Q1.毒性反応と異物反応の違いは。
Q2.最も生体適合性に優れているのはどのような表面か。
Q3.タンパク質吸着にかかる時間はどのくらいか。
Q4.分子配列が異なると、機能はどのように異なるのか。
Q5.コーティングしたポリマーの溶出によって機能低下しないか。
Q6.バイオマテリアルの設計で、バルク性能と界面性能を完全に分けて考えることはできますか。
Q7.固定化した生体分子は、どのくらい安定に存在しますか。
Q8.材料への生体分子の固定化法の特徴はどのようなものでしょうか。
Q9.固定化生体分子と溶解状態の生体分子の細胞への効果を比較する簡単な方法はありますか。
Q10.動物細胞培養が盛んに行われてきましたが、この目的はどのようなものだったのでしょうか。
Q11.縦軸の再生率はどのようにして算出するのですか
Q12.他にどのようなアプローチが考えられているのですか。
Q13.細胞にあらかじめアポトーシスをプログラムしておくことはどんな利点があるのですか。
Q14.ポリロタキサンとしては、どのくらいの分子量のものまで合成できるのか
Q15.ロタキサンの歴史は、いつ頃からなのか
Q16.ポリロタキサンの構造は、どのようにして確認するのか
Q17.溶液中で分子鎖の屈曲性や分子間会合性が低いといった生体内分解性ポリロタキサンに見られる特徴は、どのようにして調べるのか
Q18.ポリロタキサンに見られる多価相互作用は、低分子物質や他の高分子と比較して具体的にどれくらい効果的なのか
Q19.ポリロタキサン・ヒドロゲルの加水分解時間は、どの程度コントロール可能なのか
Q20.刺激応答型ポリロタキサンにおける環状分子の移動は、どのようにして解析するのか
Q21. ポリロタキサンの生体適合性はどのようにして確認しているのか
Q22.バイオマテリアルとしてのポリロタキサンは、どの程度実用可能か
Q23.ポリカチオングラフト共重合体の作り方
Q24. 3重鎖・2重鎖の形成速度はどのようにして測定できるか
Q25. 鎖交換反応はどのようにして測定したか
Q1
毒性反応と異物反応の違いは。
A1
毒性反応は、人工材料が物理・化学的に細胞を傷つけるという、生体にとっては受難の反応である。異物反応は、人工材料本体に起因した生体の積極的な反応で、材料の改質をしない限り避けられないものである。
Q2
最も生体適合性に優れているのはどのような表面か。
A2
最も理想的な生体適合性表面は、私達の体にある生体内膜表面である。細胞膜の構造に着目して、生体内膜類似構造をもつMPCポリマー表面がすぐれた生体適合性を有していることが発表されている。最終的には、コストや生産性の面を考慮して表面構造を選択するべきである。
Q3
タンパク質吸着にかかる時間はどのくらいか。
A3
マテリアルが体液と接触して1秒以内に、マテリアル表面へのタンパク質吸着が観察される。そして数分以内に表面はタンパク質層で覆われ、つづいて吸着タンパク質層を介して血栓形成などの細胞レベルの反応が開始する。
Q4
分子配列が異なると、機能はどのように異なるのか。
A4
たとえをあげると、SBRなどは、ランダムコポリマーからなるものにくらべ、ブロックポリマーからなるもののほうが、加熱によって流動化するために複雑な成型が容易である、などの違いがある。
Q5
コーティングしたポリマーの溶出によって機能低下しないか。
A5
コーティングしたポリマーが水溶性の場合は、溶解により機能が低下する。またコーティングは力学的な負荷によっても剥離する可能性があるので、使用時間を制限するなど、ケースに応じた使用が望まれる。
Q6
バイオマテリアルの設計で、バルク性能と界面性能を完全に分けて考えることはできますか。
A6
一般にバイオマテリアルに要求されるバルク性能は、一般の材料で要求されるものが多く、その性能を利用し、一方で材料の表面処理により生体と接触しても機能を損なわないような界面性能が考えられています。
Q7
固定化した生体分子は、どのくらい安定に存在しますか。
A7
生体外で用いる場合には、繰り返し利用が可能です。生体内で使用する際には、体内に存在する細胞や免疫反応により、比較的早期に分解が起こり、活性が損なわれると考えられます。
Q8
材料への生体分子の固定化法の特徴はどのようなものでしょうか。
A8
吸着法は最も容易な方法ですが、長期間にわたって材料表面の機能を保持したい場合には不向きです。時間と共に脱離します。これに対し、共有結合固定化の場合は、長期間の固定化が可能ですが、固定化するための官能基を表面に導入する必要があります。また、固定化によりコンフォメーションの変化が生じ、活性が低下することが考えられます。これらの欠点を補う意味でゲル包括固定化が行われています。しかしこの場合は、ゲルが材料表面を覆い、充分な活性が得られない欠点があります。
Q9
固定化生体分子と溶解状態の生体分子の細胞への効果を比較する簡単な方法はありますか。
A9
本当に固定化された生体分子が細胞に影響を与えているのかどうか、溶出はないのかどうかを明確に示すには、マイクロパターン状に固定化してその効果を顕微鏡下で観察するのが最も適しています。生体分子固定化領域と非固定化領域の細胞の相違を観察することで容易に判別できるからです。生体分子を放射能標識して、固定化して溶出がないことを確かめて、その上で細胞培養を行うこともできますが、ラジオアイソトープを使用しなければならないことや、溶出が完全にないことを証明することの困難さがあります。
Q10
動物細胞培養が盛んに行われてきましたが、この目的はどのようなものだったのでしょうか。
A10
遺伝子組み替えを行ったたんぱく質の生産のためには微生物がよく用いられてきましたが、生理活性な生体高分子は単なるたんぱく質だけでなく糖たんぱく質であることが多く、これは微生物を用いて遺伝情報だけで合成することは不可能で翻訳後修飾をする必要があります。このためには動物細胞に生産させる必要があります。このような生理活性物質の生産のための細胞培養から、最近はヒト細胞そのものを効率よく増殖させることが新たなニーズとなってきています。
Q11
縦軸の再生率はどのようにして算出するのですか
A11
リボヌクレアーゼ(RNaseA)というRNAを分解する酵素を完全還元状態にした溶液に粒子を添加して所定時間反応させた後、上清中に再生された天然状態のRNaseAの酵素活性を測定してリフォールディング活性を評価している。このとき未還元のタンパク質の活性を100%としたときのそれぞれの相対活性であらわしている。
Q12
他にどのようなアプローチが考えられているのですか。
A12
細胞内において作られたタンパク質は間違った、あるいは不充分な折り畳み状態となり、不溶性の塊(インクルージョン・ボディ)を形成してしまうことが多い。そのため、変性剤や界面活性剤を用いて、タンパク質の凝集塊を解きほぐしてから透析することによって再生されています。透析以外にもカラムや逆相ミセル内部に抽出したり、ここでの研究例を参考にして粒子内部にタンパク質を取り込ませることも行われている。
Q13
細胞にあらかじめアポトーシスをプログラムしておくことはどんな利点があるのですか。
A13
細胞に遺伝子を導入させる研究が行われていますが、このキャリアを用いてあらかじめ遺伝子を導入させた細胞にアポトーシスをプログラムしておくことにより細胞の暴走を止めることができる。
Q14
ポリロタキサンとしては、どのくらいの分子量のものまで合成できるのか
A14
現在までに、分子量50,000のPEGとα−シクロデキストリン基本骨格とした分子量約350,000のポリロタキサンが合成されている。
Q15
ロタキサンの歴史は、いつ頃からなのか
A15
環状のアルキル分子を樹脂に結合させ、ここに線状アルキル鎖を貫通させたものを巨大分子でキャップし、樹脂から取り外しロタキサンが1960年頃に報告された。しかしこの時は、フープランと名付けられ、収率も6%程度と低いものであった。以後、収率の向上を目指したロタキサン合成が行われた。
Q16
ポリロタキサンの構造は、どのようにして確認するのか
A16
ゲル透過クロマトグラフィー測定や示差走査熱量測定ならびに核磁気共鳴測定から、ポリロタキサンはその構成物質である各環状・線状分子とは異なることが明らかとなる。環状分子が線状分子を貫通することにより、環状分子と線状分子間の相互作用が生じ、この相互作用を二次元核磁気共鳴測定から明らかにすることができる。
Q17
溶液中で分子鎖の屈曲性や分子間会合性が低いといった生体内分解性ポリロタキサンに見られる特徴は、どのようにして調べるのか
A17
静的光散乱測定により第二ビリアル定数や会合定数を求め粗密な会合をしていることを証明している。また慣性自乗半径を求めることで、流体力学的半径と慣性自乗半径との比により異方性を有した棒状構造を有していることを示している。
Q18
ポリロタキサンに見られる多価相互作用は、低分子物質や他の高分子と比較して具体的にどれくらい効果的なのか
A18
ポリロタキサン、低分子であるa-CDおよび高分子であるデキストランにペプチドトランスポーター PEPT1のリガンドであるバリルリジン(ValLys)を導入した結合体を合成し、ValLys1mM当たりのグリシルサルコシン(GlySar)吸収阻害効果についてそれぞれ比較した。その結果、α−CD結合体ではほとんど阻害せず、デキストラン結合体でも約20%の阻害効果しかなかったが、ポリロタキサン結合体では約50%もの阻害効果が得られた。またデキストラン結合体と同程度の阻害効果は、ポリロタキサン結合体では1/4程度の低濃度でも発現し、その有効性が確認されている。
Q19
ポリロタキサン・ヒドロゲルの加水分解時間は、どの程度コントロール可能なのか
A19
数日から数ヶ月まで、幅広く加水分解時間を制御可能
Q20
刺激応答型ポリロタキサンにおける環状分子の移動は、どのようにして解析するのか
A20
環状分子と線状分子間の相互作用が、環状分子の移動により変化する。この差を核磁気共鳴測定から観察する。環状分子が末端まで移動すればキャップした末端基との相互作用も生じるので、これを円偏光二色性測定、核磁気共鳴測定から観察する。
Q21
ポリロタキサンの生体適合性はどのようにして確認しているのか
A21
ポリロタキサンは血小板活性化を回避する上に、トロンビンによる血小板活性化も抑制することを明らかにしている。これは、ポリロタキサン特有の超分子構造によるものと考えられる。また、スルフォニル基を導入したポリロタキサンによって、抗凝固活性もみられるようになった。このようなことから、ポリロタキサンの生体適合性は優れていると考えられる。
Q22
バイオマテリアルとしてのポリロタキサンは、どの程度実用可能か
A22
ここで紹介したポリロタキサンは新規な超分子構造を有しているが、構成成分はa-CD、PEG、アミノ酸など既知で医薬分野での使用前例がある物質である。また、これら構成成分は工業化されていることから、将来的には工業化も実現可能である。このようなことから、バイオマテリアルとしてのポリロタキサンは将来的に実用性の高いものと期待される。現在、多価相互作用を有するポリロタキサンならびに加水分解性超分子ヒドロゲルは、企業とともに共同研究を推進している。
Q23
ポリカチオングラフト共重合体の作り方
A23
ポリリシンとデキストランのグラフト共重合体を例にとり説明します。
デキストラン(一般に多糖)の還元末端はアルデヒドの性質をもっています。従って、ポリリシンの一級アミノ基と反応して、シッフ塩基を形成します。ここに還元剤であるNaBH
3
CNを加えます。最後に透析により余分な化合物を分離します。このように反応自体は一段階で進む簡単な反応を利用しています。
Q24
3重鎖・2重鎖の形成速度はどのようにして測定できるか
A24
検出には表面プラスモン共鳴法(surface plasmon resonance: SPR)を利用しています。例えば3重鎖形成の場合、セルの表面に2重鎖DNAを固定したのち、3本目の鎖(TFO)を加え、3重鎖を形成した時の表面共鳴角の変化を測定することにより、3重鎖形成量を経時的に検出しています。水晶発振子マイクロバランス法なども利用することが出来ます。
Q25
鎖交換反応はどのようにして測定したか
A25
2重鎖DNAの末端にそれぞれFITC、TAMRAでラベルをしておきます。このときFITCの発光エネルギーがTAMRAに移ることでFITCは消光します。これを共鳴エネルギー移動といいます。そこへTAMRAでラベルをしておいた鎖と同じ配列をもった、ラベルをしていない単鎖をくわえます。もし鎖交換が起こったとすると、FITCとTAMRAの距離が離れることでFITCの蛍光が復活します。この反応を利用して鎖交換率を算出しました。