Q1.組み立て工程を簡素化するための設計について教えて下さい。

Q2.分子量の大きさはどうコントロールするのですか。

Q3.硬化剤は、どのような添加剤ですか。

Q4.押出機とは、どのような装置ですか。

Q5.可塑剤とはどういうものですか。

Q6.帯電防止剤はどのような効果がありますか。

Q7.後加工費とは、どのような費用ですか。

Q8.塑性変形は、どのようにして起こるのですか。

Q9.結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの性質の違いについて教えて下さい。

Q10.結晶の融点とはどのような温度ですか。

Q11.ガラス転移温度とはどのような温度ですか。

Q12.分子の結合エネルギーとは、どのようなものですか。

Q13.分子間の結合エネルギーとは、どのようなものですか。

Q14.静的強度と衝撃強度の違いをわかりやすく教えて下さい。

Q15.ガラス繊維やカーボン繊維を充填すると、なぜプラスチックの強度が向上するのですか。

Q16.プラスチックはなぜ自己発熱するのですか。

Q17.温度が低くなると、なぜもろくなるのですか。

Q18.プラスチックの分子構造と薬品の化学構造の関係によって決まる耐薬品性とは、具体的にどのようなものですか。

Q19.金型とは、どのようなものですか。

Q20.射出成形法と押出成形法の違いをわかりやすく教えて下さい。

Q21.シリンダーとはどのようなものですか。

Q22.スクリューとはどのようなものですか。

Q23.分子配向は、なぜ起こるのですか。

Q24.ガスバリアー性はどのような特性ですか。

Q25.医療器具に求められる可とう性とは、どのような性質ですか。

Q26.事務機器部品で要求されるしゅう動性とは、どのようなことですか。

Q27.ポリマーアロイではどのような改良ができますか。

Q28.エンプラとは、どのようなプラスチックですか。

Q29.カーボンニュートラルとはどんなことですか。

Q30.プラスチックの燃焼試験はどのような方法で行いますか。

Q31.グリーン調達調査対象化学物質Aの15物質は、どのような物質ですか。

Q32.もっと学びたいときの参考資料を教えてください。


Q1
組み立て工程を簡素化するための設計について教えて下さい。


A1
金属の場合に、ねじ接合などの方法で組み立てていたものを、スナップフィット、スェージングなどに変更することによって簡素化する設計方法があります。
スナップフィットは、図のようにプラスチックのスプリング性を利用して、2つの部品を組み立てる方法です。


スェージングは、図のように相手材を取り付け、成形品のコーナに熱いコテを押し付けて溶融・変形させたのち固化させて、相手材を固定する方法です。

Q2
分子量の大きさはどうコントロールするのですか。


A2
重合禁止剤という化合物を添加して、重合を停止させて分子量をコントロールします。
重合禁止剤の添加量、添加するタイミングなどが、分子量に関係します。

Q3
硬化剤は、どのような添加剤ですか。


A3
熱硬化性プラスチックを成形する際に、未硬化ポリマーに加えて反応させて硬化させる物質です。
硬化剤は未硬化ポリマー分子と反応すると、ポリマー分子間が橋をかけたような結合状態になります。温度を高くすると、この反応は促進されるので、成形時に加熱して硬化させることが多いです。例えば、フェノール樹脂では、フタル酸系、アミン系などの硬化剤が使用されています。
なお、硬化剤のことを架橋剤ということもあります。

Q4
押出機とは、どのような装置ですか。


A4

図に示す装置です。同図のように、ヒータを巻いた加熱筒の中にスクリューがセットされています。ホッパーから材料を供給し、外周に巻いたバンドヒーターで加熱筒を加熱しながら、スクリューを回転させて材料を溶融させ、溶融物をスクリュー先端へ送ります。
同図のようにスクリューを1本用いたものを単軸押出機、2本用いた装置を2軸押出機といいます。

Q5
可塑剤とはどういうものですか。


A5

主としてポリ塩化ビニルに使用される添加剤で、加工性を改善し、同時に製品に柔軟性を与えるために加える液状または固体状物質です。
ポリ塩化ビニルのポリマーの間に可塑剤が入り込むと、分子間の間隙が広がり、分子間の引力が弱くなるので、分子は動き易くなります。そのため、成形するときの流動性がよくなること、成形品が軟質になることなどの効果が得られます。その様子を図に示します。

Q6
帯電防止剤はどのような効果がありますか。


A6
帯電防止剤は、水分を吸着しやすい分子構造を持っています。これを添加すると、成形品表面近くにある帯電防止剤が、大気中の水分を吸着することによって、成形品表面の電気伝導性を高めて静電気をリークさせます。
一般的に帯電防止剤には、界面活性剤が使用されます。

Q7
後加工費とは、どのような費用ですか。


A7
成形品を成形した後に、塗装、印刷、接着、溶着などの加工をするのに要する費用を後加工費といいます。
後加工のことを2次加工ということもあります。

Q8
塑性変形は、どのようにして起こるのですか。


A8
プラスチックはポリマー分子の集合体であるので、成形品に力を加え続けると、ポリマー分子間でずれが生じて変形します。このような変形を塑性変形といいます。ポリマー分子の結合力よりも分子間の結合力が小さいために、力を加えると分子間で塑性変形します。この変形は力を除いても元には戻りません。

Q9
結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの性質の違いについて教えて下さい。


A9
例外もありますが、大まかに両プラスチックの性質の違いは以下の通りです。
  結晶性プラスチック 非晶性プラスチック
透明性 不透明または半透明 透明
耐薬品性 良い 良くない
成形時の収縮 大きい 小さい

Q10
結晶の融点とはどのような温度ですか。


A10
結晶性プラスチックの結晶部が融解する温度です。
結晶の融点以上では、溶融状態になります。結晶が融解するときには、融解熱を吸収します。

Q11
ガラス転移温度とはどのような温度ですか。


A11
非晶性プラスチックの性質が急に変化する温度です。結晶性プラスチックでは、結晶部の融点よりかなり低いところにガラス転移温度が存在しますが、結晶構造であるため、非晶性プラスチックのようにガラス転移温度で極端に性質が変化することはありません。
非晶性プラスチックでは、固化した状態では分子運動は停止していますが、ガラス転移温度に達すると分子運動が急に活発になるため、軟化・溶融状態になることで性質が急に変化します。なお、ガラス転移温度をガラス転移点、二次転移点ということもあります。

Q12
分子の結合エネルギーとは、どのようなものですか。


A12
ポリマー分子は共有結合で結合しており、分子結合エネルギーは共有結合によるエネルギーで結びついています。
共有結合は原子核の外殻を回っている電子を共有することによって、原子同士がお互いに結びつく結合です。共有結合エネルギーは、金属結合エネルギーに匹敵する大きさです。

Q13
分子間の結合エネルギーとは、どのようなものですか。


A13
ポリマーの分子間の結合エネルギーは、ファンデルワールス結合や水素結合によるエネルギーです。
これらの結合エネルギーは、分子間に働く引力です。分子間の結合エネルギーは、分子の結合エネルギーの大体100分の1程度です。
ファンデルワールス結合は、原子の周辺を回っている外殻電子の動きによって生じるものです。水素結合は、水素原子の周りを回っている電子を、他の原子が引きつけることで生じるものです。

Q14
静的強度と衝撃強度の違いをわかりやすく教えて下さい。


A14

静的強度は、物体に力を加えた場合、その物体が破壊するときの強度です。衝撃強度は物体に力を加えた場合、その物体が破壊するまでに吸収したエネルギーの大きさです。図のように、強度は縦軸の大きさですが、衝撃強度は線で囲んだ面積に相当します。

Q15
ガラス繊維やカーボン繊維を充填すると、なぜプラスチックの強度が向上するのですか。


A15
成形材料を作る工程で、プラスチックと繊維が接着するような処方をとることで強度が向上します。例えば、ガラス繊維の強度はプラスチックの50倍以上ですから、プラスチックとガラス繊維が強固に接着していると、強化した材料の強度は向上します。
また、成形品中の繊維の含有量は多いほど、繊維の径が細いほど、長さは長いほど、強度は向上する傾向があります。

Q16
プラスチックはなぜ自己発熱するのですか。


A16
成形品に繰り返し力がかかると、ポリマー分子間の摩擦が起こり、摩擦によって発熱し ます。
特に、プラスチックは熱伝導率が金属の100分の1程度であるので、発生した熱が放散しにくいことも原因の1つです。

Q17
温度が低くなると、なぜもろくなるのですか。


A17
ポリマーの分子運動が不活発になるからです。
高温度の場合とは逆に、温度が低くなると、ポリマー分子の運動は次第に停止します。
このように停止した状態では、分子間の塑性変形が起こりにくくなるので、衝撃的に力が 加わると、塑性変形で衝撃エネルギーを吸収できなくなり、もろく破壊することになります。

Q18
プラスチックの分子構造と薬品の化学構造の関係によって決まる耐薬品性とは、具体的にどのようなものですか。


A18
主には次のような原則があります。
(1)プラスチックの分子構造と化学薬品の化学構造が似ている場合は、溶解、膨潤しやすくなる。時には亀裂が発生することもある。
(2)酸化作用の大きい薬品に接触すると変色、分解などが起こり易くなる。
(3)ポリマーの分子結合によっては、ある種の薬品によって化学的に分解され、分子量が低下する場合がある。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどは、温水、アルカリ水溶液などによって分解しやすい。分解すると、白化、亀裂発生などの現象が起こる。

Q19
金型とは、どのようなものですか。


A19
溶融状態のプラスチックを成形品の形にして、固化させる部分に用いるものを金型といいます。
射出成形、ブロー成形、配向ブロー成形、圧縮成形などでは鉄製の材質が使用されています。
真空・加圧成形では鉄、アルミ、木材などが使用されています。

Q20
射出成形法と押出成形法の違いをわかりやすく教えて下さい。


A20

図に示すように、射出成形法は溶融したプラスチックを金型に射出したのち、固化させて成形品を作ります。押出成形法は溶融したプラスチックを押し出して、大気中または水中で固化して成形品を作ります。

Q21
シリンダーとはどのようなものですか。


A21

射出成形機や押出機で、成形材料を溶融状態にする部分をシリンダーといいます。シリンダーは鉄製円筒状のものであり、外周には加熱用のバンドヒーターが巻かれています。また、シリンダーの温度を検出して、シリンダー温度をコントロールするために、温度計が設置されています。
シリンダーを、加熱筒ともいうここともあります。

Q22
スクリューとはどのようなものですか。


A22

シリンダーの中にセットされている雄ねじのような形のものをスクリューといいます。スクリューを回転させると、成形材料はシリンダーからの熱によって溶融されて、スクリュー先端に向かって送られます。射出成形機、押出成形機、ブロー成形機などでは、成形材料を溶融するのにスクリューが用いられています。

Q23
分子配向は、なぜ起こるのですか。


A23

分子配向は、ポリマーに力を加えると、力を加えた方向に引き伸ばされることで起こります。
熱可塑性プラスチックのポリマーは、溶融状態では丸まった状態(ランダムコイル)になっています。これに圧力を加えると、図に示すように、その方向にポリマーは引き伸ばされた状態になります。このような状態を分子配向といいます。
配向状態はエネルギー的に不安定な状態であるため、安定なランダムコイルの状態に戻ろうとします。しかし、ランダムコイルの状態に回復する前に固化すると、分子は動けなくなるため、分子配向の状態になります。

Q24
ガスバリアー性はどのような特性ですか。


A24
ガス透過のしにくさをガスバリアー性といいます。
ポリマーは巨大分子の集まりです。従って、分子間には隙間があるため、ガスが透過しやすい性質があります。食品容器、自動車ガソリンタンクなどの用途では、ガスバリアー性がよいことが求められます。
ガスバリアー性をよくするには、プラスチック表面に金属を蒸着する方法、ガスバリアー性のよいプラスチックと多層にして成形する方法などがあります。

Q25
医療器具に求められる可とう性とは、どのような性質ですか。


A25
可とう性とは、柔軟性のある特性です。
医療器具で、軟質で、体に直接挿入される中空状(管状)のものをチューブまたはカテーテルといいます。このような医療器具部品では可とう性が必要です。しかも透明性も必要であるので、軟質ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタンなどが使用されています。

Q26
事務機器部品で要求されるしゅう動性とは、どのようなことですか。


A26
しゅう動とは、2つのパーツが回転運動、直線運動などによって擦れ合うことです。 歯車、プーリ、カムなどではしゅう動面があります。このようなしゅう動面では摩耗や摩擦抵抗が少ないことが必要です。しゅう動性のよい材料としてはポリアセタール、ポリアミドなどがあり、これらの部品に使用されています。

Q27
ポリマーアロイではどのような改良ができますか。


A27
次のような改良例があります。
(1)衝撃強度の低いプラスチックにゴムをまぜて耐衝撃性を改良する。
(2)成形しにくいプラスチックに流動性のよいプラスチックを混ぜて成形性を改良する。
(3)薬品に侵され易いプラスチックに、薬品に強いプラスチックを混ぜて耐薬品性を改良する。

Q28
エンプラとは、どのようなプラスチックですか。


A28
エンプラとは、エンジニアリングプラスチックの略称で、強度、耐熱性などが優れており、主に自動車、電気・電子、機械部品などの工業部品に使用されるプラスチックの総称です。
エンプラは、荷重たわみ温度が100℃以上、引張強度が49MPa以上のものです。特に、荷重たわみ温度が150℃以上のものをスーパーエンプラと称しています。

Q29
カーボンニュートラルとはどんなことですか。


A29

図のように、植物は空気中の二酸化炭素を吸収して光合成をしているため、その植物を用いて作ったプラスチックが使用済み後に二酸化炭素を発生しても、全体の二酸化炭素の収支は0であるという考え方をカーボンニュートラルといいます。

Q30
プラスチックの燃焼試験はどのような方法で行いますか。


A30

UL規格の燃焼試験は、図に示すように、水平燃焼試験法と垂直燃焼試験法があります。
水平燃焼試験では、試験片を水平に取り付けて、一端に着炎して燃やし、試験片の標線間を燃える速度を測る方法です。
垂直試験では、試験片を垂直に取り付け、試験片の下側に着炎し、炎を離した後、燃え続ける時間、燃焼物が滴下したとき、コットンに着火するかどうかなどを測ります。
これらの試験結果から燃焼ランク付けをします。結果のランクの表し方としては、燃焼しにくい方からV0,V1,V2,HBの順になっています。

Q31
グリーン調達調査対象化学物質Aの15物質は、どのような物質ですか。


A31
国内外の法令で含有製品の販売・製品への使用に関し、禁止または制限または報告義務を受ける化学物質で、下記の15物質がリストされています。
カドミウムおよびその化合物、六価クロム化合物、鉛およびその化合物、水銀およびその化合物、ビス(トリブチル錫)オキサイド、トリブチル錫類、ポリ臭化ビフェニル類、ポリ臭化ビフェニルエーテル類、ポリ塩化ビフェニル類、ポリ塩化ナフタレン、短鎖塩化パラフィン、アスベスト類、アゾ染料・顔料、オゾン層破壊物質、放射性物質

Q32
もっと学びたいときの参考資料を教えてください


A32
「プラスチック教本」中條澄、工業調査会(1997)
「プラスチック技術」高野菊雄、工業調査会(2000)
「プラスチックポケットブック」本間精一、工業調査会(2005)
「やさしいプラスチック成形材料」本間精一、三光出版社(2007)

日本プラスチック工業連盟のHPもご参照ください。
http://www.jpif.gr.jp