■レッスン1−大気汚染の概要■

Q1_1.昔の公害と現在の環境問題の違いは何ですか?

Q1_2.持続的発展(sustainable development)とはどういう意味ですか?

Q1_3.大気汚染にはどのようなものがありますか?

Q1_4.最近の西ヨーロッパや日本では環境基準が厳しく規制されているにもかかわらず酸性雨が問題になるのはどうしてですか?


■レッスン2−燃焼技術■

Q2_1.燃焼が大気環境問題を引き起こす大きな要因は何ですか?

Q2_2.燃焼と化学工業などでの反応とは何が違うのでしょうか?

Q2_3.一般の工業炉で用いられるバーナーは予混合燃焼よりも拡散燃焼方式が採用されるのはなぜですか?

Q2_4.液体や固体燃料の燃焼計算では、炭素、水素、酸素などの元素の重量割合が用いられるのはなぜですか?

Q2_5.燃焼を安定化させるための保炎とはどういうことですか?

Q2_6.気体燃料の均相燃焼と液体や固体燃料の不均相燃焼との大きな違いは何ですか?


■レッスン3−煤塵・粉塵処理技術■

Q3_1.重量濃度測定法をはじめ、各種粉塵濃度計に分粒部がついているのはなぜですか?

Q3_2.ローボリウム・エアーサンプラとハイボリウム・エアーサンプラの違いを教えてください。

Q3_3.粉塵の処理に用いる集塵装置の具体的な使用例を教えてください。

Q3_4.特定粉塵としてアスベストが指定されているのはなぜですか?

Q3_5.工場内で新たにグラインダーによる研磨作業を始めます。どのような粉塵対策が必要ですか?


■レッスン4−NOx・SOx対策■

Q4_1.燃料中に窒素分が含まれていなくてもNOxが発生するのはなぜですか?

Q4_2.Prompt NOxのPromptとはどういう意味ですか?

Q4_3.低NOxバーナーとはどのようなバーナーですか?

Q4_4.燃料から予め事前脱硫で硫黄分を除去しておけば他の脱硫は必要ないのではないですか?

Q4_5.炉内脱硫はどのような場合に応用できますか?


■レッスン5−オゾン層破壊対策■

Q5_1.オゾン層はどうやってできたのですか?

Q5_2.オゾン層の観測技術について教えてください。

Q5_3.紫外線の地球上生命への影響は?

Q5_4.オゾンホールとは何ですか?

Q5_5.オゾン層保護法およびフロン回収破壊法について教えてください。

Q5_6.フロン排出規制の国際的取組みについて教えてください。


■レッスン6−地球温暖化対策■

Q6_1.自然エネルギー利用技術が十分普及しない理由は?

Q6_2.蓄電技術によって発電効率が向上する理由は?

Q6_3.光合成は炭酸ガスの固定化にはならないのですか?

Q6_4.発電効率が100%にならないのはなぜですか?

Q6_5.電力需要に併せて供給量を変えなければならないのはなぜですか?


■レッスン1−大気汚染の概要■

Q1_1
昔の公害と現在の環境問題の違いは何ですか?


A1_1
かつては人体に有害物質を垂れ流していて公害病に代表されるように直接生命に関わる問題でしたが、現在では地球温暖化やオゾン層破壊、廃棄物処理などのように直接人体等に有害ではない場合にも、気候の変動が危惧されたり、広範囲での自然破壊が進行するなど、これまで以上に現象が複雑かつ地球規模での問題を総合して環境問題と呼んでいます。

Q1_2
持続的発展(sustainable development)とはどういう意味ですか?


A1_2
我々人類の快適な生活を維持しつつも、地球環境に対して悪影響を与えると考えられる問題を人類の叡知により技術的に解決することにより、将来にわたって発展し続けていくことを意味しています。

Q1_3
大気汚染にはどのようなものがありますか?


A1_3
燃焼に伴って発生する、硫黄酸化物、窒素酸化物、不完全燃焼により生成するすす状の煤塵や燃焼灰による粉塵が代表的なものですが、近年では炭酸ガスなどによる地球温暖化、フロン類などによるオゾン層破壊なども大きな問題となっています。

Q1_4
最近の西ヨーロッパや日本では環境基準が厳しく規制されているにもかかわらず酸性雨が問題になるのはどうしてですか?


A1_4
酸性雨の大きな原因は硫黄酸化物が雨に吸収されて亜硫酸または硫酸となって雨が酸性化するためです。現在の先進国では厳しく環境規制されていますので、あまり問題とはならないはずですが、周辺の開発途上国での環境規制はかなり甘い場合が多いために、大気中に放出された硫黄酸化物が上空の風とともに国境を越えて移動してくるためです。

■レッスン2−燃焼技術■

Q2_1
燃焼が大気環境問題を引き起こす大きな要因は何ですか?


A2_1
不完全燃焼によって生じる一酸化炭素、炭化水素、すすなどをはじめとして、高温雰囲気により窒素ガスや窒素分が酸化されて生成する窒素酸化物、硫黄分の酸化によって生成する硫黄酸化物などは公害物質の代表例です。また、廃棄物燃焼によって塩素分から生成する塩化水素やダイオキシンなども大きな問題となっています。
一方、完全燃焼しても炭化水素や石炭の燃焼では、必然的に生成する二酸化炭素なども、地球温暖化ガスとして地球環境に大きな影響を与えることが危惧され、その削減が求められています。

Q2_2
燃焼と化学工業などでの反応とは何が違うのでしょうか?


A2_2
燃焼は一度着火すると、自己発熱により自動的に燃料が酸化して燃料と酸化剤が存在する限り燃焼反応が継続するのに対して、通常の反応は温度を適度に制御しなければ安定して反応を継続させることができない点が大きく異なります。

Q2_3
一般の工業炉で用いられるバーナーは予混合燃焼よりも拡散燃焼方式が採用されるのはなぜですか?


A2_3
予混合燃焼は燃焼速度が速く、火炎長も短いという長所がありますが、燃料と空気が予め混合されているために、うまく燃焼制御が行われないと逆火して燃焼異常や爆発などの事故が発生する危険性があります。したがって、現在のところ燃料と空気を後混合させる拡散燃焼方式のバーナーが主流を占めています。

Q2_4
液体や固体燃料の燃焼計算では、炭素、水素、酸素などの元素の重量割合が用いられるのはなぜですか?


A2_4
気体燃料の場合には、燃料を構成する気体分子の種類および濃度を特定することが容易ですが、液体や固体燃料は分子構造が複雑で分析が困難な場合が多いため、一般には炭素、水素、酸素などの主要元素の含有量を表す元素分析性状を用いて燃焼計算が行われます。これは燃焼後には炭酸ガスと水蒸気などの限られたガス成分が生成するだけですから、これらに関連する元素の割合がわかっていれば十分なためです。ただし、燃焼計算するためには一旦モル数に換算する必要から重量割合がわかっている必要があります。

Q2_5
燃焼を安定化させるための保炎とはどういうことですか?


A2_5
バーナーから吹き出すガス流速の最も遅くなる位置での流速が、燃焼速度よりも速いと火炎の吹き消えが生じて燃焼が安定しません。そこで、保炎器を設置したり、ガス噴流や旋回流を与えることにより、バーナー近傍に逆向きの循環流を形成させればそこで火炎が付着して、燃焼が安定化します。保炎はこのような作用を利用したものです。

Q2_6
気体燃料の均相燃焼と液体や固体燃料の不均相燃焼との大きな違いは何ですか?


A2_6
気体燃料の場合には、気相中で燃料と酸素が混合して数多くの連鎖反応によって燃焼反応が進行しています。これに対して、液体や固体燃料では、燃焼による自己発熱により燃料温度が上昇して気化、熱分解、ガス化反応などにより気体可燃成分が気相で燃焼する点で燃焼機構が大きく異なります。ただし、固体燃料の場合には固体表面の酸素または炭酸ガス、水蒸気と反応して燃焼反応が生じることもあります。したがって、不均相燃焼ではいかに空気と燃料との混合や燃料を急速に加熱するような燃焼器構造にするかが、燃焼の安定化のキーポイントとなります。

■レッスン3−煤塵・粉塵処理技術■

Q3_1
重量濃度測定法をはじめ、各種粉塵濃度計に分粒部がついているのはなぜですか?


A3_1
煤塵や粉塵の発生源で濃度を測定する場合、大気中に浮遊する小さい粒子ばかりではなく、すぐに沈降してしまう大きい粒子も含まれています。大気汚染防止法では、大気中に浮遊しやすく体内に吸入すると悪影響を及ぼす恐れのある10μm以下の粒子を対象にしていますので、その濃度を適切に表すために粗大粒子を取り除いておくことが必要になるのです。

Q3_2
ローボリウム・エアーサンプラとハイボリウム・エアーサンプラの違いを教えてください。


A3_2
ローボリウム・エアーサンプラは1分間に20リットル、ハイボリウム・エアーサンプラは1分間に1000リットル程度の空気を吸引します。原理的には両者の違いはありませんが、通常の質量濃度測定にはローボリウム、化学分析用として大量の試料を捕集する場合などにハイボリウムを選択するのが一般的です。質量濃度は粒子の質量を積算吸引流量で割れば得られます。

Q3_3
粉塵の処理に用いる集塵装置の具体的な使用例を教えてください。


A3_3
発生源から排出される粉塵の粒子径は数百μmからサブミクロンまで分布している場合がよくあります。このような場合、通常、二段階に分けて集塵操作を行います。第一段階では重力や慣性力を利用した集塵機あるいは遠心力を利用したサイクロンなどを用いて数十μm以上の粗大粒子を捕集します。第二段階ではバグフィルターや電気集塵あるいはベンチュリースクラバを用いて0.1μmから0.01μm程度までのすべての粒子を捕集します。

Q3_4
特定粉塵としてアスベストが指定されているのはなぜですか?


A3_4
アスベストは熱や摩擦に強く、耐酸性耐アルカリ性に非常に優れていることから、建築物の柱、梁、天井、壁などに吹き付けて吸音材、断熱材として用いられてきました。しかし、アスベストの粒子形状は針状であるため、体内に吸入され肺の中に入ると細胞組織に刺さりやすく溶解することもないため、15年から40年の潜伏期間を経て肺がんや悪性中皮腫(悪性の腫瘍)などを引き起こす恐れがあります。したがって濃度には関係なく、ごく少量であっても吸入しないことが大事です。このようなことから、アスベストには特に厳しい規制が設けられています。

Q3_5
工場内で新たにグラインダーによる研磨作業を始めます。どのような粉塵対策が必要ですか?


A3_5
「9.粉塵からの防御」で紹介したようなフードを付けた局所排気装置を作業内容にあわせて設置します。局所排気装置のみでは対応できない場合は、防塵マスクおよび保護めがねを着用します。部屋全体の換気装置を設置するのも有効な方法ですが、この場合は作業員は必ず防塵マスクと保護めがねを装着することです。また、「2.粉塵が人体に与える影響」で紹介しましたように、人体に悪影響を及ぼす微小な粉塵が発生しないように工夫することも必要です。

■レッスン4−NOx・SOx対策■

Q4_1
燃料中に窒素分が含まれていなくてもNOxが発生するのはなぜですか?


A4_1
酸化剤として利用される空気中には79%の窒素ガスが含まれているため、これが燃焼反応が起きている高温中で酸化されて窒素酸化物が生成されるためです。このような窒素酸化物が生成されることをThermal NOxといい、ゼルドビッチ機構とPrompt NOxで生成機構が説明されています。

Q4_2
Prompt NOxのPromptとはどういう意味ですか?


A4_2
炭化水素系の燃料が燃焼するとき、一連の連鎖反応過程で生成されるHCNやCNなどの中間体のことを指します。Prompt NOxはこれらの中間体を経由してNOへと酸化されて生成する機構のことで、ゼルドビッチ機構のようにN2とO2との直接酸化反応からは説明できないNOx生成挙動を示します。ただし、水素または一酸化炭素だけの燃焼ではPrompt NOxの生成はありません。

Q4_3
低NOxバーナーとはどのようなバーナーですか?


A4_3
NOx生成を抑制する効果を有する2段燃焼や排ガス再循環燃焼などを、単一のバーナーで実現できるように工夫したバーナーをいいます。バーナー内部で自己循環流や燃料の濃淡ができるような流動状態を形成する構造になっています。

Q4_4
燃料から予め事前脱硫で硫黄分を除去しておけば他の脱硫は必要ないのではないですか?


A4_4
事前脱硫で燃料中のほとんどの硫黄分を除去すれば排煙脱硫等は必要なくなりますが、実際には十分に事前脱硫することが技術的に困難であったり、経済的に不利になることも多いため、用途に応じて経済性および除去後の処理に伴う2次汚染の有無等を含めて、総合的に検討した結果に基づき、種々の脱硫法が採用されます。

Q4_5
炉内脱硫はどのような場合に応用できますか?


A4_5
炉内脱硫は、燃焼に伴い生成したSOxを石灰石、消石灰、生石灰のような吸収剤により炉内で硫酸化物として吸収させて除去する方式です。このとき、硫酸化反応が起きるための適切な温度や雰囲気があります。吸収剤に石灰を用いる場合には、硫酸化反応の最適温度は850℃ですから、炉内の燃焼雰囲気が850℃程度になる広い領域が存在する必要があります。このような条件がそろえば炉内脱硫が可能となります。石炭の流動層燃焼では層温度が850℃で、炉内脱硫に適していますのでその応用の代表例といえます。

■レッスン5−オゾン層破壊対策■

Q5_1
オゾン層はどうやってできたのですか?


A5_1
46億年前、地球が誕生した時、地球は炭酸ガスの大気に覆われていました。約35億年前に生命が海で誕生し、水中の植物は光合成により酸素を作り出し、大気中の酸素濃度が徐々に増加し始めました。大気中の酸素濃度が高まるにつれ地上30キロメートルの上空、成層圏で酸素分子は太陽からの紫外線を受けて、オゾンに変化しました。これがオゾン層の成り立ちです。

Q5_2
オゾン層の観測技術について教えてください。


A5_2
オゾンや大気微量分子ガスを測定する方法には、化学的な手法で直接大気成分を測定する方法と、地上あるいは人工衛星から分光学的に測定する方法に大別できます。上空のオゾンを直接測定する方法には、飛行機による直接採取やゾンデを用いる方法があります。しかしながら、直接観測においては時間的連続なデータを取得することができません。
一方、地上からオゾン濃度を測定できるのは紫外線あるいは赤外線分光法、ライダー法、ミリ波分光法があります。測定法により得られるデータの種類が異なるためいくつかの測定方法を組み合わせて観測する必要があります。

Q5_3
紫外線の地球上生命への影響は?


A5_3
紫外線は、波長の長いものからUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類されています。UV-Aは大量に地上に照射されていますが、生命に対する影響力はきわめて低く、一方UV-Cは大気分子によりそのほとんどが吸収されるため、地表まで達するものはありません。中間の波長をもつUV-Bは、大気中のオゾンによって選択的に吸収されるため成層圏中のオゾンの量によって地表に到達するUV-B量は左右されます。
このUV-Bは、生物学的活性紫外線と呼ばれており、生物の細胞内にあるDNAを破壊します。その結果、細胞死や突然変異などを引き起こします。つまり、もし成層圏にあるオゾン量の減少により、地上への紫外線到達量が増加すれば、皮膚がんや白内障の増加、免疫機能の低下、家畜や農作物に多大な被害を及ぼし自然界の生態系のバランスに大きな影響を与えることになります。

Q5_4
オゾンホールとは何ですか?


A5_4
オゾン層の破壊は、全地球的に進行しており、特に高緯度地域でオゾン層の減少率が高くなっています。南極の上空では冬から春にかけて南極上空を取り巻く極夜渦と呼ばれる強い渦状の気流が生じるため、冬には極めて低温となり、極域成層圏雲と呼ばれる雲が生じます。フロン等が分解してできた塩素原子は、この雲の粒子表面での反応で活性度の高い状態に変換されます。春になり日が当たるようになると塩素分子は再び分解してオゾンを破壊するため、オゾンの量が大きく減少します。この減少により生じたオゾン濃度の低い領域のことをオゾンホールと言います。

Q5_5
オゾン層保護法およびフロン回収破壊法について教えてください。


A5_5
オゾン層が大気中に放出された特定フロン等の化学物質により破壊されているため、オゾン層保護問題は、他の地球環境問題に先駆けて検討が行われており、国際的にオゾン層破壊物質の生産量及び消費量(生産量+輸入量-輸出量)の削減が義務付けられています。わが国では、1988年に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」を制定して、1989年7月からオゾン層破壊物質の生産・輸出入の規制を開始するとともに、その需要を円滑かつ着実に削減するための施策が行われています。
1999年のモントリオール議定書第11回締約国会合で先進国に対して2001年7月までに「CFC管理戦略」を提出することを求める決定がなされました。これを踏まえて、わが国では「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」が、2001年6月に公布され、2002年4月から施行されています。これにより、冷凍空調機器、冷蔵機器及び冷凍機器の廃棄や修理等を行う場合、フロン類の回収とその処理が義務づけられています。

Q5_6
フロン排出規制の国際的取組みについて教えてください。


A5_6
1977年にUNEP(国連環境計画)は専門家による会合を設け、科学的な知見の整理や対策の立案に乗り出しました。さらに1985年には国際共同研究や各国の適切な対策の実施を内容とした「オゾン層の保護のためのウイーン条約」が制定されました。1987年には、10年間でフロン消費量の50%を削減する案に参加国が合意した「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、その後も規制強化されてきています。

■レッスン6−地球温暖化対策■

Q6_1
自然エネルギー利用技術が十分普及しない理由は?


A6_1
自然エネルギーは、エネルギー密度が小さく、環境に左右されるため安定供給が困難であるとともに発電効率も低いのが現状です。例えば、風力発電では定常的に同じ向きの風が同じ強さで吹くことが理想とされていますが、そのような地理的条件を満たす場所は少なく(米国カリフォルニアなど)、また初期コストが非常に高く、経済性の面で問題を抱えており、その普及には更なる技術開発(高効率化あるは低コスト化)、さらには国家的な経済補助が必要であると考えられています。

Q6_2
蓄電技術によって発電効率が向上する理由は?


A6_2
電力の需要は、人間の生活サイクルに併せて大きく変化します。しかし、火力発電所はある所定の出力で電気を作るときに最大の効率になるように設計されているので、出力を変えると効率が悪くなってしまいます。このことが、全体の発電効率の低下を招くことになります。蓄電技術は、電力需要が減少する深夜・早朝に電力を蓄えておき、昼間の電力需要が増加するときに蓄えた電力を供給することができます。これにより、発電所の出力は常に一定、つまり最大効率で稼動することができます。

Q6_3
光合成は炭酸ガスの固定化にはならないのですか?


A6_3
光合成とは、太陽光エネルギーを使って水と炭酸ガスからグルコースを生成する反応ですが、太陽光が照射されない夜間などでは、動物と同じように酸素を吸って炭酸ガスを排出しています。この光合成と呼吸による炭酸ガスの吸収・排出がほぼ同じくらいですと、炭酸ガスが植物と大気の間で循環するだけになります。もちろん、植林などにより樹木を増やせば、増やした分だけ炭素は固定化されますが、化石燃料の燃焼によって単位時間に排出される炭酸ガスの量は、光合成により固定化される炭酸ガスの量と比べかなり大きいと考えられ、現実的には大量処理になるとは限りません。

Q6_4
発電効率が100%にならないのはなぜですか?


A6_4
熱機関(タービンやエンジンなど)を用いて化石燃料の燃焼熱(エンタルピー)を動力・電力に変換するプロセスにおいては、熱力学第2法則により熱機関の温度に対応する最大の熱効率が決まります。具体的には、(熱効率)=((高温熱源温度)−(低温熱源温度))/(高温熱源温度)で表され、低温熱源温度は原理的には最低で環境温度(約15℃)となります。
一方で、燃料電池のような化学エネルギー・電気エネルギー変換システムの場合は、化学物質が持っているギブス自由エネルギーの全てを電気エネルギーに変えることが理論的には可能なので、理論上90%近い効率になりますが、エントロピーに基づく物質固有の熱エネルギーを必然的に保持しなければならないので、100%にはなりません。実際には電池の内部抵抗などにより50%前後となっています。

Q6_5
電力需要に併せて供給量を変えなければならないのはなぜですか?


A6_5
発電所にも一般家庭と同じようにブレーカーがあり、電力供給量より需要量が多くなると、ブレーカーが落ちて停電してしまいます。一方、需要よりも供給量を多くすると、電気の周波数(関東で50Hz、関西で60Hz)や電圧に異常が発生し、最悪の場合停電してしまうことがあります。このような理由から、電力供給は、需要に応じて行われています。