Q1. アロー・ダイアグラムでなければ、PERT計算はできないのでしょうか?


Q2. アロー・ダイアグラム中に記入する各作業工程の所要時間見積は、常に一定とは限らないのではないですか?


Q3. 何故、システム安全工学手法が使われるようになったのですか。


Q4. どのような場合に、フォールトツリー分析を使えばよいのでしょうか。


Q5. イベントツリーの特徴は何ですか。


Q6. どのような場合に、事故や労働災害は起こるのでしょうか。


Q7. 計画・管理の数理的手法(PERT/CPM、シミュレーション、最適化手法など)について、参考となる文献を教えて下さい。


Q8. 確率の値の重要度(信憑性)は、フォールトツリーの方がイベントツリーよりも低いと考えてよいのですか。


Q9. FMEA とHAZOP は、両者とも建設工事を対象とした利用は困難のように思われるのですが、これらの手法は適用分野に関する向き・不向きがあるのでしょうか。


Q10. トライポッド理論の「トライポッド」の由来を教えて下さい。


Q11. THERP ,HCR ,CM ,MORT ,J-HPES 、VTA などの読み方を教えて下さい。



Q1.
アロー・ダイアグラムでなければ、PERT計算はできないのでしょうか?


A1.
そのようなことはありません。手計算で行う場合でも、実質的にネットワークができればそれでよく、フロー・ダイアグラムというものもありますが、アロー・ダイアグラムが最も簡便で明確であると考えられます。コンピュータで計算を行う場合は、この考え方が重要なのであって、実際にダイアグラムを書ことは必ずしも必要ではありません。

Q2.
アロー・ダイアグラム中に記入する各作業工程の所要時間見積は、常に一定とは限らないのではないですか?


A2.
一定値として計算を行う簡便な方法と、3点見積り法と呼ばれる方法などで期待値と分散からある確率分布関数を定義して、ある程度幅を持たせた計算を行う方法があります。但し、他のデータから正確な分布がわかっている場合には、そのデータを用いた方がよいでしょう。

Q3.
何故、システム安全工学手法が使われるようになったのですか。


A3.
工業製品やプラントなどは、技術の進歩に伴いより複雑かつ高度化してきており、同時に、使用時や運転時に発生したトラブルの社会的・経済的影響も無視できなくなってきています。以前は、耐久試験を行う等、製品開発の最終段階でトラブルの検討を行うことが主でした。しかし、システムの複雑化やトラブルの影響の深刻化に伴い、システムのトラブル防止策を事前に処置することが必要となり、トラブル防止において設計段階に重点が置かれるようになりました。そして、設計段階においてトラブル防止の検討を行うために、システム安全工学手法が使われるようになりました。

Q4.
どのような場合に、フォールトツリー分析を使えばよいのでしょうか。


A4.
システム安全工学手法には様々な手法があり、どれを利用すれば良いのか分かり難いかもしれません。しかし、それぞれの手法は適用目的や長所、短所に違いがあり、それらを理解すれば、自分が抱えている問題に適した手法が分かるものです。
フォールトツリー分析は、爆発のような事象を引き起こす原因を探し出すことを目的としています。これに対して、イベントツリー分析では、原因となる問題事象を先に決めて、最終的にどのような事象(例:爆発)に進展するか、最終事象を防ぐ条件は何かを明らかにすることを目的としています。
分析する目的が予め明らかになっていれば、システム安全工学手法の選択はそれほど難しいものではありません。

Q5.
イベントツリーの特徴は何ですか。


A5.
イベントツリー分析では、原因となる問題事象を先に決めて、最終的にどのような事象(例:爆発)に進展するか、最終事象を防ぐ条件は何かを明らかにすることを目的としています。
長所としては、最終事象を論理的に求められる点や、進展防止の対応策を立てやすい点が上げられます。短所としては、部分的な故障を考慮できない点や、全体のリスクを把握することが困難である点が挙げられます。

Q6.
どのような場合に、事故や労働災害は起こるのでしょうか。


A6.
原因が無ければ事故や労働災害は発生しませんが、原因があるからと言って事故や労働災害が発生する訳でもありません。
一般的には、3つのM(Man、Management、Machine)やヒューマンエラーの観点から、事故を防止するための対策が各組織内で行われています。通常は、1つの対策ではなく、複数の対策を組み合わせて事故や労働災害を防ぐようにしています。これを多重防護といいます。このため、単独で原因となるミスや問題が発生しても、事故や労働災害に結びつかないことがほとんどです。
しかし、普通は複数の原因が存在し、そして複数のヒューマンエラーが重なって、多重防護の穴をすり抜ける場合があります。このような場合に事故や労働災害が発生します。このため、事故や労働災害を防止するためには、個別の対策の実施レベルを高めると共に、多重防護の穴をすり抜けることが無いか、対策全体のチェックを行うことも重要となります。

Q7.
計画・管理の数理的手法(PERT/CPM、シミュレーション、最適化手法など)について、参考となる文献を教えて下さい。


A7.
圓川隆夫,黒田充,福田好朗編:生産管理の辞典,朝倉書店,1999
関根智明:PERT・CPM,日科技連,1973
刀根薫:PERT講座1基礎編,東洋経済新報社,1973
伊理正夫,今野浩,刀根薫監訳:最適化ハンドブック,朝倉書店,1995

Q8.
確率の値の重要度(信憑性)は、フォールトツリーの方がイベントツリーよりも低いと考えてよいのですか。


A8.
FTの場合は、ある安全装置の故障のような、小さな事象に対して与えた確率を積み上げて計算することにより、頂上事象の確率を算出していきます。従って、一つ一つの与えた確率値だけではなく、ツリーの作り方によっても頂上事象の確率が大きく変わってしまう場合があります。そのため、全体的なバランスチェックや感度解析によって精度の高いツリーへと修正することが有効です。
一方、ETの場合は、進展キーでの阻止確率を与えることになりますが、感度解析のような手法を用いても、どの進展キーが効いているかの判断は出来ますが、バランスを考慮してツリーを修正していくことは比較的難しいと言えます。このような事情のため、FTとETにおける説明の記述の違いが生じています。一つ一つの確率値の信憑性は何れにおいても変わりなく、膨大なデータに基づく比較的信頼性の高いデータを入力する場合から、人間のミスなどあまり正確ではない値を入れざるを得ない場合まで、ツリーが対象とする事象により様々です。

Q9.
FMEA とHAZOP は、両者とも建設工事を対象とした利用は困難のように思われるのですが、これらの手法は適用分野に関する向き・不向きがあるのでしょうか。


A9.
何れの手法も、化学プラントや工場といったものを対象とした手法として利用が広がった経緯があり、その意味では確かに建設工事にそのまま適用することは難しいかも知れません。また、適用しやすい分野とそうでない分野があることも確かです。しかし、これらの手法は、適用分野によってカスタマイズして利用している例も見られますので、利用する場合には、使いやすいように改変を加えることも一つの解決策になります。

Q10.
トライポッド理論の「トライポッド」の由来を教えて下さい。


A10.
トライポッドは英語のtripod (三脚)を意味しています。トライポッド理論では、事故事象(もしくは事故に至る前段階の事象)をハザード(危険源)、ターゲット(対象)、イベント(事象)の3本の足で捉えて、その防護が破れる原因を追究することを行います。(さらにその根本原因が、最終的には11 のグループに分類されます。)例えば、ガソリンの移し変え作業(ハザード)と近くでの喫煙(ターゲット)により、爆発(イベント)が生じたと事故事象を3本の足で捉え、その原因を追究していくことになります。

Q11.
THERP ,HCR ,CM ,MORT ,J-HPES 、VTA などの読み方を教えて下さい。


A11.
THERP はサープ、MORT はモートと呼ばれています。他は、アルファベット(エイチ・シー・アールなど)での呼び名が普通のようです。