Q1-1.ドップラー効果はどのようにして発見されたのでしょうか?

Q1-2.鳥の鳴き声の場合、ドップラー周波数の式はΔf =v f /(c -v )となるのはなぜですか?

Q1-3.電波や光が移動物体に当たって反射する場合は、ドップラー周波数の式はΔf =2v f /(c -v )となるのはなぜですか?

Q1-4.音波の速さを測る方法はどんな方法がありますか?

Q1-5.マラソン、自動車、飛行機などの速さを教えてください?

Q1-6.長さの基準はどのようにして作られているのですか?

Q1-7.SI基本単位とは何ですか?

Q1-8.超音波とはどのような波ですか?

Q1-9.超音波センサについて教えてください。

Q1-10.温度と共に抵抗値が変化する半導体素子について教えてください。

Q1-11.ペルチェ効果とはどんな効果ですか?

Q1-12.静電容量式温度センサについて教えてください。


Q2-1.これ以外の温度計やセンサはありますか?

Q2-2.温度測定で使用する測温体の利点、欠点を教えてください。

Q2-3.極低温と高温度測定用計器の種類を教えてください。

Q2-4.温度センサの選定のポイントは?

Q2-5.ゼーベック効果による起電力はどのようなものでしょうか?

Q2-6.補償導線の目的を教えてください。

Q2-7.直接接触とは?

Q2-8.熱電対の特徴と使用温度範囲を教えてください。

Q2-9.シース熱電対がすぐれている理由を教えてください。

Q2-10.熱電対の種類記号にK、J、E、Tなどがありますが、何を意味するのでしょうか?

Q2-11.放射温度計で利用している熱放射に関する法則を教えてください。

Q2-12.サーモパイルとは何でしょうか?

Q2-13.光高温計とは何でしょうか?

Q2-14.水銀式体温計と電子体温計はどう違う?

Q2-15.体温はどこで作られているのですか?

Q2-16.鼓膜の温度を測る意味はなんでしょうか?


Q3-1.人間や動物に聞こえる音声周波数(可聴周波数)はどのくらいですか?

Q3-2.騒音と雑音の違いは何でしょうか?

Q3-3.雷の騒音レベルはどのくらいですか?

Q3-4.人間に聞こえない20Hz未満の周波数や16,000Hz程度以上の周波数の音はどうやって測るのですか?

Q3-5.音で音を消す消音法とはどういう方法ですか?


Q4-1.計測器の始業点検方法を教えてください。

Q4-2.電圧計の内部抵抗が大きく、電流計の内部抵抗が小さくなければならない理由

Q4-3.なぜ電流計を回路に並列に接続してはいけないのか?

Q4-4.電源を流す源はどこにあるか?また、電流と電圧の違いとは何か?

Q4-5.アナログテスタとディジタルテスタの違い

Q4-6.テスタの内部構成はどうなっているのですか?


Q5-1.ダブルブリッジは、なぜリード線の持つ抵抗や接触抵抗の影響を受けないで、低抵抗の測定ができるのか?

Q5-2.なぜ低抵抗測定にはリード線の持つ抵抗や接触部の抵抗が無視できないのか?

Q5-3.ケルビン・ダブルブリッジのケルビンとは?

Q5-4.コールラウシュ


Q6-1.コイルやコンデンサの流れる交流電流と抵抗の関係は?

Q6-2.添え字に使われるXには、どのような意味があるのでしょうか?

Q6-3.コイルの良さQの求め方を教えてください。

Q6-4.損失率Dの求め方を教えてください。


Q7-1.交流電力と直流電力の違い、力率

Q7-2.ブロンデルの定理

Q7-3.電力量計の回転円板の原理:アラゴの円板

Q7-4.最大電力量の測定がなぜ必要なのでしょうか?


Q8-1.シンクロスコープとの違い

Q8-2.テレビ用ブラウン管との違い

Q8-3.プローブの仕組み

Q8-4.なぜ正弦波を扱うのか?

Q8-5.フーリエ展開とは?

Q8-6.日本の家庭用電源は何ボルト?

Q8-7.位相角と偏角の違いプローブの仕組み

Q8-8.スペクトルの語源


Q9-1.カウンタとは?

Q9-2.なぜディジタル方式にするのか?

Q9-3.波形整形回路にはどんな種類があるか?

Q9-4.ローレンツ力 とは?

Q9-5.ホール素子とMR素子は、どちらがすぐれているか?


Q10-1.光の波長はどのくらいか?

Q10-2.光の速度はどのくらいか?

Q10-3.光の周波数はどのくらいか?

Q10-4.光ファイバ中の光の速度はどのくらいか?

Q10-5.光ファイバ中の減衰はどれくらいあるか?

Q10-6.受光素子には何が使われるか?

Q10-7.OCTの応用は?

Q10-8.断層像は超音波でもできるのでは?

Q10-9.光ファイバセンサにはどの波長が使われるか?

Q10-10.ファイバグレーティングはどのように作るか?

Q10-11.光ファイバ同士はどのように接続するか?

Q10-12.偏光面は電界の影響は受けるか?

Q10-13.光ファイバ中の偏光は乱れないか?

Q10-14.レーザ光を空中に飛ばしても危険はないか?

Q10-15.本当に光で音が出るか?

Q10-16.逆に音で光が出るか?

Q10-17.光と音の関係は?



Q1-1
ドップラー効果はどのようにして発見されたのでしょうか?


A1-1
1845年、オーストリアの物理学者であるドップラーは、オランダでユニークな実験を行っています。2日間にわたって機関車が速度を変えた貨車を何度も引っぱり、貨車の上ではトランペット奏者がトランペットを吹き、地上では正確な音程を聞き分けることのできる音楽家が、機関車が近づいたり遠ざかったりするたびにその音の高さを記録したのです。この結果、ドップラーの公式の正しさは見事に証明されました。

Q1-2
鳥の鳴き声の場合、ドップラー周波数の式はΔf =v f /(cv )となるのはなぜですか?


A1-2
音源Sが速度 で近づく場合、静止している観測者Oに届く波長はλ1 =(cv )/f です。そのときの周波数はf 1c / λ1c f /(cv )と表せるので、ドップラー周波数はΔff 1fv f /(cv )となります。


Q1-3
電波や光が移動物体に当たって反射する場合は、ドップラー周波数の式はΔf =2v f /(c v )となるのはなぜですか?


A1-3
移動物体を観測者と考えるときの受振周波数は、f2f (c v )/c となります。次に、移動物体を発振源と考えるときの周波数は、f 3 f 2c / (cv )=f (cv ) / (cv )となります。よって、ドップラー周波数はΔf =f 3f =2v f /(cv )となります。


Q1-4
音波の速さを測る方法はどんな方法がありますか?


A1-4
音波や電波などの場合は、波の周波数と波長を求め、それらの積から求めます。


Q1-5
マラソン、自動車、飛行機などの速さを教えてください。


A1-5
マラソンランナー:時速約19.5km
自動車      :時速60~100km
飛行機      :時速1000km

Q1-6
長さの基準はどのようにして作られているのですか?


A1-6
メートルは、「1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである。」この定義により、光の速さは1秒間に299792458m進むと決められました。
最初に定められたメートルの定義は、地球の子午線の1/4000万の長さとされていました。そこで人工物のメートル原器の長さはクリプトン86からの放射電磁波の波長とより精度の高い定義へと変更されました。そして、現在では上記の長さをメートルの定義として、「よう素安定化レーザ」を用いて測定されています。



Q1-7
SI基本単位とは何ですか?


A1-7
次の表で示される7つの基本量について単位を定めたものを指しています。

基本量 SI基本単位
名称
記号
長さ
メートル
m
質量 キログラム
kg
時間
s
電流 アンペア
A
熱力学温度 ケルビン
K
物質量 モル
mol
光度 カンデラ
cd

Q1-8
超音波とはどのような波ですか?


A1-8
JIS用語辞典(電気編)によると、「超音波」の定義については、「正常な聴力を持つ人に聴感を生じさせないほど周波数(振動数)が高い音波(振動波)」となっており、その境界周波数については、弾力的に扱われています。通常、人間の耳で聴くことのできる音は20Hz~20kHz位までで、これより高い周波数の音波を超音波と呼んでいますが、工学的には聴くことを目的としない音波という定義が一般的です。

Q1-9
超音波センサについて教えてください。


A1-9
超音波センサとは超音波を受信して電気信号に変換するシステムです。超音波の発振部には、下図の超音波振動子が用いられています。その形状には、圧電素子の振動により超音波を発振することを基本とし、空気中に効率よく伝播させるための工夫が施されています。圧電素子とは、その名の通り、電気を加えると応力が生じ、振動を起こす、また逆に応力を加えると電圧が発生する強誘電体です。


Q1-10
温度と共に抵抗値が変化する半導体素子について教えてください。


A1-10
温度により抵抗値が変化する素子の代表例として「サーミスタ」があります。温度が上がると抵抗値が上昇する「正特性サーミスタ」、温度が上がると抵抗値が下がる「負特性サーミスタ」に大別されます。

 サーミスタの温度特性式
 t [℃]における抵抗値R [Ω]は近似的に次式となります。

  R = R25exp{B (1/-1/25)} [Ω]

T (K)= [℃] + 273.15 
R :温度T(K)における抵抗値[Ω]  
R25:温度T25(K)=273.15 + 25[℃]における抵抗値[Ω]
B :素子の温度係数 (K)
   >0~正特性、<0~負特性




Q1-11
ペルチェ効果とはどんな効果ですか?


A1-11
1834年フランスのペルチェ氏により、二つの異種金属に直流電流を流すと吸熱と発熱作用が生じ、電流の向きを逆転させると、その関係も反転することが発見されました。この現象は発見者に因んで、「ペルチェ効果」と呼ばれています。 
P型半導体に直流電流を流すと左端が低温、右端が高温となります。また、n型半導体に直流電流を流すと左端が高温、右端が低温となります。


Q1-12
静電容量式温度センサについて教えてください。


A1-12
静電容量式温度センサとは、コンデンサの比誘電率変化を利用したものです。
その原理は次の通りです。
1) 平板型コンデンサに電圧を印加すると、コンデンサ電極端から電気力線がはみ出します。
2) 付近の液体に漏れた電気力線が印加されます。
3) 比誘電率変化が起こり、コンデンサ容量が変化します。
4) 液体の比誘電率は温度に依存します。
5) よって、液温が測定できます。















Q2-1
これ以外の温度計やセンサはありますか?


A2-1
温度センサの主なものは、熱電対、金属測温抵抗体、サーミスタ、熱放射検出ですが、 これ以外にも種々の温度計やセンサがあります。そのいくつかを表1にまとめます。
また広く認知されたものはJIS規格として規定されており、IEC(国際電気標準規格)とJIS間の整合性も検討されています。
温度測定関連のJIS規格の一部を表2にまとめます。





Q2-2
温度測定で使用する測温体の利点、欠点を教えてください。


A2-2

Q2-3
極低温と高温度測定用計器の種類を教えてください。


A2-3
超電導現象機器用に使用される極低温用センサとして、ゲルマニウム測温抵抗体、カーボン測温抵抗体などがありますが、Pt-Co合金測温体では4K程度まで測定できます。
高温用温度計では、検出素子にSiやInGaAsを用いた放射温度計で3500℃程度まで測定できます。


Q2-4
温度センサの選定のポイントは?


A2-4
熱電対、白金測温抵抗体、サーミスタについては共通したことがたくさんあります。
(1)  測定対象物の温度範囲に近い測定範囲のセンサを選定し、むやみに測定範囲の広いものを選定しない。
(2)  用途と目的に合った精度と階級のものを選定する。
(3)  使用環境を調べ、特に腐食性・耐熱性などを考慮する。
(4)  機械的強度や応答性を考慮して、形状やサイズを選択する。
(5)  温度センサのメーカは、用途別に多くの商品を用意しているが、特殊用途ではメーカに相談することが望ましい。
(6)  計測器はそれぞれのセンサに適合するものを選定する。
(7)  取付けるときには、感温部を測定対象物に密着させて保持する。

放射温度計の場合には、
(1)  必要以上に測定範囲の広いものは選択しない。通常、低温になるほど感度が悪く、誤差が大きくなる。
(2)  高温測定の場合には短い波長、低温測定の場合には長い波長の放射温度計が用意されているが、放射率を考慮すれば、温度が許す限り波長が短いものを選択する。
(3)  放射温度計と測定対象物間の距離と測定対象物の大きさを確認して選定する。 固定焦点形の放射温度計では、標的のサイズと距離の関係図を参考にし、可動焦点形の放射温度計では、距離係数を考慮する。
(4)  取付けおよび使用する場合には、光路に障害物やちりほこりがないように清掃・保守する。




Q2-5
ゼーベック効果による起電力の大きさはどのくらいでしょうか?


A2-5
ゼーベック効果によって生じられる起電力は、冷接点と温接点間の温度差にほぼ比例するので、起電力の単位[V](ボルト)にその熱電対固有の「温度-起電力」特性の係数処理をすれば、温度単位[℃]に変換できます。
例えば、表は銅-コンスタンタン熱電対の冷接点を0℃にしたときの、温接点の温度に対する熱起電力です。
例えば、0℃と100℃において、完全に特性が直線性を有しているならば、1mVが約23.37℃(100/4.279)に相当するので、mV電圧計の目盛りを23.37倍にして描けば、温度計の目盛り[℃]になります。熱起電力が2.5mVなら58.425℃(2.5×23.37)目盛りを示すことになります。









Q2-6
補償導線の目的を教えてください。


A2-6
熱電対の測温接点と記録計や調節計などの計測器間が長い場合、熱電対素線の代用線を用いると安価になります。
補償導線は、熱電対素線の代用として用いるので、補償接点での温度特性が熱電対素線に近いものを用い、測定器の位置を基準接点とします。
熱電対の種類に合わせて専用の補償導線を使用します。
補償導線以外の導線は誤差の原因となります。


Q2-7
直接接触とはどのような接触でしょうか?


A2-7
直接接触とは、バンド等で押さえて接触させることをさします。

Q2-8
熱電対の特徴と使用温度範囲を教えてください。


A2-8
熱電対は、低温域から高温域まで(-200℃~+1800℃)測定できる経済的な温度センサであり、工業用として広く使用されています。

=選定ポイント=
1.
用途に適した温度特性をもった熱電対を選択する
2.
使用環境により耐振性や腐食性を考慮して選択する
3.
応答速度や機械的強度を考慮した形状とサイズを選択する

=特徴=
1.
起電力が小さいので、微小電圧を測定する技術が必要
2.
比較的高い温度まで測れる(JIS C1602、1610、Z8704、8710)
3.
素線を裸で用いると熱容量が小さくなるので、小物体や表面温度の測定ができる
4.
基準接点の温度の影響を受ける

熱電対の特徴と使用温度




Q2-9
シース熱電対がすぐれている理由を教えてください。


A2-9
シース熱電対で絶縁材料として使用されているマグネシア(MgO)やアルミナ(Al2O3)は磁性材より熱伝導率がよく、また固く充填されているため応答時間が速く、防食、耐熱、機械的にもすぐれています。

Q2-10
熱電対の種類記号にK、J、E、Tなどがありますが、何を意味するのでしょうか?


A2-10
JISで定められている熱電対の素線の組合わせを示します。



Q2-11
放射温度計で利用している熱放射に関する法則を教えてください。


A2-11
放射温度計は、物体から出る電磁波のエネルギーを測定して温度を得ます。その原理は、三つあります。

(i)プランク(Planck)の法則
 放射する電磁波は、その物体固有のもので、絶対温度T の黒体(*)表面(1m2)から、垂直方向に単位立体角(1sr)あたり放射される波長λmの単位波長幅(1m)あたりの分光放射輝度Le,λは、





となります。
ここで、



c :真空中の光速
h :プランク定数
k :ボルツマン定数
T :黒体の絶対温度
λ:物体から放射される波長

このように分光放射輝度は、波長が単一の場合には(1)式で求められますが、現実には単一波長のエネルギーを求めるのは困難なため、ある幅を積分して求めています。
黒体の表面積を1cm2、波長幅を10nmにして、温度に対する黒体の分光放射輝度を図に示します。



これからわかることは、
・放射エネルギーは、波長と共に連続に変化する
・どんな波長においても、放射エネルギーは温度とともに増加する
・温度が高くなるに従って、低波長の成分が相対的に大きくなる
です。
また、放射発散度Me,λは次式から求められます。



(ii)ステファンボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則
黒体の放射エネルギーを波長0から∞まで積分して、全波長域にわたる放射発散度を求めたもので、次式で与えられます。

この式は、黒体の全波長域にわたる放射発散度が絶対温度T の4乗に比例することを示しています。
α はステファンボルツマン定数で、(2)式を波長λの全域にわたって積分することにより、


となります。

(iii)ウィーン(Wein)の変位則
黒体の分光放射エネルギー(分光放射輝度または分光放射発散度)が最大になる波長λmと、黒体の絶対温度T との積が一定値になるというもので、次式となります。

例えば、絶対温度300Kのときに分光放射エネルギーが最大になる波長λは、約9.7μmになります。




Q2-12
サーモパイルとは何でしょうか?


A2-12
サーモパイル(thermopile)は、熱電対を多数直列に接続することによって、熱電対としての感度を向上させたものです。放射式温度計や電子体温計の感温素子として広く利用されています。
特殊なものとして、P型とN型の半導体をくし型に切断し、これを蒸着技術で多数を一度に接続し、体温と外気温の差で発生する電圧を腕時計の電源として実用化している例もあります。




Q2-13
光高温計とは何でしょうか?


A2-13
物体が放射する熱放射を標準の比較用光源と比較して、測温対象物の熱放射のレベルを知り、温度を知るものです。図では、物体からの熱放射[m]と標準ランプからの光[s]を光切換機構で周期的に切換え、検出素子である光導電セルに当てます。
このとき[m]と[s]に差がある場合には、増幅回路に入る信号は交流となります。
信号演算処理部では、信号の交流部分がなくなるように、ランプ電源の電流を制御します。このときの標準ランプの電源電流から物体の熱放射量を知ることができます。





Q2-14
水銀式体温計と電子体温計はどう違う?


A2-14
温度の検出原理は、水銀式は温度による水銀の膨張、電子式はサーミスタなどの抵抗値変化を利用している違いがあります。
一方、温度の測定原理では、水銀式は実際の温度を測定する“実測検温”であり、電子式は測定温度の変化の様子から、平衡温度を予測する“予測検温”です。
実測検温では、腋下や口中で指定通りに体温計を保持し、平衡温に達するまでの十分な時間(普通10分以上)をかければ、体深部の実温度に近い体温を測定していることになります。
現在でも病院や医院の専門家が水銀式温度計を多く利用しているのは、単に消毒等が手軽に出来るというよりも、実測検温が臨床上から重要であるからです。
電子式体温計は、取扱上からは、スピーディで手軽に検温できる優位さがあり、予測検温を実測検温の精度にまで近づけるための、いろいろな努力が続けられているのが現状です。図はその一例です。
この例では、感温部内部に二つの温度センサが断熱材を挟んで平行に取付けられています。
二つの温度センサそれぞれの測温値により、体深部から温度センサ1までと、温度センサ1から温度センサ2までの熱流量を測定します。
この測定値と熱伝導方程式を用いて、体深部の温度を算出します。
皮膚温の測定ではなく、体深部からの熱流量を測定することにより、検温の短時間測定を実現しています。






Q2-15
体温はどこで作られているのですか?


A2-15
人体の核心部(体深部)は、気温に関係なくほぼ37℃に保たれていますが、その熱の発生源はどこにあるのでしょうか?生体中にも電気の発電所のような“発熱所”があるのでしょうか?
熱エネルギーの基は、食物として摂取したエネルギー基質と呼吸により取り入れた酸素です。消化管から吸収された食物のエネルギー基質は複雑な代謝過程において、高エネルギーリン酸化物を合成するときに、大半が熱となり、最終的に水とN-化合物に分解されて体外に放出されます。その他、骨格筋が不随意に周期的に収縮する“ふるえ”による収縮エネルギーは全て熱となります。このように、体温の基となる熱の生産は、大半が体深部の筋や内臓で発生し、一部は筋の“ふるえ”でも発生しますから、正確には生体のほとんど全体が発熱所であるといえます。発生した熱は、大部分が血流によって体深部から体表面へ運ばれます。なお、食物のエネルギーのうち、走る等の外的仕事に使われるのは20
で、残りの80%は熱となって放出されています。





Q2-16
鼓膜の温度を測る意味はなんでしょうか?


A2-16
鼓膜の温度は、体温調節をつかさどっている脳の視床下部に流入する血液の温度を反映しています。鼓膜は耳のなかで一番温度が高い部所でもあります。
















Q3-1
人間や動物に聞こえる音声周波数(可聴周波数)はどのくらいですか?


A3-1
一般的には以下のとおりです。ただし、環境や習慣によるばらつきもあるので、この数値はおおよその目安です。例えば、人間の場合でも母音の発音を主として話す日本人は、英語圏など母音と子音の両方に慣れている人に比べて、聞き取れる周波数範囲が狭いと言われています。

 
<可聴周波数範囲 [Hz]>
人間
20~16,000  Hz
35~40,000  Hz
60~100,000  Hz
コウモリ
105,000  Hz
イルカ類
100,000~140,000  Hz

Q3-2
騒音と雑音との違いは何でしょうか?


A3-2
雑音とは、不規則な振動あるいは互いに関係のない周期を持つ振動が同時に起こる場合の音です。よって、機械の音や雷鳴などは雑音ですが、それらの音が邪魔になり聞きたくない場合は騒音となります。

Q3-3
カミナリの騒音レベルはどのくらいですか?


A3-3
落雷時の電力の大きさや周囲の障害物にもよりますが、近くで雷鳴を聞くと約120dBの騒音レベルとなります。

Q3-4
人間に聞こえない20Hz未満の周波数や16,000Hz程度以上の周波数の音はどうやって測るのですか?


A3-4
20Hz未満の音については、振動計を用いて測定します。また、16,000Hz程度以上の高い周波数の音は超音波センサを用いて測定することができます。以下に、振動計と超音波センサの構成図を示します。

(1)振動センサ
左図の振動センサは圧縮型とシェア型が示されていますが、センサ部分は同じ強誘電体結晶でできています。電圧を加えると振動が起こり、 圧力を加えると電圧が発生する性質を持っています。よって、この振動子は振動の送信と受信の両方で用いることが可能です。


(2)超音波センサ
この場合も同じ強誘電体結晶の振動子を用いており、印加電圧により振動を生じ、また圧力を受けて電圧を発生することができます。図中には、超音波の送受信により物体の検出を行うシステムを示しています。


Q3-5
音で音を消す消音法とはどういう方法ですか?


A3-5
現在発生している音波に対して、波が打ち消されるように時間をずらして同じ振幅、同じ周波数の音波を図のように加えて消音する方法です。















Q4-1
計測器の始業点検方法を教えてください。


A4-1
計測器の測定の前には、必ず始業点検を行います。 これを省いてしまうと、正しい測定結果を得られません。 ディジタルテスタを例に取上げると、以下の図に示す方法で、必ず始業点検を行ってください。

Q4-2
電圧計の内部抵抗が大きく、電流計の内部抵抗が小さくなければならない理由


A4-2
電圧を測る場合は、抵抗の両端に電圧計を接続します。 そのため、抵抗に流れる電流の一部が、電圧計をつないだとき、 電圧計の方に流れ込んでくるようなことがあってはなりません。 そのため、電圧計の内部抵抗は大きな値を持っています。 また電流計は、電流の流れる回路に入れる計器ですから、電流計を回路に入れたときに、 電流を減らすようなことがあってはなりません。そこで、 電流計の内部抵抗は小さな値にしてあります。

Q4-3
なぜ電流計を回路に並列に接続してはいけないのか?


A4-3
電流計の内部抵抗は小さな値(例えば0.5Ω以下)です。 もし誤って、以下のように回路に並列に接続すると、電流計の両端に電圧が直列に加わることになります。 例えば、電流計に100Vが加わったとすると、 電流計に流れる電流は、IV /R =100/0.5=200Aという大きな値になり、 電流計が壊れてしまいます。



Q4-4
電源を流す源はどこにあるか? また、電流と電圧の違いとは何か?


A4-4
図(a)において、水槽Aから水槽Bに水が流れるのは、 Aの水位H A [m]とBの水位H B[m]の差H AH B [m]による圧力があるからです。 ここで水位とは、基準とするある位置から水槽A、Bの水の高さをいいます。 電気の場合も水と同様に、ある基準に対する点における電気的な圧力を電位といいます。 ある基準とは、大地または電源の(-)極にとるのが一般的で、アースまたはグランドといいます。




図(b)において、乾電池の点Aの電位をV A 、点Bの電位をV B とすれば、 電位差V AV B の電気的な圧力によって回路に電流を流すことができます。このような電位の差を電位差または電圧といいます。電圧を表す記号にはV を用い、単位はボルト(単位記号[V])です。 図(a)において、上の水槽から下の水槽へ水を流し続けるためには、下の水槽の水をポンプで上の水槽へ上げてやる必要があります。 このポンプの役目をしているのが乾電池です。乾電池は、電流を流すための電圧を発生し続ける力を持っています。 乾電池などを電源といい、発生している電圧を起電カといいます。起電力を表す記号にはE を用い、単位はボルト[V]です。 なお、電池の起電力のように、常に一定の電圧を保っている電源を直流電源といい、乾電池の他、鉛蓄電池、直流発電機、直流安定化電源があります。

Q4-5
テスタのディジタルとアナログは、どこが違う?


A4-5


アナログテスタとディジタルテスタはどこが違うのでしょうか。 これは、ディジタルテスタで測定することを考えると、理解しやすくなります。
ディジタルテスタの全体の構成は下図のようになります。 整流回路の出口まではアナログ式と同じです。
測定量は、それぞれの目的に応じた回路に入り、整流回路を通ります。 また、増幅器による必要な増幅の後、A-D変換器によりパルス波となり、 カウンタ回路によって必要な値とされ、表示されます。



Q4-6
テスタの内部構成はどうなっているのですか?


A4-6
テスタは目的の測定方法をロータリースイッチにより切り換えますが、この際、内部の測定回路が選択されます。 選択された回路は、メータ回路を含むループ回路(閉回路)となり、必要な量がメータに表示されるのです。
















Q5-1
ダブルブリッジは、なぜリード線の持つ抵抗や接触抵抗の影響を受けないで、低抵抗の測定ができるのか?


A5-1
レッスン画面の原理図(a)を展開すると以下のようになる。



まず、測定対象の導体は、4端子(C1,P1,C2,P2)に接続する構造になっている(レッスン画面結線図(b)を参照)。 上図において、aP1間およびbP2間のリード線抵抗と端子での接触抵抗は、 それぞれ、QP に含まれることになる。ところでダブルブリッジは、P / Qp /q が測定に関係するのであって、 PQpq の個々の抵抗はある程度自由にできる。そこで、Qq を比較的大きい値にすれば、 この中に含まれるリード線抵抗や端子の接触抵抗はほとんど無視できる。
また、b-C2間のリード線抵抗は、r に含まれることになるが、ダブルブリッジでは、 比例辺がP /Qp /q の二つあるようにし、常にP /Q p /q になるように工夫されている。 それゆえ、r は計算上消去されて、r にリード線抵抗が入っても問題ではない。 また、C1-aのリード線は電源に入るので、誤差には関係しない。

Q5-2
なぜ低抵抗測定にはリード線の持つ抵抗や接触部の抵抗が無視できないのか?


A5-2
電線の材料に使われる銅やアルミニウムの棒状導体の抵抗はきわめて小さい値である(下図参照)。

それゆえ、このような小さな抵抗値を持つ棒状導体の抵抗測定を行う場合、 通常は無視できるようなリード線の抵抗やダブルブリッジに接続する際に生ずる接触抵抗の影響は、 たとえ小さくても無視できない。無視すると、測定値に誤差を生ずる。 つまり、測定する抵抗値が小さいと、リード線や接触抵抗が未知数に対し大きな割合を占めることになる。

Q5-3
ケルビン・ダブルブリッジのケルビンとは?


A5-3

イギリスの物理学者ケルビン(Kelvin,William Thomson,1824~1907)は、 10歳でグラスゴー大学に入学するほどの神童であった。 続いてケンブリッジ大学で学び、グラスゴー大学教授となった。 1852年、「力学的エネルギーの散逸」とする論文を発表し、その中で、エネルギー保存の法則について述べている。 絶対温度の単位ケルビン[K]は、彼の名にちなんでいる。 電磁気学の分野に電磁場の概念を導入し、1861年ダブルブリッジを考案した。 さらに、大陸間海底ケーブルの敷設にも関係し、1886年グレートイースタン号に乗って直接指導するなど、 ケーブル敷設に多大の貢献をした。 大きな業績により、ケルビン卿とたたえられた。

Q5-4
コールラウシュ


A5-4

電解質溶液の電気伝導性はドイツのコールラウシュ(F. Kohlrausch:1840-1910)によって1869~1880年にわたり、 精力的に測定されました。 もともとコールラウシュは水のイオン積を求める手法として導電率を測りはじめたといわれています。 このとき導電率を測定するために考案されたコールラウシュブリッジは、現在でもよく知られています。














Q6-1
コイルやコンデンサの流れる交流電流と抵抗の関係は?


A6-1
コイルは交流電流を妨げる成分、つまりリアクタンスX L = 2πf L [Ω]という抵抗が生じます。

コンデンサには交流電流を妨げる成分、

つまりリアクタンスX C [Ω]という抵抗が生じます。

上記により、コイルやコンデンサともに流れる交流電流の周波数によって、抵抗が変わります。

Q6-2
添え字に使われるx には、どのような意味があるのでしょうか?


A6-2
x には、未知のものという意味があります。

Q6-3
コイルの良さQ の求め方を教えてください。


A6-3
Q (Quality)の値が大きいほど、良いコイルといいます。テレビやラジオで使われるコイルの質の良さを示す数値で、次式で表されます。

Q6-4
損失率D の求め方を教えてください。


A6-4
損失率とは、コイルの良さQ の逆数です。














Q7-1
交流電力と直流電力の違い、力率


A7-1
直流電力は、電圧と電流の積で求められます。 一般に交流回路の電圧と電流には位相差があり、交流電力を単純な(実効)電圧と(実効)電流の積では求められません。 交流回路における電圧をV 、電流をI 、電圧と電流の位相差を で表すと、交流回路の電力P は、

P =VI cos

となります。ここで、V I を皮相電力、cos を力率といいます。なお、交流の「電力」とは、この式で表される電力P のことで、「有効電力」といいます。
有効電力は、実際に交流回路で消費される電力であり、消費電力とも呼ばれます。
皮相電力は、見かけの電力で、単位は[VA]を使用します。変圧器の定格表示に利用されています。
これに対して、P =V I sin を無効電力と呼び、単位は[var]を使用します。無効電力は、消費されずに電源に戻される電力です。
力率は、有効電力と皮相電力の割合を表し、0~1の間の数値となります。1に近いほど有効電力が大きくなります。




Q7-2
ブロンデルの定理


A7-2
ブロンデルの定理とはn相の電力測定には単相電力計がn-1個必要というものです。たとえば三相3線式の電力は2個の単相電力計で測定ができます(二電力計法)。

Q7-3
電力量計の回転円板の原理:アラゴの円板


A7-3
「アラゴの円板」は、電力量計の応用として知られています。アラゴの円板とは、針で支えた金属製円板の周辺に沿って磁石を動かすと、 円板が磁石に引かれて回り出すことをいいます。金属は直径の違った多数の金属環の集まりと考えられますので、金属円板を貫く磁束が変化すると、レンツの法則によって起電力が生じ、渦巻き状に誘導電流(うず電流)が流れます。金属円板の周辺に沿って磁石を回転させると、円板にうず電流が流れ、このうず電流と磁石の磁界との間に、フレミングの左手の法則によって、電磁力が磁石の回転方向に生じ、磁石の回転につれて円板はその方向に回転するようになります。
アラゴ(Arago、Dominique Francois Jean 1786~1853)は19世紀前半に活躍したフランスの物理学者です。


Q7-4
最大電力量の測定がなぜ必要なのでしょうか?


A7-4
夏の冷房需要期などでは、電力使用量が企業などで特に急増しますが、この刻々と増えていく使用電力を、最大需要電力量計により、30分単位で測定し、その平均値(平均電力)を算出しています。この平均電力の1カ月間の最大値をその月の「最大需要電力」と呼び、当月を含む過去1年間で最も大きい値を出した月の最大需要電力を、電力会社との契約電力としています。契約では、「当月を含む過去1年間の最大需要電力を当月の契約電力とする」とされています。

 








Q8-1
シンクロスコープとの違い


A8-1
オシロスコープでは、規則正しく繰返す信号波形を観測するのに適していますが、パルス波形で不規則の場合、観測は難しいものです。これに対し、シンクロスコープでは、トリガ掃引方式を用いて、不規則周期のパルス波形や1回しか起こらない過渡現象の波形観測が可能となっています。

Q8-2
テレビ用ブラウン管との違い


A8-2
スポットを変化させる原理が異なり、オシロスコープでは静電偏向形、テレビでは電磁偏向形が用いられています。それらの特徴は、前者は波形ひずみが生じにくい、後者は画面の大きさに対する奥行きを小さくできることです。

Q8-3
プローブの仕組み


A8-3
プローブ(probe)は探索・探針という意味があるように、オシロスコープ用のプローブ(次図)は、カギ型のピンを測定したい回路素子に引っ掛け、クリップコードはグランドに接続します。



10:1プローブとは、「先端の黒い部分にある切替えスイッチ」で、測定電圧を1倍または1/10倍に切替えることができるものです。したがって、計測値に対する表示値を10倍して読取る必要がありますが、最近のオシロスコープは自動的に表示値を修正するものがあります。また、回路図に示すように、プローブ内部にコンデンサがありますから、パルス波測定のとき、立上り・立下り部分がなまった波形で観測される場合があります。この場合、プローブにあるCAL端子を回してパルス波が矩形状になるように調整します。

参考文献:
絵ときでわかる電気電子計測
高橋寛監修/熊谷文宏著
(オーム社発行)

Q8-4
なぜ正弦波を扱うのか?


A8-4
連続な関数をテイラー展開すると「sine関数(正弦波のこと)が現れる」、「cosine関数(余弦波)は正弦波で表すことができる」、「正弦波を1周期だけ積分するとゼロとなる」、などの特徴があるため、一般に正弦波を用いて表します。ちなみに、商用電源電圧が正弦波であるのは、発電機のコイルが回転するとき、起電力はコイル面と磁界との相対角度に対するsine関数に比例するためです。このように、身近なところに正弦波は存在しています。

Q8-5
フーリエ展開とは?


A8-5
もとの画面の左の波をx ( t )とするとき、その数学的表現に次のようなものがあります。



この式が意味するところは、一つに見える波形x ( t )は、実は、右辺で表される三つの波形の合成(この場合,足し算)されているというものです。このことを逆に考えると、波形x ( t )は三つの正弦波に展開できる、ともいえます。展開するには、パラメータ b n( n= 1 , 2 , 3 )とを求めなければなりません。
この話を一般化してみると、すなわち、三つでなく無限個(別に無限にこだわることはなく、有限個でもよい)の波形で合成されている波形を考えると次式のようになり、これはフーリエ級数と呼ばれるものです。


この式にあるパラメータを求めることにより、右辺にある複数の波形をそれぞれ求めることをフーリエ展開といいます。このパラメータの求め方は、x ( t )が周期 の周期波形の場合、次を計算すればよいことが知られています。





Q8-6
日本の家庭用電源は何ボルト?


A8-6
「家庭用電源は100V」といういい方がよくされますが、この値は実効値のことです。ですから、最大値(ピーク値)はその倍の約141Vです。

Q8-7
位相角と偏角の違い


A8-7
角度とは線・面が交わってできる角の大きさの度合いを意味し、偏角や位相角も含みます。
「偏角」とは、ある基準線(理工系では,右に向いた横軸にとることが多い)からどれだけ偏っているかの角度を意味します。
位相という言葉の相は“外に表れる状態”を意味します。この意味を踏まえて、位相とは、周期運動において、ある瞬間の位置での状態(すなわち相)を意味します。正弦波信号の場合、時刻がゼロのときをある瞬間と考えて、この位置での相を角度としてとらえて、これを「位相角」と呼びます。

Q8-8
スペクトルの語源


A8-8
ニュートンがspectrumという語を使い始めたのですが、これはimageの意味のラテン語が語源です。ここで述べているスペクトルの意味を初めて定めたのがウィナーの著書「フーリエ積分」(1933年)であり、ここではスペクトルを振動のエネルギー分布と述べています。スペクトルの他の意味として、ニュートンの分光分析における波長の違いによる分解、線形演算子の固有値の集まりなどがあります。

 








Q9-1
カウンタとは?


A9-1
入力パルスを数えるディジタル回路です。基本的にはフリップフロップを並べて接続してつくられます。種類は非同期式と同期式とがあり、高速な動作を必要とする場合は回路全体が一つのクロックパルスで同時に作動する同期式が適しています。

Q9-2
なぜディジタル方式にするのか?


A9-2
信号を伝達するとき、アナログ信号では外乱の影響によってノイズがもとの信号の形を壊すことがあります。また、信号が電気回路中を移動するときにも導線の電気抵抗などにより信号の大きさが小さくなることがあります。これを損失と呼びます。しかし、ディジタル信号ではノイズや損失の影響を少なくすることができます。

Q9-3
波形整形回路にはどんな種類があるか?


A9-3
各種のパルス波形を必要に応じて加工する電子回路でクリッパ回路、リミッタ回路、スライサ回路、クランパ回路、シュミット・トリガ等があります。中でもシュミット・トリガは、もとの信号にノイズなどが入ってしまったときに雑音除去に利用されます。


Q9-4
ローレンツ力 とは?


A9-4
電荷を持った粒子が磁束密度中を運動すると、粒子は、その速度と磁束密度の強さに比例した力を、速度ベクトルと磁束密度の両方に垂直な方向に受けますが、これをローレンツ力といいます。

Q9-5
ホール素子とMR素子は、どちらがすぐれているか?


A9-5
MR素子は端子の数が2個でホール素子より小型化が可能となります。しかし、MR素子自体の感度はかなり低いため、そのままでは実用的な磁気センサとして使用するのは難しくなります。そこで、永久磁石をいっしょにすることにより、バイアス磁界を加えて、磁界の微細な変動でも大きな出力信号が得られるようにして使用されています。

 








Q10-1
光の波長はどのくらいか?


A10-1
人間の目に見える光、すなわち可視光の波長はおよそ0.4~0.8μm(=400~800nm)です。これよりも波長が長い赤外光も計測によく使われます。光通信ではさらに長波長の1.3μmあるいは1.5μmの波長が使われます。

Q10-2
光の速度はどのくらいか?


A10-2
真空中の光速は2.99792458×108m/sです。空気中ではこれよりもわずかに遅くなります。光速は、約30万km/s、1秒間でおよそ地球7周半と覚えるとよいでしょう。

Q10-3
光の周波数はどのくらいか?


A10-3
周波数は光速を波長で割れば求まります。赤く見える波長0.65μm(=650nm)で約500THz、光通信で使われる1.5μmで200THzです。


Q10-4
光ファイバ中の光の速度はどのくらいか?


A10-4
光ファイバに使われているガラスの屈折率は1.5くらいなので、真空中の1/1.5程度になります。すなわち、約2×108m/sです。

Q10-5
光ファイバ中の減衰はどれくらいあるか?


A10-5
光波長によって減衰量は変化しますが、通信で使われるもっとも減衰の少ない1.5μm帯で約0.2dB/kmです。つまり、1km先でも光の強さは5%しか減りません。

Q10-6
受光素子には何が使われるか?


A10-6
可視光にはシリコンホトダイオードがよく使われます。ところが、シリコンホトダイオードは、長波長の赤外光には感度がないので、長波長にはインジウムガリウム砒素ホトダイオードが使われます。

Q10-7
OCTの応用は?


A10-7
医用では眼科用が実用化されています。網膜の断層像を見ることができます。さらに皮膚や内視鏡への応用開発が進められています。また、光部品の検査などにも応用されています。

Q10-8
断層像は超音波でもできるのでは?


A10-8
超音波は光に比べて深いところまで入っていきますが、分解能は100μm程度です。OCTでは、深いところの像を得るのは難しいのですが10μm程度の高い分解能が得られています。


Q10-9
光ファイバセンサにはどの波長が使われるか?


A10-9
通信と同じ1.5μm帯がよく使われます。光が遠くまで届くのと、通信用に開発されたさまざまな光部品がそのまま使えるからです。

Q10-10
ファイバグレーティングはどのように作るか?


A10-10
光ファイバに紫外線を照射して屈折率をわずかに変化させます。周期的に変化させるには、二つの紫外線の干渉縞を用いる方法とマスクを使う方法があります。光ファイバにゲルマニウムを加え、さらに高圧水素で処理することで、紫外線に対する感度を向上し、屈折率変化を長持ちさせます。

Q10-11
光ファイバ同士はどのように接続するか?


A10-11
光ファイバ用のコネクタがあります。光ファイバのコアの直径は10μm程度なので、1μm
以下の精度で位置合わせができるようになっています。これを用いると電線と同じような感覚で、光ファイバをつなげたり切り離したりできます。また、放電の熱で光ファイバを溶かして接続する融着接続器が開発されています。これを用いると、コネクタよりも光の反射や損失が少ない良好な接続ができます。

Q10-12
偏光面は電界の影響は受けるか?


A10-12
電界を加えた場合も偏光面に影響が出ます。図はある種の結晶に電界を加えた場合です。直線偏光が楕円偏光になります。これをポッケルス効果といいます。このほかに、電界の2乗に比例して偏光に影響を及ぼすカー効果も知られています。このような現象を、電気光学効果といいますが、高速シャッターや光変調器として応用されています。


Q10-13
光ファイバ中の偏光は乱れないか?


A10-13
普通の光ファイバでは、外力などによって偏光面は容易に変化します。そこで、偏光面が保たれる偏波面保存ファイバという特別な光ファイバが作られています。


Q10-14
レーザ光を空中に飛ばしても危険はないか?


A10-14
レーザ光は遠くまで広がらずに強度を保って進むので、目や皮膚に対する危険性があります。レーザパワーによって、表のように取扱基準が分けられています。レーザポインタのようなものは、通常はクラス2です。また、波長によっても目に対する危険性は変わります。1.5μm帯は水による吸収が大きく、網膜に至る前に弱められるので比較的安全といわれています。

クラス
出力
注意すべき内容
クラス1
0.39μW以下
特別に注意しなくとも安全。
クラス2
1mW以下
誤って眼に入っても、眩しさで瞼を閉じれば安全。
クラス3A
5mW以下
裸眼での観察に対しては安全だが、光学機器による観察は危険。
クラス3B
0.5W以下
直接光は危険だが、拡散反射光は安全。
クラス4
0.5W以上
直接光はもとより拡散反射光でも危険。

Q10-15
本当に光で音が出るか?


A10-15
物体が共鳴すると、耳で聴くことができるほどの音が出ることもあります。電話を発明したグラハム・ベルも光で音を出すことを試みています。

Q10-16
逆に音で光が出るか?


A10-16
超音波洗浄器のようなきわめて強い音を出すと、媒質の水が光る「音響ルミネッセンス」という現象があります。1気圧に達するような高音圧では、負の半周期でほぼ気圧ゼロになる瞬間があり、このとき小さな空洞、あるいは気泡ができます。正の半周期でこの泡がつぶれる瞬間に1000気圧以上の高圧が発生するといわれており、この瞬間に発光します。

Q10-17
光と音の関係は?


A10-17
音は媒質の疎密なので、光の屈折率も変化します。図のように圧電素子でガラスの中に超音波振動を伝えると、超音波の疎密で周期的な屈折率変化が生じます。これは光に対して回折格子として作用します。超音波のON/OFFで光の進む方向を切り替える光スイッチに利用できます。また、回折された光は超音波の周波数だけ光周波数がずれるので、これを光周波数をシフトするために使います。これを音響光学変調器といいます。