗装のどちらが都市の温度上昇を引き起こしますか。また、その理由は何ですか。
Q5アルベドと熱収支の関係がよくわかりません。
レッスン4
Q1.アルベドの測定方法はどうしているのでしょうか。
Q2.密粒舗装と透水性舗装における熱収支の試算例において、熱流とは何でしょうか。
Q3.密粒舗装と透水性舗装における熱収支の試算例において、熱流が負(マイナス)になる状態がありますが、どのような現象が生じているのでしょうか。
Q4.舗装表面に水が溜った場合の潜熱量の計算方法は自己診断の第4問を見て理解できました。水が舗装表面に溜らない透水性舗装などのような舗装での潜熱量の決定はどのようにすればいいのでしょうか。
レッスン5
Q1.人体からはどのように熱が放出しますか。
Q2.走ると暑くなるのはなぜですか。
Q3.人間の感じる快適、不快を示す熱環境指標にはどのようなものがありますか。
レッスン6
Q1.透水性舗装の問題点は何ですか。
Q2.透水性舗装が適している設置場所にはどのようなところがありますか。
Q3.緑地と透水性・保水性舗装では、熱収支にどのような違いがありますか。
Q4.透水性舗装の目詰まり対策にはどのようなものがありますか。
レッスン7
Q1.なぜ、熱電素子による路面発電システムを採用すると舗装面の温度低下を図ることができるのでしょうか。
Q2.掘削杭熱交換方式(BHES)と貯水槽集熱方式(RHCS)の違いはどこにありますか。
Q3.ヒートアイランド現象の増加を防ぐにはどのようにしたらよいでしょうか。
レッスン1
Q1
都市ヒートアイランドの主な原因は何ですか。
A1
ヒートアイランドの主な原因は以下の通りです。
1.大気汚染物質が外向きの長波放射を吸収し、再放射するので下向きの長波放射が増える。
2.都市の幾何学形状(建物、街路)によりアルベドを減少し、短波放射の吸収が大きくなる。
3.都市の構成材料(舗装、建物)の熱特性で日中の熱が蓄えられるため、夜間の熱放出が増える。
4.燃料消費に伴う人工熱の大量放出がある。
5.下水道の整備、路面の舗装により、植生および都市の表面に露出する水面が減少するため、蒸発散量が減少する。
6.建物の影響で都市内の風速が弱まり、熱が周辺域に逃げにくくなる。
Q2
都市化による熱環境の変化は都市に降る雨にどのような影響を与えますか。
A2
特に夏には都市域の高温により上昇気流が発生しやすくなるため、雷雨などの激しい天気の頻度と強度が増えると考えられています。
Q3
ヒートアイランド現象は大都市にのみ発達するのですか。
A3
中小都市でも発達します。また、ヒートアイランド現象の強さは都市の大きさと関係します。ヒートアイランドの強さを都市と周辺田園地域の温度差DTu-rと定義し、都市の大きさを人口(P)であらわすとDTu-rとlogPは正比例の関係であることが知られています。
Q4
ヒートアイランドはどのような天候状態で発達しやすいですか。
A4
都市と郊外の気温差は、1日のうちでは夜間に大きく、1年を通じて見ると冬に大きく、また、穏やかな晴天日に大きく、曇天日には小さくなります。したがって、ヒートアイランドは、冬の風の穏やかな晴天の夜間に最も発達しやすいと考えられます。
レッスン2
Q1
それぞれの熱の伝わり方の身近な例としてはどのようなものがありますか。
A1
身近な例として、太陽エネルギーによる熱のやりとりが挙げられます。まず、太陽の日射で地表面が温められ(放射熱伝達)、その熱が地表面付近の空気を暖めます(対流熱伝達)。同時に、地中深くへ熱が伝わっていきます(熱伝導)。このように、太陽エネルギーから生じた熱もさまざまな形態で熱のやりとりを行っています。
Q2
都市のヒートアイランド現象の一因を担う熱の伝わり方にはどのようなものがありますか。
A2
都市では、建物や舗装による地表面の被覆化が急激に進みました。これらの人工構造物は、比熱が小さく(温まりやすい)、地表付近の大気を暖めやすいという性質を持っています。そのために都市部の地表面付近の大気が温められ、都市郊外部よりも気温が高くなるという現象の一因となっています。このような太陽の日射で温められた人工構造物等が地表面付近の空気を暖めるのは「対流熱伝導」という熱の伝わり方によるものです。
郊外部では、人工構造物よりも比熱の大きな自然の物質や植物の蒸発散により、地表面付近の空気を暖める対流熱伝導が都市部よりも少なくなっています。
Q3
実際の熱のやりとりには、横風などの阻害要因があると思うのですが、これらの要因についてはどのように考えたらよいのでしょうか。
A3
例えば、地表面での熱のやりとり(以下、「熱収支」という。)については、実際に横風などによって熱収支が阻害されていますが、実際に測定した観測データと熱収支計算結果を比較検討した結果、よほどの強風でない限りは、垂直方向の熱収支に比べ、横風などの乱流による熱の移動はごく僅かなもので、若干の±分を加味して考慮する程度で説明することができることが分かっています。また、横風の強さ(風速)ごとの熱収支の計算式なども提案されていますので、その時その時の気象条件に応じた計算式を用いることで、より的確な熱収支を算出することができるようになっています。
Q4
電磁波による熱エネルギー移動は、電子レンジの仕組みとは違うのですか。
A4
電磁波は、光やX線、ガンマ線から電力周波数までを含めた総称で、周波数帯により多くの種類があり、非常に幅が広いものです。熱移動に関与する電磁波の波長は0.1μm〜0.1mmとされていて、遠赤外線が多くなります。電子レンジはマイクロ波と呼ばれる周波数の高い電磁波(2,450MHz)を使用した加熱器で、金属に当たると反射して、プラスチックやセラミクスなどは透過し、水などに当たると吸収されるという性質を持つ電磁波を用いています。その電磁波が暖められている物質の電子を振動させて発熱させるというのが、電子レンジによる加熱の方法です。したがって、電磁波の種類が異なるため、熱エネルギー移動の仕組みが全く異なっているのです。
Q5
夏の暑い日に熱くなったコンクリートに散水すると涼しく感じられますが、熱の伝わり方は変化しているのでしょうか。
A5
夏の暑い日のコンクリートは、太陽の日射(放射熱伝達)により暖められ、さらに暖められたコンクリートは表面付近の大気を対流熱伝達により暖めています。これに散水すると、水が蒸発するときに気化熱が奪われるため、涼しく感じられます。これは表面の熱のやりとり(熱収支)の変化によるもので、熱の伝わり方が変わったわけではありません。
レッスン3
Q1
短波放射と長波放射の違いについて教えて下さい。
A1
波長の長短によって短波放射と長波放射に別けられます。一般に大陽からの熱放射は日射と呼ばれており、日射量は受熱面の単位面積への入射エネルギー量で表し、熱流束を示しています。日射の波長分布は0.2〜3μm程度と短いため日射は短波放射と呼ばれています。一方、舗装面から出ていく放射は約3〜100μmと波長が長く、大気中の二酸化炭素、水蒸気、メタン等に吸収され、さらに地球へと再放射され、舗装面を暖めることになります。この放射のことを長波放射と呼んでいます。
Q2
舗装面での熱収支について教えて下さい。
A2
舗装面と大気の熱収支は人工排熱を除くと次に示す要因で表すことができます。熱が流入し鋪装を暖める要因は、短波放射と長波放射です。一方、熱が流出し鋪装が冷える要因は、舗装面からの長波逆放射、水の蒸発による潜熱(打ち水をすると涼しくなる)、舗装面と近傍の大気の間での乱流熱輸送、鋪装から地中への熱伝導等が挙げられます。
Q3
微気象とはどのくらいの規模の気象のことでしょうか。
A3
舗装面での熱の移動を気象学的に考えた場合、大気の低層部分が直接関与します。鉛直スケールを考えると小規模の気象スケールであるといえます。気候スケールで言えば、微気候(水平の広がり:1cm〜100m、鉛直の広がり1cm〜10m)から小気候(水平の広がり:10m〜10km、鉛直の広がり:10m〜1km)の範囲と考えられます。
Q4
コンクリート舗装とアスファルト舗装のどちらが都市の温度上昇を引き起こしますか。また、その理由は何ですか。
A4
アスファルト舗装の方が温度上昇が大きくなります。アスファルトのアルベドはコンクリートのアルベドより小さく、より多くの短波放射を吸収するため、アスファルトの表面温度はコンクリートの表面温度より高くなります。その結果、周辺の大気がより温められ、温度上昇が大きくなります。
Q5
アルベドと熱収支の関係がよくわかりません。
A5
まず、地表面の熱収支は、次の式で表すことができます。
純放射量(qs+qb)=顕熱量(qH)+潜熱量(ql)+地中への熱伝導量(qG)
ここで、qsは吸熱日射量、qbは有効長波放射量を示しています。吸熱日射量は地表面の反射率(アルベド)に左右されます。
レッスン中にて、黒色であるアスファルト系舗装は、アルベドが小さいため、入射した熱の多くは舗装の表面温度を上昇させ、大気を暖めるのに費やすとことが示されています。つまり、アルベドが小さいと純放射量が大きくなり舗装を暖め、その結果アスファルト系舗装では大気を暖める顕熱量(qH)が大きくなります
レッスン4
Q1
アルベドの測定方法はどうしているのでしょうか。
A1
アルベドは短波放射に対する物体表面の反射率のことをいいます。このアルベドを測定する一つにアルベドメーターと呼ばれる測定機器を用いて測定することができます。このアルベドメーターは地表面上の全天日射量と反射日射量から地面の反射率を測定します。センサー部は、上部日射計では全天日射量を測定し、下部の日射計は地表面で反射された日射量を測定します。〔出典:www.weather.co.jpから〕
Q2
密粒舗装と透水性舗装における熱収支の試算例において、熱流とは何でしょうか。
A2
物理学的にエネルギーは高密度から低密度へ流れます。熱伝達に関しても原理は同じで、高温から低温へ流れます。熱流は、ある物体の単位面積を流れるエネルギーを示すものであります。[出典:岩井茂雄/舗装と熱環境、舗装、2001.9]
Q3
密粒舗装と透水性舗装における熱収支の試算例において、熱流が負(マイナス)になる状態がありますが、どのような現象が生じているのでしょうか。
A3
熱流が負(マイナス)の状態は、舗装体内あるいは路床に蓄えてある水分により、大気の熱を吸収することを示しています。[出典:吉田真悟ほか/透水性舗装の熱収支についての基礎的研究、土木学会第44回年次学術講演会、1989.10]
Q4
舗装表面に水が溜った場合の潜熱量の計算方法は自己診断の第4問を見て理解できました。水が舗装表面に溜らない透水性舗装などのような舗装での潜熱量の決定はどのようにすればいいのでしょうか。
A4
レッスン5「熱環境の評価」の5画面目「熱環境の評価2」でも述べたように舗装の空隙内で蒸発が生じている場合は計算により潜熱輸送量(潜熱量)を求めることは難しいため、実験によって蒸発量を測定し、1gの水が蒸発する時に、2.45Jの気化潜熱が生じることを利用して、潜熱量を求める必要があります。また、潜熱量以外の他の熱量が全て求まっている場合は熱収支式を用いて、潜熱量qlを推定することも行われています。
レッスン5
Q1
人体からはどのように熱が放出しますか。
A1
(1)汗の蒸発(気化熱)
(2)風の対流による熱の伝達
(3)人体の表面からの熱放射
Q2
走ると暑くなるのはなぜですか。
A2
体内で生産されたエネルギーは結局熱として放出されます。これを代謝熱といいます。走ると休息時より多くのエネルギーが消費されるので、より多くの熱を放出することになり、暑く感じるのです。
Q3
人間の感じる快適、不快を示す熱環境指標にはどのようなものがありますか。
A3
人間の感じる快適、不快を示す指標として次のようなものが挙げられます。
(1)不快指数(DI):湿度の評価
(2)有効温度(ET)
人間の感じる温熱感を気温、湿度、風の3要素を組み合わせて気温の単位で表したもの。ヤグローが提案。
(3)新有効温度(ET*)
ヤグローのETでは評価されなかった人間の皮膚感覚を含めて総合的に評価するもの。
レッスン6
Q1
透水性舗装の問題点は何ですか。
A1
以下のような問題点を挙げることができます。
・通常のアスファルト舗装やコンクリート舗装に比べると強度が若干弱いこと。しかし、強度が改良されたアスファルトを用いることで問題を克服できるようになってきています。
・長時間経過すると表層が砂や土粒子、タバコの吸殻やチューインガムなどにより目詰まりを起こし、透水性が低下すること。
・浸透基盤のもつ貯留量に限界があるため、十分な貯留量確保のための厚さを確保する必要があること。
Q2
透水性舗装が適している設置場所にはどのようなところがありますか。
A2
歩道、駐車場、公園、工場内敷地や学校のグラウンドなどが挙げられます。さらに交通量の比較的少ない生活道路などにも利用されているのに加え、交通量の多い車道への適用も徐々に進んでいます。
Q3
緑地と透水性・保水性舗装では、熱収支にどのような違いがありますか。
A3
地表面の熱収支は次式で表されます。
純放射量(qs+qb)=顕熱量(qH)+潜熱量(ql)+地中への熱伝導量(qG)
緑地では樹木や草本等の蒸発散により、潜熱量が卓越し、正味放射量の6〜8割を占めるといわれています。透水性舗装では、舗装体内または路床に蓄えられている水分により気化熱が奪われ、やはり潜熱輸送量が卓越しますが、純放射量に対する割合は緑地のほうが高いのです。また、アルベドの違いから、純放射量そのものは緑地のほうが大きいという違いがあります。
Q4
透水性舗装の目詰まり対策にはどのようなものがありますか。
A4
透水性舗装に圧力水(約30気圧)をかけ、目詰まり物質(土砂やゴミなど)を浮上させて除去する方法が最も効果があるといわれ、現在東京都などではこの方法による透水性舗装の洗浄を行っています。
レッスン7
Q1
なぜ、熱電素子による路面発電システムを採用すると舗装面の温度低下を図ることができるのでしょうか。
A1
熱電素子の発電機能により路面に供給される太陽熱エネルギーを電気へ変換する(ゼーベック効果)とともに、熱電素子のヒートポンプ機能(ペルチェ効果)により路面に供給された太陽エネルギーを地中へ移動させることによって舗装面の温度を下げることができます。
Q2
掘削杭熱交換方式(BHES)と貯水槽集熱方式(RHCS)の違いはどこにありますか。
A2
いずれの方法も自然エネルギーを有効利用した方法です。掘削杭熱交換方式(BHES)は、舗装体内に水が循環できるパイプを埋設された無散水融雪舗装体と地下に埋設された熱交換杭から構成され、夏は熱交換杭で熱を地中に放出し冷水にした後、無散水融雪舗装体で熱エネルギー交換を行い舗装体の熱を吸収し、冷却します。冬は地中の熱を舗装体の中で放出することによって温度を上げ融雪する方法です。
一方、貯水槽集熱方式(RHCS)は、無散水融雪舗装体はBHESと同様ですが、熱を地下に埋設された貯水槽と周辺地盤との熱移動によって夏は舗装体の冷却、冬は舗装体の温度を上げ融雪します。
Q3
ヒートアイランド現象の増加を防ぐにはどのようにしたらよいでしょうか。
A3
熱電素子で構成された路面発電システムや地中熱利用による路面温度制御システム用いた熱交換機能を備えた舗装体により自然エネルギーを有効利用し、都市部の熱環境の改善を図ることによってヒートアイランド現象の増加を防ぐことができます。
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