■レッスン1−水・土壌汚染の概論・関連法規と処理技術■

Q1_1.生活環境の保全に関する環境基準の達成率はどのようになっていますか?

Q1_2.人の健康の保護に関する環境基準の達成率はどのようになっていますか?

Q1_3.総量規制のしくみは何ですか?

Q1_4.総量規制の効果はあがっていますか?

Q1_5.非特定汚染源からの排出抑制については、どのようなことが行われていますか?


■レッスン2−上水道関連技術■

Q2_1.消毒にオゾンや紫外線を用いないのはなぜですか?

Q2_2.緩速ろ過法では、なぜおいしい水ができるのですか?

Q2_3.沈殿池の沈殿除去率を向上させるためには、どのような方法がありますか?

Q2_4.浄水処理過程で生成した汚泥はどのように処分するのですか?

Q2_5.ろ過砂の有効径と均等係数とは何ですか?


■レッスン3−下水道関連技術■

Q3_1.活性汚泥法で最終沈殿池での固液分離が悪化する原因は何ですか?またその対策方法も教えてください。

Q3_2.有用微生物を処理に用いることはできないのですか?

Q3_3.循環型硝化脱窒法やA2Oでは窒素除去率は低いのではないですか?

Q3_4.リンは枯渇資源ですがこれを回収する方法はないのですか?

Q3_5.有害化学物質は下水道で除去できますか?


■レッスン4−産業排水処理技術■

Q4_1.重金属のそれぞれの特性は、処理方法にどのような影響を及ぼすのですか?

Q4_2.浮上分離で、水より比重の重い物質の分離は可能ですか?

Q4_3.膜の材質にはどのようなものがありますか?

Q4_4.促進酸化と一般の酸化との違いは何ですか?

Q4_5.イオン交換帯、吸着帯が生じるメカニズムは何ですか?


■レッスン5−地下水・土壌汚染の対策技術■

Q5_1.重金属処理で、洗浄の前になぜ分級(粒度による分別)を行うのですか?

Q5_2.エアースパージングでは、地下水を撹乱することによってかえって汚染を拡大することはないのですか?

Q5_3.LNAPL、DNAPLとは何ですか?

Q5_4.地下杭型の反応性バリアーでは、汚染水が地下杭を避けて流れることはないのですか?

Q5_5.ファイトレメディエーションにおいて遺伝子操作は用いられていますか?


■レッスン6−地下水・土壌汚染対策の実例■

Q6_1.揮発性有機化合物汚染で、浄化速度を速める工夫、その他の浄化法にはどのようなものがありますか?

Q6_2.なぜガス調査で地下水汚染状況が分かるのですか?

Q6_3.土壌ガス調査、ボーリング調査以外に、汚染物質の探査をする方法はないのですか?

Q6_4.地下水揚水、ガス吸引の濃度は、両対数上で直線的に変化するように見えますがなぜですか?

Q6_5.土壌ガス吸引で、不均一なガス流はどのような場合に生じますか?


■レッスン1−水・土壌汚染の概論・関連法規と処理技術■

Q1_1
生活環境の保全に関する環境基準の達成率はどのようになっていますか?


A1_1
生活項目の代表的指標であるBOD、CODについて見ると、平成12年度の達成率は河川で82.4%、湖沼で42.3%、海域で75.3%となっています。河川では、徐々に改善される傾向が見られますが、湖沼、海域では横ばいの傾向です。湖沼の達成率の低いことが分かります。

環境基準の達成状況(BODまたはCOD)


環境基準(BODまたはCOD)の達成率の推移

Q1_2
人の健康の保護に関する環境基準の達成率はどのようになっていますか?


A1_2
人の健康の保護に関する環境基準(環境基準健康項目)についての達成率は、平成12年度で99.2%でした。傾向的には、平成5年に環境基準が低い値に変更された鉛、砒素以外は、環境基準超過検体率は年々減少の傾向にあります。

健康項目の環境基準達成状況(平成12年度)


健康項目に係る環境基準値超過検体率の推移

Q1_3
総量規制のしくみは何ですか?


A1_3
各水域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)ごとに、環境大臣が総量削減基本方針を定め、削減目標量を設定します。これに基づいて、各都道府県知事が、環境大臣の同意のもとに、総量削減計画を定め、発生源別の削減目標量、削減法などについて定めます。
排水量が1日当50 m3を超える事業場については、目標の遵守義務、汚濁負荷発生量の測定義務があります。それ以下の事業場、畜産、養殖、農業、一般家庭については、汚濁負荷削減などの指導を行います。その他、下水道や浄化槽などの整備の計画も削減計画に含まれます。

Q1_4
総量規制の効果はあがっていますか?


A1_4
計算された総負荷量については、年々減少の傾向が見られ、効果があがっていると言えます。しかしながら、3海域の環境基準達成率(COD)には、ほとんど改善が見られません。

発生負荷量の推移と削減目標量


三海域の環境基準(COD)達成率の推移

Q1_5
非特定汚染源からの排出抑制については、どのようなことが行われていますか?


A1_5
国レベルでは、市街地については、初期雨水貯留による負荷削減の可能性の検討、雨天時に市街地から公共用水域に流入する負荷を削減するための新世代下水道の検討が進められており、農地については、汚濁負荷発生抑制対策について検討するとともに、水田や土壌がもつ浄化機能の把握などの調査検討とモデル流域における対策計画の策定が行われています。農地に関しては、地下水汚染に悩む地域において、施肥量の削減などの措置がとられている例もあります。

■レッスン2−上水道関連技術■

Q2_1
消毒にオゾンや紫外線を用いないのはなぜですか?


A2_1
オゾンや紫外線は殺菌効果が高く、トリハロメタンの生成もないことから有用と考えられますが、残留性がないことから、オゾンや紫外線の単独では、蛇口までの安全性を確保できないことが問題となっています。

Q2_2
緩速ろ過法では、なぜおいしい水ができるのですか?


A2_2
緩速ろ過池では、SSの捕捉作用に加えて、ろ材表面に生育した微生物による分解が行われるために、急速ろ過法では除去されないアンモニアや、鉄、マンガンの酸化、臭気物質界面活性剤やフェノール等の溶解性有機物の分解が行われるため、天然水に近い良質の水がえられるからです。

Q2_3
沈殿池の沈殿除去率を向上させるためには、どのような方法がありますか?


A2_3
沈殿池の沈殿除去率は沈殿池の表面積で決まってくるために、表面積を大きくとる必要があります。そのため、敷地面積が限られる場合には、沈殿池を2階式とした、平衡2階層沈殿池や折り返し2階層沈殿池などが用いられます。また、沈殿池に斜めに板を設置する傾斜板沈殿池や、中間で上澄み水を取り出して、流量を低下させることにより除去率を向上させる中間取出法も有効です。

Q2_4
浄水処理過程で生成した汚泥はどのように処分するのですか?


A2_4
浄水場内で濃縮、脱水を行った後、埋め立て処分を行うのが一般的です。下水道や清掃事業で受け入れて下水汚泥や廃棄物といっしょに処分されたり、産業廃棄物として委託処分される場合もあります。

Q2_5
ろ過砂の有効径と均等係数とは何ですか?


A2_5
ろ過砂のふるいによる分析結果を基に作成された粒径加積曲線から求めることができます。有効径は重量通過率10%の粒径であり、均等係数は重量通過率10%の粒径に対する重量通過率60%の粒径の比であり、この値が小さいほど粒径のばらつきが小さいことを意味します。急速ろ過では有効径0.45〜0.7mm、均等係数1.7以下、0.3〜2.0mmの範囲のろ過砂を用いることとなっています。

■レッスン3−下水道関連技術■

Q3_1
活性汚泥法で最終沈殿池での固液分離が悪化する原因は何ですか?またその対策方法も教えてください。


A3_1
固液分離障害で最も多いのは、糸状性細菌の増殖により沈降性が悪化するものです。原因となる糸状性細菌には多くの種類が存在し、その細菌によって対策が異なることから、原因微生物を特定することが重要です。糸状性バルキング以外にも、汚泥の分散や浮上、ピンポイントフロック等の原因もあることから、注意が必要です。
固液分離が悪化した場合に、応急対策として返送率を増大させると、処理槽の滞留時間が短くなり処理性能が悪化することに加え、沈殿池の滞留時間も低下して悪循環を引き起こすので注意が必要です。

Q3_2
有用微生物を処理に用いることはできないのですか?


A3_2
有用微生物を固定化して処理に用いる方法は、硝化促進に関しては実用化されていますが、有害物質分解菌等を用いる方法はまだ、研究段階です。下水中に種々雑多な微生物が存在するために、処理槽の中で増殖可能な微生物が優先化してくることから、外来の微生物を固定化しても処理槽の中で増殖可能かが問題です。また、開放型で行うために、処理水への流出も考慮しなければなりません。

Q3_3
循環型硝化脱窒法やA2Oでは窒素除去率は低いのではないですか?


A3_3
理論的には循環率200%で運転した場合、硝化槽で硝化が100%起こり、脱窒槽で100%脱窒が行われても、窒素除去率は67%です。このため、流入水を分割して最後に脱窒を設ける方法や処理水に硫黄脱窒を用いて処理する方法が提案されています。
また、硝化細菌の増殖速度が遅く硝化速度も遅いことから硝化細菌を処理槽内に高濃度に保持して硝化を促進するために、硝化細菌を包括固定化して投入する方法や硝化槽に生物付着担体を投入する方法などが用いられています。

Q3_4
リンは枯渇資源ですがこれを回収する方法はないのですか?


A3_4
嫌気好気活性汚泥法やA2O法ではリンが汚泥中に蓄積されることから、汚泥処理においてリンを回収することが可能です。回収方法としては、嫌気条件としてリンを汚泥中から吐きださせた後、MAPとして回収するか、晶析を行う方法が用いられています。さらにリンを特異的に吸着する吸着剤の利用等も検討されています。リンの回収は資源循環の観点から今後益々重要となります。

Q3_5
有害化学物質は下水道で除去できますか?


A3_5
毒性のある化学物質が高濃度に流入した場合、処理槽内の微生物に毒性を示し処理能が低下しますが、長期間その物質が低濃度で流入すると、処理槽内に分解能のある微生物が集積されたり、処理槽内の微生物がその分解能を獲得して、除去が可能となります。しかし、分解しても代謝産物が生成される場合もあることから、注意が必要です。また、生物分解性の低いものでも、汚泥に吸着され処理水に流出しないものが多くあります。

■レッスン4−産業排水処理技術■

Q4_1
重金属のそれぞれの特性は、処理方法にどのような影響を及ぼすのですか?


A4_1
重金属別の主な処理法を表にまとめます。
重金属の種類 代表的処理法 備考
カドミウム、鉛、銅 水酸化物沈殿法、硫化物沈殿法、フェライト法 強アルカリで再溶出。要pH調整
ニッケル 水酸化物沈殿法、硫化物沈殿法、フェライト法 アンモニアの影響有り。但しpH11以上で影響低減効果大
総水銀 硫化物沈殿法、フェライト法 過剰硫化物存在下溶解性錯塩生成。基準水質達成のため活性炭処理、キレート樹脂処理を併用。
砒素 共沈法(塩化第二鉄等鉄塩) 硫酸アルミニウムなどアルミニウム塩による除去効果は低い。

Q4_2
浮上分離で、水より比重の重い物質の分離は可能ですか?


A4_2
水よりも比重の重い物質も、加圧浮上などの気泡浮上法(微小気泡の浮力により縣濁物質を浮上させる方法)で分離が可能です。水よりも軽いものの分離は、自然浮上(オイルセパレーターなど)法により、行われます。

Q4_3
膜の材質にはどのようなものがありますか?


A4_3
コロジオン、酢酸セルロースなどセルロース系のもの、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニールアルコール、ポリフッ化ビニリデンなど合成高分子系のもののほか、黒鉛、セラミックス、多孔質ガラスなどの素材が用いられています。

Q4_4
促進酸化と一般の酸化との違いは何ですか?


A4_4
促進酸化とは、ヒドロキシラジカルを生成させてその強い酸化力で、通常の処理法では分解が難しい物質を酸化分解する手法の総称です。通常の酸化は酸素を供与しますが、ラジカルは生成しません。

Q4_5
イオン交換帯、吸着帯が生じるメカニズムは何ですか?


A4_5
イオン交換樹脂、吸着剤は、粒状になっていますが、この中に汚染物質が拡散し、粒子内の表面でイオン交換、吸着します。粒子内の拡散にある程度時間がかかることから、汚染物質の破過の先端はなだらかになり、イオン交換帯、吸着帯が生じます。また、塔内のある断面に着目したとき、その中の流速は均質ではなく、ある分布を持っています。この分布もイオン交換帯、吸着帯が生ずる一因となります。

■レッスン5−地下水・土壌汚染の対策技術■

Q5_1
重金属処理で、洗浄の前になぜ分級(粒度による分別)を行うのですか?


A5_1
重金属は、細かい沈殿物の形か、あるいは、粘土鉱物などの特定の大きさの粒子に吸着していることが多くあります。このため、分級することにより、重金属含有量の高い分画と低い分画に分けることで、効率の高い除去が期待できます。

Q5_2
エアースパージングでは、地下水を撹乱することによってかえって汚染を拡大することはないのですか?


A5_2
結論から言うと、全くない、とはいえません。このため、実施にあたっては、周辺に検水井を設けるなどして、地下水中の汚染物質の濃度をモニタリングしながら浄化対策を続けることが必要です。どの程度の範囲の地下水の流動が影響を受けるかは、現場の状況によります。

Q5_3
LNAPL、DNAPLとは何ですか?


A5_3
NAPLとは、Non-aquaous phase liquidの略で、水以外の液相のことを言います。つまり、油やある種の有機溶剤などは、水と混じらず、分離して別の液相を生じますが、このことを言います。
LNAPLはlight non-aqueous phase liquidで水よりも軽いもの、DNAPLはdense non-aqueous phase liquidで水よりも重いもののことを言います。

Q5_4
地下杭型の反応性バリアーでは、汚染水が地下杭を避けて流れることはないのですか?


A5_4
地下水は、透水性の高いところを流れます。地下杭状の反応性バリアーの透水係数を周辺土壌より十分高くしておくことにより、地下水が主に地下杭を流れるようにすることができます。地下杭は通常、数列配置されるので、地下杭を全く通らない水流をほとんどなくすることは十分可能です。

Q5_5
ファイトレメディエーションにおいて遺伝子操作は用いられていますか?


A5_5
まだ多くは研究段階ですが、汚染物質を濃縮または分解・除去する機能を発現する遺伝子を特定し、遺伝子操作である植物にその能力を付与する研究が盛んに行われています。例えば、タバコにPCB分解遺伝子を組み込み、ビフェニール化合物を分解させた例などが報告されています。

■レッスン6−地下水・土壌汚染対策の実例■

Q6_1
揮発性有機化合物汚染で、浄化速度を速める工夫、その他の浄化法にはどのようなものがありますか?


A6_1
様々な工夫がなされています。例えば、地下水揚水において界面活性剤を加えることにより、汚染物質の溶解度を高め、間隙中の有機化合物相を押し出しやすくする工夫がなされています。また、エアースパージングで、微生物の働きを利用するバイオベンティング、土壌にスチームを導入し、熱により、汚染物質を分解、もしくは抽出するスチームインジエクションなどが試みられています。

Q6_2
なぜガス調査で地下水汚染状況が分かるのですか?


A6_2
地下水、土壌が揮発性物質で汚染されている場合、その直上の土壌ガスは、その液相と平衡になります。地表での濃度はほぼゼロになると考えられ、そこに濃度勾配が生じ、揮発性物質は汚染部位から地表へとごくゆっくりと拡散します。汚染部位が極端に深くなければ、その上層の土壌中のガス濃度は、地下水・土壌中の汚染物質の濃度が高いほど高くなります。このように、上層の土壌ガスは、地下水・土壌中の汚染物質の濃度を反映するため、ガス調査で地下水汚染部位を(ある程度)知ることができるのです。

Q6_3
土壌ガス調査、ボーリング調査以外に、汚染物質の探査をする方法はないのですか?


A6_3
重金属については、基本的に土壌サンプルを採取して調査するしかありません。
揮発性有機化合物に関しては、土壌ガス調査、ボーリング以外にも探査法があります。例えば、土壌溶液採取器を数多く埋め、土壌中の濃度分布を測定することが試みられたことがありますが、サンプル点を数千〜数万にしないと、全体像が見えない、という難点があり、現在ではあまり実用的であるとは考えられていません。
もうひとつ、土壌に、揮発性有機物に溶ける、あるいはその表面に吸着するトレーサーを流し、それを別の井戸で回収する方法で、不活性のトレーサーに対する流出の遅れ時間から、揮発性有機化合物の相が存在するか否かを見ることができます。しかし、揮発性有機化合物が水にほとんど溶けて独立の相としては存在しない場合には、検出が難しいこと、汚染部位の特定が難しい、という難点があります。

Q6_4
地下水揚水、ガス吸引の濃度は、両対数上で直線的に変化するように見えますがなぜですか?


A6_4
必ず直線になるとは限りませんが、多くの事例で、近似的に両対数上で直線的な減少が見られます。モデルを立て、溶出速度、あるいはミクロ孔などの停滞部位内の拡散の時定数に(べき乗則に近い)分布を与えると、このような両対数上で直線の、濃度が徐々に減っていく傾向が見られることが分かっています。ただし、停滞部位の大きさ、物質移動係数、拡散速度、いずれに分布を与えても同じような傾向が得られていますから、実際には、何がこの傾向を決めているのかを判断するのは困難です。
ミクロ孔や、土壌有機物内の遅い拡散速度がこれを決めているという説が現在のところ有力といわれています。

Q6_5
土壌ガス吸引で、不均一なガス流はどのような場合に生じますか?


A6_5
まず、浄化を考えている領域内での土質が均一でない場合、透気性が空間的に異なってくるので、それが流れの不均一性を生みます。また、領域内に亀裂がある場合、そこに短絡流が生ずる可能性が高くなります。土壌空気は、透気性の高いところを流れやすいので、以上のような原因で空気のとおり道ができてしまうと、空気の流れにくい部分において浄化効果が下がることが懸念されます。しかしながら、土壌気相の流れの把握・解析は難しいため、不均一性がどの程度浄化に影響を及ぼすかについてはよく分かっていません。