■1. 地球温暖化のメカニズムと影響■

Q1.温暖化の影響で、なぜ海面が上昇するのですか?

Q2.温室効果への寄与率はCO2よりも水蒸気の方が高いのではないでしょうか?

Q3.オゾン層破壊が地球温暖化に及ぼす影響はあるのですか?

Q4.サンゴの白化の原因は地球温暖化と考えて良いのでしょうか?

Q5.地球温暖化によって食料にはどのような影響があるのでしょうか?


■2. 地球温暖化の原因物質と寄与■

Q6.森林の減少はCO2の増加を引き起こしているのですか?

Q7.エアロゾルは地球温暖化の軽減にどのように寄与しているのですか?

Q8.地球温暖化係数(GWP)の算出方法はどのように行っているのですか?

Q9.気候変動枠組条約の附属書I国と附属書II国との違いは何ですか?

Q10.京都議定書で決められた温室効果ガスの削減目標はどのようなものですか?


■3. CO2以外の温室効果ガスの削減技術■

Q11.代替フロンとはどのような物質ですか?

Q12.メタンや一酸化二窒素はなぜ農業から発生するのですか?

Q13.HFCs、PFCs、SF6とはどのような物質ですか?

Q14.オゾン層の破壊はどうして起こるのですか?また、破壊によってどのような影響が出るのですか?

Q15.フロン回収について教えてください。


■4. 低炭素エネルギー源への移行■

Q16.化石燃料も生物(の遺骸)から形成されるので、再生可能なエネルギー資源ではないでしょうか?

Q17.石油の可採年数は数十年前からずっと40年程度といわれています。なぜ一向に減らないのでしょうか?

Q18.原子力発電にはウランの原子核分裂のエネルギーをどのように利用するのですか?

Q19.我が国で太陽光発電の普及がやや頭打ちになったのはなぜですか?

Q20.なぜ自然エネルギーを用いた発電のCO2発生が0ではないのですか?


■5. 省エネルギーによる温暖化対策■

Q21.燃料電池車は全くCO2を発生しないのですか?

Q22.トップランナー方式とは何でしょうか?

Q23.ヒートアイランドは温暖化が原因なのでしょうか?

Q24.IGCC石炭複合化発電の「複合」はどういう意味でしょうか?

Q25.火力発電所の効率とはどのようなことでしょうか?


■6. 炭素固定、隔離■

Q26.CCSではエネルギーを使用するが、化石燃料を用いると、CO2が発生します。これで正味のCO2削減が可能なのでしょうか?

Q27.日本では地中貯留が可能なのでしょうか?

Q28.メタンハイドレートとCO2ハイドレートの違いは何ですか?

Q29.炭素隔離CCSで、排ガス中からCO2だけを分離・回収する理由は何ですか。そのままでもよいのではありませんか?

Q30.海洋施肥は富栄養化につながるのでは?

Q31.珊瑚礁はCO2を吸収しているのでしょうか?

Q32.生物ポンプはどのようなメカニズムでCO2を固定するのでしょうか?


■7. 温暖化対策技術の位置づけと評価■

Q33.CO2を原料にして化学製品を製造するプロセスが提案されているが、温暖化対策としてはどの程度の効果があるのでしょうか?

Q34.CO2を還元してメタノールに変換し、エネルギー源として利用する方法が提案されています。このような方法の温暖化対策としての位置づけはどうなのでしょうか?

Q35.京都メカニズムの、共同実施(JI)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違いは何ですか?

Q36.カーボンオフセットになるのはどのようなケースがあるのでしょうか?

Q37.炭素税は現在どのような国で行われており、いくらぐらいなのでしょうか?


■1. 地球温暖化のメカニズムと影響■


Q1
温暖化の影響で、なぜ海面が上昇するのですか?


A1
温暖化が進行すると、陸上の氷河や氷床の氷が溶け海へ流れ込むことで海水量が増加し、さらに水温も上がるため、海水体積の膨張も伴うことにより、海水面が上昇すると考えられています。しかし、海に浮かぶ海氷につきましては、コップの水に浮かぶ氷と同様に、どれだけ溶解しても水位の変化には関係しません。2100年までの海面上昇は地球平均で9〜88cmと予測されており、海岸の堤防が整備されている東京湾や大阪湾は海抜0メートルであっても水没しないとされています。海面上昇に対して脆弱な地域では、今後、海岸や河川の整備など早めの対策が必要であると思われます。

Q2
温室効果への寄与率はCO2よりも水蒸気の方が高いのではないでしょうか?


A2
地球上の大気は水蒸気やCO2などの温室効果ガスにより温められています。中でも水蒸気は広い波長域で赤外線を吸収するため、吸収波長域の狭いCO2と比較して温室効果への寄与は大きいです。また、気温が高いほど飽和水蒸気量は大きいため、大気中に含まれる水蒸気量は増加します。つまりCO2量の増加に伴う気温上昇により、大気中の水蒸気量も増加するため、赤外線吸収量も増えることになります。ここで大切なことは、CO2の増加は人間活動が原因であるため、それを起点に大気中の水蒸気量が増加するということです。さらに灌漑や化石燃料の使用により直接的に増加した大気中の水蒸気量は、観測された水蒸気量の1%にも満たないことから、CO2による温室効果が注目されているのです。

Q3
オゾン層破壊が地球温暖化に及ぼす影響はあるのですか?


A3
オゾン層は地球に到達する太陽光のうち有害紫外線の多くを吸収し、地表への到達を防ぐ働きをしています。また、オゾンは赤外線も吸収するため温室効果ガスでもあります。オゾン層の破壊が進行することで、地表への有害紫外線の到達量は増加しますが、吸収する赤外線量が減少するため温室効果が低くなり気温は低下すると考えられます。しかし、地表付近の温室効果ガスと比較すると成層圏のオゾンの影響は非常に小さく、逆に温暖化が進むことにより、成層圏のオゾン量に変化をもたらすとも言われています。

Q4
サンゴの白化の原因は地球温暖化と考えて良いのでしょうか?


A4
現在確認されているサンゴの白化に対しては、温暖化による海水温の上昇が影響していると考えられています。サンゴの白化は、環境ストレスによる褐虫藻の光合成系の破壊により、サンゴが褐虫藻を放出したために起こります。そのため、温暖化による水温上昇(高水温)が、サンゴの白化頻度を高めているとの報告があります。しかし、温度以外にも淡水や土砂の流入なども白化の原因として考えられているため、温暖化だけが原因であるとは言えません。

Q5
地球温暖化によって食料にはどのような影響があるのでしょうか?


A5
中緯度から高緯度の地域では、平均気温が1〜3℃上昇する場合に、至適温度に近づく作物については生産性がわずかに増加すると予測されています。しかし、低緯度地域は既に気温が高いため、わずか1〜2℃の上昇においても生産性が減少するため飢餓リスクが増加すると予測されます。このように温度上昇の影響は地域により異なりますが、世界全体での平均気温が3℃を超えて上昇すると、作物生産性は悪化する地域が増えるとされています。また、温暖化は気温だけでなく、異常気象や気象災害なども引き起こす可能性があります。例えば、オーストラリアの小麦の生産量は、2006年の大干ばつで前年に比べ約60%減少し、輸出量も約2/3に減少しました。その結果、輸出価格が上昇し、日本にも大きな影響があり、パンやうどんなどの食品の値段が上がりました。このように地球温暖化が進めば、世界各地の食料供給に深刻な影響が及ぶと懸念されています。



■2. 地球温暖化の原因物質と寄与■


Q6
森林の減少はCO2の増加を引き起こしているのですか?


A6
森林伐採と伐採した木材搬出後に残る地上バイオマスの腐敗(分解)によるCO2排出量も考慮した場合、人為的な森林関係での排出量は、温室効果ガス総排出量の17.3%と計算されています。地球全体でのCO2収支を考えた場合、海洋や陸域がCO2を吸収することは知られているため、森林の減少がCO2増加を引き起こしていると考えられます。しかし、世界中の森林自体の正味のCO2吸収量を正確に算出するのは困難とされていて、現在も世界の陸上植物によるCO2吸収量を正確に求めるために研究が行われています。

Q7
エアロゾルは地球温暖化の軽減にどのように寄与しているのですか?


A7
エアロゾルは大気中での光やエネルギーの流れを変化させるために気温を変化させる効果を持っています。具体的には、エアロゾル自体が光を反射・吸収することで地表への太陽光を遮蔽させる直接効果と、雲の性質を変化させることによる間接的な効果が挙げられます。間接的な効果とは、小さい雲粒の増加によるアルベド効果の増加や雲粒が小さいために除去されるまでの存在時間が長くなることにより長時間の反射などが挙げられます。しかし、温暖化に影響するエアロゾルの見積りは難しく、放射強制力で示した値には森林火災などによって発生した分の影響も含まれており、人為起源の割合のほうが小さいと考えられます。

Q8
地球温暖化係数(GWP)の算出方法はどのように行っているのですか?


A8
地球温暖化の効果を表す指標に地球温暖化係数(GWP)が使用されており、これらは各物質の赤外吸収力と大気中の寿命により決まってきます。しかし、世界で統一された計算方法がないのが現状で、今後、共通の認識で統一化がはかられていきます。IPCC第3次報告書にも多数引用されたRITEが開発したGWP計算モデルではCO2を基準としており、各温室効果ガスのGWPは赤外光吸収力の実測値と大気中濃度の積を放出後の経過時間で積分した値を、同様に算出したCO2の値で割ることにより求められます。

Q9
気候変動枠組条約の附属書I国と附属書II国との違いは何ですか?


A9
気候変動枠組条約は、1992年5月に国連にて採択され、同年の国連環境開発会議開催期間中に日本を含む155カ国が署名し、2009年11月現在で194の国と地域が締約しています。この条約では『共通だが差異のある責任』『開発途上締約国等の国別事情の勘案』『速やかかつ有効な予防措置の実施 』の原則のもと、主に先進国から温室効果ガス削減のための政策の実施等の義務が課せられています。前文および26か条と2つの附属書から成っており、附属書Iに掲載される国を附属書I国、附属書IIに掲載される国を附属書II国と言い、それ以外の国を非附属書I国としています。附属書I国は先進国および経済移行国の計41カ国で構成され、温室効果ガスの人為的な排出を抑制し、さらに、温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫を保護することが義務付けられています。また、温室効果ガスの排出及び吸収源に関する情報を提出する必要があります。附属書II国は附属書I国の中でも先進24カ国のみを示し、附属書Iでの内容に加え開発途上国の締約国が義務を果たすために要する費用を供与することが義務付けられます。
附属書II国には以下の国および地域が含まれています。
オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、欧州経済共同体、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本国、ルクセンブルグ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国

Q10
京都議定書で決められた温室効果ガスの削減目標はどのようなものですか?


A10
1997年12月に京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)において、各国の温室効果ガスの削減目標は次のように決められています。これらを達成した場合、先進国全体で1990年比5.2%の削減になります。
対象ガスの種類及び基準年
 ・二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(1990年を基準年)
 ・HFC、PFC、SF6(1995年を基準年とすることができる)
第1期は、2008年〜2012年の5年間
削減率
 ・日本:-6%、米国:-7%、EU:-8%、カナダ:-6%、ロシア:0%、豪州:+8%、NZ:0%、ノルウェー:+1%



■3. CO2以外の温室効果ガスの削減技術■


Q11
代替フロンとはどのような物質ですか?


A11
CFC-11(フロン11)、CFC-12(フロン12)、CFC-113(フロン113)、CFC-114(フロン114)、CFC-115(フロン115)の5種類は特定フロンと呼ばれ、冷媒や溶剤、スプレー缶に詰めるガスなどに用いられてきました。しかし、1974年にローランドとモリーナによって「成層圏に達したフロンが紫外線によって分解され、そのとき発生した塩素がオゾン層を破壊する可能性がある」と指摘されたことから、特定フロンはモントリオール議定書により1996年末までに全廃されました。特定フロン類の代替品として用いているフロン類似品のことを代替フロンと呼んでいます。
代替フロンとしては塩素を含まないこと、もし含んでいたとしても地球温暖化への影響が少ないこと、また毒性のないことが条件になります。代表的な代替フロンには、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)やハイドロフルオロカーボン(HFC)などがありますが、HCFCのような物質でも全く無害というわけではないために、先進国では2020年までに全廃することとなっています。

Q12
メタンや一酸化二窒素はなぜ農業から発生するのですか?


A12
メタンは水田や湿地にて発生することが多く、肥料や土壌中の有機物を分解することによって生成したCO2や酢酸などからメタン生成菌の働きにより生成されます。このメタン生成菌は嫌気性のため、水田などの湛水した状況がメタン生成を促進します。また、一酸化二窒素も農業にて発生します。まず、肥料や土壌中の有機物の分解によって生成したアンモニアは、硝化細菌の活動によって亜硝酸、硝酸となり(硝化)、植物に吸収されます。次に亜硝酸、硝酸は、湛水した土壌や土壌粒子の団粒中のような嫌気性環境で、脱窒細菌によって窒素ガスに変化し(脱窒)、大気中に放出されます。一酸化二窒素は、この硝化と脱窒の過程で発生する副産物で、施肥直後に急激に増加します。

Q13
HFCs、PFCs、SF6とはどのような物質ですか?


A13
HFC(ハイドロフルオロカーボン)は炭化水素の水素原子がフッ素(F)で置換された物質です。
HFC-41はフルオロメタン(CH3F)、HFC-32はジフルオロメタン(CH2F2)、HFC-23はトリフルオロメタン(CHF3)を示し、HFC-134aは1,1,1,2−テトラフルオロエタン(C2H2F4)、HFC-143aは1,1,1−トリフルオロエタンを示しています。PFC(パーフルオロカーボン)の「パー」とは炭化水素の水素原子をすべて置換したと言う意味です、従って、PFC-14 はテトラフルオロメタン(CF4)、PFC-116はヘキサフルオロエタン(C2F6)となります。また、SF6は硫黄原子1個の周りに6つのフッ素原子が結合した物質です。いずれも温室効果ガスとして京都議定書にて削減目標が盛り込まれた人工ガス類です。これらはCO2と比較し非常に低濃度ですが、地球温暖化係数(GWP)が高いため、フロン類も含んだ場合の温暖化寄与率は13%程度に至ると試算されています。特に寿命の長いSF6など温室効果ガスとして長期的な影響をもたらす物質については、迅速な対応が必要になると思われます。

Q14
オゾン層の破壊はどうして起こるのですか?また、破壊によってどのような影響が出るのですか?


A14
オゾン(O3)の大部分は成層圏に存在し、オゾン層と呼ばれています。オゾン層は太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収し地球上の人類やその他の生物を守っていますが、フロンなどの人工化学物質によって破壊されることが明らかになってきました。フロンは安定な化合物で、大気中に放出されると分解されず、成層圏に到達します。成層圏では太陽光によって分解されますが、そのとき塩素原子を放出します。この塩素原子がオゾンを破壊するわけです。フロンの他にオゾンを破壊するものにハロン、トリクロロエタン、四塩化炭素などがあります。
オゾン層が破壊されると、地表へ到達する長中波のUV-B(280〜320nm)の紫外線が増加します。この紫外線量の増加は、人類をはじめとする動物に対し白内障、皮膚ガンの増加、皮膚免疫機能の低下をもたらし、植物にとっても成長阻害、葉の色素の形成阻害などの影響を与えます。

Q15
フロン回収について教えてください。


A15
日本では、家庭用の冷蔵庫及びエアコンは家電リサイクル法によって、カーエアコンは自動車リサイクル法によって、それぞれフロン類の回収が行われています。そして、業務用の冷凍・冷蔵機器及びエアコン(業務用冷凍空調機器)は、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)」に基づいて回収が行われています。



■4. 低炭素エネルギー源への移行■


Q16
化石燃料も生物(の遺骸)から形成されるので、再生可能なエネルギー資源ではないでしょうか?


A16
これは、考える時間のスケールによります。バイオマスエネルギーが植物の光合成に由来しているのと同様に、化石燃料は、古代の生物の遺骸が長期間かけて変化したものです。したがって、化石燃料も"再生"される可能性があります。しかし、ここで考えなければならないのは、人類がエネルギーを使用する速度です。「再生可能」であるためには、エネルギー資源の再生速度が人類の消費速度を上回っている必要があります。もし、バイオマスエネルギーが生産される速度も人類の消費速度の方が速ければ、バイオマスエネルギーも再生不可能になります。このように、再生可能かどうかはあくまで相対的なものです。

Q17
石油の可採年数は数十年前からずっと40年程度といわれています。なぜ一向に減らないのでしょうか?


A17
石油などの地下資源の可採年数は、2つの量、つまり、確認埋蔵量と年間消費量の比で決まります。石油の消費量がずっと増加傾向にあるのに、可採年数がここ数十年殆ど変わっていないのは、確認埋蔵量が増加していることが主な原因です。確認埋蔵量の増加は、新たな油田の発見が大きな理由になりますが、石油の価格の上昇も確認埋蔵量を増加させます。すなわち、確認埋蔵量は、商業的に採算が取れる資源量のことで、石油価格の上昇に伴い増加します。ここ数年の、原油価格上昇によって、オイルサンドやオイルシェールも含めた比較的コストの高い石油資源でも商業ベースに乗るようになります。ただし、最近は大規模な油田の発見が減少しており、すでに石油の生産量がピークを迎えつつあるとの見方もできます。

Q18
原子力発電にはウランの原子核分裂のエネルギーをどのように利用するのですか?


A18
ウランの原子核が分裂すると莫大なエネルギー(核力のエネルギー)を放出します。このエネルギー放出を制御することで徐々に熱エネルギー変換し、これを用いて水蒸気を発生させ、蒸気タービン発電機によって発電を行うのが原子力発電(軽水炉)です。発電に熱エネルギーを用いる点では、火力発電とは違いがないのです。

Q19
我が国で太陽光発電の普及がやや頭打ちになったのはなぜですか?


A19
数年前までは日本は太陽電池の生産量も太陽光発電の導入量も世界一でしたが、近年、ドイツやスペインといったヨーロッパの国々に追い抜かれています。この大きな理由は、太陽光発電設備の価格にあります。現状では、太陽光発電による発電単価は石炭火力の数倍から十倍以上となっており、太陽光発電の普及には価格の低下に加えて、何らかの経済的インセンティブ、政府の補助金などが不可欠です。日本は政府補助金を中止した結果、太陽光発電の普及の伸びが止まりました。これに対して、スペインの太陽光発電の大幅な伸びは政府の補助金によるところが大きいと考えられています。

Q20
なぜ自然エネルギーを用いた発電のCO2発生が0ではないのですか?


A20
自然エネルギーを用いた場合でも、発電設備を製造、建設する際にはエネルギーを使用します。これらのエネルギーもすべて自然エネルギーを利用できれば完全にCO2発生量が0になりますが、実際は資材の輸送や製造プロセス、設備のコンクリートなど様々な側面でCO2を発生します。しかし、発電時にはCO2は発生しないので、それ以外のCO2発生量をすべて足しあわせても火力発電よりもずっとCO2発生量は少なくなります。



■5. 省エネルギーによる温暖化対策■


Q21
燃料電池車は全くCO2を発生しないのですか?


A21
燃料電池は、水素と酸素を反応させる際の自由エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスで、反応によって生成するのは水だけです。したがって燃料電池の運転時にはCO2は発生しないことになります。しかしながら、水素も酸素も自然界に資源として存在するわけではありません。水素をたとえばシフト反応を利用して炭化水素から製造する場合には、炭素分がCO2として排出されます。一方、水素を太陽電池を用いて水の電気分解で得る場合にはCO2は発生しません。この場合には完全なCO2フリーな走行が可能になります。このように、燃料電池自動車を評価する場合には、エネルギー資源をどのように得るのかを考慮する必要があります。

Q22
トップランナー方式とは何でしょうか?


A22
冷蔵庫なら冷蔵庫、エアコンならエアコンのようにそれぞれの製品で市場に出回っているもののうち、もっとも省エネルギー性能が高いものを基準とし、他社がそれを目標にして製品開発を行うように促す方式です。このようなトップランナー方式のほか、消費者側からはエコポイントによる製品選択のインセンティブを与える仕組みも導入されています。

Q23
ヒートアイランドは温暖化が原因なのでしょうか?


A23
ヒートアイランド現象は、直接は温暖化とは関係があります。温暖化は地球規模の気候変動であるが、ヒートアイランド現象は都市の中のあくまで局所的な気温の上昇です。温暖化による気温の上昇により、エアコンの使用量が増加することは、ヒートアイランド現象の原因の一つにはなります。

Q24
IGCC石炭複合化発電の「複合」はどういう意味でしょうか?


A24
この場合の複合化は、発電機を複合するという意味です。IGCCでは、まず石炭をガス化することによって得られる高温高圧のガスを用いてガスタービンを駆動し、発電します。発電後ガスの温度は下がりますが、それでも十分高温なため、これを用いて蒸気を発生させ、これを用いて蒸気タービン発電機を駆動させます。このように高温のガスが持つエネルギーを2段階に分けて利用することで発電所全体の発電効率を高めることが可能になります。

Q25
火力発電所の効率とはどのようなことでしょうか?


A25
火力発電所の効率は、燃料を燃焼させたときに発生する熱量のうち、どのくらいの割合が電力に変換されるかで定義されます。効率が50%というのは、たとえば石炭を燃焼させた時の発生する熱エネルギーのうち、半分が電力として取り出せることを表します。現在、最も高い効率の火力発電所は60%近くを達成しています。なお、火力発電所の理論的な最高効率はカルノーの式で与えられ、燃焼時の温度が高いほど効率が高くなりますが、100%に達することはありません。



■6. 炭素固定、隔離■


Q26
CCSではエネルギーを使用するが、化石燃料を用いると、CO2が発生します。これで正味のCO2削減が可能なのでしょうか?


A26
CCSのエネルギー消費は、排ガス中のCO2分離・回収プロセスがほとんどを占めています。火力発電所からCO2を回収した場合、火力発電所の効率が10〜20%低下するといわれています。逆にいうと、CO2をすべて処理してしまうのに、発電量の1割から2割しか必要としません。このことからも、少々効率が低下してもCCSでは正味のCO2削減が可能になります。

Q27
日本では地中貯留が可能なのでしょうか?


A27
地中処理が可能な場所の容量の推定は日本でも行われています。ある推定によれば日本の化石燃料使用量の数十年分以上から発生するCO2量の貯留キャパシティがあるとされています。中でも海底下の地中が貯留に適当な場所であるとされています。

Q28
メタンハイドレートとCO2ハイドレートの違いは何ですか?


A28
ハイドレートは水分子の水素結合で形成されたカゴ状結晶の中にガス分子が取り込まれたシャーベット状の化合物です。カゴの中にメタンが取り込まれたのがメタンハイドレートで、CO2が取り込まれたのがCO2ハイドレートです。ハイドレートの結晶構造はI型、II型、H型の3種類あり、ガスの形状や大きさによって異なる構造をとります。メタンハイドレートもCO2ハイドレートもI型になります。ともに、高圧、低温の条件で生成します。メタンハイドレートは日本近海にも資源があることが確認されており、将来のエネルギー源として期待されています。

Q29
炭素隔離CCSで、排ガス中からCO2だけを分離・回収する理由は何ですか。そのままでもよいのではありませんか?


A29
炭素隔離のターゲットは火力発電所などの大規模集中発生源の排ガス中のCO2です。排ガス中には10〜15%のCO2が含まれており、残りの大部分は燃焼後の空気、つまり窒素と少量の酸素です。排ガスからCO2だけを分離回収するのは、一つは隔離場所まで輸送する際に高圧にして液化する方が輸送の効率が上がるからです。また、地中に圧入する際にも、高温、高圧の状態(超臨界状態)にする必要があります。このような、圧縮、液化の際に窒素や酸素のような液化が困難なガス成分が混ざっていると、非常に多くの無駄なエネルギーを必要とします。つまり、少々分離・回収でエネルギーがかかっても、それを行っておくことがCCSのトータルのコストやエネルギー消費を少なくできるのです。

Q30
海洋施肥は富栄養化につながるのでは?


A30
海洋中に栄養塩を散布して植物プランクトンを増やし、光合成によって海洋へのCO2吸収を促進させるのが海洋施肥です。施肥を近海域で行うと富栄養化の原因になるが、海洋施肥のターゲットは外洋域です。陸地から遠く離れた外洋域では陸地からの栄養塩の流入がないため、栄養塩の不足によって植物プランクトンの増殖が抑えられています。このため、外洋域で不足している栄養素のリンや窒素、あるいは鉄などを散布して植物プランクトンを増やそうとするのが海洋施肥です。

Q31
珊瑚礁はCO2を吸収しているのでしょうか?


A31
珊瑚は動物なので、光合成を行わないため、珊瑚そのものはCO2を吸収することはありません。しかし、珊瑚の中に共生している褐虫藻が光合成を行い、CO2を吸収します。珊瑚礁全体としてCO2の吸収源になるか、あるいは放出源になるかは珊瑚礁の中での物質の移動などが影響すると考えられています。

Q32
生物ポンプはどのようなメカニズムでCO2を固定するのでしょうか?


A32
海表面の大気に接している海水中にCO2が溶解し、それを用いて植物プランクトンが光合成を行います。植物プランクトンは動物プランクトンに補食され、さらに動物プランクトンが魚類に捕食されるという食物連鎖が成り立っています。それぞれの生体が死亡すると死骸となって、言い換えると有機物固体として海水中を沈降します。その結果、炭素の大気から深海への流れ(フラックス)が生じます。このような働きが生物ポンプと呼ばれるものです。深海の海水は表層水とはほとんど混合が起こらないため、一旦深海に沈降した有機物は、その場で長期間にわたって固定されることになります。



■7. 温暖化対策技術の位置づけと評価■


Q33
CO2を原料にして化学製品を製造するプロセスが提案されているが、温暖化対策としてはどの程度の効果があるのでしょうか?


A33
CO2を原料にして、たとえば様々なプラスチックを製造するための新規なプロセスが提案されています。これらは、例えば有害な物質を用いないとか、廃棄物を出さないとか言った意味で環境にやさしい可能性があり、"グリーン"であると言われています。しかし、温暖化対策という観点から見ると、製造に必要なエネルギーをどこから得るのか、あるいはプロセスで化石燃料を燃焼させる必要があるのかなど、総合的にCO2排出量を評価する必要があります。このようなプロセスは、少なくともCCS(炭素隔離)の一つではないと考えられます。

Q34
CO2を還元してメタノールに変換し、エネルギー源として利用する方法が提案されています。このような方法の温暖化対策としての位置づけはどうなのでしょうか?


A34
CO2を還元して、たとえばメタノールなどに変換してエネルギー源として利用する方法が提案されています。しかし、CO2は炭素化合物としては非常に安定な存在なので、還元してメタノールのようなエネルギー的に高い物質に変換するには、外部からエネルギーを与えてやる必要があります。この場合、CO2は単なるエネルギー媒体に過ぎません。たとえば、太陽光エネルギーを用いてメタノールに変換する場合には、メタノールが太陽光エネルギーの媒体になります。このようなプロセスは全体としてはCO2の量は減少しないので、温暖化対策とはいえません。

Q35
京都メカニズムの、共同実施(JI)とクリーン開発メカニズム(CDM)の違いは何ですか?


A35
共に、温室効果ガス削減のための方策を実施することで、実施主体となっている国の温室効果ガス排出量の削減として勘定するものです。先進国、すなわち京都議定書で温室効果ガス排出削減義務が課された国(付属書I国)同士が行う場合が共同実施で、実施する国が発展途上国、つまり温室効果ガス排出削減義務を負わない国(非付属書I国)で行うのがクリーン開発メカニズムです。共に削減分が主体となっている国(付属書I国)の温室効果ガス排出削減量として勘定されます。

Q36
カーボンオフセットになるのはどのようなケースがあるのでしょうか?


A36
カーボンオフセットとは、温室効果ガス排出の削減が困難な部分の排出量について、他の場所でそれを行うことで埋め合わせることをいいます。たとえば、化石燃料を用いて放出したCO2の分だけ植林を行い、空気中のCO2を固定する場合、社会全体としてはCO2の放出が0に押さえられます。もちろん放出量すべてが埋め合わせできない場合もありますが、それでもいくらかの温室効果排出削減につながります。

Q37
炭素税は現在どのような国で行われており、いくらぐらいなのでしょうか?


A37
現在、炭素税が導入されているのはスウェーデンをはじめとする北欧諸国、オランダ、ドイツ、イタリア、イギリスの8ヶ国です。炭素税の金額はCO2 1トンあたり数千円程度ですが、これまでに導入された炭素税は、排出されたCO2に課税するのではなく、燃料の段階で課税するケースがほとんどです。日本でも環境税として導入が検討されていますが、実現に向けては様々な障壁があるとされています。