1986年1月27日、チャレンジャー号発射の前夜、固体ロケット・ブースターの製造会社であるモートン・サイオコール社の技術者達は、シャトル周辺の外気温の低下により、ロケット部分を繋いでいるシール機能を持ったゴム性の部品「Oリング」の弾性が低くなり、持ちこたえられないという理由で発射に反対していた。しかし、経営陣の意向により打ち上げスケジュールは変えられることはなかった。
翌1月28日、フロリダは記録的な寒波に見舞われ、打ち上げ時の気温は摂氏2.2度という低温であった。 世界中の人びとが見守る中、フロリダのケネディー宇宙センターから発射されたチャレンジャー号は発射73秒後に爆発炎上し、7人の宇宙飛行士全員の命が失われた。
チャレンジャー号爆発事故のあと、サイオコール社の技術者ロジャー・ボイジョリーは、大統領事故調査委員会で、発射前夜に起きた事実関係を証言した。彼の証言により、真相が浮かび上がり、事故の原因は、固体ロケット・ブースターの各部分を繋ぎあわせるOリングの異常によるものであることが発表された。発射当日の外気温の低下で、Oリングの弾性が極度に失われたことにより、シール機能が低下し、高燃ガスが漏れ爆発炎上を招いたことが明らかになった。
くわしくは、Webラーニングプラザ 事例に学ぶ技術者倫理コース 「組織と技術者 -スペースシャトル・チャレンジャー号事故-」 http://weblearningplaza.jst.go.jp/を参照。
【参考文献】P.Aarne Vesilind ・Alastair S.Gunn、 藤本 温、松雄秀樹訳、「そのとき、エンジニアは何をするべきなのか」 (森北出版株式会社2007)73-75頁
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