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レッスン1
Q1.関東大地震と兵庫県南部地震の主な相違点は何ですか。
Q2.静的耐震設計法の問題点とは何ですか。
Q3.弾性耐震設計法の問題点とは何ですか。
Q4.社会基盤施設の復興過程において、どのような取り組みがなされましたか。
Q5.液状化対策にはどの様な方法がありますか。
Q6.阪神大震災における被害を受け、今後の土木構造物の耐震性を向上させるための基本方針として土木学会が行った提言はどの様なものですか。
Q7.第3世代の耐震技術へ向けてどのような取り組みがなされていますか。
レッスン2
Q1.フーリエスペクトルと応答スペクトルの違いは何でしょうか。
Q2.なぜ最大加速度だけでは地震動の持つ破壊力を評価できないのでしょうか。
Q3.気象庁の震度と最大加速度およびSI値にはどのような関係があるのでしょうか。
Q4.震度法と地震時保有耐力法の違いはどのような点ですか。
Q5.(地震時の)せん断破壊と曲げ破壊の違いは何でしょうか。
Q6.耐震設計上どのような破壊形式が望まれますか。
レッスン3
Q1.災害情報管理に使われる先端技術にはどのようなものがありますか。
Q2.災害時に都市インフラの相互影響を容易に解消できなかった原因として、どのようなことが考えられますか。
Q3.なぜライフラインの分散化が必要なのですか。
Q4.マスメディアに対するクライシスコミュニケーションによる対応としては、どのようなことが考えられますか。
Q5.「一見、防災とは無関係な地域活動」とは、具体的にどのような活動ですか。
レッスン4
Q1.レベル2地震動の設定手順はどの様なものですか。
Q2.兵庫県南部地震の被害から、耐震設計に際しての留意事項として得られたものは何ですか。
Q3.内陸型地震にはどのような特徴がありますか。
Q4.性能設計における耐震設計の基本とも言うべきものはありますか。
Q5.地震防災対策特別措置法はどういう法律ですか。
Q6.道路の属性はどのように分類されますか。
レッスン5
Q1.レベル1、レベル2地震動は各種設計基準類でどのように定義されているのでしょうか。
Q2.岸壁などの港湾施設の変形照査に用いる地震応答解析とは、具体的にどのような解析ですか。
Q3.鉄筋コンクリート柱の耐震補強に、帯鉄筋の増設や鋼板巻き立てが行われるのはなぜですか。
レッスン6
Q1.鋼板巻き立て工法や炭素繊維巻き立て工法には、どのような補強効果がありますか。
Q2.施工技術の改善例ではどのような点が改善されましたか。
Q3.防災システムには、なぜ、「平常時から使用されること」が求められるのですか。
レッスン1
Q1
関東大地震と兵庫県南部地震の主な相違点は何ですか。
A1
1923年に発生した関東大地震は、相模湾北部を震源とするマグニチュード7.9、震度6のプレート境界型の地震です。地震の規模は極めて大きいが、震源は深いという特徴があります。これに対して、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、兵庫県淡路島北淡町の野島断層を震源としたマグニチュード7.3、震度7の、内陸直下型の地震です。この地震の地震規模は関東大地震に及ばなかったものの、震源深さが浅いため、地表面の地震動が強く、地震破壊力が大きいことが特徴です。
Q2
静的耐震設計法の問題点とは何ですか。
A2
本来、地震時における構造物の挙動は動的であり、その応答値は地盤震動特性のほかに、構造物そのものの動的応答特性や減衰特性等にも依存します。しかし、地震動の特性が十分に解明されていないことや、動的解析が煩雑であることなどが原因で、耐震設計の簡略法として静的設計法が長期間に使われてきました。この設計方法の問題点は震動が複雑な構造物の地震応答を精度よく推定できないことです。
Q3
弾性耐震設計法の問題点とは何ですか。
A3
弾性耐震設計法は地震時における構造物の応答が弾性域にとどまることを前提した耐震設計方法です。この設計法には主に二つの欠陥が考えられます。一つは大規模地震時の耐震設計では、発生応力度を材料の弾性範囲内に抑えるために、必要な部材断面や必要鉄筋量が大きくなり、不経済な設計となることです。もう一つは、設計荷重を越えるような巨大な地震力が作用した場合、材料の塑性化に伴う構造物の地震応答の変化が、構造物の崩壊をもたらす場合があることです。
Q4
社会基盤施設の復興過程において、どのような取り組みがなされましたか。
A4
復興過程においてなされた取り組みの内容は、そのまま次の時代の耐震技術へ向けて、現段階でのベストの方策を模索するものでした。復旧のための構造設計に直下地震による震源断層近傍の地震動を考慮すること、高架橋の再建において多スパン連続構造の全体系を構造システムとして設計すること、港湾の復興において耐震岸壁を戦略的に配置することなど、多くの意欲的な技術的試みと、そのための意志決定がなされました。
Q5
液状化対策にはどの様な方法がありますか。
A5
地盤の液状化に起因する構造物の被害を防止または軽減するために実施する対策です。
(1)地盤を改良して液状化の発生そのものを防止、軽減する対策。
(2)液状化が発生しても被害が生じないように構造物側で基礎の補強、構造形式の変更等を行う対策。
(3)液状化の影響の少ない位置に構造物を変更する対策
の3種類に大別されます。
地盤改良による液状化対策には、締め固めにより地盤の密度を増加させる工法、透水性の高い材料を地盤中に設置することにより過剰間隙水圧の消散を促進させる工法、セメント等を混入して地盤を固結させる工法、液状化の生じない土に置換する工法、地下水位を低下させて地盤の飽和度を低下させると共に地盤中の有効応力を増加させる工法、剛性が高い社水壁で地盤を区切ることにより地盤のせん断変形を抑制する工法等があります。
構造物側での液状化対策には、液状化の影響を考慮して杭基礎を補強する対策(液状化対策杭)、構造物の周辺地盤を矢板等で締め切ることにより液状化した地盤の変位を抑制する対策、地中管路の継手を可とう性として液状化した地盤の変位を吸収する対策等があります。構造物の位置を変更する液状化対策には、地中管路の埋設位置を液状化の生じない土層に変更する対策、ガス・電気・水道等のライフライン施設のネットワークを複数化し、一部が液状化による被害を受けても全体としての機能低下を最小限にとどめる対策等があります。
Q6
阪神大震災における被害を受け、今後の土木構造物の耐震性を向上させるための基本方針として土木学会が行った提言はどの様なものですか。
A6
阪神大震災の後、土木学会では土木構造物の耐震性を向上させるための基本方針として、以下の提言を行いました。
(1)2段階の地震動に対する耐震設計
(2)性能規定型耐震設計法
2段階の地震動を考慮した設計法とは、従来の耐震設計で考慮してきた設計地震動(レベル1地震動)に加え、発生頻度は低いですが兵庫県南部地震のような強地震動も考慮して構造物の耐震性を照査しようとするものです。
性能規定型設計法は、設計で想定する地震動に構造物が遭遇した場合に地震中および地震後に構造物が保有すべき性能(機能)をあらかじめ定め、この性能を満足するように構造物の損傷程度や残留変形量を許容される範囲に収めるようにするものです。
これらは1995年7月に改訂された「防災基本計画」にも採用され、構造物の耐震設計に関する国の基本方針となったと考えることができます。
さらに、震災後、多くの土木構造物の耐震設計基準が改訂されましたが、そのほとんどにおいて2段階の設計用地震動が採用され、構造物の重要度と地震動レベルに応じた耐震性能が規定されました。
レッスン4において、より詳細に学習できます。
Q7
第3世代の耐震技術へ向けてどのような取り組みがなされていますか。
A7
土木学会では1995年5月と1996年1月に土木学会提言を行い、その方向を指し示しています。その後の社会基盤施設の耐震基準改訂においても、直下地震による地震動評価の枠組み、ライフラインの地震防災における構造設計とシステム設計の統合、性能指向型設計への方向付けなど共通基盤としての役割を果たしています。
レッスン2
Q1
フーリエスペクトルと応答スペクトルの違いは何でしょうか。
A1
フーリエスペクトルは、時刻歴波形を調和波(フーリエ級数)に分解したものであり、時刻歴波形の周波数特性を見ることができます。一方、応答スペクトルは、ある地震動入力に対し、固有周期が種々異なる1自由度構造系の最大(加速度、速度、変位)応答を示したものです(詳細は、例えば「大崎順彦:地震動のスペクトル解析入門」参照)。
Q2
なぜ最大加速度だけでは地震動の持つ破壊力を評価できないのでしょうか。
A2
地震時に構造物には慣性力が作用することから、地震動の持つ破壊力を評価する上で加速度は重要な指標です。しかし、地震動の持つ破壊力を評価するには、瞬時に作用する加速度だけでは十分ではありません。また、構造物の固有周期とかけ離れた周波数特性を持つ大きな地震動(加速度)が作用しても構造物は応答しません。従って、構造物の周期特性を勘案し、特定した周波数帯域でのスペクトル強度を包括した応答スペクトル、SI値、実効加速度などの指標により評価することが望ましいはずです。
Q3
気象庁の震度と最大加速度およびSI値にはどのような関係があるのでしょうか。
A3
厳密に対応させることはできませんが、概ね以下に示すとおりです。
|
震度階級 |
最大加速度(gal) |
SI値(kine) |
|
震度4 |
40〜 110 |
4〜10 |
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震度5弱 |
110〜 240 |
11〜20 |
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震度5強 |
240〜 520 |
21〜40 |
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震度6弱 |
520〜 830 |
41〜70 |
|
震度6強 |
830〜1500 |
71〜99 |
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震度7 |
1500〜 |
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出典:http://www.nilim.go.jp/japanese/database/nwdb/html/how-to-use.htm
Q4
震度法と地震時保有耐力法の違いはどのような点ですか。
A4
震度法は、構造物の弾性域の振動特性を考慮して地震による荷重を静的に作用させて設計する耐震設計法です。これに対し、地震時保有水平耐力法は、構造物の非線形域の変形性能や動的耐力を考慮して地震による荷重を静的に作用させて設計する耐震設計法です。
Q5
(地震時の)せん断破壊と曲げ破壊の違いは何でしょうか。
A5
せん断破壊とは、地震によって部材に発生するせん断力がその保有せん断耐力を超えることによる破壊です。せん断破壊の場合、破壊までの変形が小さく、ねばりが乏しい脆性的な破壊形態となります。一方、曲げ破壊とは、地震よって部材に発生する曲げモーメントがその保有曲げ耐力を超えることによる破壊です。曲げ破壊の場合、一般に破壊までの変形が大きく、ねばりがあるのが特徴です。
Q6
耐震設計上どのような破壊形式が望まれますか。
A6
大地震が生じた場合は、構造部材が非線形域に入っても適切なねばりを持たせ、エネルギー吸収性能を高めることにより構造部材に生じる損傷を限定された範囲にとどめることが重要です。従って、耐震設計では、一般にせん断破壊先行型より曲げ破壊先行型となるように設計することが望ましいと言えます。
レッスン3
Q1
災害情報管理に使われる先端技術にはどのようなものがありますか。
A1
災害情報管理に使われる先端技術として、ネットワーク通信技術のほかに、GPS(人工衛星を使った位置確認システム)やGIS(地理情報システム)、センシングシステムなどがあります。
Q2
災害時に都市インフラの相互影響を容易に解消できなかった原因として、どのようなことが考えられますか。
A2
道路や電力などの都市インフラは、それぞれ異なる監督官庁・事業主体によって運営されています。このため、市や町または県の地震対策本部が都市インフラの被災と復旧の状況を一元的に把握できなかったことが、都市インフラの相互影響を容易に解消できなかった原因の一つと考えられます。
Q3
なぜライフラインの分散化が必要なのですか。
A3
都市ライフラインはネットワークシステムで機能しているため、1カ所の破損により連鎖的な被害が拡大することになります。阪神大震災時に、関西全域を覆うガスや電力の機能が停止したことによって、自律分散型システムの構築の必要性が議論されましたが、現状のシステムを根本的に変更することは容易ではありません。このため、ガスや電力では、きめ細かいブロック化供給システムに作り替えることで、自律分散型システムの概念を取り入れようとしています。
Q4
マスメディアに対するクライシスコミュニケーションによる対応としては、どのようなことが考えられますか。
A4
マスメディアに対する窓口の一本化、災害対策本部や避難所での自由な取材の禁止やそれに代わる情報提供の場の設定などが考えられます。
Q5
「一見、防災とは無関係な地域活動」とは、具体的にどのような活動ですか。
A5
地域防災を直接の目的に掲げた活動ではなく、地域住民とボランティアによる「街の気になるポイントマップ」の作成などといった地域活動です。このような防災と直接は無関係な地域活動を楽しむ中で、参加者は地域を語り、防災について考え、最終的には、意図せざる結果として、地域への愛着と防災への関心を向上させています。
レッスン4
Q1
レベル2地震動の設定手順はどの様なものですか。
A1
まず、対象地点に最大級の地震動強さを及ぼす可能性のある震源断層を、過去の地震記録や最近の活断層調査結果をもとに選定します。次にその破壊メカニズムを想定して、地震動を適切に評価します。評価方法としては大別して、経験的手法、半経験的手法、理論的手法の3種類がありますが、それぞれの長所や短所を十分に理解して適用する必要があります。
Q2
兵庫県南部地震の被害から、耐震設計に際しての留意事項として得られたものは何ですか。
A2
耐震設計に関し、兵庫県南部地震から得られた知見としては以下のものが上げられます。
・内陸型地震によって発生する大地震動を考慮すること
・部材の安全性評価においては破壊モードを考慮すること
・主要な部材にはせん断破壊を生じさせない
・応答値の算定にあたっては、表層地盤の動的性質を考慮すること
・構造物の動的解析を行うこと
・構造物の持つ変形性能を評価し、損傷は許容するが破壊しないことを基本とする設計
Q3
内陸型地震にはどのような特徴がありますか。
A3
プレート境界地震に対し、プレート内部でもひずみが蓄積され地震が発生します。これはプレート内地震と呼ばれ、内陸で発生する浅い地震すなわち内陸型地震はこのタイプに属します。一般に内陸型地震の規模は、プレート境界地震に比べて小さいですが、都市近くで発生する直下型地震の場合には大きな被害をもたらすことがあります。さらに、1995年兵庫県南部地震のように、発生頻度が非常に低い数百年の再現期間の直下型地震の場合には、継続時間は短いですが極めて大きな地震動が生じて大災害をもたらす可能性があります。
Q4
性能設計における耐震設計の基本とも言うべきものはありますか。
A4
地震動によって生ずる構造物の応答値は動的解析を用いるのが基本です。この場合、構造物を構成する部材の非線形性を考慮する必要があります。そして動的設計の手法は性能設計の考え方にもとづき各種の手法を用いることが可能です。その基本として例を以下に示します。
(1)FEM等に代表される地盤と構造物を一体としてモデル化し、基盤地震動を用いて動的解析を行う方法
(2)基礎を支持バネに置換したモデルに地表面の地震動を作用させて動的解析を行う方法
(3)非線形応答スペクトルを用いる簡易な方法
これらは土木学会の「土木構造物の耐震基準等に関する提言」に沿ったものです。
Q5
地震防災対策特別措置法はどういう法律ですか。
A5
1995年兵庫県南部地震を契機に定められた法律です。この法律では、地震防災対策を図り、社会の秩序と公共福祉の確保を目的とし、地震防災緊急事業5ヶ年計画とこれに基づく事業に関わる財政上の特別措置および地震に関する調査研究体制の整備等を定めています。
Q6
道路の属性はどのように分類されますか。
A6
地震被害がもたらす機能支障を抑制する観点から、広域幹線道路、緊急輸送道路、一般道路等のように道路の属性が分類されます。
レッスン5
Q1
レベル1、レベル2地震動は各種設計基準類でどのように定義されているのでしょうか。
A1
代表的な下記3つの設計基準を紹介します。
(1)「港湾基準」
レベル1地震動:再現期間75年の期待地震動
レベル2地震動:再現期間数百年の期待地震動、プレート内地震動、あるいはプレート境界地震動
(2)「鉄道標準」
L1(レベル1)地震動:構造物の設計耐用期間内に数回程度発生する確率を有する地震動
L2(レベル2)地震動:構造物の設計耐用期間内に数回程度発生する確率は低いが非常に強い地震動
(3)「道路橋示方書」
※レベル1、レベル2地震動の用語は使われていません。
(レベル1地震動):橋の供用期間中に発生する確率が高い地震動
(レベル2地震動):橋の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地震動
タイプ汳n震動:プレート境界型の大規模な地震
タイプ地震動:兵庫県南部地震のような内陸直下型地震
Q2
岸壁などの港湾施設の変形照査に用いる地震応答解析とは、具体的にどのような解析ですか。
A2
地震後に残留する変形が問題となり、変形照査は非線形(弾塑性)解析として行う必要があります。解析は岸壁と背面地盤を対象としますが、土構造物の非線形解析は、土粒子骨格(固体相)のみの剛性低下を考慮する全応力解析と、間隙水(液体相)の水圧上昇も併せて考慮する有効応力解析(二相系の解析とも呼ばれている)があります。港湾施設では地下水位が高く、阪神大震災でも液状化が問題となったように、港湾施設の変形照査は、一般には間隙水圧の上昇を考慮した有効応力解析として実施することになります。
Q3
鉄筋コンクリート柱の耐震補強に、帯鉄筋の増設や鋼板巻き立てが行われるのはなぜですか。
A3
阪神大震災でも被害が生じた鉄筋コンクリート柱の多くは、曲げ耐力に比してせん断耐力が不足しており、せん断破壊が先行しました。帯鉄筋の増設や鋼板巻き立てによりせん断耐力が向上し、曲げ破壊先行型の構造とすることができます。せん断破壊では破壊までの変形が小さくねばりが乏しい脆性的な破壊となるのに対し、曲げ破壊では一般に破壊までの変形が大きく、エネルギー吸収を期待することができ、柱に生じる損傷を小さくすることができます。帯鉄筋の増設や鋼板巻き立てによる耐震補強の目的は、変形性能を向上させることです。
レッスン6
Q1
鋼板巻き立て工法や炭素繊維巻き立て工法には、どのような補強効果がありますか。
A1
鋼板巻き立て工法は、既設橋脚や柱の表面に鋼板を巻き立てることにより、既設構造物のせん断耐力、曲げ耐力、じん性を向上させる補強工法です。柱基部等において、曲げ耐力の向上を図る場合には、アンカー筋を通じて鋼板をフーチングへ定着する必要があります。また、炭素繊維巻き立て工法は、鋼板の代わりに既設構造物の表面に炭素繊維シートを巻き付けることにより、鋼板巻き立て工法と同様な補強効果を期待することができる補強工法です。
Q2
施工技術の改善例ではどのような点が改善されましたか。
A2
地盤改良では、通常は仮設に利用される施工法を本復旧に採用したため、信頼性確保のための材料管理や施工管理が改善されました。また、大口径の高圧噴射注入工法や、改良したい対象層のみ改良できる高圧噴射注入工法などが実用化されています。
鋼板巻き立て工法では、現場溶接が風雨により中断されることを解消できる機械式継手が開発され、施工能率の向上に役立っています。炭素繊維補強では、壁が取り付いた柱などの定着に苦労した経験から、繊維の端を広げて小さな貫通孔を通して定着する工法が開発されています。
鉄筋構造物のじん性確保の必要性から、鉄筋量が震災前に比べて多くなり、主筋ピッチも狭く、特に幅止め筋やスターラップなどの補強筋の組立てに苦労します。180°フックのせん断補強筋の組立ては困難を極めるため、端部をボタン型に工場加工した鉄筋も開発されました。
Q3
防災システムには、なぜ、「平常時から使用されること」が求められるのですか。
A3
防災関連システムの基盤となる情報は、地域の地理情報です。この地理情報データは、システム使用時(緊急時)に更新されている必要があります。一方、このデータが日々更新されることは、平常業務でも要求されることで、平常時から使用しているシステムを緊急時にも使うことができれば、データは平常業務の中で常に更新されていることになります。
また、自治体における業務を分析すると、緊急時の業務は、平常時の業務と内容的にはほとんど変わらず、その量と組み合わせに違いがあるという結果が得られます。
したがって、特別な防災システムを導入するのではなく、平常時に使用する基本機能を柔軟に組み合わせることで、緊急時にも対応可能であることが求められます。
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