レッスン1
Q1.利用できる水が一滴とはどのような根拠からですか。

Q2.平成9年度統計では、一人あたり一日324リットルの生活用水を使用しているそうですが、生活用水とはどのような用途 の水をいうのでしょうか。

Q3.現在、水あらそいが原因で国際紛争になっているのは、どのような地域がありますか。

Q4.日本人の生活用水の使用量は、50年前には250リットル、現在324リットルといわれていますが、この変化の様子を教えてください。

Q5.地下水をくみ上げることで発生している地盤沈下とは、どのような問題ですか。

Q6.WWFとはどのような会議ですか。


レッスン2
Q1.農業用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。

Q2.生活用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。

Q3.工業用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。

Q4.発電用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。

Q5.この狭い国土に、すでに2,700ものダムがあるとのことですが、まだダム建設は必要ですか。

Q6.ダムをつくっても土砂がたまってしまうので、すぐに使えなくなるということはありませんか。

Q7.ダムをつくって水を貯めてしまうと、河川を流れる水の量が減ってしまいますが、問題はないのでしょうか。

Q8.地下水は夏冷たく、冬温かいので、生活用水としてもっと利用した方がよいのではないですか。


レッスン3
Q1.下水処理水の再利用が向上しない理由に、経済性が大きく影響していますが、どのような状況なのですか。

Q2.良好な水環境の創出には、どのような技術開発が必要ですか。

Q3.開放系水循環にとって現時点で必要な技術にはどのようなものがありますか。

Q4.暮らしの中で、再利用水が何処で使用されているか分かりますか。

Q5.我が国の下水道普及率が低いのは何故でしょうか。

Q6.循環型社会形成に向けて、具体的にどのような施策が展開されているのでしょうか。

Q7.水環境マスタープラン及び水循環マスタープランには、どのような事項が盛り込まれ、どのようなプロセスを経て実行されて行くのでしょうか。

Q8.画面13にある、水環境創造事業の内、「ノンポイント汚濁負荷削減型」について説明してください。

Q9.下水道処理人口普及率と下水道普及率の違いは何ですか。


レッスン4
Q1.国技館以外ではどんなところで雨水利用がされているのですか。

Q2.都市の雨水の不純物にはどのようなものがありますか。また、不純物を除去する代表的な方法を教えてください。

Q3.日本ではどこに淡水化プラントがありますか。

Q4.世界の淡水化施設の処理能力について教えてください。

Q5.アラル海はなぜ消滅の危機にさらされているのですか。


レッスン5
Q1.給水管の修理件数が9割以上とありますが、他には何があるのですか。

Q2.漏水発見技術の現状はどうなっていますか。

Q3.漏水防止対策の現状はどうなっていますか。

Q4.家庭での節水によって、どのぐらいのCO2排出量の削減効果があるのですか。

Q5.カリフォルニア州の水教育財団の具体的な活動はどのようなものですか。

Q6.ここで取り上げられた節水技術以外に、何か節水技術はありますか。


レッスン6
Q1.水利権とはどのような権利をいいますか。

Q2.渇水の現状はどうなっていますか。

Q3.配水調整システムの課題としては、どのような事項があげられますか。

Q4.水利権は河川法ではどのように定義されていますか。


レッスン7
Q1.海外の地下ダム施工事例にはどんなものがありますか。

Q2.なぜ、地下ダムは宮古島をはじめとする南西諸島で多いのですか。

Q3.空洞探査技術にはどんなものがあるのですか。

Q4.地下ダムを計画するとき、調査しなければいけない項目には何があるのですか。

Q5.止水壁施工の鉛直精度が問題視されていますが、精度が悪いとどのようなことが問題になるのですか。



レッスン1
Q1
利用できる水が一滴とはどのような根拠からですか。


A1
地球上の全ての水を風呂桶一杯(3リットル程度)と考えれば、比較的簡単に利用できる河川や湖、沼の水を合わせた割合0.01%は0.3cc程度に相当します。このことから、われわれが使用できる水は少ないことが実感できるのではありませんか。

Q2
平成9年度統計では、一人あたり一日324リットルの生活用水を使用しているそうですが、生活用水とはどのような用途の水をいうのでしょうか。


A2

図:用水の種別  出典:「日本の水資源」国土庁

Q3
現在、水あらそいが原因で国際紛争になっているのは、どのような地域がありますか。


A3
水争いはわが国にも昔からあります。農業を経済基盤としている国、稲作のように水を多く使用する地域では、水争いは頻繁に起こっています。河川から取水するときには河川に堰を設け、水をせき止めて水位を高くして、周辺の田んぼに水を引き込みます。堰下流には水が流れなくなるので、下流で農業を営んでいる人々は影響をこうむることになります。下流の農民の中には夜間に乗じて堰を破壊して下流へ水を流すこともありました。戦争のときには、ダムや水路を破壊したり、下流への水供給を妨げることが行われます。最近では、チグリス・ユーフラテス川の上流に位置するトルコのダム開発に対して、シリアやイラクは平等な水利用を訴えています。シリアの穀倉地帯では水位が低下するとともに、工場廃水による汚染も進んできました。インドとパキスタンを流れるインダス川は、トンブル運河ダムが紛争の種となっています。政治的に不安定な国を流れる河川が問題となっている一方で、西ヨーロッパではドナウ川などでは国際協力が進められています。
この他にも、南米のCenepa川源流の管理を巡る意見の相違から、1995年にエクアドルとペルーの間で、境界論争と水資源所有の問題が同時に起こり、武力衝突が一部発生しました。境界論争と水資源所有の問題が同時に起こりました。


Q4
日本人の生活用水の使用量は、50年前には250リットル、現在324リットルといわれていますが、この変化の様子を教えてください。


A4
水使用の形態区分では生活用水を家庭用水と都市活動用水に分けています。家庭用水には、飲料水、調理、洗濯、風呂、掃除、トイレ、散水等、家庭で生活する時に使用している水を家庭用水といいます。都市活動用水とは事務所などで使う事業所用水、飲食店・デパートで使うような営業用水、噴水などのような公共用水、家事などに威力を発揮する消化用水などが上げられます。


Q5
地下水をくみ上げることで発生している地盤沈下とは、どのような問題ですか。


A5
高度成長時代の急激な水需要の伸びに水資源開発施設が追いつかず、各地で地下水の汲み上げが行われました。このために地下水位が急激に下がり、堤防などの沈下や地下水の塩水化などが叫ばれるようになってきました。このため、各地で地下水の採取規制や河川水などへの水源の転換を行ってきました。ここ10年から20年の間はだいぶ落ちついてきました。参考として、平成11年度の地盤沈下が軽減してきました。


Q6
WWFとはどのような会議ですか。


A6
1970年代以降、国際社会の環境問題に対する関心が高まり、1977年には国連で水会議が開催されました。1987年には「持続的な開発」の報告書のなかで水問題が国際的問題として取り上げられています。その後もダブリン会議(1992年11月)、リオデジャネイロの「地球サミット」(1992年6月)で、水と環境、淡水資源の確保などが議論され、1996年には世界の水問題の専門家、学会、国際機関が中心となって、世界水会議(WWC:World Water Council)が1996年に発足し、WWCが提案した世界水フォーラムが、1997年のモロッコのマラケシュで1回目 の会議が行われ、63カ国500人が出席しました。以後、3年ごとに開催されています。2003年には日本の京都で行われることになっています。

 

レッスン2
Q1
農業用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。


A1
農業用水の大半を占める水田かんがい用水の需要量は、作付面積が減少しているのにも関わらずそれほど低下していません。この原因として、水路から分水を行うために水位を変更できないこと、水田がより高度に利用されるようになったこと、生産性向上のために面積あたりの使用水量が増加したこと、水質悪化対策等のために用水路と排水路の分離が進み反復利用率が低下したことなどがあげられます。


Q2
生活用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。


A2
生活用水の種類としては、一般家庭用の飲料水、炊事用水、洗面・うがい・入浴用水、洗濯用水、便所の水洗用水、自動車洗浄水、庭の散水などがあり、このほか事務用オフィス、ホテル、飲食店、公衆浴場などの都市活動に使用する水も含まれます。そのため、生活水準の向上や生活様式の変化によって一人あたりの水使用量が増加しています。このような傾向は、これまで水洗トイレの普及等が先行した大都市を中心としたものでした。しかし、中小規模の都市における生活様式や都市活動は大都市と違いがなくなってきており、一人あたりの水使用量の伸びは大都市よりも大きくなっています。


Q3
工業用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。


A3
これまでは、工業出荷額が伸びていたにも関わらず、水の再利用による回収率の増加によって、水使用量の増加は抑えられてきました。しかし、昭和50年代後半から回収率の上昇に頭打ちの傾向がみられます。
また、製造過程がそれぞれ異なるため、数値だけでみることはできませんが、業種による回収率の差が大きく、低い業種では回収率が低下している場合もあります。


Q4
発電用水の問題点としては、どのような事項があげられますか。


A4
石油等の資源の枯渇や地球温暖化などが叫ばれる中、クリーンなエネルギーとして改めて注目される水力発電ですが、全く問題がないわけではありません。まず、大規模水力発電をするためにはダムなどが必要であり、これらの建設に伴う環境面での悪影響が懸念されます。この他の問題点として、大容量発電開発の限界があげられます。これは、まとまったエネルギーを得るために大容量の発電をしなくてはならないにも関わらず、発電に必要な落差等を得られる発電所に適した場所がなくなってきているためです。

Q5
この狭い国土に、すでに2,700ものダムがあるとのことですが、まだダム建設は必要ですか。


A5
一般に、安定した水資源の供給を行うためには、ダム等の貯水容量は大きい方が有利です。日本は地形が急峻で複雑なために、ひとつのダムの貯水容量はアメリカなどに比べてきわめて小さいことは、学習したとおりです。
日本の水資源開発は、10年に1回程度発生するような渇水の時でも安定した供給を可能にすることを目標として進められていますが、実際には、3〜5年に1回程度の頻度で河川の水が足りなくなる恐れがあります。また、水資源開発の目標自体も、欧米のそれよりは低いレベルにとどまっています。
したがって、これからも、自然環境との調和に留意しながら、水の需要に応じたダム開発を進めていくことが必要です。


Q6
ダムをつくっても土砂がたまってしまうので、すぐに使えなくなるということはありませんか。


A6
一般にダムを建設する時には、地質条件等を考えて、あらかじめ100年間に貯水池内にたまると予想される土砂の量(堆砂量といいます)を見込み、それを除いた容量で水資源開発等を行う計画となっています。
もちろん、実際には、この予想よりも多く土砂がたまってしまった事例もあります。土砂の堆積が進むと、本来のダムの機能が損なわれる恐れがあります。また、このほか、山地から海岸にいたるまでの水系全体を考えた土砂の管理という点からも、ダムへの堆砂問題は重要です。
このため、砂を貯めるためのダム(貯砂ダム)を上流につくって貯水池に土砂が流れ込まないようにする方法、貯水池内を浚渫したり掘削したりすることにより土砂を人為的に取り除く方法、排砂ゲートの設置などによりダムから土砂が流れ出しやすくする方法などの対策を実施するようになってきています。


Q7
ダムをつくって水を貯めてしまうと、河川を流れる水の量が減ってしまいますが、問題はないのでしょうか。


A7
生活や生産のために必要となる水を得るために、河川から水を取ることはやむを得ないと考えられます。しかし、河川の水はそのためだけにあるのではありません。水の中あるいは水辺で生活する動植物にとって、河川の水は無くてはならないものです。舟運のためにも河川の水は必要です。河川の水が減ると、地下水が枯れたり、海水が進入してきたりします。水が豊かに流れている景色は、見ているだけで心が安らいだりします。
このように、様々な理由から河川には一定以上の水が流れていることが望まれます。これを維持流量(流水の正常な機能を維持するための流量)と呼んでいます。この維持流量は、その水量が流れていれば良いというものではなく、渇水の時でも最低限確保する必要がある水量という意味です。
水資源開発の計画を策定するにあたっては、河川の維持流量を定め、それを確保したうえで、新しい水利用を行うように考えています。


Q8
地下水は夏冷たく、冬温かいので、生活用水としてもっと利用した方がよいのではないですか。


A8
地下水はたしかに「おいしい水」として、昔から良く利用されているものも多くあります。しかし、地下水を大量に汲み上げてしまうと、地盤沈下が起こったり、湧水が枯れてしまったりするなど、環境面で大きな問題が生じることは、すでに学習したとおりです。
地下水は、河川を流れる水とは違って、地中にしみこんだ水が大変長い年月をかけてゆっくりと移動しながら、地層の間に貯まっているものを汲み上げて利用しているものです。したがって、それがいったん枯れてしまったら、回復するためには再び大変長い年月が必要となります。同様にして、地下水のなかに海水が入り込んで塩水化したり、もっと悪い場合には有毒物質が混じってしまった場合に、もとの良好な水質に回復するのは容易ではありません。このため、地下水を利用するにあたっては、地下水位の変化などをきちんとモニタリングしながら、適正な量を利用するように努めていかなければなりません。

 

レッスン3
Q1
下水処理水の再利用が向上しない理由に、経済性が大きく影響していますが、どのような状況なのですか。


A1
下水道の経営において、維持管理に対する収入源は下水道使用料でまかなわれています。平成10年度の経営状況によると、下水の二次処理までの処理単価で1m3当たり、政令指定都市規模で123円、30万人以上の都市規模で139円となっていますが、使用者から徴収されている使用料単価はそれぞれ、81円、105円程度であり、赤字経営の傾向で一般会計からの補填により運営されています。この様な状況に、更に高度処理施設を設置し、維持管理を加えることとなると、更に処理単価が高騰することとなります。現在の技術レベルと価格体系から高度処理単価として20円〜60円程度加算されることとなります。使用者から下水道使用料を徴収する目的と意義から、使用者負担とする事が適当でないことも言われて、現段階では困難な状況となっています。従って、下水道経営を圧迫する高度処理事業においては、非常に進みにくい状況となっています。この様なことから、高度処理技術の安価な多様化が望まれています。


Q2
良好な水環境の創出には、どのような技術開発が必要ですか。


A2
下水道は都市の健全な発達、公衆衛生の向上および公共用水域の水質保全を図ることを目的に整備が進められてきましたが、今後は、流域の水量、水質、生態系の保全や地域文化の醸成等の観点を含めた総合的な水環境の保全を図る必要があります。そのためには、水環境を構成する様々な要因を把握、評価すると共に、それらの相互関係を解析し、流域に関係する人間を含めた生態系にとって良好となる技術が必要です。設定された良好な水環境を達成するため、生態系に配慮した安価な水処理技術の開発やバイオアッセイやバイオモニタリングによる水質の管理手法、自然浄化作用による浄化機能の応用などの安価な技術開発が必要です。


Q3
開放系水循環にとって現時点で必要な技術にはどのようなものがありますか。


A3
下水道の普及拡大に伴い、水循環の中で下水道を経由する汚水、雨水の量が増大してきており、河川流況の形成やいわゆる開放系循環による水の再利用など、水域の水量・水質管理における下水道の役割が一層高まってきています。また、汚濁負荷の処理技術に関しては、従来の点源負荷処理技術の開発だけでなくノンポイント負荷の効率的な削減技術の開発が必要です。従って、今後は下水処理水や雨水を貴重な水源として捉え、良好な水環境の再生に貢献することが必要です。


Q4
暮らしの中で、再利用水が何処で使用されているか分かりますか。


A4
下水の処理水が再利用されているところを、暮らしの中で見ることが出来るのは、現在のところ極めて希です。まず、一般家庭で使用することはありません。便所の水洗用水などに使用出来ますが、各家庭に給水するためには、水道配管設備と同じようなシステムがもう一種類必要となり、費用の面から現実的ではありません。また、飲料水管との誤接など安全性に問題があります。現在のところ再利用水として活用が見られるのは、レッスンの中にもありましたように、河川への修景用水がほとんどで、看板などに表示が無ければ気の付くことも無いこととなっています。また、まだまだ下水道への認識として、住民感情に「汚い」、「近くにない方がよい」等の意識があるため、あえて公表しないところもあります。飛行場のターミナルビルや比較的大きなビルでは、水洗便所用水として再利用水を活用しています。便器に「この洗浄水は、処理水を再利用しています。」と書かれたり、「この蛇口は飲料用ではありません。」の表示がされていることがあります。いずれにしても、近年、生活範囲のあちこちに見られるようになってきましたが、水の再利用の重要性を、住民の誰もが認識する必要があります。


Q5
我が国の下水道普及率が低いのは何故でしょうか。


A5
我が国の下水道の歴史を振り返ると、本格的に国策として重要視されたのは昭和45年の公害国会以降となっています。明治14年横浜市、明治17年神田に日本で最初の下水管渠が布設され、日本の下水道の幕開けとなっています。日本で最初に「長谷川泰」が、下水道の必要性を唱え、旧下水道法の成立に功労した人となっています。コレラや赤痢が発生し沢山の方々が亡くなることを、家庭からの雑排水やし尿によるものとして早期の対策を必要としていました。下水道の必要性については、下水道先進国と同様な理由であり、着手時期も大差のないこととなっています。しかしながら、戦後において日本経済が急速に発展し、産業活動の活性化、人口の都市集中が進むことにより水需要が拡大し、国の政策が水資源確保となったことにより、下水道より水道施設の普及による安定供給、安全性の確保が重要視され、昭和33年までこの水道重点策が続く事となりました。この影響により下水道建設、普及が立ち遅れ、公害が発生して始めて国民に知らされたものとなり、あわてて各種法整備を行い、現在までの普及発展活動となったものです。諸外国では、この時期、既に主要な都市の整備は完了し、公共用水域の水質保全に寄与することとなっています。


Q6
循環型社会形成に向けて、具体的にどのような施策が展開されているのでしょうか。


A6
下水道が推進する循環型社会形成の施策として、現在実施されていることに次のような事例があります。(1)水環境の改善、省エネルギーに関することとして、閉鎖系循環方式で説明がありましたように、処理水をビルなどの水洗用水や雑用水として利用しています。環境に対して新たな負荷を排出することなく、クローズされた下水処理の系内で循環しています。(2)河川事業との連携の中で、合流式下水道の改善施策として、分流式下水道への改造、余水吐室の改善による汚濁負荷を削減する越流水対策、処理水の高度処理化の推進、下水汚泥の再利用により公共用水域への拡散を防止し、汚濁負荷の低減等が行われています。


Q7
水環境マスタープラン及び水循環マスタープランには、どのような事項が盛り込まれ、どのようなプロセスを経て実行されて行くのでしょうか。


A7
水環境マスタープランは、流域の良好な水環境を設定するために策定します。最終的には流域全体の環境の維持回復の達成を目指すことから、最初に流域内の水量・水質だけでなく、様々な生態系や地域文化の醸成など望ましい水環境を把握する調査が必要となります。それらを踏まえて、流域に関連する人間を含めた生態系にとって、何が良好な水環境であるかを抽出し、現在あるものは維持を、失われ崩壊したものは回復する事を具体的な施策を以て立案して行きます。水循環マスタープランは、流域の良好な水循環を再生するために策定します。河川と下水道の相互連携により、流域内の水収支や水質を総合的に調査し、水循環サイクルの相互関係を把握することとなります。本来あるべき姿を取り戻すために、具体的な施策を以て立案して行きます。現在では、まだ具体的な調査方法や評価方法が確立していませんので、早急に手法の開発が必要とされています。


Q8
画面13にある、水環境創造事業の内、「ノンポイント汚濁負荷削減型」について説明してください。


A8
国土交通省が補助事業として実施する、新世代下水道支援事業制度の採択区分を言います。ノンポイント汚濁負荷とは、非点源汚濁源、非特定汚濁源、面的汚濁源と言われています。工場や事業場は、点源汚濁と言われ、従来より水質汚濁の主要要因と考えられて排水規制も強化されてきました。しかし、最近では降雨時の雨水流出による汚濁が問題となってきました。地表には、降下ばいじん、粉じん、動物の排泄物、落ち葉などあらゆるものが堆積し、降雨は、大気中に浮遊する汚濁物質も含めて一時に洗い出されることとなります。特に、都市域の雨水流出に伴う汚濁負荷は大きいと言われています。こういったノンポイント汚濁負荷を削減しようと取り組む事業を指しています。


Q9
下水道処理人口普及率と下水道普及率の違いは何ですか。


A9
一般的に下水道と呼ばれるものは、下水道法に基づく下水道を言います。国土交通省所管の下水道がそれに当たります。種類としては、公共下水道、流域下水道、特定公共下水道、都市下水路が定義されています。従って、下水道処理人口普及率とは、下水道法に基づく下水道が設定された処理区域に対して、どれだけ普及しているかを人口で評価した数値を言っています。下水道普及率は、下水道法以外の下水道(下水道類似施設と言います。)利用者を含めて、人口で評価した数値を言っています。下水道類似施設には、農業集落排水施設や合併処理浄化槽、コミュニティープラント等があります。

 

レッスン4
Q1
国技館以外ではどんなところで雨水利用がされているのですか。


A1
国技館以外では次の施設にて雨水利用がなされています。
■ 雨水利用の事例
名称 利用用途 雨水利用量
(m3/日)
雨水貯留槽
有効容量
(m3
開始時期
国技館 水洗トイレ用水、
冷却用水
20.9 750 昭和60年1月
東京ドーム 水洗トイレ用水 186.3
(下水の再生水を併用)
1,000 昭和63年3月
福岡電気ビル 水洗トイレ用水、
洗車・散水用水
7.4
(下水の再生水を併用)
1,000 昭和58年4月
福岡ドーム 水洗トイレ用水、
植裁用水
260
(新世代下水道支援事業制度
水環境創造事業水循環再生型
による処理水を併用)
2,900 平成5年4月
ナゴヤドーム 水洗トイレ用水、
植裁用水
36,000
(計画)
1,500 平成9年2月
大阪ドーム 水洗トイレ用水、
植裁用水
28,000
(計画)
1,700 平成9年3月


Q2
都市の雨水の不純物にはどのようなものがありますか。
また、不純物を除去する代表的な方法を教えてください。


A2
都市用水に含まれる不純物は、塩化物イオンと硝酸イオンに代表されます。
塩化物イオンは海水が風によって大気中に吹き上げられて雨に混ざる場合の他、焼却場における塩化ビニルの焼却によって発生する塩化水素を原因とすることもあります。一方、硝酸イオンは化石燃料の燃焼によって発生するNOxを起源としており、自動車の排気ガスなどによって増加します。
雨水の利用にあたって不純物を除去するためには、雨の降りはじめの初期雨水を捨てることが最も効率的です。また、貯水タンクに入った雨水から不純物を取り除く方法としては、ろ過装置を用いる場合もありますが、沈殿槽を設けてオーバーフローした雨水のみを使う方法が一般的です。


Q3
日本ではどこに淡水化プラントがありますか。


A3
日本では次の箇所などで淡水化プラントが稼動しています。
■生活用

運転開始年 設置場所 所属都道府県 淡水化方式 造水能力(m3/日)
原水
昭和42 池島 長崎県 蒸発法 2,650 海水
平成元 宇土市 熊本県 逆浸透法 3,000 かん水
6 春日町 兵庫県 逆浸透法 2,700 かん水
9 沖縄本島 沖縄県 逆浸透法 40,000 海水
12 伊良部島 沖縄県 逆浸透法 4,800 地下水

■工業用
運転開始年 設置者 設置場所 淡水化方式 造水能力(m3/日)
原水
昭和46 住友金属工業 鹿島 逆浸透法 13,600 かん水
49 鹿島石油 鹿島 逆浸透法 5,300 かん水
51 関西電力 多奈川 蒸発法 4,000 海水
63 関西電力 宮津 逆浸透法 3,200 海水
平成7 東北電力 原ノ町 逆浸透法 3,600 かん水


Q4
世界の淡水化施設の処理能力について教えてください。


A4
日本の淡水化施設の造水能力は、1日に13万7千t(H13.3現在)あります。世界では、1日に2,591万t(H11.12現在)の造水能力があり、地域別では中近東が1,247万tと全世界の48%を占めています。また、淡水化方式別では、蒸発法が50%、逆浸透法が45%となっています。


Q5
アラル海はなぜ消滅の危機にさらされているのですか。


A5
アラル海はユーラシア大陸の中央部、カザフスタンとウズベキスタンにまたがる塩湖で、天山(てんしゃん)山脈に源を発するシルダリア川とパミール高原から流れるアムダリア川が流れ込む湖です。
アラル海は、つい最近まで世界で4番目に大きな湖で、湖面の面積では琵琶湖の100倍もありました。ところが1960年以来、周辺の砂漠地帯を綿花や稲の農地にするために農業用水を取水していることが原因でアラル海に流れ込む河川の水量が減り、水面が15メートルも低下、水量でいえば60%以上も減少しました。
湖水が干上がり、アラル海は北部の小アラル海と南部の大アラル海の二つに分かれてしまい、面積も1960年には6万8000平方キロとほぼ北海道ほどの大きさだったのが、1987年には4万1000平方キロと九州ほどに縮小してしまいました。
その結果、漁業は壊滅的な打撃を受け、現在は、数種類の魚がわずかにとれるだけになってしまいました。また、塩害によって植物が育たず、農業生産が激減しています。アラル海では、湖の水が蒸発すると底に真っ白な塩分が残るのですが、この塩分を含む砂が風によって巻き上げられ、広範囲の農業地帯に降り注いでいます。

 

レッスン5
Q1
給水管の修理件数が9割以上とありますが、他には何があるのですか。


A1

東京都の平成11年度の漏水修理実績データによると、管用途別の修理件数は、給水管34341件(97.8%)、配水管762件(2.2%)となっています。よって、9割以上が給水管からの漏水で、残りが配水管からの漏水ということになります。その原因については、本編に示したとおりです。


Q2
漏水発見技術の現状はどうなっていますか。


A2

現在、漏水の発見は、漏水音の検知により行われ、電子式漏水発見器(漏水音を増幅し路上から聴き取る装置)や相関式漏水発見器(管路上の2点での漏水音の到達時間差から漏水位置を判定する装置)などの装置が使用されています。


Q3
漏水防止対策の現状はどうなっていますか。


A3

現在、漏水の予防的対策として、修理箇所以外での新たな漏水の発生(漏水の復元)を未然防止するため、漏水の原因となる経年管等を取替えが実施されています。中でも漏水の大部分は給水管で発生しているため、経年配水管取替や漏水修理の際などあらゆる機会を据えて、公道部から宅地内メータまでの鉛管を耐展性耐食性に優れたステンレス鋼管などへ取替えています。また経年配水管については、材質的に優れたダクタイル鋳鉄管(球状照鉛鋳鉄)への取替が進められています。


Q4
家庭での節水によって、どのぐらいのCO2排出量の削減効果があるのですか。


A4

東陶機器(株)の試算によると、節水器具による節水・環境保全効果として、節水器具や食器洗浄乾燥機等を組み合わせることで、一般家庭において使用水量を約35%削減でき、同時に水まわりからのC02の排出を約25%削減することができます。


Q5
カリフォルニア州の水教育財団の具体的な活動はどのようなものですか。


A5

例えば、
(1)素人向けガイド(節水編)では、節水型のスケーピングの方法として水消費の少ない植物や、庭の地面をできるだけウッドデッキ等で覆い、芝地面積を少なくする「ハード・スケーピング」を推薦しています。
(2)小学校4-6年生向け教材の「カリフォルニア水物語」では、水循環から始まり、家庭内でできる節水方法、毒性物質までの高度な内容を教えています。


Q6
ここで取り上げられた節水技術以外に、何か節水技術はありますか。


A6

ここでは紹介しませんでしたが、今回取り上げた技術以外にも、給水者側の節水技術として「取水制限」「給水制限」等があります。

「取水制限」とは、少雨等により河川流況が悪化した場合やダム等の貯水量が減少した場合に、河川から取水している水道事業者の取水量が制限されることをいいます。東京都においては、利根川水系の河川流況が悪化したり、ダムの貯水量が減少した場合に、取水制限を受けることがあります。(なお、取水制限の実施にあたっては、河川管理者及び河川から取水している者の間で協議が行われ、具体的な取水制限の時期や取水制限量が決定されます。)

「給水制限」とは、取水制限が行なわれた場合に、浄水場等から各家庭へ給水するための水圧を下げたり、水道管のバルブ調整を行うことにより、平常時よりも各家庭へ給水する水量を減らすことをいいます。(なお、東京都の場合、取水制限が行われても、取水制限量が少ない場合には、水運用などのやり繰りや水利用者に節水の協力を要請することで対応し、給水制限を行わない場合もあります。)

 

レッスン6
Q1
水利権とはどのような権利をいいますか。


A1

水利権とは、河川から取水することを認められる権利であり、河川法で規定されている「第二十三条(流水の専用の許可)−河川の流水を専用しようとするものは、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない」許可水利権のほか、慣行水利権等があります。


Q2
渇水の現状はどうなっていますか


A2

日本では、3年〜5年に1度、全国で大きな渇水が発生し、水利用に障害をきたしています。水を効率良く使うためには、節水などの他に、これまでの用途を現実に即して転換し、水の配分を的確に行う施策が必要です。


Q3
配水調整システムの課題としては、どのような事項があげられますか。


A3

水資源に乏しい都市にとっては、積極的な水資源開発と併せて、配水調整システムの活用や雑用水道の普及促進などによる水の有効利用、市民の節水意識向上のための施策の推進など、節水型都市づくりに対する取り組みが、今後の重要な課題となっています。
配水調整システムの面では、現在8割の地区で行っている水圧制御地区の拡大や、機器の拡充などが今後さらなる効率化を図っていかねばならない課題です。さらに、森林の維持・造成による水資源涵養機能の向上など、総合的な施策の展開により、健全な水循環の形成につとめていく必要があります。<p33 土木学会誌 2000年11月号 より>


Q4
水利権は河川法ではどのように定義されていますか。


A4

水利権は河川法で以下の条文(法第二十三、二十四、二十六条等)に規定されています。
(流水の占用の許可)
第二十三条
河川の流水を専用しようとするものは、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。

(土地の占用の許可)
第二十四条
河川区域内の土地(河川管理者以外の者がその権原に基づき管理する土地を除く。以下次条において同じ。)を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
(工作物の新築等の許可)

第二十六条
河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。河川の河口附近の海面において河川の流水を貯留し、又は停滞させるための工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者も、同様とする。(2項から5項省略)

 

レッスン7
Q1
海外の地下ダム施工事例にはどんなものがありますか。


A1

1986年台湾の膨湖島に、堤高24m、総貯水量1,277千m3、流域面積2.14m2のツーカンダムが完成しています。


Q2
なぜ、地下ダムは宮古島をはじめとする南西諸島で多いのですか。


A2

琉球諸島を中心とする南西諸島では年間降雨量は多いものの、河川流量の年間変動が大きく異常気象の影響を受けやすいです。また、琉球石灰岩と呼ばれる非常に透水性が高く大きな空隙を持った地層のため、降雨はこの琉球石灰岩に浸透し、そのまま地下水となって海に流れ出てしまいます。このため地表に河川そのものがなく慢性的な水不足に陥っていました。こういった状況からの脱却を図るため、地下ダムの計画・開発が進められてきました。


Q3
空洞探査技術にはどんなものがあるのですか。


A3

ボーリング調査、弾性波探査、電気探査、微重力探査、ボアホールカメラ等。
弾性波探査とは、地下を伝わる弾性波が剛性や密度の異なる境界で屈折や反射する現象を利用して、地下構造を調査する手法です。
電気探査とは、地盤の電気的性質を測定し、地盤物性を把握する代表的な物理探査手法です。
微重力探査とは、高精度の重力計を利用し、微少な重力の違いを精密に測定し、地下の密度差を推定する手法です。
ボアホールカメラとは、テレビカメラによるボーリング孔内を直接監視するシステムです。


Q4
地下ダムを計画するとき、調査しなければいけない項目には何があるのですか。


A4

地上のダムの場合は、ダムサイト候補地をまず地形図から選定し、さらに現地踏査等を行うことでかなりの段階まで計画を具体化することが出来ます。しかし地下ダムの場合は地上のダムの地形図に相当するものが、難透水性基盤層の等高線図(基盤等高線図)で、これは多数のボーリング調査を行うことによって作成されます。また帯水層の貯留率・透水係数、水文状況等を把握することも不可欠であるため、水門地質予察調査、地下水調査、水文気象調査等のかなり詳細な調査も必要となります。他にも、地下ダムによる新たな地下水の貯留にともなって権利調整方法についても検討が必要であるため、社会条件調査を行います。
水文地質予察調査では、地形図、地質図、湧水・井戸資料等の既存資料を収集し、現地調査を行い、対象地域の地質を水文地質学的な特性に基づき、貯留層と基盤層に区分し、地下谷の位置及び規模を概定します。地下水調査では、地下水面の形状、変動状況を空間的、時系列的に把握し、地下水の水質についても調査します。
水文気象調査では、降水量及び蒸発散量について資料収集及び観測を行います。また必要に応じて、地表流出率測定のための流量観測を行います。社会条件調査では、土地利用現況、表流水・地下水利用現況及び関係諸法令規制状況等の調査を行います。


Q5
止水壁施工の鉛直精度が問題視されていますが、精度が悪いとどのようなことが問題になるのですか。


A5

鉛直精度が悪い場合、孔底付近で止水壁の連続性が保たれない、または所定の透水係数が確保されないなどの問題が発生します。この場合、施工位置をずらし再削孔を行う必要があるため、施工費用や施工期間を増大させます。そのため、止水壁施工の鉛直精度を上げることが重要な課題としてあげられています。