Q1.不動態というのはどういう状態なのですか。

Q2.濃度の高い硝酸に対してアルミニウムが高い耐食性を示すというのは本当ですか。

Q3.金属表面の酸化物皮膜は、どういう条件でできるのですか。

Q4.同じ金属でも、接する環境によって腐食速さは変わるのでしょうか?

Q5.電池に電流を流すと電極電位はどう変わるのでしょうか。

Q6.どうして高濃度側電極が高電位になるのか?

Q7.プレス用軟鋼板のr値改善はどのようになされたのか?

Q8.アルミニウム合金のr値はなぜ、鉄鋼材料のように、大きくできないのか?

Q9.成形限界曲線で、平面ひずみ、ε21=0、ではなぜ限界ひずみが小さいのか?

Q10.加工法には溶接などもあるがプレス成形が重要なのはなぜか。

Q11.公称ひずみでは、圧縮ひずみが-1を超えない理由はなぜか。

Q12.なぜ、蓋はすべてアルミニウム合金製なんだろう。

Q13.殺菌に要する温度時間はどれくらい必要なのでしょうか?

Q14.アルミニウム合金の陰圧缶はないのでしょうか?

Q15.バリヤー性ペットボトルの開発はどの程度進んでいるのでしょうか?

Q16.建築構造用鋼材にはどのようなものがあるか。

Q17.スチールが多く用いられる理由

Q18.日本と米国での構造の考え方の差というのはどこにあるのか

Q19.アルミなどの材料を構造材料に用いることはできるか。

Q20.地震に強いのは鉄骨造、それともRC造のいずれか。

Q21.弾性エネルギーを蓄える材料を選ぶ材料特性チャートで、ばね鋼とBeOなどのセラミックスが同じ位置にありますがセラミックスはどうして選ばれないのでしょうか?

Q22.軽量化にはアルミを用いるのがよいと思いますが。

Q23.高張力鋼や低ヤング率の材料、それに断面剛性の小さな部品がスプリングバックが問題になるのはなぜだろう。

Q24.車の軽量化のポイントは何ですか。

Q25.軽量化することにより、どのようなメリットがありますか。

Q26.なぜ、ボディーやドアーの軽量化に力を入れるのですか。

Q27.硫酸、希硝酸、濃硝酸のそれぞれの溶液中で鉄はどんな反応するのでしょうか。

Q28.低濃度の硝酸で激しく腐食され、高濃度でかえって腐食が減少する現象は鉄のほかにどんな材料があるのでしょうか。

Q29.ステンレス鋼の高濃度硝酸に対する耐食性を改善するには何を添加すればいいでしょうか。

Q30.チタン-5%タンタル合金は、核燃料再処理装置のどんなところに使用されているのか?

Q31.不動態というのはどういう状態か?

Q32.ティン・フリー・スチールは缶以外ではどういうところに使われているのか?

Q33.ティン・フリー・スチールは塗膜密着性に優れている。自動車用に使えないのか?

Q34.米国では缶はアルミニウムが主流であるが、日本ではスチール缶が50%もある。なぜか?

Q35.最高硬さが高くなるほど冷間割れ感受性は高くなるなぜか

Q36.どんな添加元素が最高硬さを高くするのか

Q37.なぜ拡散性水素は割れの原因になるのでしょうか。

Q38.溶接管理技術者の特級資格者はどんな仕事をするのか、なぜ必要なのか?

Q39.建築分野などで日本では溶接がよく使われるようですが、それはなぜですが。

Q40.Zは何を表すか?

Q41.Kは何を表すか?

Q42.Jは何を表すか?

Q43.Qは何を表すか?

Q44.酸-塩基反応説とは?

Q45.対数ひずみと真ひずみは同じか?

Q46.平面ひずみとは?

Q47.この成形限界曲線群から、もっとも破断の危惧されるところはどこか?

Q48.ティンフリースチール缶でビール缶はつくることができるか。

Q49.u値とはどんな指標?

Q50.曲げ試験の試験片の幅はなぜ80mmもあるのか?

Q51.張り剛性はどんな場合に必要となるか?

Q52.破壊と破断の違い

Q53.結晶の理論的強さどのように求められるか?

Q54.変形双晶とは?

Q55.応力集中とは?

Q56.塑性拘束とは?

Q57.天然ガスの採掘可能年数は?

Q58.ニッケル(Ni)鋼はなぜ脆性破壊に強いのか?

Q59.ポップインとは?

Q60.CTOD値とは?

Q61.破壊に対する安全性がなぜCTOD値で判定できるか?

Q62.構造形式によって、材料に加わる力はどう変わるのでしょうか?

Q63.鉄とコンクリートの材料の値段は?

Q64.なぜ、木だと長い梁が作れて、石の梁だと作れないのでしょうか

Q65.耐震設計や耐風設計をするためにはどのような文献を参考にすればいいでしょうか。

Q66.アーチが構造的に安定するためには、大きな上載荷重が必要だがそれはなぜか?

Q67.エッフェル塔はなぜあのような形をしているのでしょうか。

Q68.構造物の塑性変形能力もしくはエネルギー吸収能力などの耐震性能を向上されるためには、どんな材料特性を変えればよいか。

Q69.形鋼にはさまざまな形状があるがそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。


Q1
不動態というのはどういう状態なのですか。


A1
不動態は、電気化学的に活性な金属であっても腐食速度が遅い材料のことをいいます。不動態という状態は、金属表面に表面にできる薄い皮膜に起因すると考えられています。金属は酸に弱いと考えられていますが、この不動態という状態になると腐食速度は一挙に遅くなります。アルミ、クロム、ニッケル、ステンレスなどが耐食性を示すのはこのためです。

Q2
濃度の高い硝酸に対してアルミニウムが高い耐食性を示すというのは本当ですか。


A2
アルミニウムというは酸に弱いというイメージがあるが、濃度が高いとアルミニウム表面に強固な耐食性のある酸化皮膜が形成されて不動態になる。しかし、逆にこの硝酸の濃度が低くなると不動態は破壊され腐食が急激に進む。たとえば、メンテナンスのために、硝酸の入った容器を洗浄する際に硝酸濃度が下ってしまい、アルミが急激に腐食していまうという問題がある。

Q3
金属表面の酸化物皮膜は、どういう条件でできるのですか。


A3
不動態というのは、たとえば鉄を例にとると鉄イオンが豊富にあることと、水酸基が豊富にあることです。水酸基が多くあるという状態はPHが高い状態であり、また、鉄イオンが多くあるというのは電極電位が高いということを意味します。このような状態でFe2O3が析出しやすくなります。

Q4
同じ金属でも、接する環境によって腐食速さは変わるのでしょうか?


A4
金属は接する腐食環境によって耐食性は大きく変わります。たとえば、鉄のPourbaix図を見ると、低pH域の安定相は3価の陽イオン相(Fe3+)であり、酸によって腐食されることが予測されます。事実、希硝酸に鉄を漬すと、激しく反応し、鉄は腐食されます。しかし、硝酸の濃度が50%を越えると、突然まったく腐食されなくなり、浸漬した鉄の表面も金属光沢のままとなります。これは濃硝酸中で、鉄が不働態化したためです。不動態化とは、腐食により、溶け出した鉄イオンが環境と反応し、鉄表面に腐食反応を阻害する皮膜状の相を作った状態と考えられています。しかし、Pourbaix図上の低pH域には2、3価の陽イオン以外の安定相はなく、不働態化をもたらす表面状態は明らかになっていません。アルミニウムも希硝酸に激しく腐食されますが、80%以上の濃硝酸には耐食性を示します。これはアルミニウムの表面にアルミナAl2O3の薄い層が形成されるためと説明されています。

Q5
電池に電流を流すと電極電位はどう変わるのでしょうか。


A5
電流を流す前は、各電極は電解液と平衡状態にあり、電解液濃度と温度により決まる電位にあります。電流が流れると、電極の電位は平衡値から変化します。では、電極電位の変化は正負どちらに起こるでしょうか?。一般に、状態を平衡状態から変化させると、その変化を打ち消す方向に反応が起こります。これをル・シャトリエの法則といいます。電池の両極を導線でつなぎ、電流を流した場合には、電流を減少させる方向に電極電位は変化します。つまり、両電極の電位差が小さくなるように、変化します。その結果、アノードの電位は貴(正)な方に、カソードの電極電位は卑(負)な方に変化します。

Q6
どうして高濃度側電極が高電位になるのか?


A6
金属イオンの溶液側への移行が進行するにつれ、電極は負に帯電し、電気二重層の電位差は大きくなる。この電位差は、金属イオンが溶液側に移行するの妨げるように働くと同時に、逆に、溶液中の金属イオンを電極に戻すように働く。溶液から電極に向かう逆向きのイオンの流れは、溶液中のイオンの濃度が高いほど、また、電気二重層の電位差が大きいほど、起こりやすい。このため、電気二重層の電位差は、溶液中のイオン濃度で決まり、イオン濃度が高いほど、電位差は小さくなって平衡する。つまり、電気二重層の電位差は、溶液のイオン濃度が高いほど、小さくなる。
電気二重層の電位差は、溶液と電極の電位差であるから、電気二重層の電位差が小さいほど、溶液から見た電極電位は高いことになる。つまり、溶液のイオン濃度が高いほど、溶液から見た電極の電位は高いことになる。

Q7
プレス用軟鋼板のr値改善はどのようになされたのか?


A7
プレス成形性に優れた軟鋼鈑の研究開発は、冷延鋼板の焼鈍がバッチ式であった時代にさかのぼる。
1960年代、窒化アルミニウムの析出を巧みに組み合わせたバッチ焼鈍による深絞り用冷延鋼板が開発されている。これはJIS SPCE級に相当し、rバー値1.7、n値0.22を実現した。集合組織形成に対する窒化アルミニウムの働きについては、統一的見解に達する前に、研究は連続焼鈍材の研究に移行している。
ついでIF鋼が登場した。IF鋼は、溶鋼処理に真空脱ガスを使用し、炭素量を100ppm以下に低減し、さらにチタンを添加して、鋼中に固溶している炭素、窒素をなくしたものである。このため、IF鋼は焼鈍時の加熱速度に依存しない特徴を持ち、これを連続焼鈍することにより、rバー値2.0、n値0.24のEDDQを実現した。 IF鋼は、高純度鋼大量溶製設備の普及にともない、生産量が飛躍的に増加するとともに、集合組織制御の理解も深まった。焼鈍時、圧延加工された粒界からは{111}粒が成長するが、粒内の変形帯からは{110}組織が成長すること明らかになった。つまり、熱延組織を細粒化し、粒内の変形帯の寄与を減少させれば{111}集合組織を増し、r値を高めることができる。この知見に基づき、SDDQが開発され、rバー値2.5、n値0.27が実現された。
r値の改善は、熱延粗バーをライン上で溶接し、エンドレスに連続圧延できる技術が登場してさらに向上した。この技術により、潤滑フェライト域熱間圧延が可能となり、UDDQ級のrバー値3.0が達成されている。

Q8
アルミニウム合金のr値はなぜ、鉄鋼材料のように、大きくできないのか?


A8
金属材料は小さな結晶粒の集まりから成り立っている。これまでの実験的知見から、r値は、結晶粒が統計的にどのような向きに分布しているかに依存することが知られている。このような結晶粒の統計的分布は、集合組織と呼ばれ、主に、圧延によって発達する。アルミニウム合金の結晶構造は面心立方、軟鋼は体心立方で互いに異なるが、結晶の方位が、(111)面が板の圧延面に平行にある向きに集積した(111)集合組織がr値がもっとも大きく、(100)集合組織がもっとも小さくなることが知られている。軟鋼では、70%ほど冷間圧延すると、焼鈍後、(111)集合組織が強く発達してくる。アルミニウムおよびアルミニウム合金では、圧延組織が{112}<111>、{123}<634>、{011}<211>集合組織からなるβ-方位群と呼ばれる集合組織となり、焼鈍すると圧延集合組織が残留し、その中にr値を小さくする{100}<100>や{011}<100>集合組織が発達してくる。このように、圧延変形組織の形成挙動や焼鈍再結晶挙動の違いから、アルミニウムやアルミニウム合金ではr値を大きくする組織制御に成功していない。せん断変形組織を再結晶させると{111}集合組織が発達することが知られており、せん断変形成分を増した圧延方法が研究されている。

Q9
成形限界曲線で、平面ひずみ、ε21=0、ではなぜ限界ひずみが小さいのか?


A9
ε1軸上では、ε2=0であり、平面ひずみ状態にある。この場合、ε1+ε2+ε3=0であるから、ε1=-ε3、が成り立ち、成形によるひずみが大きくなる分、板厚が減少する。しかし、張出変形では、ε1>0、ε2>0、ε1+ε2=-ε3であるから、平面ひずみ状態より、板厚の減少が大きい。にもかかわらず、成形限界は平面ひずみ近傍で小さく、張出変形域の方が成形限界が大きい。
一軸引張試験では、最高荷重までは一様に伸び、それを過ぎるとくびれを生じる。このくびれは拡散くびれと呼ばれている。さらに引張変形が進むと局部くびれを生じて破断する。くびれは、伸び変形に伴う、加工硬化による荷重支持力の増加を、試験片断面積の減少による荷重支持力の減少が上回ることにより生じる不安定性、伸びるほど荷重が減少する現象である。これを塑性不安定性という。プレス加工における成形限界を、一次近似として、二次元応力場の塑性不安定性とみなし、Hillの理論モデルを適用して成形限界曲線の解析が行なわれている。その結果によれば、張出変形領域では拡散くびれのみが起こり、局部くびれは起こらない。その結果によると、平面ひずみ状態では、もっとも小さい成形ひずみで拡散くびれを生じ、ついで局部くびれを生じる。平面ひずみで成形限界が小さいのは、平面ひずみ状態では、塑性不安定性がもっとも早期に発生するためということになる。興味ある方は、下記の論文を参照して下さい。
中島 浩衛、菊間 敏夫、蓮香 要:製鉄研究第264号 p.1-29.

Q10
加工法には溶接などもあるがプレス成形が重要なのはなぜか。


A10
特に薄板の場合には、
(1)溶接は技能を要し、生産性が低い
(2)プレスで成形すると生産性が高い
(3)一体にて成形できるために、強度の向上が可能
などの理由からプレス成形が用いられる。車などにおいては、テーラードブランク材と呼ばれる薄板を用いてプレス成形する。これは、板厚の異なる薄板を予めレーザー溶接して一体化しておき、これをプレスすることにより、強度を確保しつつ、軽量化を達成するものである。

Q11
公称ひずみでは、圧縮ひずみが-1を超えない理由はなぜか。


A11
公称ひずみの場合、圧縮ひずみが-1というのは、試験体長さが0になった状態である。このため、これ以上の変形はあり得ないので公称ひずみは-1を越えることはできない。

Q12
なぜ、蓋はすべてアルミニウム合金製なんだろう。


A12
2ピース缶、3ピース缶、またアルミニウム缶やスチール缶を問わず、蓋にはアルミニウム合金製の蓋が使用されています。これは、蓋をあけるときの力がアルミニウムの方が低く、開けやすいからです。
蓋には、蓋を開けやすくするためにスコアと呼ばれる溝が切って有ります。スチールでも、溝を深くすれば、小さな力であけることができますが、残肉量の制御が困難といわれています。また、スチール蓋は、鉄イオンが溶出するため、飲料の味に影響するといわれています。
これらの理由から、飲料缶の蓋には、すべて、アルミニウム蓋が採用されています。

Q13
殺菌に要する温度時間はどれくらい必要なのでしょうか?


A13

Q14
アルミニウム合金の陰圧缶はないのでしょうか?


A14
アルミニウム合金でも、陰圧缶を製造することはできます。アルミニウム合金の鉄に対する弱点は、素材価格が高いことである。このため、極限まで軽量化することによって、つまり、省素材化することで価格競争力を確保している。ホットパック、レトルトパック時の高い内圧や冷却後の負圧に耐えるには、アルミニウム合金の比べヤング率が3倍高く、安価なスチールの方が有利となる。

Q15
バリヤー性ペットボトルの開発はどの程度進んでいるのでしょうか?


A15
ペットボトルの加温販売が始まっている。従来、レトルト処理して加温販売されるミルク・砂糖入りのコーヒーや紅茶には、スチール3ピース缶が使用されてきた。加温販売にペットボトルを使用するには酸素に対するバリヤー性を高める必要があり、
 酸素バリヤー層を多層成形
 ボトル内面に酸素バリヤー層をコーティング
がすでに販売開始されている。MXナイロンをブレンドしたボトルも販売されているが上記二種に比べると性能が劣り、メーカーも多層化ボトルに切り替えると報道されている。多層化には、酸素吸収層をサンドイッチしたタイプが開発されている。コーティング法は、数10nmから150nmの炭素膜をプラズマCVDしたボトルが販売され、透過速度が、従来比、酸素が1/10から1/30、炭酸ガスが1/7に低下すると報道されている。

Q16
建築構造用鋼材にはどのようなものがあるか。


A16
耐震性、耐火性、耐久性をそれぞれ満足するものとして、低YR鋼と狭YPレンジ鋼、耐火鋼、ステンレス鋼などがある。また、機能性材料として制振鋼板がある。また、耐震パネル用の低降伏点鋼板、免震ダンパー用の低降伏点鋼棒があげられる。

Q17
スチールが多く用いられる理由


A17
安価であることと材料の信頼性が高いことがその最大の理由である。

Q18
日本と米国での構造の考え方の差というのはどこにあるのか


A18
米国は石造りの伝統がある。それに対して、地震国である日本は木の文化がある。米国は剛性の高い構造を実現しようとするし、日本は逆に柔軟な構造物を作ろうとする傾向がある。また、米国では地震のような予測できない荷重はあまりないために、弾性設計を重視するが、日本では地震の大きさが予測できないために余力をもった構造となっている。日本で鉄骨造がなじみ易いのは、やわらかくしかし粘りづよさがあるという木の文化に根ざしている。

Q19
アルミなどの材料を構造材料に用いることはできるか。


A19
アルミなどの材料を構造材料として用いることは可能ではあるが、高価であるために特殊な建築物をのぞいては用いられることはない。むしろ、その耐食性を生かしてカーテンウォールなどの仕上げ材に用いられることが多い。

Q20
地震に強いのは鉄骨造、それともRC造のいずれか。


A20
基本的には粘り強さを担うのは、鉄骨造の場合もRC造の場合も鉄である。RC造の場合は鉄筋が粘りを実現する。しかし、RC造の場合に複雑な鉄筋の施工や現場での温度管理湿度管理をしっかりとしないと脆い構造となる。度重なる地震被害を通じて改良されてはいるが、現場施工という性格上、材料強度のばらつきが大きいために不安材料は大きい。それに比べて鉄骨造の場合は工場施工であり、現場では組み立てるだけなので、施工に要する管理は大変だが安全性は高くなる。こういうところから、鉄骨造の方が耐震的に有利である。

Q21
弾性エネルギーを蓄える材料を選ぶ材料特性チャートで、ばね鋼とBeOなどのセラミックスが同じ位置にありますがセラミックスはどうして選ばれないのでしょうか?


A21
セラミックスはもろい材料で引っ張ると小さい材料欠陥から脆性破壊します。このため、材料特性チャートのσfは圧縮試験で測定した破壊応力を示しています。したがって、引張変形も加わる用途では、材料特性チャートのσfは使用できないのです。材料特性チャートを用いてセラミックスを含めた適材候補を探すには、圧縮応力下で使用される部材の材料ということになります。つまり、セラミックスを構造材料として使用するには引張応力下ではなく、圧縮応力下で使用するのが安全な利用方法です。

Q22
軽量化にはアルミを用いるのがよいと思いますが。


A22
アルミは軽量であるが剛性や、プレス性に問題がある。特に、r値が小さいために自動車向きとはいえない。

Q23
高張力鋼や低ヤング率の材料、それに断面剛性の小さな部品がスプリングバックが問題になるのはなぜだろう。


A23
スプリングパックとは、プレス成形による塑性変形後、弾性除荷による変形のもどりである。高張力鋼は、降伏点が高いために戻り量が多く、低ヤング率の材料はヤング率が小さいために戻り量が多く、また断面剛性の小さい部材も剛性が低いために戻り量が多い。このために、スプリングパックが問題になる。

Q24
車の軽量化のポイントは何ですか。


A24
USLABでは、ハイドロフォーミング、テーラードブランク材の使用により、できるだけ部品を一体化することにより、剛性を高めてその結果として軽量化を達成した。さらに、高張力鋼を用いることにより、軽量化を達成することができる。

Q25
軽量化することにより、どのようなメリットがありますか。


A25
車の軽量化は、燃料の使用量を減少させるという効果があります。環境対策、CO2排出規制、さらにエネルギー枯渇に対する最も効果的な方法ということができます。ちなみに、車両重量を100kgあたり1.9l/kmの燃費の向上が見られる。

Q26
なぜ、ボディーやドアーの軽量化に力を入れるのですか。


A26
2Lクラスの乗用車ではメインボディーとドアが車両重量の28%を占める。当然のことながら、これらを構成する部材の軽量化に対する要請は厳しい。

Q27
硫酸、希硝酸、濃硝酸のそれぞれの溶液中で鉄はどんな反応するのでしょうか。


A27
硫酸中に鉄を浸漬した場合、カソード反応は水素イオンの還元反応(2H++2e=H2)です。図に示すように、カソード分極曲線はアノード分極曲線の活性域で交差します。つまり、鉄は、硫酸中では、はげしい全面腐食を起こします。
希硝酸に浸漬した場合も、図に示したように、カソード分極曲線はアノード分極曲線の活性域で交わり、やはり、全面腐食が起こります。
一方、濃硝酸中では、そのカソード分極曲線は、不動態域でアノード分極曲線と交差し、不働態皮膜に遮られて腐食は抑制されます。

Q28
低濃度の硝酸で激しく腐食され、高濃度でかえって腐食が減少する現象は鉄のほかにどんな材料があるのでしょうか。


A28
クロムやニッケルにも認められます。また、図に見られるように、アルミニウム、チタンも同じような挙動を示します。タンタル、ジルコニウムは沸騰希硝酸中でもほとんど腐食されません。各金属による腐食挙動の差異は、不働態皮膜の安定性の違いによるものです。

Q29
ステンレス鋼の高濃度硝酸に対する耐食性を改善するには何を添加すればいいでしょうか。


A29
ステンレス鋼の、高濃度硝酸に対する耐食性を改善するには、不働態化皮膜の安定域を、電位(硝酸濃度)の高い領域に拡大する必要があります。鉄基合金のアノード分極曲線におよぼす合金添加元素の影響は、詳細に調べられています。結果は、図の模式図のようにまとめられています。図から、不働態域を高電位側に広げるには、クロム、シリコンの添加が有効なことが分かります。

Q30
チタン-5%タンタル合金は、核燃料再処理装置のどんなところに使用されているのか?


A30
チタン-5%タンタル合金は核燃料再処理設備の硝酸蒸発回収缶に使用されています。硝酸蒸発回収缶は二重の円筒からなり、内筒にチタン-5%タンタルパイプが使用されています。内筒と外筒のの中間に加熱蒸気を吹き込み、内筒中の硝酸溶液を約110℃に加熱し、酸を蒸発回収する。この溶液中にはプルトニウム(Pu)イオンやルテニウム(Ru)イオンなどの酸化剤が含まれている。

Q31
不動態というのはどういう状態か?


A31
不動態とは、電気化学的に活性な金属であっても腐食速度が極端に遅い材料の状態をいう。不動態とは、金属表面に、アノード反応またはカソード反応を極端に遅くする界面状況ができた薄状態と考えられるが、その実態は必ずしも明確ではない。表面に酸化膜が形成されると考えられる場合もあるが、状態図的にそのような酸化物相がなくても不働態化する場合もある。チタン、アルミ、クロムなどの卑金属は、不動態化することによって高い耐食性を示す。

Q32
ティン・フリー・スチールは缶以外ではどういうところに使われているのか?


A32
ティンフリースチールは写真フィルムのパトローネ、光ファイバーケーブルのシース管など、塗装して使用される用途に使用されています。

Q33
ティン・フリー・スチールは塗膜密着性に優れている。自動車用に使えないのか?


A33
ティンフリースチールは塗膜密着性に優れているが自動車用には使用されない。自動車には亜鉛めっき鋼板が使用される。亜鉛は鉄に比較して卑で鉄を犠牲防食することができるがクロムメッキ層に、その作用がないため使用できない。

Q34
米国では缶はアルミニウムが主流であるが、日本ではスチール缶が50%もある。なぜか?


A34
アメリカには、世界一のアルミニウムメーカーであるアルコア社やカイザー社などがあり、安価に缶用アルミニウム素材を供給することができる。しかし、鉄鋼メーカーは弱体で、アルミニウム缶材に対抗できる表面処理鋼板の開発、生産に遅れを取った。この結果、飲料缶はアルミニウムということになってしまった。
逆に日本のアルミニウムメーカーは、エネルギーコストの問題からアルミニウムの精錬が困難で、海外メーカーに比較して価格競争力が弱い。他方、日本の鉄鋼メーカーは、世界でももっとも高い技術力を有し、ティンフリースチールを始め、缶用の表面処理鋼板をタイミング良く開発、供給することに成功した。このような、日本鉄鋼業の開発努力が今日の缶比率の高さにつながっている。

Q35
最高硬さが高くなるほど冷間割れ感受性は高くなるなぜか


A35
一般的に、硬さが高いほど脆い破壊を起こしやすい。物体が力を受けると変形して応力を緩和しようとするが硬いと塑性変形するより、ガラスのように脆く破壊するほうがエネルギー的に有利となるからである。溶接継手の場合は、これに水素の挙動と影響が重畳する。水素は応力の高いところに集まり、結晶格子を緩和して脆くする性質がある。このため、溶接継手の割れ感受性は、溶接熱影響部の硬さ、水素量、応力のいずれが増しても、高くなる。

Q36
どんな添加元素が最高硬さを高くするのか


A36
鋼を急冷するとマルテンサイトと呼ばれる焼入れ組織となる。焼入れ組織の硬さは炭素量で決まり、炭素量が多いほど硬くなる。したがって、「最高硬さ」の上限は炭素量で決まる。炭素以外の合金元素は、主に鋼の焼入れ性を向上させることによって溶接熱影響部の硬さを増加させる。炭素以外の、どんな添加元素が「最高硬さ」を増加させるかは、炭素当量式:Ceqの係数の大きな元素である。JIS、WESの炭素等量式:Ceq;

Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14.

から、Mo、Cr、Mnなどが「最高硬さ」を増大させる合金元素であることが分かる。

Q37
なぜ拡散性水素は割れの原因になるのでしょうか。


A37
水素は応力の高いところに向かって拡散し、そこに集積して脆化作用を発揮する。したがって、拡散できる状態、鋼中に固溶している水素が溶接割れに有害である。拡散性であるから、溶接後の冷却を制御し、水素を拡散・放出させて割れを防止することも可能となるし、放出量から継手の水素量を測定することも可能となる。

Q38
溶接管理技術者の特級資格者はどんな仕事をするのか、なぜ必要なのか?


A38
ISO9000は品質保証システムに関する国際的基準である。ISO9000には、製品検査では品質保証が困難であり、事前に審査承認の必要な生産技術として溶接を挙げている。これを受けて、1994年にはISO3834「溶接に関する品質要求」規格が発行された。ISO9001またはISO9002が品質保証契約に含まれる場合には、ISO3834-2が適用され、ISO3834-2は、製造者は、欧州規格EN 719に準拠した溶接技術者を置くことを規定している。EN 719は、1997年にISO14731「溶接管理-管理技術者の任務と責任」として国際規格となり、ISO3834およびISO14731は、1999年、JIS Z 3400およびJIS Z3410としてJIS規格となった。このような動きを受け、従来からある日本溶接協会の溶接技術者資格認定制度がISO14731に準拠した新しい体系にWES 8103-1998に改定された。国際的事業では、ISO9000を根拠に、企業に、WES 8103に基づき認証された溶接管理技術者の保有や常駐が要求される。
溶接管理技術者特級はJISZ3410/ISO14731の表1に記載する全業務、同1級は、JISZ3410/ISO14731の表1に記載する業務のうち溶接一般の施工計画と技術管理、施工基準の決定等、同2級は、JISZ3410/ISO14731の表1に記載する業務のうち溶接及び関連作業の監督指導、現場管理、施工記録書の作成等を行うと明記されている。

Q39
建築分野などで日本では溶接がよく使われるようですが、それはなぜですが。


A39
日本は地震国であるために、極大地震に対しての安全性を確保することは自身の生命財産だけでなく、倒壊により周囲への被害拡大を防ぐ必要がある。このために、部材は全強継ぎ手が要求される。負荷応力で接合部の強度を決定するのではなく、部材の有する強度までの応力が発生しても継ぎ手が持つようにする。つまり不可避的な地震による大応力に対しても耐えうるような安全な設計がなされている。この全強継ぎ手を実現するのは、溶接によって自分自身と同じ断面の溶接を行うことによって実現できる。このため、溶接継ぎ手が使用されることが多い。

Q40
Zは何を表すか?


A40
曲げ問題では、断面内でもっとも応力の高い所で降伏応力を越えると塑性変形が始まり、破壊応力を越えると破壊が起こる。曲げにおいて、曲げ軸からもっとも遠い表面の応力が最大となるから、

でZを定義する。したがって、ZはI/ymになる。

Q41
Kは何を表すか?


A41
捩じりの問題では、対象部品の形状は、断面の捩じりモーメントKを通して現れる。

dAは断面内の捩じり軸から測って距離rの位置の面積要素である。つまり、Kは、断面の、捩じり軸を中心とする回転モーメントである。トルクTを加えたときの弾性捩じれ角θは、

で与えられる。ただし、Gは材料の剛性率、l(エル)は部品の長さである。

Q42
Jは何を表すか?


A42
Kと同じように断面の回転モーメントをあらわすが、断面が円形である場合にはJを用いる。

Q43
Qは何を表すか?


A43
曲げにおけるZの導入と同じように、捩じりによって変形、破壊が始まる表面のせん断力は、円形断面の場合、

となる。Qは、下式で定義される。

いろんな断面形状のImax、K、Qの値が、参考図書1、2に表示されている。

Q44
酸-塩基反応説とは?


A44
電子対受容体(酸)と電子対供与体(塩基)とを反応させるときの混合エンタルピーΔHABは、
 ΔHAB=CACB+EAEB
と書くことができることが経験的に知られている。多くの実験結果から酸、塩基のC、Eを求めると未知の酸、塩基の混合エンタルピーが予測できる。予測結果は、実験結果とよく一致することが確かめられている。これを高分子と固体表面の結合に拡張し、そのC、E値が求め、固体と有機高分子の接合を論じる手法を酸-塩基反応説という。
属表面の水酸基(-OH)は塗料の極性基と酸塩基反応で強固に結合することが一般的に知られており、ティンフリースチールの強い塗料密着性も同じ機構によるものと考えられている。酸は電子受容体、塩基は電子供与体を意味する。

Q45
対数ひずみと真ひずみは同じか?


A45
真ひずみは、

 dε=dl/l

で定義される。ある方向に、l0からlまで伸び変形させたとするとひずみは上式を積分して、

となる。つまり、真ひずみは対数ひずみとなる。

Q46
平面ひずみとは?


A46
材料の変形に拘束を与え、塑性変形が平面でのみ生じるようにすることができる。このような変形状態を平面ひずみ状態という。たとえば、薄板の圧延では幅方向の伸びは、圧延方向の伸びに比べて小さく、圧延変形は平面ひずみと見なされる。

Q47
この成形限界曲線群から、もっとも破断の危惧されるところはどこか?


A47
もっとも破断の心配される部位はCである。理由はCの部位がまったく平面ひずみ状態にあるからである。Cの部位が危険域であることは限界曲線を見るまでもなく、成形品の形状から推定できる。つまり、Cの部位は、横方向の収縮が拘束されながら伸びるように成形が行われる。

Q48
ティンフリースチール缶でビール缶はつくることができるか。


A48
可能ですが生産されていない。ティンフリースチール開発の当初、ティンフリースチールの3ピース缶がビールに使用されたがブリキを用いた2ピースDI缶やアルミニウムDI缶に置き換えられた。

Q49
u値とはどんな指標?


A49
u値は絞り-張出し領域の成形性を表す指標として提案され、

 r×n/(1+r)

で定義されます。

Q50
曲げ試験の試験片の幅はなぜ80mmもあるのか?


A50
プレス加工を含めた加工用の熱延鋼板、冷延鋼板のJISは曲げ試験を規定している。試験方法にはJIS Z 2248、試験片にはJIS Z 2204の3号試験片が指定されている。JIS Z 2204 3号試験片は、厚さ;供試材もと厚、幅;20mm以上、長さ;250mmと規定している。したがって、幅は20mmあればJISに適合することになる。
にもかかわらず、80mm幅の曲げ試験片を使用するのは、曲げによる板表面の伸びひずみを平面ひずみ状態に保つためである。曲げ試験片曲げ部の端部は、曲げひずみにより表面が伸びると試験幅方向には縮む。このため、曲げによる割れ発生は、端部では抑制される。端部が影響する範囲は、経験的に、板厚の3倍程度であり、はば両端の影響のない曲げ試験片の幅は板厚の6倍以上、安全を見て10倍以上とすることが多い。
板厚6mmの鋼板であれば60mmの幅とすれば十分であるが端部の影響のない80mmが採用されている。U溝引張試験片の幅は40mmと狭いが、溝部は1/5厚に溝加工されているので端部の影響は十分無視できる。

Q51
張り剛性はどんな場合に必要となるか?


A51
浅いふくらみを持った曲面に成形された成形品で問題となる。たとえば、自動車の側面などは浅い曲面であるが、人がもたれても変形しないように、剛性が必要である。

Q52
破壊と破断の違い


A52
日本語ではあまり厳格に定義されていない。英語では、破壊はfracture、破断はraptureで区別がある。Fractureには、fragile、‘脆い’という意味が含まれている。徐々に延びて切れるraptureと区別されている。高速な破壊でも、材料は十分に変形し、不安定に高速破壊する場合もある。例として、高圧ラインパイプのバースト破壊を挙げることができる。これは不安定延性破壊を呼ばれている。

Q53
結晶の理論的強さどのように求められるか?


A53
へき開破壊は特定結晶面で結晶が分離される現象である。この結晶面をへき開面という。BCC結晶構造を持つアルカリ金属(Li、Na、K)、鉄および鉄鋼材料の大部分、V、Cr、Mo、Mn、Nb、W、Taなどは、(100)面がへき開面である。FCC結晶構造を持つ金属Cu、Ag、Au、Al、Ni、オーステナイトステンレス鋼はへき開面を持たない。
へき開面に垂直に結晶を分離させる応力を理想へき開強度と呼び、σCで表す。へき開の模式図のように、へき開面に垂直に応力σを加え、原子面間隔をa0からaに拡大させたとする。原子面の広がりを、a-a0=xで表す。原子面をx広げるための応力σは、右の図のように、σCまではxとともに増加し、結晶面の分離が始まると減少するはずである。このσ-xの曲線は、波長λの正弦曲線で近似でき、式(1)のように表すことができる。広がりxが小さい範囲ではsinx=xの近似ができるとし、Hookeの法則
 σ=E・ε=E・x/a0
を用いると式(2)が得られる。式(2)ではλが未確定である。そこでへき開で新たに生じる表面のエネルギーγを導入する。新しい表面を作るに要するエネルギーは、σ-x曲線の下の面積の1/2で与えられ、へき開により上下二つの表面を生じることを考慮すると、式(3)が得られる。式(2)と(3)からσCとして式(4)が得られる。式(4)にγ、a0の具体的数値を入れると、σCは、E/10のオーダーの値が得られる。脆い材料で実測されるへき開破壊強度は、E/100〜E/1000であり、理論値σCの1/10〜1/100である。

Q54
変形双晶とは?


A54
互いに接している同じ相の結晶が、ある共通の低指数の結晶軸の回りに180°回転した方位関係にあるか、ある結晶面に関して鏡像関係にあるとき、これを双晶という。この結晶面を双晶面という。双晶の境界が双晶面と一致しているとき整合双晶境界という。双晶のでき方にはいくつかの機構がある。結晶格子が右図のように、せん断変形して形成される双晶を変形双晶という。鉄、鉄鋼の結晶構造はBCC(体心立方)で、双晶面は(112)面でせん断方向は[111]である。
鉄、鉄鋼は、室温付近ではすべり変形するが、液体窒素温度付近では双晶変形する。BCC金属では、転位のすべり運動に対する抵抗が低温で上昇するため、双晶変形の方が起こりやすくなるものと解釈できる。
双晶変形した結晶部位を双晶帯と呼ぶ。双晶帯同士が衝突すると異なる双晶軸周りに回転した双晶帯は、双晶関係を満たすことができないので、相互に貫通することができない。このため、交点に微小なき裂を生じる。


Q55
応力集中とは?


A55
一様な断面をもつ構造物が引張り、曲げ等の荷重を受けると応力は一様に分布する。構造物の一部に切欠き、穴、空隙などが存在し、断面が急変すると、その付近に応力分布が乱れ、局部的に応力が増大する。この現象を応力集中という。応力集中部の最大応力を集中応力と呼び、弾性計算や光弾性法などの応力測定法により求められる。垂直応力 σ あるいはせん断応力 τ の集中応力 σmax あるいは τmax を、基準となる応力 σ0 あるいは τ0 で除した値を応力巣中係数 α といい、α=σmax0あるいは τmax0 と表す。σ0、τ0は応力集中が生じないとして最小断商積に基づいて計算される公称応力であり、これを応力集中係数の基準応力という。応力集中係数を扱う場合、基準応力を明確にする必要がある。
図は、切欠き部の直径dのU型円周切欠きを持つ、直径Dの丸棒に引張荷重Pを負荷したときの応力集中係数 α を示す。溝底の曲率半径 ρ が小さくなると、切欠き余断面積の平均応力の数倍の集中応力が、切欠き底の中心Aに発生することがわかる。


Q56
塑性拘束とは?


A56
図1のような、理想的に接合された丸棒の圧縮試験片を考える。試験片の上半部は下半部より強度が格段に高いと仮定する。下半部の試験片の降伏点を少し超える圧縮荷重を与えると、試験片は一定量圧縮され、縮んだ分、径が大きくなる。
つぎに、図2のように、下半分の直径よりaだけ大きい試験片を考える。この試験片を圧縮変形させるには、図1の場合よりも、大きな圧縮荷重を加えなければならない。なぜなら、圧縮するには、直径の大きくなった部分を含めて径を拡大させなければならないからである。つまり、径の大きくなった部分が自由な変形を拘束するためである。このように、塑性変形がその周囲から拘束されることを塑性拘束という。
つぎに、図3のような切欠きを考える。切欠きの先端部は上下の切欠き外周部から変形を拘束される。このため、切欠きを持つ試験片を引っ張ると、先端に高い集中応力が発生しても塑性変形が拘束され、応力緩和することができない。また、切欠き先端の塑性変形が拘束される分、切り欠き付き引張試験片の降伏点応力は、切欠き余断面積と同じ断面積の平滑試験片の降伏点応力より高くなる。


Q57
天然ガスの採掘可能年数は?


A57
天然ガスの確認可採年数は63年、究極的可採年数176年とされている。原油の確認可採年数43年、究極可採年数84年に比較すると、天然ガスは原油より、豊富に腑存するエネルギー資源ということができる。
確認可採年数とは、現状の技術で経済的に採掘することができることが確認されている天然ガスの採掘寿命年数である。究極的可採年数とは、確認されている天然ガス総量の採掘寿命である。現状では経済性、技術的に採掘することが難しいガス資源も含んでいる。原油の可採年数は採掘技術の進歩や新しい油田の発見で伸び続けている。

Q58
ニッケル(Ni)鋼はなぜ脆性破壊に強いのか?


A58
鋼材にニッケルを合金添加すると低温の脆性破壊に対する抵抗力、靭性、が改善される。9%Ni鋼はアメリカで開発された低温用鋼で、液体窒素温度まで使用可能とされている(JIS G 3127)。
Ni添加により、低温の靭性が改善される機構については、いくつかの見解が示されている。主な説を挙げると、
 1.Ni添加により、鋼材の低温における降伏点上昇が緩和される。
 2.Ni添加により、焼戻中にオーステナイト相が粒界に析出し、粒界脆化をもたらす不純物を吸収する。
 3.析出オーステナイト相が組織を分断し、微細化する。
 4.FCCである析出オーステナイトがへき開破壊への抵抗となる。
などいろいろな機構が提案されているが定説はない。

Q59
ポップインとは?


A59
鋭い切欠きを持つ厚板引張試験片に、引張荷重を加えたと考える。切欠きの先端には塑性拘束(材料の脆性のFAQ参照)と応力集中のため、高い応力が発生する。板表面近傍は拘束が弱く、塑性変形して応力が緩和しやすいが板厚中心には高い応力が残る。このため、板表面より板厚中心の方が応力が高く、き裂は板厚中心の切欠き先端から発生する。しかし、応力緩和した板表面部分が抵抗となり、一旦、発生したき裂がただちに停止し、安定なき裂成長に変化することがある。この現象をポップインと呼ぶ。ポップインにおいて得られた測定値δCは、応力緩和のない状態で測定された材料定数である。
例として、ポップインが観測されたCTOD試験(FAQ:CTOD値とは?参照)の荷重-き裂開口量曲線を図に示す。直線的に増大した荷重が一旦小さく減少し、再度、緩やかな曲線に沿って増加している。荷重の低下とともに衝撃音が聞こえる。




CTOD試験片と荷重-き裂開口量曲線

Q60
CTOD値とは?


A60
Crack Tip Opening Displacementの頭文字をとった略号で、き裂先端開口変位と訳されている。き裂が伝播する条件はき裂先端の応力状態や変形状態に依存する。き裂先端前方に、図のような、仮想的な小さい引張試験片があると考える。き裂が開口することは、この引張試験片が応力を受けて伸びることに等しいと解釈できる。したがって、き裂先端の開口量は、き裂先端の応力状態や変形状態を反映したパラメーターの一つとなりうると考えることができる。
CTODの測定には、曲げ試験片やコンパクト試験片が用いられる。図にはWES1108に規定されている3点曲げ試験片を示す。き裂の開口量は、図中のクリップゲージを用いて測定される。試験片の形状や切欠き先端の疲労予き裂の寸法、測定結果の解析法などは、WES1108に詳しく規定されている。



Q61
破壊に対する安全性がなぜCTOD値で判定できるか?


A61
CTODの説明で用いたように、き裂前方に仮想的な小引張試験片を考える。き裂が伝播することは、小引張試験片が破壊することと等しい。小試験片の伸びはき裂先端の開口量に比例すると考えることができ、伸びが限界に達すると破壊が伝播すると解釈できる。したがって、CTOD値は、破壊伝播の判定条件となり得る。試験片の厚さがおなじであればCTOD値は荷重の負荷方式や試験片寸法によらない値であリ、破壊挙動の推定に利用できる。

Q62
構造形式によって、材料に加わる力はどう変わるのでしょうか?


A62
◆部材に主として軸力が加わるような構造形式→トラス構造(ex.鉄塔)
 特徴:
 全断面を有効に使えるため、材料使用量をおさえることができる。
 また、剛性の高い構造形式となる。


◆部材に主として曲げが加わるような構造形式→ラーメン構造(ex.事務所建築)
 特徴:
 部材端部に応力が集中し、全断面有効に使えないため、材料使用量は増える。
 剛性の低い構造形式となるが、建築物に降伏後の粘り強さを付加しやすい。

Q63
鉄とコンクリートの材料の値段は?


A63
コンクリートの合成および強度は鉄の1/10なので、価格も約1/10で競争力を保っています。


Q64
なぜ、木だと長い梁が作れて、石の梁だと作れないのでしょうか


A64

木は、圧縮力と引張力の両方の強度があるために圧縮引張りに抵抗する。
σt が、引張り強度を超えるような荷重Pが加わると梁は折れる。
荷重Pとσt の間には、次の関係がある。




石では、小さな引張り力σt にしか抵抗できないために、小さな荷重しか支えられない。引張り強度を0とし、耐えられる引張り力σt を0すれば、下式よりP=0となり、荷重を支えることはできない。実際には、圧縮の1/100程度の引張り力があるために荷重支持能力はある。この荷重を超えると梁は折れる。


このような理由により木だと長いスパンが作れて、石の梁だと作れないのです。


鉄筋コンクリートは、人造石であるコンクリートの引張り側に引張りにつよいスチール(鉄筋:丸棒)を入れることによって、石でありながら長い梁を実現することができるようになりました。

Σσ=Ntが成立している限りは鉄筋コンクリート梁は、荷重に抵抗できます。

Q65
耐震設計や耐風設計をするためにはどのような文献を参考にすればいいでしょうか。


A65
日本建築学会から、建築設計指針がでています。
 1.建築耐震設計における保有耐力と変形性能
 2.建築物荷重設計指針
土木学会からは、橋梁の仕方書がでています。
 1.道路橋仕方書

Q66
アーチが構造的に安定するためには、大きな上載荷重が必要だがそれはなぜか?


A66
簡単な思考実験をしてみよう。


適度に湿らせた同じ半径の空洞を有する砂山をつくると、上載荷重の小さな右の砂山は崩れてしまうことは容易に想像できる。これは、砂山に大きな圧力が加わらないとアーチが形成されない(もともとばらばらの砂を締め固めてアーチ形状を保持させるような圧縮域ができない)ことを意味する。したがって、アーチは、上載荷重があって初めて構造的に安定する。石材でアーチを作る場合も同じであり、石がばらばらにならないためには、上載荷重が必要となる。

Q67
エッフェル塔はなぜあのような形をしているのでしょうか。


A67

一般的に鋼材に限らず、材料がもっともその強度を発揮できるのは、軸方向力が加わった場合である。このため、経済設計が可能になる。つまり、構造物を軽量に設計するためには軸方向力で外力に抵抗するのが最も良い。柱で水平力Pに抵抗するのではなく、トラスで抵抗すると水平力を軸方向力に変換できる。



風荷重を等分布荷重と仮定すると、モーメント分布は放物線になる。この荷重を軸力だけに変換する構造物の形状は、やはり放物線になる。また、このような形状にすることにより地盤反力を小さくすることができる。このようにエッフェル塔は材料力学的にも合理的な形状であるということができる。

Q68
構造物の塑性変形能力もしくはエネルギー吸収能力などの耐震性能を向上されるためには、どんな材料特性を変えればよいか。


A68


簡単のため、水平力を受ける柱で考える。




Q69
形鋼にはさまざまな形状があるがそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。


A69