■1. 大地をめぐる環境問題のあらまし■

Q1.日本で地下水はどれくらい使われていますか?

Q2.生活環境の影響、生態系への影響って何ですか?

Q3.最終処分場が無くなることはないでしょうか?

Q4.なぜリサイクルが必要なのですか?


■2. 土と地下水と汚染物質■

Q5.地下水の流れる速度はどれくらいですか?

Q6.なぜ、粘土鉱物は負に帯電しているのですか?

Q7.土壌と地下水汚染にはどんな特徴がありますか?

Q8.揮発性有機化合物は水に溶けにくいのに、なぜ地下水に溶けて広がるのですか?

Q9.汚染物質の移動や暴露を考慮したリスク評価は一般的にされているのでしょうか?


■3. 土壌・地下水汚染対策■

Q10.土壌汚染状況調査の試料採取は、どのくらいの頻度で行うのですか?

Q11.搬出汚染土壌管理票はどこで入手できますか?

Q12.鉄粉法で用いられる鉄粉は、どのような粉ですか?

Q13.汚染物質を分解する微生物は、日本のどこにでも生息していますか?

Q14.微生物を利用した原位置浄化において、分解後の物質は安全なのでしょうか?

Q15.掘削した汚染土壌をどのような手順で不溶化するのですか?

Q16.地下水汚染の拡大を防止する方法では、どうやって効果を確認するのですか?


■4. 廃棄物の処分■

Q17.廃棄物最終処分場の安定化とは何でしょうか?

Q18.ベントナイトは一般的にどのような用途で使用されているでしょうか?

Q19.地球温暖化に対する影響は、メタンと二酸化炭素ではどちらが大きいですか?

Q20.廃棄物の掘削を実施するときに安全上、気をつけることは何でしょうか。

Q21.廃棄物処分場の跡地利用はどの程度進んでいるのでしょうか?


■5. 土とリサイクル■

Q22.ゴミとそれ以外はどう区別するのでしょうか?

Q23.不法投棄を無くすためにはどうすれば良いのでしょうか?

Q24.建設発生土と建設汚泥の違いはどのような点ですか?

Q25.ジオテキスタイル製の袋とはどのようなものでしょうか?

Q26.リサイクル材は環境に安全なのでしょうか?


■6. 自然の土に含まれる重金属類 ■

Q27.地球の核を構成する元素組成は、どのように調べるのですか?

Q28.なぜ、日本の地殻のヒ素の濃度は高いのですか?

Q29.鉱山跡地では、どのような対策をしているのですか?

Q30.マグロには、どれくらい水銀が入っているのですか?

Q31.建設工事に伴う黄鉄鉱の影響は、酸性水だけですか?


■7. 地球環境問題に貢献する■

Q32.地下水の人工涵養、地下ダムとはどのような技術ですか?

Q33.酸性雨が地盤と植生に与える影響について詳しく教えてください。

Q34.非常に多岐に渡る様々な環境負荷をどのように評価するのでしょうか?

Q35.メタンハイドレートについて詳しく教えてください。

Q36.ヒートポンプによる地中熱利用とはどのような技術でしょうか?



■1. 大地をめぐる環境問題のあらまし■


Q1
日本で地下水はどれくらい使われていますか?


A1
生活用水および工業用水の約25%は地下水に依存しています。この地下水の利用率は地域差が大きく、例えば熊本市、昭島市などは、水道水源における地下水の利用率が100%に達しており、地下水が重要な資源となっています。

Q2
生活環境の影響、生態系への影響って何ですか?


A2
生活環境への影響とは、例えば地下水に臭気や色などがつき飲めなくなるような状況だったり、油まみれの土があり、健康被害はなくても生活上支障が出ることをいいます。
また、生態系への影響とは、土壌中に住む、ミミズやトビムシなどの土壌生物への影響や、食物連鎖を考え、これらの生物を食する猛禽類などへの影響です。

Q3
最終処分場が無くなることはないでしょうか?


A3
最終処分場の残余年数という言葉をお聞きになったことがあると思います。産業廃棄物に関していえば、平成17年度の統計で残余年数は7.7年と計算されています。これは、あと7.7年で産業廃棄物処分場が一杯になってしまいますよ、という意味です。平成2年の統計ではこの残余年数が1.7年しかありませんでした。平成2年の統計で1.7年しか残余がなかったのに、処分場の残余年数はゼロになってないではないか、と不思議に思われるかもしれません。これは、新しい最終処分場が整備されているためです。残余年数が残り数年のギリギリのところで、最終処分場を少しづつ整備して、残余年数がゼロにならないようにしています。一般廃棄物に対しても同様で、年間、最低でも十数箇所の処分場整備が行われています。平成18年度の統計では、一般廃棄物最終処分場の残余年数は15.6年と計算されています。

Q4
なぜリサイクルが必要なのですか?


A4
地球上の限りある資源を有効に使うためにリサイクルします。また、不法投棄によるみなさんの身近な環境への影響をなくすためにもリサイクルは大事です。ただ、リサイクルには経済的な負担も発生しますので、社会全体で取り組む必要があります。



■2. 土と地下水と汚染物質■


Q5
地下水の流れる速度はどれくらいですか?


A5
地下水の流れる速度は、帯水層の透水係数、有効間隙率と動水勾配によって決まるため、一概には言えません。例えば、一般的な日本の砂層を想像して、透水係数を3×10E-3cm/秒、有効間隙率を0.2、動水勾配を1/200とすると、地下水の実流速23m/年となります。
また実際の地盤内では水みちと呼ばれる局所的に水が流れやすい層が存在している場合もありこのような場所では局所的に速度が速くなるケースもあります。

Q6
なぜ、粘土鉱物は負に帯電しているのですか?


A6
粘土鉱物の表面の荷電は、永久荷電、変異荷電の2種類があります。
永久荷電とは、粘土鉱物の表面に存在するSiイオンやAlイオンの一部が、電荷が少ないAlイオンやMgイオンに置換されることで、表面に負電荷が生じるものです。この荷電は、常に負電荷であり周辺の雰囲気等によって変化はしません。
一方、変異荷電は、粘土鉱物の端部において錯体を形成している水素原子と水酸基の荷電不釣合いから生じるものです。変異荷電の正負は間隙水のpHに依存するため、常に負電荷を持っているわけではありません。

Q7
土壌と地下水汚染にはどんな特徴がありますか?


A7
大気や表流水などの環境媒体へ排出された汚染物質は、一般に媒体内での移動速度が速く、拡散速度が速いため、希釈が進みます。そのため、汚染の排出を止めると、媒体内の濃度も低減する傾向にあり、フロー型の汚染、と呼ばれています。
一方、土壌、地下水汚染は、環境媒体内での汚染物質の移動速度が遅く、土壌中にも吸着しやすいため、土壌中に長期間汚染が残ります。そのため、汚染の排出が止まっても、媒体内の濃度が高い状態であるケースが多いことからストック型の汚染と呼ばれています。50年前に浸透した汚染物質が、現在でも表層30cm程度に残存しているケースもあります。

Q8
揮発性有機化合物は水に溶けにくいのに、なぜ地下水に溶けて広がるのですか?


A8
たとえば、トリクロロエチレンで見ていきましょう。
トリクロロエチレンの地下水の環境基準値は、0.03mg/Lです。
一方、トリクロロエチレンの水に対する溶解度 0.11g/100g H2O(25℃)といわれており、重量比で0.1%程度しか溶けないため、難溶性といわれています。しかしながら、これに比重をかけて、環境基準と同じ単位に換算すると1280mg/Lとなり、環境基準と比較すると非常にたくさんのトリクロロエチレンが水に溶けることになります。
つまり、トリクロロエチレンは一般に水には0.1%程度しか溶けず難溶性ですが、環境基準の濃度レベルが水に極めて低いため、地下水にわずかに溶解した成分でも、汚染が発生した、となるのです。

Q9
汚染物質の移動や暴露を考慮したリスク評価は一般的にされているのでしょうか?


A9
アメリカでは、RBCA(Risk-Based Corrective Action)などのサイトごとに環境リスク評価を実施し、浄化目標値を設定するなどの方法が採用されています。また、ドイツやイギリスでは、リスク評価に基づいた土地利用ごとの基準値が設定されています。
一方、我が国では、研究レベル、実務レベルでのリスク評価の研究は複数あり、モデルとしては、産業技術総合研究所のGERASや土木研究所のD-TRANSなどがあります。しかしながら、実際の措置の決定においては、リスク評価に基づく意思決定をしている事例はまだまだ少ないのが現状です。



■3. 土壌・地下水汚染対策■


Q10
土壌汚染状況調査の試料採取は、どのくらいの頻度で行うのですか?


A10
汚染のおそれの区分や有害物質の種類によって、試料採取の頻度は異なります。別表をご覧ください。

Q11
搬出汚染土壌管理票はどこで入手できますか?


A11
搬出汚染土壌管理票は、土壌汚染対策法指定支援法人である(財)日本環境協会の委託により、(社)土壌環境センターで販売しています。詳しくは、(社)土壌環境センターのHP(http://www.gepc.or.jp/manifest/m-info.html)をご覧下さい。

Q12
鉄粉法で用いられる鉄粉は、どのような粉ですか?


A12
鉄粉法では、鉄が汚染物質と直接接触することによって、汚染物質を還元分解します。したがって、浄化効果を高めるために比表面積を大きくした、微細な鉄粉が土壌浄化用として用いられます。その他、浄化効率を高めるために、鉄粉の表面処理等を工夫したり、鉄粉をスラリー状としたりしたものもあります。

Q13
汚染物質を分解する微生物は、日本のどこにでも生息していますか?


A13
日本の土壌には、分解微生物はほぼどこにでもいる可能性があります。しかしながら、土壌条件によっては、生息していなかったり、生息していたとしても分解能力が劣っている場合があります。したがって、生物的処理による浄化を検討する際、浄化対象物質によっては、事前に実際の汚染土壌を用いた室内試験などを行い、その適用性を確認しなければならない場合があります。

Q14
微生物を利用した原位置浄化において、分解後の物質は安全なのでしょうか?


A14
微生物の分解過程では人への健康被害のおそれがある分解生成物が生成されますが、最終的には無害な物質まで分解されます。
例えば、揮発性有機化合物の一つであるテトラクロロエチレンを対象とした原位置浄化では、分解過程で地下水環境基準に規定させたトリクロロエチレンやジクロロエチレンなどの分解生成物が生成されますが、最終的には無害な物質まで分解されます。したがって、原位置浄化を採用した場合は、単に対象となる汚染物質のみの浄化効果を確認するのではなく、地下水中の分解生成物の濃度挙動も監視することになり、これらの物質が全て基準に適合することを確認することで、浄化が完了となります。

Q15
掘削した汚染土壌をどのような手順で不溶化するのですか?


A15
掘削した汚染土壌は、まず定量供給装置に投入され、投入土の重量が自動計測されます。その重量に応じて不溶化剤の添加量を自動設定され、土壌と不溶化剤がミキサーにより混合されます。液系の不溶化剤を用いる場合は、運搬時や埋戻し時における土質強度の確保のため、別途土質改良材を添加混合します。なお、不溶化処理土は、搬出前に所定の品質を確認します。

Q16
地下水汚染の拡大を防止する方法では、どうやって効果を確認するのですか?


A16
地下水汚染の拡大を防止する範囲の周縁に観測井を設置し、定期的に地下水試料を分析することで、対策効果を確認します。なお、土壌汚染対策法の適用を受ける場合は、観測井の設置密度(隣り合う観測井の距離は30m以内)が定められていますので、都道府県等や指定調査機関にご相談下さい。



■4. 廃棄物の処分■


Q17
廃棄物最終処分場の安定化とは何でしょうか?


A17
廃棄物中に含まれる有機物が分解されて浸出水として流れ出るか、ガスとなって放出される現象をいいます。浸出水としては、BOD(生物学的酸素要求量)やCOD(科学的酸素要求量)の濃度が減少していくことで安定化を確認できます。ガスの場合、メタンや二酸化炭素の濃度が減少すると同時に、ガスの発生量も減少していきます。処分場の浸出水として重金属やダイオキシンが問題となる場合がありますが、実際、これらの物質が浸出水から検出されることはめったにありませんし、廃棄物の安定化とは別問題です。全ての廃棄物最終処分場にとって共通の問題となるのはBODやCODといった水質汚濁成分であり、いかに早く濃度を減少させられるか、という点に着目して安定化の促進等の技術導入が行われます。安定化の促進には、覆土の透水性改善や空気を送り込むなどの技術導入が試みられています。日本を代表する埋立技術である準好気性埋立は、BODやCODを迅速に減少させる役割を担っています。

Q18
ベントナイトは一般的にどのような用途で使用されているでしょうか?


A18
最も馴染みのある用途としては、化粧品や猫用トイレ砂などではないでしょうか。粒子が細かく、保湿性を有していることからファンデーションなどに使用されています。また、吸水性が大きいことからペット用のトイレ砂として使用されています。それ以外にも、入浴剤や塗料などの生活用品や工業製品に利用されており、幅広い用途があります。土木用としては、シールドやトンネルの裏込材、ベントナイト泥水、セメントミルク等に用いられています。

Q19
地球温暖化に対する影響は、メタンと二酸化炭素ではどちらが大きいですか?


A19
メタンと二酸化炭素では人為活動由来の排出量が異なり、メタンガスの排出量の割合は、温室効果ガス全体に対して1.8%ですが、二酸化炭素は94.9%です。ただし、同じ濃度が大気中に存在するときの地球温暖化に対する影響はメタンの方が大きく、二酸化炭素の21倍の影響があります。大気中のメタン濃度は1.7〜1.9 ppm、一方の二酸化炭素は350〜370ppmとなっていますので、結果的に、人為的活動から排出される温室効果ガスが地球温暖化へ及ぼす影響は、メタンが20%、二酸化炭素が60%と報告されています。

Q20
廃棄物の掘削を実施するときに安全上、気をつけることは何でしょうか。


A20
廃棄物埋立地盤(廃棄物最終処分場)を掘削するときには、まずガスを注意する必要があります。一般的に廃棄物処分場の中は酸素が無く、嫌気的な状態となっているため、メタンガス(無臭)や硫化水素ガス(低濃度で腐敗臭、高濃度で無臭)が発生しています。メタンガスは爆発性があることから、火花などによって引火することに注意を払わなければなりません。また、硫化水素ガスは腐食性ガスであることから、機器類を腐食して脆弱にしたり、基板類の接点を腐食してしまいますし、人体にとっても有害です。さらに、古い処分場を掘削する場合にはアスベストにも注意が必要です。古い処分場ではアスベストがどこに埋められているか分からないため、知らない間に掘削して大気中に飛散させている可能性があります。そのためモニタリング等が必要にありますが、それと同時に、労働者の安全を守るために必ずマスクをして作業を実施することが必要です。

Q21
廃棄物処分場の跡地利用はどの程度進んでいるのでしょうか?


A21
陸上の処分場に比較して、海面最終処分場の跡地利用の方が進んでいます。東京湾の若洲や岡山県水島ではゴルフ場として、大阪湾夢洲や東京湾14号地などは公園として利用されています。また、古い処分場の跡地には工場や住宅などが建設されている事例もあり、沈下等の問題もなく通常の土地として利用されています。陸上処分場では、公園として利用されていることが多く、野球場や陸上トラック、サッカー場等として地域住民に利用して頂けるような土地利用が進んでいます。これは、「迷惑施設である最終処分場の跡地を価値ある土地資源として有効利用していく」という考え方に則っており、地域との融合を担う大切な考え方の一つとなっています。



■5. 土とリサイクル■


Q22
ゴミとそれ以外はどう区別するのでしょうか?


A22
みなさんが要らないと考えるものはゴミに区別されます。判断が難しい場合は、地方自治体の廃棄物部局が判断を行います。

Q23
不法投棄を無くすためにはどうすれば良いのでしょうか?


A23
不法投棄を無くすために社会全体で取り組む必要があります。法制度の整備はもちろん、不法投棄対策は早期発見と迅速な行政対応による未然防止及び拡大防止が重要であり、特に早期発見については私たち一般市民の協力が不可欠です。

Q24
建設発生土と建設汚泥の違いはどのような点ですか?


A24
土という点は同じで、法律上の取扱いが違うだけです。ちなみに、建設発生土は資源で、建設汚泥はゴミとして法律上は取り扱います。

Q25
ジオテキスタイル製の袋とはどのようなものでしょうか?


A25
ジオテキスタイルは、土木工事に使われる強度の強い織物のことを言います。その織物を使って、重い土を入れても破れることのない袋が作ることができます。その袋を使って建設発生土を有効利用する工法を「エコチューブ(袋詰脱水処理工法)」と言います。

Q26
リサイクル材は環境に安全なのでしょうか?


A26
必ずしも安全とは言えません。今後、リサイクル材を安全に活用するための研究や施策の充実が期待されます。



■6. 自然の土に含まれる重金属類■


Q27
地球の核を構成する元素組成は、どのように調べるのですか?


A27
地球の中心を構成している核(コア)の構造は、外核と内核とに区分されています。これは、地球内部にマントルと核が存在することが判明したのと同様に、地震波を総合的に解析して分かりました。また、核の成分については、直接調べることができないのですが、いん石を調べることによって推定されています。いん石は、太陽系の天体と同じ起源を持つ小惑星が地球に落下するものがほとんどです。隕石には大別して、地球のマントル成分(かんらん岩)に似た岩石質の「石質隕石」と、鉄を主成分としてニッケルが混じった合金である「いん鉄(鉄いん石)」に分類されます。このいん鉄は惑星の核を構成していた物質と考えられています。いん鉄を切断して断面を酸で処理すると、ウィッドマン・シュッテッテン構造という特徴的な構造が見られます。これは金属結晶が肉眼で見えているもので、これだけの大きな結晶は、およそ100万年間で数℃程度という、ごくゆっくりと冷えなければできないものです。したがって、いん鉄はかなり大きな微惑星〜惑星サイズの天体の中央部でできたと考えられています。
(参考)http://research.kahaku.go.jp/department/engineering/3/inseki/koube_inseki2.html

Q28
なぜ、日本の地殻のヒ素の濃度は高いのですか?


A28
ヒ素は、海底に堆積した堆積物、特に粘土やシルトに多く含まれています。日本列島は、太平洋プレートやフィリピン海プレートがもぐり込む場所ですが、このときヒ素の多い海成の堆積物がプレートと共に日本列島の地下深部に移動し、火成活動(マグマ活動)により地殻含まれるという考え方があります。

Q29
鉱山跡地では、どのような対策をしているのですか?


A29
鉱山跡地では、今でも酸性水や重金属類を含んだ水が旧坑道や鉱滓(こうさい)堆積場から発生しているところがあります。これらの場所では、国や鉱山の持ち主により河川への影響を防ぐための対策が継続されています。例えば、旧松尾鉱山では北上川の保全のために今でも大量の坑内水を汲み上げ中和処理を行っています。
(旧松尾鉱山)http://www.jogmec.go.jp/jogmec_activities/mp_control_metal/matsuo_mine/index.html
また、酸性水の中和処理としては、草津温泉の下流にある品木ダムでは吾妻川の保全、玉川温泉の下流にある玉川ダムでは田沢湖の保全として、毎日の河川水に石灰を投入して中和処理を行っています。
(品木川ダム)http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/karakuri/tyuuwa.htm

Q30
マグロには、どれくらい水銀が入っているのですか?


A30
マグロやサメ、キンメダイ等の魚介類には環境中の微生物から食物連鎖を通じて水銀が取り込まれます。厚生労働省による1995年〜2004年の調査結果では、日本人は食生活の中で79.8%(6.72μg/日)を魚介類から摂取しています。過去に行われた調査結果では、国内で流通する魚介類に含まれる水銀含有量の平均値は、クロマグロで0.723ppm、メカジキで0.969ppmなどがあります。なお、健康への影響については、平均的な食生活をしている限り問題とされるようなレベルではないものと考えられています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/051102-1.html#10

Q31
建設工事に伴う黄鉄鉱の影響は、酸性水だけですか?


A31
建設工事に伴って発生する黄鉄鉱による影響としては、酸性水の発生や重金属類の溶出に加えて(1)腐食、(2)発熱、(3)酸欠空気の発生なども問題となることがあります。これらは、酸化反応によるものですが、過去に行われていた圧気シールド工事では、ときおりこのような現象が認められました。
http://www.kubota.co.jp/urban/pdf/23/pdf/23_1_5.pdf
なお、圧気シールド工事により空隙に富む礫層などに空気が圧入されると、急速な酸化反応により酸欠層が形成されることがありますが、このとき地盤材料1m³(立方メートル)あたり600L(リットル)の酸素を吸収してしまうという研究事例もあります。



■7. 地球環境問題に貢献する■


Q32
地下水の人工涵養、地下ダムとはどのような技術ですか?


A32
人工涵養とは、人為的に何らかの方法で地下水を供給し、涵養することです。具体的には、井戸を用いて帯水層に直接注水する方法や、ため池や農閑期の水田に水を貯め、地表面から水を浸透させる方法があります。地下ダムとは、地下に止水壁を構築して地下水の流れをせき止め、上流側に貯留された地下水を利用する方法で、我が国では沖縄地方で数多く建設されています。海岸近傍においては、下流側からの塩水流入を防止して地下水の塩水化を防ぐ役割も果たします。

Q33
酸性雨が地盤と植生に与える影響について詳しく教えてください。


A33
地盤中に酸性水が浸透すると土粒子と液相の界面でさまざまな化学反応が生じて酸を中和します。しかしながら、代表的な酸緩衝反応である陽イオン交換反応においては、土からカルシウムやカリウムといった植物の生育に必要な物質が流出します。さらには、強い酸が作用すると植物の根の生育に障害を与えるアルミニウムイオンが土から溶出し、植生に影響を与えるとされています。

Q34
非常に多岐に渡る様々な環境負荷をどのように評価するのでしょうか?


A34
環境負荷評価では、一般に、インベントリー分析を用いて、対象物のライフサイクルの全段階で、投入された材料、エネルギー、排出された廃棄物や物質についてデータを整備し、その結果から、環境影響項目ごとに影響の度合いを評価します。影響の度合いは貨幣換算などによって定量的・一元的に評価されますが、この評価手法自体は国際的にも開発段階で、オランダのエコインジケーター等が有名ですが、統一的な手法は現時点で確立されていません。建設分野に着目すると、我が国では国土交通省より「総合的な建設事業コスト評価指針(試案)」において、建設工事における環境負荷を貨幣換算する方法が示されています。

Q35
メタンハイドレートについて詳しく教えてください。


A35
メタンハイドレートはメタン等の気体分子と水分子から成る氷状の結晶物質です。深度500m以深の深海の地層中や数百mの厚みを持つ永久凍土層の下といった低温高圧条件下に存在します。したがって、大気圧条件下で解凍してメタンガスとすると、100倍以上の体積となります。メタンは燃焼時の二酸化炭素排出量が石油や石炭と比較して約半分であることから、新たなクリーンエネルギーとしてその利用が期待されています。ただし、メタン自体は二酸化炭素の20倍の温室効果を持つことから、漏洩等が発生しないように注意する必要があります。

Q36
ヒートポンプによる地中熱利用とはどのような技術でしょうか?


A36
水を熱源とするヒートポンプを使用し、地下水を汲み上げて直接冷媒と熱交換したり、杭基礎構造物に熱交換パイプを入れて地下水と熱交換する技術です。大気と熱交換をするよりも高い効率でヒートポンプを運転できる点や、熱を地下水中に放出するのでヒートアイランド現象が抑制できる点が利点です。