1. 送配電技術の基礎

Q1.数種類の発電所をどのように使い分けているのですか。

Q2.日本はなぜ50Hzと60Hzとが混在しているのですか。

Q3.変電所で降圧するのに、発電所で昇圧するのはなぜですか。

Q4.送電線、配電線、引込線は、何が違うのですか。

Q5.自然エネルギーに全て置き換えることはできないのですか。

2. 送電技術(交流送電)

Q6.一つの鉄塔に2回線の送電線がありますが、回路のように行きと帰りの線ですか。

Q7.架空地線は、どのような材質で構成されているのですか。

Q8.送電線間距離とは具体的にはどういうことですか。

Q9.電線と地面の間に静電容量があるというのは、鉄塔の一部にコンデンサ機器でもあるのですか。

Q10.地中ケーブルは、CVケーブルとOFケーブルの二つだけですか。

Q11.電気設備技術基準での静電誘導の基準値はどの程度の値ですか。

3. 変電技術

Q12.電力間の電力融通はどの程度行われているのですか。

Q13.計器用変成器は何を行う機器ですか。

Q14.遮断器には、空気遮断器、ガス絶縁遮断器の他に、どんな種類の遮断器がありますか。

Q15.調相設備の定格電圧はどれ位ですか。

Q16.避雷器は、どのような構成になっているのですか。

4. 配電技術

Q17.柱上変圧器では、地上の変圧器同様、タップ切り替えをしているのですか。

Q18.区分開閉器にも地上の開閉器のように種類がありますか。

Q19.動力線は、三相との事ですが、2本しか見当たりません。なぜですか。

Q20.中性点接地方式だと、何が良いのですか。

Q21.配電計画におけるサービスレベルはどう考えるのですか。

5. 電力系統の運用

Q22.日本の停電頻度はどの程度ですか。

Q23.AFCではなく、TBC、FFCやFTCという言葉も聞きますが、何ですか。

Q24.AVRなどは、どの程度の間隔で制御しているのですか。

Q25.変圧器タップと調相設備とはどう使い分けるのですか。

Q26.2003年にアメリカで起きた大停電は何が原因だったのですか。

6. 電力系統の電気的特性

Q27.熱容量は、どのように求めるのですか。

Q28.フラッシュオーバーとは、どのような現象ですか。

Q29.なぜ日本の送電容量は安定度で決まるのですか。

Q30.等面積法は、どんな時に使うのでしょうか。

Q31.再閉路の理由は安定度の向上だけですか。

7. 故障と保護

Q32.雷による事故防止策にはどのようなものがありますか?

Q33.氷雪による事故防止策にはどのようなものがありますか?.

Q34.永久事故とはどのようなものですか?

Q35.事故発生区間はどのようにして検出するのですか?

Q36.柱上変圧器はどのように保護しているのですか?

8. 直流送電

Q37.なぜ全て直流で送電しないのですか。

Q38.直流で連系すると、短絡容量が増加しないとはどういう事ですか。

Q39.異周波連系では、どの位のやりとりをしているのですか。

Q40.直流回路でも故障の検出は行っていますか。

Q41.直流架空送電線と交流とは同じ送電線の設計ですか。

9. 送配電における最新の動向

Q42.「料金規制の見直し」とは、どのような見直しですか。

Q43.日本卸電力取引所って何ですか。

Q44.自然エネルギーに関連する「京都議定書」とは何ですか。

Q45.電気は貯蔵できないのですか。

Q46.IH調理器で使える鍋は何ですか。

Q1
数種類の発電所をどのように使い分けているのですか。


A1
負荷に見合った発電が必要であるため、発電機の特徴を生かした使い分けを行っています。
起動の準備を開始してから発電できるまでの時間やどのくらい速く出力を変化できるかなどによって使い方が異なってきます。
揚水発電は数分で発電できるので、朝や昼休み後の急峻な需要立ち上がりに使い、その他の水力や石油火力と共にピーク供給力として使います。
LNG火力は、運転してしまえば、1分間で2〜5%の幅で出力変更できるので、ミドル供給力として使い、石炭火力や原子力はベース供給力として使います。

Q2
日本はなぜ50Hzと60Hzとが混在しているのですか。


A2
日本の電力事業の発展期である明治中頃に、東京電燈会社がドイツのAEG社より三相50Hzの発電機を輸入して火力発電所を建設し、同じ頃、大阪電燈会社はアメリカのGE社から三相60Hzの発電機を輸入して火力発電所を建設したことに起因しています。

Q3
変電所で降圧するのに、発電所で昇圧するのはなぜですか。


A3
近年の発電所立地事情から、需要中心地までは長距離送電が不可欠であり、少ないルートで大電力送電が可能となるように、高電圧、大電流容量設計が採用されるようになりました。
このことから、発電所で一旦昇圧し、需要家の傍で降圧しています。

Q4
送電線、配電線、引込線は、何が違うのですか。


A4
一般的には、20kV以上を送電線、6.6kVを配電線と呼びます。
配電線とは、需要地近くにある配電用変電所から供給される部分の電線です。
引込線とは、配電線路から分岐して、直接に需要家の引込口に至る部分の電線です。

Q5
自然エネルギーに全て置き換えることはできないのですか。


A5
エネルギー種別の一次エネルギー供給量で、新エネルギーはエネルギー消費量2.3%の522(PJ/年)なので、他の原子力や火力に比べてまだ少ないため、現在はまだ全てを置き換えることは難しいです。

Q6
一つの鉄塔に2回線の送電線がありますが、回路のように行きと帰りの線ですか。


A6
いいえ。両方とも行きにあたる送電線です。
通常は片側の利用を行っており、片側の送電線に事故があっても、もう一方の送電線だけで全部の電気が送れるようにしています。
常に目一杯という訳ではありません。
常に事故に備えているということです。

Q7
架空地線は、どのような材質で構成されているのですか。


A7
架空地線の多くは、光ファイバ内蔵形架空地線(OPGW)となっています。
光ファイバを用いることで、光通信にも利用でき、高絶縁性で外部のノイズに対して無誘導の特性を持ち、落雷時でも全くトラブルを起こしません。

Q8
送電線間距離とは具体的にはどういうことですか。


A8
三相送電線では、架空送電線の各線間距離はそれぞれ同距離からなる正三角形とはならない。そこで、取扱い上、幾何学的平均距離となるように、次の式が用いられます。
これは、等価線間距離とも呼ばれます。


Q9
電線と地面の間に静電容量があるというのは、鉄塔の一部にコンデンサ機器でもあるのですか。


A9
機器があるわけではありません。
静電容量と考えられているのは、電線そのものと地面の間の空気を考慮しています。

Q10
地中ケーブルは、CVケーブルとOFケーブルの二つだけですか。


A10
地中ケーブルには、他にもSLケーブル、パイプ型(POF)ケーブルがあります。
SLケーブルは、導体の上に絶縁紙を重ね巻きしています。
パイプ型(POF)ケーブルは、油浸紙で絶縁されたコアを鋼管内に収納し、鋼管内を絶縁油で充填し、圧力を加えたものです。

Q11
電気設備技術基準での静電誘導の基準値はどの程度の値ですか。


A11
電気設備技術基準には次のような記載があります。
 「架空電線路からの静電誘導又は、電磁誘導による感電の防止」
第27条 特別高圧の架空電線路は、常時静電誘導作用により人による感知のおそれがないよう、地表上1mにおける電界強度が3kV/m以下になるように施設しなければならない。
ただし、田畑、山林その他の人の往来が少ない場所において、人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。

Q12
電力間の電力融通はどの程度行われているのですか。


A12
2004年度は、全発電電力量7912億kWhに対して、融通電力量617億kWh行われました。
電力融通には、全国規模のもので、電力不足を応援する需給調整融通電力、経済的運用を目的とする経済融通電力、設備の合理的運用を目的とした相互調整電力があります。
また、2社間で行われるもので、特定の地域、設備に対して長期的にわたって行う特定融通電力、設備の効率的運用を目的とする系統運用電力があります。

Q13
計器用変成器は何を行う機器ですか。


A13
計器用変成器は、高電圧回路から計器や継電器に必要な適当な電圧・電流を取り出すための機器です。
計器用変圧器と変流器に分けられます。

Q14
遮断器には、空気遮断器、ガス絶縁遮断器の他に、どんな種類の遮断器がありますか。


A14
空気遮断器、ガス絶縁遮断器の他には、真空遮断器、油遮断器、磁気遮断器があります。
真空遮断器は、真空中におけるアークの拡散作用を利用した遮断器です。
油遮断器は、開閉を油中で行い、絶縁油及び熱分解発生ガス(水素ガス)を利用する遮断器です。
磁気遮断器は、電磁力を利用した遮断器です。

Q15
調相設備の定格電圧はどれ位ですか。


A15
調相設備の定格電圧は次の通りです。
電力用コンデンサが3.3kV〜6.6kV
分路リアクトルが11kV〜275kV
静止型無効電力補償装置が3.3kV〜77kV


Q16
避雷器は、どのような構成になっているのですか。


A16
避雷器自身は、機械的に動く部分は、ありません。
避雷器の構成には、特性要素と呼ばれる酸化亜鉛(ZnO)素子を用いた抵抗体を用いています。
特性要素は、電流が少ないときは抵抗が大きく、電流が増すと抵抗の減少する特性があります。

Q17
柱上変圧器では、地上の変圧器同様、タップ切り替えをしているのですか。


A17
柱上変圧器の一次側電圧は、6.6kVですが、タップ電圧は、6.75kV、6.45kV、6.3kV、6.15kVのものが汎用されています。
しかし、中には電圧変動の少ない地域では、タップレス変圧器も採用されています。

Q18
区分開閉器にも地上の開閉器のように種類がありますか。


A18
柱上開閉器には、柱上ガス開閉器、柱上気中開閉器、柱上真空開閉器がありますが、通常の開閉器同様、柱上でもコンパクトで高絶縁性のSF6ガスを用いたガス開閉器が使用されています。

Q19
動力線は、三相との事ですが、2本しか見当たりません。なぜですか。


A19
動力線は、三相3線式です。
電柱の高圧の下には、動力線が2本しかありませんが、単相3線式の中性線から残りの1本を引き、3線目を兼ねています。

Q20
中性点接地方式だと、何が良いのですか。


A20
次のような理由により中性点接地方式を用いています。
・系統の地絡故障時に異常電圧が発生し、接続されている電力機器の絶縁破壊とならない
・系統の地絡故障を保護継電器で確実に検出するのに必要な電圧・電流が得られる

Q21
配電計画におけるサービスレベルはどう考えるのですか。


A21
配電系統は需要家と直結しているため、供給信頼度が需要家の利用のしやすさを左右します。
供給信頼度は、一需要家あたりの停電回数と停電時間を指標としています。

Q22
日本の停電頻度はどの程度ですか。


A22
日本の停電事故は諸外国とくらべてその頻度は少なく、最近の停電回数は1需要家あたり年0.2回、停電時間は10〜20分程度となっています。

Q23
AFCではなく、TBC、FFCやFTCという言葉も聞きますが、何ですか。


A23
AFCは自動周波数制御のことですが、連系システムのAFCとは、一般的にはTBC(Tie line Bias Control)、周波数偏倚連系線潮流のことをいいます。
また、他のAFCの方式として、FFC(Flat Tie line Control)、定周波数制御方式やFTC(Flat Tie line Control)、定連系線潮流制御方式があります。

Q24
AVRなどは、どの程度の間隔で制御しているのですか。


A24
100msから数秒の間で制御しています。
保護リレーなどと同じ位の動作時間です。

Q25
変圧器タップと調相設備とはどう使い分けるのですか。


A25
変電所における一次電圧(高電圧)V1側と二次電圧(低電圧)V2側とをVQCにて測り、調整します。
この際に、V1では無効電力の供給が不足し、V2では余剰しているような場合、変圧器タップで巻数比を変えて、V2側からV1側に無効電力の変化分を供給し、調整します。逆の場合も同様です。
しかし、V1、V2共に無効電力が余剰しているような場合には、調相設備のリアクトルを入れて無効電力の吸収を行います。また、共に不足しているような場合には、コンデンサを入れて系統に無効電力を供給して、調整します。


Q26
2003年にアメリカで起きた大停電は何が原因だったのですか。


A26
2003年に起こった北米の大停電は、被害額70億円にも上るものとなりました。
規模としては、東京電力の規模が全部停電したことと同じです。
原因は、ある火力発電所の停止が発端となり、同系統内の送電線で過負荷となり、次々に系統から切り離されていきました。
これにより、他州へも被害を与えることとなった経緯があります。

Q27
熱容量は、どのように求めるのですか。


A27
物体にΔQ(デルタキュー)の熱を加えたときに、温度がΔT(デルタティー)上がったとすると、 C=ΔQ/ΔT となります。
このときのCをその物体の熱容量といいます。

Q28
フラッシュオーバーとは、どのような現象ですか。


A28
多くのコンデンサを並列に充電し、それらを一斉に直列に接続し、高電圧を発生するものです。
このような放電が生じることをフラッシュオーバーといいます。

Q29
なぜ日本の送電容量は安定度で決まるのですか。


A29
日本の場合、送電容量は固定となる熱容量に比べて、発電所から需要家までの距離が長いため、同期をとることが難しく、安定度により送電容量が決まります。
アメリカの場合、土地が広く、一見距離がありそうであるが、発電所と需要家との距離はあまり長くないため、日本に比べ同期は取りやすく、電気的距離は短いと言えます。

Q30
等面積法は、どんな時に使うのでしょうか。


A30
過渡安定度における事故前後の電気出力を示すグラフに用います。

Q31
再閉路の理由は安定度の向上だけですか。


A31
再閉路を行うことで、安定度の向上と、もうひとつ、系統復旧の自動化が挙げられます。
送電線に発生する事故は、雷などによるがいしフラッシュオーバーのような気中フラッシュオーバー事故が多いのですが、このような事故はいったん停電させてアークを消滅させれば、再び送電しても再フラッシュオーバーしない場合が多いので、自動再閉路方式が多く採用されています。

Q32
雷による事故防止策にはどのようなものがありますか?


A32
アークホーン・アーマロッドの取り付けによるがいし・電線への被害防止、架空地線の設置による雷遮へい、がいしの品質向上、などが図られています。

Q33
氷雪による事故防止策にはどのようなものがありますか?


A33
支持物や電線の耐雪設計の採用、難着雪リング・カウンタウェイトの取り付け、難着雪電線の採用、相間スペーサの取り付けなどによる設備の強化、などが図られています。

Q34
永久事故とはどのようなものですか?


A34
送配電系統の事故には、事故点が自然消滅する瞬時事故と、自然消滅しない永久事故とに分けられます。
永久事故は全体の20〜30%程度で、その原因は雷・風雨・水害・氷雪など自然現象に起因するものが半数程度を占めます。地中配電線で起こる事故のほとんどは永久事故になります。

Q35
事故発生区間はどのようにして検出するのですか?


A35
一般な配電系統には、自動開閉器と時限順送制御方式を組み合わせた事故区間自動区分方式が採用されています。
この方式では、変電所遮断器の遮断・再閉路を2回繰り返し、自動開閉器の開放ロック機能を用いて事故区間を検出して切り離しを行います。
事故が除去できないと直前の自動開閉器は開放状態にロックされます。遮断器が再々閉路されると、開放ロックした開閉器までの配電が行われ、事故区間が検出されます。

Q36
柱上変圧器はどのように保護しているのですか?


A36
変圧器の過負荷、および短絡保護のために高圧ヒューズが用いられています。変圧器に避雷器・過負荷保護装置・ブレーカなどが内蔵されたものもあります。

Q37
なぜ全て直流で送電しないのですか。


A37
電気が使われ始めた最初の頃は、直流を使っていました。
しかし、需要の増加と共に、直流では電圧を変えにくく、電圧の低下が起こるため遠くまでの送電ができず、いくつもの変電所をつなぐ必要がありました。
交流では変圧が容易で、高圧での送電が可能なため、交流が主流となりました。

Q38
直流で連系すると、短絡容量が増加しないとはどういう事ですか。


A38
交流による系統間連系では、新たに機器・系統が増えた場合、故障点における電流も増加することがあり、遮断器の定格以上の電流が流れることとなり遮断器が正しく作動しなくなる事があります。
この対策として遮断器一式の取替えなどが発生してきます。
しかし、直流で連系した場合、交流のような電流の増加が起きないため、連系を図りつつ、系統間を分離して考えることができます。

Q39
異周波連系では、どの位のやりとりをしているのですか。


A39
佐久間周波数変換所を例にすると、60から50、50から60への融通電力量は、131.0GWH(平成15年度)で、融通に使用した運転時間は461.79時間でした。およそ年間の10%位は動いていることになります。 その前までの平成12年から平成14年までの3年間は合計しても10時間程度しか使われていません。

Q40
直流回路でも故障の検出は行っていますか。


A40
直流送電系統の各種故障に対する保護は、変換装置による高速なゲートパルス位相制御とブロック操作(パルス制御)が基礎となっています。
直流側の事故に対してはゲートパルス停止で簡単に処理できます。

Q41
直流架空送電線と交流とは同じ送電線の設計ですか。


A41
基本的には、同じ設計ですが、次の点で異なります。
1)鉄塔に対する気中ギャップとの絶縁強調はとらない設計のほうが経済的となる
2)地絡電流が交流系統に比べ1桁程度小さくなるので、アークホーンを省略することが出来る
3)帰路回路がある

Q42
「料金規制の見直し」とは、どのような見直しですか。


A42
選択約款の導入を指します。
この他にも、燃料電力供給の導入、燃料費調整制度の導入、電力会社による経営効率化計画の公表などを指します。

Q43
日本卸電力取引所って何ですか。


A43
自由化により、「電気をどこから買うかを選べることで、競争的な料金で価格交渉ができる」ことになりました。
これを受けて、取引市場の運用を監視するような中立機関として、日本卸電力取引所(JEPX)ができました。

Q44
自然エネルギーに関連する「京都議定書」とは何ですか。


A44
地球温暖化の原因となるCO2など温室効果ガスの排出量を減らすことを約束した書簡です。
2008年から12年間で1990年比6%削減すると宣言しています。

Q45
電気は貯蔵できないのですか。


A45
基本的に、貯蔵はできません。
電気は、光と一緒で発電と需要が同時であることが特徴です。
しかし、形を変えてエネルギー源として保存しておくことは可能です。
蓄電池などがその例です。

Q46
IH調理器で使える鍋は何ですか。


A46
IHに使用できる鍋は、鉄、ステンレス、多層鍋です。
一方、使用できない鍋は、耐熱ガラス、陶磁器(土鍋)、銅、アルミニウムです。