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反応
Q1.酸化、ニトロ化、重合などの反応においてどうして事故が多いのですか。
Q2.小さなジャケット式冷却器つき反応器において安全操業していた。容量をベースにそのままスケールアップした反応器で操業してはいけないのは何故ですか。
Q3.反応器の本質安全化にあたっての対応としてはどのような方策がありますか。
Q4.バッチ式反応器の発熱反応を加速させる要因としてはどのようなものがありますか。
Q5.反応暴走を予防するために緊急遮断などの安全システムが設置されますが、この設計にあたっての留意点は何ですか。
混合
Q6.滴下重合中に異常が発生し一時中断するときの注意点は何ですか
Q7.混合系反応での不純物混入のルートにはどのようなものがありますか。
Q8.温度制御機能の設計に当たっての検討項目にはどのようなものがありますか。
Q9.着火源にはどのようなものがありますか
Q10.誤操作を防止するためのマニュアルにはどのようなものがありますか。
乾燥
Q11.乾燥工程ではなぜ災害が起こりやすいのですか。またどうして事故が増加しているのですか。
Q12.乾燥工程の安全対策のポイントは何ですか。
Q13.最近の廃棄物処理施設において、乾燥機による事故はどんな事例がありますか。
Q14.事故を起こさないために、乾燥運転条件のポイントは何ですか。
Q15.不純物として具体的に何が考えられますか。また混合危険防止のポイントは何ですか。
Q16.どうしてバグフィルターの爆発事例が多いのでしょうか。
Q17.粉じん爆発対策のポイントは何ですか。
Q18.爆発性を持つ材料の本質安全対策のポイントは何ですか。
移送
Q19.気体・液体・固体の差による移送工程の安全対策のポイントは何ですか。
Q20.移送物質の漏洩の原因にはどのようなものがありますか。
Q21.事故発生の原因となる不純物にはどのようなものがありますか。
Q22.固体移送における静電気対策の具体的方法について教えて下さい。
Q23.開発・設計・運転段階における安全対策のポイントは何ですか。
貯蔵
Q24.ナフサや原油の貯蔵に浮き屋根タンクが使用されるのは何故ですか。
Q25.プロパンガスや天然ガスを液化する利点は何ですか。また、液化することによる危険性は何ですか。
Q26.コーンルーフタンクに灯油や軽油などの帯電しやすい液体を受け入れるときの安全上配慮する点は何ですか。
Q27.液化プロパンの常温貯蔵の球形タンクの水抜き作業において、水抜き配管中に水が凍結したことによる事故が発生していますが、タンク内では液体の状態であるのに、配管中で何故凍結して氷が生成するのですか。
Q28.静電気帯電しやすい液体をタンクに受け入れた後、タンクマンホールから試料を採取する際には静置時間をとる必要があるとのことですが、静置時間についてもう少し詳しく説明してください。
Q1 酸化、ニトロ化、重合などの反応においてどうして事故が多いのですか。
A1
これらの反応は強い発熱反応でなので、反応で発生した熱が除去されないと反応物の過熱が起き温度上昇につながります。温度上昇は反応速度を増加させ、それがまた発熱速度を上昇させます。この連鎖が繰り返されることにより反応暴走が発生するからです。
Q2 小さなジャケット式冷却器つき反応器において安全操業していた。容量をベースにそのままスケールアップした反応器で操業してはいけないのは何故ですか。
A2
反応における発生熱量は反応器内の反応物の体積に比例します。一方、除熱量は冷却系への伝熱面積に比例します。単純にスケールアップすると、反応物の体積は3乗となりますが冷却面積は2乗にしかなりません。このため、冷却不足となり熱の蓄積が起こるからです。
Q3 反応器の本質安全化にあたっての対応としてはどのような方策がありますか。
A3
本質安全の1つの方策は保有量を低減させることです。このため、次の方策が考えられます。 1.槽型のバッチ反応器を触媒を利用したチューブ型の連続式反応器に変える。 2.液相反応を気相反応に替える。 3.バッチ反応における攪拌効率を上げることにより反応速度を早くし保有量の低減を図る。 なお、本質安全化にあたっては、研究開発や設計の初期の段階で検討する必要があります。
Q4 バッチ式反応器の発熱反応を加速させる要因としてはどのようなものがありますか。
A4
多くの要因が考えられますが、代表的な要因として以下があげられます。 1.冷却システムの故障 2.原料混合比の不調あるいは仕込み順序の間違い 3.原料中に不純物の混入(例:錆、空気、水分、油、金属粉など) 4.原料の一括過剰投入 5.反応器の金属が触媒として作用 6.反応器洗浄不十分による前反応での生成物の残留
Q5 反応暴走を予防するために緊急遮断などの安全システムが設置されますが、この設計にあたっての留意点は何ですか
A5
安全システムは通常インターロックシステムとして組み込まれます。インターロックシステムは、異常を検知するセンサー、判断を行うためのロジックソルバー、アクション実行する緊急遮断弁や緊急冷却剤を注入するための弁などから構成されます。異常反応の原因の1つに、制御システムの故障があります。このためインターロックシステムは、制御システムが故障しても機能が維持できるように制御システムとは独立のシステムとして構成することが必要です。また、必要に応じて冗長化することにより信頼性の向上がはかれます。
Q06 滴下重合中に異常が発生し一時中断するときの注意点は何ですか
A06
モノマー槽内で待機する場合には重合熱による温度上昇及び圧力の上昇が考えられます。停電による場合には撹拌機、冷却源も停止し危険な状態になります。この場合緊急ブローダウン、自動圧力放出機能を予め設計しておく必要があります。 運転再開時にも例題のような危険が起きる可能性もあります。従って一時停止の際には、温度管理条件、重合開始剤の失効時間、撹拌停止・再開条件等の待機可能条件を槽の近くに表示し暴走反応を防止することが重要です。
Q07 混合系反応での不純物混入のルートにはどのようなものがありますか。
A07
あらゆる可能性が考えられますが、通常最も可能性が高いルートとして、原料があります。次に装置から発生するもの、例えば材料選定ミスによる腐食やライニング材の剥離による金属との反応、また転用品の残留物等があります。 バッチ式の多目的反応器の場合には前の反応物質の洗浄不足による残留物との反応があります。洗浄水自体に不純物がある場合もあります。他に副反応を起こして異常反応を誘発させることもあります。
Q08 温度制御機能の設計に当たっての検討項目にはどのようなものがありますか。
A08
潜在危険評価を含め安全対策の使用作成には次の危険点項目の対策を考えておく必要があります。 ・冷却システムの過小設計 ・望ましい温度の誤設定 ・冷媒供給系の欠損 ・制御システムの不具合 ・機器具類の不具合 ・凝縮器の閉塞 ・動力源の不具合 ・ポンプの破損 ・他の機械的不具合(バルブ等)
Q09 着火源にはどのようなものがありますか
A09
主な着火源として次のものがあります。 ・静電気放電 ・火炎及び熱面 ・打撃及び摩擦 ・電気設備 ・自己発火性物質 ・自然発火 特に事例が多くあるのが静電気です。正電荷は輸送及び取り扱い操作中に不導体の液体、粉末、プロセス装置及び人体に帯電します。例えば粉末が輸送中に電気的に絶縁された面と接触するとき電荷は粉末と接触している物体へ移動されるか又は物体の近傍に誘起されます。蓄熱された電荷はスパークの形で放電し、可燃性粉塵又は蒸気雲を着火するに必要なエネルギーを生成する可能性があります。
Q10 誤操作を防止するためのマニュアルにはどのようなものがありますか。
A10
安全かつ正しい操作を行うために様々な操作マニュアル及び操作説明書が必要です。 ・プロセスの説明書及び正常時の操作マニュアル ・プロセス変更に関する潜在危険性の再評価書 ・製品の切替についてのマニュアル ・オペレーターの教育訓練書 ・プラントの保全方法書 ・安全システムのチェック手順書 ・緊急時マニュアル これらを正しく行うためにそれぞれについての審査会や承認手続きも大切です。
Q11 乾燥工程ではなぜ災害が起こりやすいのですか。またどうして事故が増加しているのですか。
A11
最近は乾燥製品の対象が食品、医薬品、電子材料、特殊化学品など高品質を要求される材料へと拡大して、高度な乾燥操作が要求されている背景があります。また新規需要に対応したさまざまな乾燥装置が実用化されています。また廃棄物の減容化の対応も増加しています。 1.気流乾燥機をはじめ、乾燥のために高温空気を使用しており、過度の乾燥が粒子の燃焼をもたらしやすいこと。 2.有機溶剤を含む材料の乾燥については、乾燥中に発生する可燃性ガスが、爆発性混合気の形成の可能性を考慮すべきであること。 3.また近年乾燥装置の性能は向上しており、従来よりも一段と低水分量の粉を生産することが出来るため、粉じん爆発の発生する可能性が高くなっています。 4.廃棄物処理やリサイクルは、化学プロセスとの類似性が高いにも関わらず、安全に関する基本認識が低いという指摘もあります。
Q12 乾燥工程の安全対策のポイントは何ですか。
A12
1.事前に材料の乾燥特性を十分に把握しておくこと。 2.少量でも付着ゴムの自然発火が起こるので、乾燥機内壁やコンベア周辺に付着した劣化材料の定期的な清掃が必要です。長期滞留しないように頻度も見直して下さい。 3.可燃性溶剤が含まれている場合は気相部の不活性ガス置換を実施すること。撹拌されて発じん状態になる場合も同様です。 4.静電気対策を確実に実施すること。 5.火花の発生が考えられるので、金属片の混入には注意が必要です。 6.この他臭気対策や乾燥品の発じん防止などの二次的な環境対策も重要です。
Q13 最近の廃棄物処理施設において、乾燥機による事故はどんな事例がありますか。
A13
1.熱風発生炉で発生させた熱風中の火の粉が火種となり、乾燥機内部のゴミが夜間運転停止中にくすぶり続け火災発生。 2.停電により送風冷却が停止し、乾燥機内部のCO濃度が上昇したが自動散水装置が作動し火災に至らず。 3.撹拌軸の長物巻付けによる火の粉発生。 4.破砕機に処理困難物が詰まり乾燥機へのゴミ投入が止まったことにより、衣類等可燃物が過乾燥になり発火。 5.圧縮成形機で炭化したRDFを乾燥機に投入したため発煙、一旦消火後再投入したが火種が残っていたため火災発生。 6.乾燥機投入コンベアが故障、乾燥機内ゴミの過乾燥による発火。 参考文献 : 「都市と廃棄物」vol.33.No.12(2003)から抜粋
Q14 事故を起こさないために、乾燥運転条件のポイントは何ですか。
A14
1.本事例のように乾燥材料の熱安定性、分解温度、吸湿性、爆発性などの物理的・化学的性質を良く把握しておくこと。 2.乾燥温度が高ければ乾燥時間が短縮できるが、材料の熱劣化を起こさないこと。 3.急冷が必要な場合は、材料によっては空気による強制冷却は避けて、窒素ガスなど不活性ガスを循環利用して行うこと。 4.物理的に出火の危険度は表面の乾燥度合で決まり、大きな火災になる危険度は可燃性物質の深部の乾燥度(含水度)によるので、過乾燥にならないように注意を払うこと。 5.乾燥機室内の湿度を高くして、乾燥機壁面を結露させないこと。排気口も結露しないように保温や必要なら加熱し、製品を濡らさないように傾斜をつけること。 6.熱風の流速をあまり速くすると、材料が飛散して粉じんも発生する。可燃性粉じんが発生しないように注意すること。 7.乾燥機では、乾燥材料の飛散、落下、付着は必ず起こるので、掃除を容易にする点検口が取り付けられていること。 その他詳細は、画面10の参照画面 : 安全対策の視点(1)、(2)を参考にして下さい。
Q15 不純物として具体的に何が考えられますか。また混合危険防止のポイントは何ですか。
A15
不純物との接触による反応検討対象として、系にあってはならないものとの接触例として、反応残査、装置材料(断熱材等)、空気、水、アルカリ、外部からの汚染としては鉄さび、金属イオン、油、熱媒、冷媒等とのコンタミを検討しておくことが大切です。 本事例は残存したアルカリによる重縮合反応が原因ですが、アルカリ洗浄後に水洗浄してもどうしてもアルカリは微量でも残ります。事前に反応の危険性、重縮合開始濃度の検討が必要です。他の工程の取り扱い物質と混合する危険性がないか、微量成分の蓄積、濃縮などによる危険性がないか、十分なリスク管理が大切です。
Q16 どうしてバグフィルターの爆発事例が多いのでしょうか。
A16
バグフィルターは付着した粉じんを払い落とす時に、適当な濃度の粉じん雲が形成されて、粉じん爆発の危険性が極めて高くなります。またバグフィルター内の着火源として、静電気火花の可能性が高いという特徴があります。ろ布と粉じんの摩擦などによって帯電量を増して、粉じんの堆積によって、多量の静電気が蓄積します。この時放電火花が発生すると、分散した粉じんを着火させる危険性があります。これを防止するために次の対策を取ります。 ・ろ布には導電性繊維を用いて、帯電防止加工を施したものを使用する。 ・絶縁状態にある金属リング部品などを接地して、集じん装置全体の除電対策の完全実施。 ・ろ布に付着した粉じんの払い落とし方法として、自動パルスエアー方式などを採用する。 参考文献 : 中央労働災害防止協会編「粉じん爆発の防止対策」(1989)
Q17 粉じん爆発対策のポイントは何ですか。
A17
特に粉じんの酸化、発熱分解などによる自然発熱・着火に対しては、バグフィルター周辺のダクト等に粉じんを堆積させないことと、確実な静電気対策が大切です。 またハンマーミルなどで金属片との打撃によって、火花の発生が考えられるので金属片の混入には注意が必要です ダクト等に結露や雨漏れを生じると、粉じんが吸湿して堆積し易く、発熱反応を促進する場合もあります。 粉じんが関連した事故として、乾燥機排気ダクトに堆積したファイン(微粒子)が自然発火したり、押し出し乾燥機のゴムの堆積物が付着して高温のまま放置して自然発火、溶接火花が乾燥機壁面に付着していた堆積物(粉乳)により発火、粉じん爆発が発生した事例があります。
Q18 爆発性を持つ材料の本質安全対策のポイントは何ですか。
A18
1.静電気に対する接地の効果は大きく、乾燥機各部に静電気が溜まらないように接地を完全に実施すること。 2.有機溶剤を含む乾燥の場合は、大気を加熱した熱風ではなく窒素ガスを加熱して循環させる。 3.ガス濃度計の設置。 4.防爆機器の選定。 5.粉じん爆発抑制装置として圧力もしくは温度検知器により緊急停止と消火剤散布など。 6.爆発圧力放散口の設置(形状、扉の面積、設計内圧、爆風の逃がし先など検討)。
Q19 気体・液体・固体の差による移送工程の安全対策のポイントは何ですか。
A19
1、気体移送では、可燃性ガスの漏洩と系内への空気混入による災害事例が多く、(1)漏洩防止 (2)空気混入防止 が安全対策上のポイントとなります。空気の移送やエアーパージの際には、移送先やパージする装置内に可燃性物質が残留していないことを確認することが重要です。
2、液体移送では、上記に加え、移送物質の異常反応による災害事例が多く、(3)異常反応防止と異常発生時時の安全装置の設置 がポイントです。移送液の逆流防止対策や圧力・温度上昇時の自動緊急遮断装置等の検討が重要です。
3、固体移送では、ニューマ輸送における粉じん爆発が多数発生しており、(4)移送用空気と可燃性ガスによる爆発混合気形成防止 (5)静電気発生・蓄積防止がポイントとなります。粉体サイロの不活性気体によるパージや静電気対策の徹底が重要となります。
Q20 移送物質の漏洩の原因にはどのようなものがありますか。
A20
過去の事例では、以下に示す様々な要因により漏洩が発生しています。
(1) 異物混入や移送成分の異常反応による配管の爆発
(2) 材質選定不良による配管折損(腐食、磨耗、割れ)
(3) ガスケット選定不良
(4) 定期的メンテナンス不足による装置劣化の放置
(5) 装置温度上昇後のホットボルティング(ボルトの締付け直し)忘れ
(6) 工事後のボルト締め忘れ
(7) 弁の閉め忘れ
(8) ヒューマンエラーによる弁の誤操作
Q21 事故発生の原因となる不純物にはどのようなものがありますか。
A21
以下に示す物質が挙げられます。不純物の存在により、思いがけない災害に到る場合があるため、設計前の危険性評価において、様々な不純物混入の可能性を検討しておく必要があります。
(1)反応副生成物(オリゴマー、ポリマー等)
(2)装置内壁への析出物質・付着物質(及びその劣化物)
(3) 配管の錆
(4)コンプレッサー油(及びその劣化物)
(5)機器開放後に残留している空気・水分
Q22 固体移送における静電気対策の具体的方法について教えて下さい。
A22
1、静電気を発生させないための対策
(1)移送配管の曲がりを少なく、かつ、内壁表面を滑らかに仕上げることにより、固体と配管の摩擦を少なくする。
(2)移送配管内の湿度を上げる
2、発生した静電気を除去するための対策
(1)設備、配管の材料を金属製・導電性のものとして接地する。
(2)帯電した電価と反対の電価のイオンを放出する帯電防止器を設置する。
3、静電気の放電から作業者を保護する方法
(1)帯電防止服・帯電防止靴を着用する。
(2)床に散水し、床と作業者間の電気抵抗を低くして、静電気が大地へ逃げやすくする。
Q23 開発・設計・運転段階における安全対策のポイントは何ですか。
A23
1、開発段階
(1)取り扱い物質の危険性評価を実施すること
(2)不安定物質・不純物の発生の可能性及び発生物質による危険性評価を実施すること
2、設計段階
(1)適切な運転条件(温度・圧力・組成)を選定すること
(2)運転条件管理に十分な計器・制御装置を設置すること
(3)誤操作・誤作動が発生した場合にも災害発生に到らせないための安全装置を設置すること(安全弁、緊急遮断設備、インターロック等)
3、運転段階
(1)運転マニュアルを整備して、教育・訓練を実施し、誤操作をなくすこと
(2)運転機器及び安全装置の定期点検を実施すること
Q24 ナフサや原油の貯蔵に浮き屋根タンクが使用されるのは何故ですか。
A24
ナフサや原油は揮発性が高いため、蒸発を抑制する必要があります。このため、液面の上に鋼性の屋根を浮かせる浮屋根タンクが使用されます。なお、ナフサや原油は灯油にくらべて引火しやすいため、浮屋根とタンク側板の間にはシール装置を設置し、蒸発を押さえるとともに大気中の空気からも遮断しています。
Q25 プロパンガスや天然ガスを液化する利点は何ですか。また、液化することによる危険性は何ですか。
A25
プロパンガスは液化すると体積が約250分の1に、天然ガスの主成分であるメタンは体積が約600分の1に減少します。このため、大容量の貯蔵が可能となります。逆に、液化ガスが漏洩した場合、気化により大量の可燃性ガスとなり空気との混合により爆発の可能性も生じます。
Q26 コーンルーフタンクに灯油や軽油などの帯電しやすい液体を受け入れるときの安全上配慮する点は何ですか。
A26
タンクの側板を貫通した配管から受け入れる場合には、受入配管が液に浸るまでは配管内の流速を1m/s以下に抑える必要がある。また、タンク屋根部に配管を貫通させて受け入れるときには、屋根部から直接受け入れると液の飛散により静電気が極めて大量に発生します。このため、配管はタンク底部にまで下ろして受け入れるか、それができない場合は、タンク側板の内面を静かに流れ落ちるように受け入れることが必要です。
Q27 液化プロパンの常温貯蔵の球形タンクの水抜き作業において、水抜き配管中に水が凍結したことによる事故が発生していますが、タンク内では液体の状態であるのに、配管中で何故凍結して氷が生成するのですか。
A27
球形タンクに液化プロパンを貯蔵するときの貯蔵温度は大気温度と同じであるため、タンク内では水は凍りません。しかし、水抜き作業において水が払いだされた後に液化プロパンが抜かれたならば、配管出口近傍での圧力は大気圧に近くであるため、液化プロパンは気化してプロパンの大気圧の沸点である−42℃近くに下がります。このため水が存在したならば凍結して氷が生成されます。
Q28 静電気帯電しやすい液体をタンクに受け入れた後、タンクマンホールから試料を採取する際には静置時間をとる必要があるとのことですが、静置時間についてもう少し詳しく説明してください。
A28
静置時間はタンクに液体を受け入れ後に試料採取や検尺を実施する前に、液体中に帯電した電荷を安全なレベルまで減少するための時間です。静置時間は液体の導電率と液体の容積により決まりますが、(独)産業安全研究所の静電気安全指針では以下の推奨値を示しています。
液体の導電率(S/m) |
液体の容積(m3) |
<10 10〜50 500〜5000 ≧5000 |
>10−8 |
1以上 1以上 1以上 2以上 |
10−12〜10−8 |
2以上 3以上 10以上 30以上 |
10−14〜10−12 |
4以上 5以上 60以上 120以上 |
<10−14 |
10以上 10以上 120以上 240以上 |
単位:分
なお、灯油、軽油、ガソリンなどの石油製品やヘキサン、ベンゼンなどは帯電しやすい液体なので上の表に示す静置時間の管理が必要です。
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