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■概論:環境負荷低減の取組み■
Q1.コンクリートはなぜ安価なのですか?
Q2.セメントのことをなぜポルトランドセメントというのですか?
Q3.セメント製造時に原料になぜ石こうが添加されるのですか?
Q4.コンクリートに利用される水が、なぜ決まっているのですか?
Q5.スラグ骨材や再生骨材は、どれくらいコンクリートに利用されているのですか?
■都市ごみ焼却灰からエコセメント■
Q6.エコセメントの語源は?
Q7.一般ごみの焼却灰処理に関する法律にはどのようなものがありますか?
Q8.エコセメントの製造工程で回収される重金属にはどのような種類がありますか?
Q9.エコセメントを用いたコンクリートの色は一般のコンクリートと同じですか?
■産業副産物を骨材として有効利用■
Q10.コンクリート塊から再生骨材をどの程度回収できるのですか?
Q11.再生骨材コンクリートのフレッシュ時の性状はどうですか?
Q12.固結とは何ですか?
■生コン工場における取組み■
Q13.生コンクリートの工業規格はいつ頃できたのでしょうか?
Q14.生コンクリートの運搬には必ずトラックアジテータを用いなければならないのでしょうか?
Q15.回収水、スラッジ水、上澄水と、それぞれ類似した用語が使用されていますが、それぞれは異なるものでしょうか?
Q16.コンクリートの乾燥収縮はどのように測定するのでしょうか?
Q17.所定のスランプのコンクリートを製造する場合、季節によって配合条件は変わるのですか?
■性能を高めるための混和材料■
Q18.混和材は、どの生コン工場でも使用できますか?
Q19.生コン工場では、実際にどのようにして高炉スラグ微粉末を使用するのですか?
Q20.養生はどのくらい長くすればよいのですか?
Q21.フライアッシュの品質を簡単に測定する方法はありますか?
Q22.膨張材にはどのようなものがありますか?
■ポーラスコンクリート■
Q23.細骨材はどのような目的で使用されるのでしょうか?
Q24.製造や運搬において留意する事項にはどのようなものがありますか?
Q25.透水性が年々低下するのはなぜでしょうか?
Q26.多自然型川づくりとは、どのようなものでしょうか?
Q27.河川護岸に高い強度が要求される場合に、ポーラスコンクリートの適用は可能でしょうか?
■環境とエコ評価 ■
Q28.環境負荷低減の定量的な評価方法として、LCA以外に何がありますか?
Q29.統合評価はなぜオプションなのですか?
Q30.環境負荷原単位(インベントリデータ)は、どのように作成されるのですか?
Q31.環境負荷の統合化とは、何をするのですか?
■概論:環境負荷低減の取組み■
Q1
コンクリートはなぜ安価なのですか?
A1
コンクリートを構成する主な材料は、水、セメント、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)および混和材料です。コンクリート1m3の質量は約2300kgですが、そのうち骨材(細骨材+粗骨材)が70〜80%を占めます。骨材は、生コンクリート工場の周辺地域で調達できる天然資源で、比較的安価に入手できます。また、水をコンクリート1m3に対して、160〜170kg程度使用しますが、水も安価な材料です。このように安価で入手しやすい材料を使用していることが、コンクリートが安価となる主な理由です。
Q2
セメントのことをなぜポルトランドセメントというのですか?
A2
「ポルトランドセメント」という名称のセメントは、イギリスのジョセフ・アスプディンにより1824年に発明されました。セメントの前にポルトランド「Portland」を付したのは、硬化後の風合いがイギリスのポートランド島で採れるポルトランド石 (Portland limestone) に似ているからであったと言われています。
Q3
セメント製造時に原料になぜ石こうが添加されるのですか?
A3
セメントの主要な鉱物の一つであるアルミネートを含む鉱物(アルミン酸三カルシウム、3CaO・Al2O3 )は、水和反応がきわめて速く、モルタルやコンクリートの流動性を急激に低下させる原因となります。石こうは、この反応を抑制し、硬化速度を調整するとともに、長期的な強度の発現にも寄与します。このような理由から、石こうは少量セメントに添加されています。なお、石こうは、諸外国では天然石こうを使用する場合が多いのですが、日本では良質な天然石こうに恵まれないため副産石こう、特に排煙脱硫石こうが使用されています。
Q4
コンクリートに利用される水が、なぜ決まっているのですか?
A4
コンクリートの練混ぜに用いる水は、セメントと反応して、コンクリートに所定の強度や耐久性を与えるために必要な重要な材料です。もし水の中に、糖分が含まれているとコンクリートの硬化に悪影響する場合がありますし、塩化物イオンが多く含まれていると、コンクリート内部の鉄筋を腐食させることになります。したがって、コンクリートの品質を確保するため、コンクリートの練混ぜ水にも、品質の基準が決められているのです。
Q5
スラグ骨材や再生骨材は、どれくらいコンクリートに利用されているのですか?
A5
スラグ骨材のコンクリート用骨材としての使用量は(2008年度)、高炉スラグ骨材が約270万t、フェロニッケル骨材が約37万t、銅スラグ骨材が約18万t、電気炉酸化スラグ骨材が約5万tとなっています。また、コンクリート塊から製造される再生骨材は、コンクリート塊の排出量が年間3000万t程度で、再利用率は97%を超えていますが、用途は舗装用の路盤材が主なものであり、コンクリート構造物にはほとんど利用されていないのが現状です。
■都市ごみ焼却灰からエコセメント■
Q6
エコセメントの語源は?
A6
エコセメントは、エコロジーとセメントの合成語です。
Q7
一般ごみの焼却灰処理に関する法律にはどのようなものがありますか?
A7
厚生労働省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」に、ばいじん又は焼却灰の処理方法として、セメント固化、薬剤処理、酸処理、溶融、焼成の5つの方法が定められています。
Q8
エコセメントの製造工程で回収される重金属にはどのような種類がありますか?
A8
焼却灰1tから重金属類は約10kg生産されます。その内、銅が25%以上、鉛が30%以上含まれており、その他、亜鉛なども生産されます。
Q9
エコセメントを用いたコンクリートの色は一般のコンクリートと同じですか?
A9
エコセメントは普通セメントと比較してやや黄色を帯びています。この影響でエコセメントを用いたコンクリートの色も、普通セメントを用いたコンクリートと比べると、わずかに違いが現れる場合もありますが、一般のコンクリートと同程度と言えます。
■産業副産物を骨材として有効利用■
Q10
コンクリート塊から再生骨材をどの程度回収できるのですか?
A10
再生骨材の製造装置の能力は、製造方法によって異なりますが、おおよそ15〜50t/時です。高度処理では50〜70%程度、簡易処理では50〜90%程度がコンクリート塊から再生骨材として回収できます。ただし、高度処理で再生粗骨材のみを製造するとその回収率は低下します。なお、微粉の発生割合は、高度処理では30〜50%程度、簡易処理では3〜30%程度です。
Q11
再生骨材コンクリートのフレッシュ時の性状はどうですか?
A11
再生骨材Lを除く再生骨材M・Hは、同一のスランプを得るのに必要な単位水量が通常の砕石を用いた場合より少ないとの報告もあります。これは、使用された原骨材の種類がいずれの粒形のよい砂利であったためで、原骨材の種類や製造方法によっては異なる結果が生じることもあります。また、ブリーディング量は、水セメント比が大きくても砂利を使用した場合と同程度まで減少します。
Q12
固結とは何ですか?
A12
高炉スラグ細骨材は、わずかに水硬性があります。このため、夏季には貯蔵中に固結塊が生じることがあります。出荷時に固結防止材を使用して塊を防いでいますが、長期に保管すると固結しますので、保管の管理を十分に行ってください。
■生コン工場における取組み■
Q13
生コンクリートの工業規格はいつ頃できたのでしょうか?
A13
生コンクリート工場ができて、生コンクリートが商品化されたのは昭和24年末と言われています。この新しい工業を育成するとともに、工業製品として安定した品質の生コンクリートが製造されることを目指して、生コンクリートの工業規格が昭和28年11月に「JIS A 5308」として確立しました。
Q14
生コンクリートの運搬には必ずトラックアジテータを用いなければならないのでしょうか?
A14
生コンクリートを運搬する場合、絶えず撹拌しないと材料分離が生じてしまい、均質なコンクリートではなくなります。このため、通常は攪拌機能を持つトラックアジテータが運搬車として用いられます。なお、「土木学会コンクリート標準示方書」によると、スランプ5cm以下の硬練りのコンクリートで運搬距離が10km以下の場合には、材料分離が生じないことを確認できればダンプトラックで運搬しても良いとされています。「JIS A 5308」の規格によるとスランプ2.5cmの舗装用コンクリートに限りダンプトラックを使用することが可能とされています。
Q15
回収水、スラッジ水、上澄水と、それぞれ類似した用語が使用されていますが、それぞれは異なるものでしょうか?
A15
「JIS A 5308 レディーミクストコンクリートの附属書C」に、生コンクリートの練混ぜに用いる水について示されています。これによると、回収水は生コンクリート工場で、運搬車、プラントミキサ、ホッパなどに付着した生コンや戻りコンクリートの洗浄排水を処理して得られるスラッジ水及び上澄水の総称と定義されています。
スラッジ水は洗浄排水から、粗骨材、細骨材を取り除いて回収した懸濁水であり、上澄水はスラッジ水からスラッジ固形分を沈降その他の方法で取り除いた水と定義されています。
Q16
コンクリートの乾燥収縮はどのように測定するのでしょうか?
A16
コンクリートの長さ変化の測定方法は、「JIS A 1129-1〜3 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に規定されていて、ダイヤルゲージなどを用いて供試体の長さ変化を測定します。コンクリート供試体の保存方法は、このJISの附属書Aに示されています。
材齢7日まで水中養生を行った後、周辺の環境を、20±2℃、湿度60±5%に保ち、長さ変化を測定します。
コンクリートの場合、通常100mm×100mm×400mmの角柱供試体を用います。なお、実構造物ではこの角柱供試体に比べて体積に比較して露出表面積が小さいため、乾燥収縮ひずみは角柱供試体に比べて少ないと言われています。
Q17
所定のスランプのコンクリートを製造する場合、季節によって配合条件は変わるのですか?
A17
コンクリートのスランプおよびその経時変化は、配合条件が同じであっても、気温やコンクリート温度によって敏感に変化します。このため、夏季や冬季など、その気候に合うよう、コンクリートの配合条件や使用する混和材料などを調整することが一般的に行われています。
■性能を高めるための混和材料■
Q18
混和材は、どの生コン工場でも使用できますか?
A18
高炉スラグ微粉末などの混和材を生コン工場で使用するためには、専用の貯蔵設備(サイロ)、計量設備等が必要です。通常の生コン工場では、複数のセメントサイロを保有していますので、混和材の貯蔵設備として使用することは可能です。また、セメントの計量設備を使用することも可能です。ただし、恒常的に使用するためには、専用の貯蔵、計量設備を設置することが望ましいと言えます。
Q19
生コン工場では、実際にどのようにして高炉スラグ微粉末を使用するのですか?
A19
高炉スラグ微粉末は一般のセメントと同様に扱うことができるので、セメントサイロの1本を高炉スラグ微粉末用とし、セメントと同時に高炉スラグ微粉末を計量し、両者をミキサに投入して、コンクリートの練混ぜ時に混合する方法が一般的です。コンクリートの使用数量が多い場合には、予め生産工場で、ポルトランドセメントと一定の比率で混合して、セメントと同様に供給して使用する場合もあります。
Q20
養生はどのくらい長くすればよいのですか?
A20
使用する高炉スラグ微粉末の種類や、高炉スラグ微粉末を使用したコンクリートの水セメント比によって異なりますが、高炉スラグ微粉末4000を使用した水セメント比50%程度のコンクリートの場合、普通のコンクリートと比較して、15℃以上では2日、5℃以上では3日、湿潤養生を延長することが必要です。「土木学会:高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの施工指針」などに、目安の養生期間が記載されています。
Q21
フライアッシュの品質を簡単に測定する方法はありますか?
A21
フライアッシュは、燃焼する石炭の産地、燃焼条件等により、品質が変動し、コンクリートの品質に影響を及ぼすことがあり、品質を把握することが必要です。JISに規定されている項目以外に、フライアッシュの品質を簡単に測定できる試験方法も考案されています。フライアッシュのかさ密度を測定する方法(密かさ密度)、フライアッシュペーストの漏斗流下時間により測定する方法(W20)、メチレンブルーの吸着量により評価する方法などが考案されています。
Q22
膨張材にはどのようなものがありますか?
A22
膨張材の使用用途に合わせて、構造用、マスコン用、プレキャスト製品用、プレストレスト製品用など、様々な品目があります。使用量などが異なる場合がありますので、メーカなどの資料を確認して適切に使用してください。
■ポーラスコンクリート■
Q23
細骨材はどのような目的で使用されるのでしょうか?
A23
細骨材を使用することで、空隙率とペースト・モルタルの流動性を調整します。また、モルタルの乾燥収縮率の低減に寄与します。
Q24
製造や運搬において留意する事項にはどのようなものがありますか?
A24
工場製品では、適切な振動締め固め時間の設定、表面仕上げ方法、運搬設置時の角欠け等です。また、運搬・現地打設の場合には、日照や風による乾燥の防止、施工時間、十分な湿潤養生等に留意が必要です。
Q25
透水性が年々低下するのはなぜでしょうか?
A25
空隙に土などが入り込み、目詰まりを起こすためです。例えば、田畑が多いなど、道路周辺の環境条件の影響もあります。また、排水性アスファルトでは塑性変形により空隙が除々に潰れていきますが、ポーラスコンクリート舗装では空隙が潰れる現象はほとんど見られません。
Q26
多自然型川づくりとは、どのようなものでしょうか?
A26
河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境および多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことです。
Q27
河川護岸に高い強度が要求される場合に、ポーラスコンクリートの適用は可能でしょうか?
A27
骨材寸法や空隙率を変更することで、18N/mm2以上の強度を確保することも可能です。
■環境とエコ評価 ■
Q28
環境負荷低減の定量的な評価方法として、LCA以外に何がありますか?
A28
様々な項目について、環境負荷低減に対する貢献の度合いをそれぞれ点数化して、その点数の大きさあるいはその合計点数の大きさで環境負荷低減効果の優劣を判断する方法(レイティング)があります。関連分野での国内における代表的なものとして、建築分野で活用されているCASBEE(キャスビー、建築環境総合性能評価システム)、アメリカではLEEDなどがこれに該当します。
Q29
統合評価はなぜオプションなのですか?
A29
個々のインベントリが特性化され、その値に重み付けを行って統合化が行われます。特性化では、自然科学的知見に基づいた係数が用いられ、結果の信頼性は高いものとなっていますが、統合化では、社会科学的知見に基づく重み付けが行われており、主観的価値判断や社会的選好を含むため、評価方法によって結果の再現性を担保できないことがあるのが現状です。そのために、統合化はオプション(任意要素)として位置付けられています。
Q30
環境負荷原単位(インベントリデータ)は、どのように作成されるのですか?
A30
環境負荷原単位(インベントリデータ)の作成方法には、二通りあります。産業連関法と積上げ法です。産業連関法は、5年ごとに発表される産業連関表(国が1年間に生産、消費する全ての財・サービスの取引量ごとに共通の単位で表したもの)を用いる方法で、ある製品の直接、間接のインベントリを理論的に算出することができますが、部門分類が粗いため多種多様な製品や技術の分析には不十分で、また部門の平均的な評価にとどまります。また、5年ごとの発行される年のデータしか得ることができません。積上げ法は、関係するプロセスごとに具体的にインベントリを求めていく方法で、インベントリの作成根拠が明確にできる反面、調査が煩雑で、調査できるプロセスの範囲には限界があります。
Q31
環境負荷の統合化とは、何をするのですか?
A31
環境負荷の評価を行う理由は、最終的にそれぞれが結果として我々の健康に害を及ぼしたり、災害を引き起こして農作物に被害が出たり生活基盤を脅かしたりしてしまうためです。このようなことを引き起こす原因として地球温暖化や酸性化が取り上げられており、例えば地球温暖化を引き起こす原因としてCO2やメタンなどの温室効果ガスが挙げられています。しかし、CO2やメタンの排出された量を単純に比較することはできません。メタンはCO2の21倍の温室効果をもたらすと言われています。このように、それぞれの温室効果ガスの影響を考慮して排出量を足し合わせ地球温暖化の程度を評価することを特性化と言います。そして、この特性化された地球温暖化や酸性化などの数値に、重み付けを行うことによって、我々の健康に害を及ぼす程度、生活基盤を脅かす程度、農作物に被害をもたらす程度などを求めること、さらには、それらにも重み付けをして、環境への影響を示す一つの数値として表すことを統合化と言います。
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