大学教員はいま、変動の時代のなかにおかれています。教育は大きな転機にあり、「(教師が)いかに教えたか」から「(学習者が)いかに学んだか」への過渡期にあります。つまり、これからは学習者が主体となる教育が求められています。
この教育の転換の背景には、教育そのものの価値の問い直しに加えて、少子化、グローバル化、ライフスタイルの変化などによって入学してくる学生が多様化していることなどがあります。また、ネットワーク環境をはじめとする技術革新や効果のある学習方法の知見の蓄積に加えて、2020年にはCOVID-19への対応により教育のオンライン化が加速しました。この流れに伴い、大学教員には「研究」力だけでなく、ますます「教育」力も求められるようになっています。実際に、教員採用において、書類審査の段階で「シラバス」を提出することや、面接において「模擬授業」の実施を求められるケースが増加しつつあります。
また、2019年8月には大学院設置基準が改正され、プレFD(大学教員になることを目指す大学院生向けの準備教育)が努力義務化され、これにより、博士課程を持つ大学院はプレFDを実施する、もしくは、他所で実施されているプレFDプログラムに関して学生に情報提供することが推奨されています。
「研究者」としての能力も重要ですが、「教育者」としての知識やスキルも習得したい――このような思いを持つ方のために、本コースは制作されました。また、プレFDプログラムの代替としてもご活用いただけますので、将来大学教員を目指す多くの方々にご利用いただけますと幸いです。
本コースは、東京大学で実施されている大学教員を目指す大学院生を対象とした「東京大学フューチャーファカルティプログラム」の蓄積をもとに構成されており、学生が主体的に学ぶための教育のあり方について実践的な内容を展開しています。本コースは2014年から2016年にかけて、株式会社NTTドコモとドコモgaccoが提供する大規模公開オンライン講座提供サイト(MOOC)「gacco(ガッコ)」において、8週間にわたり無償で開講されていたオンライン講座です。ここでは、1週分の教材を1レッスンに編集し直し、計8レッスンを1コースとして公開しています。 各レッスンは、9~11本の動画からなっています。各レッスンのトップ画面から記入式のワークシートをダウンロードの上で、動画を視聴し、学習を進めていただきます。
本コースは、世界中の大学や企業が提供するオンライン講座のプラットフォーム「Coursera」でも無料開講中です(https://www.coursera.org/learn/interactive-teaching)。いつでも、どこでも、どなたでも、本コースの全ての内容を日本語もしくは英語でご利用いただけます。さらに、各回のテーマに沿って他の受講者と意見を交換することができる「ディスカッションフォーラム」や、受講者同士でレビューをし合う最終課題など、「インタラクティブ」に学べる工夫を凝らしたコースになっています。ご希望の方には有料で修了証を発行することも可能ですので、是非ご利用ください。
栗田佳代子・日本教育研究イノベーションセンター(編)(2017)『インタラクティブ・ティーチング―アクティブ・ラーニングを促す授業づくり―』河合出版
インタラクティブ・ティーチングの基本的な内容について書きおろした書籍です。
テキストとしてご活用ください。
中村長史・栗田佳代子(編)(2021) 『インタラクティブ・ティーチング 実践編1 学びを促す授業設計―クラスデザインの作法と事例―』河合出版
インタラクティブ・ティーチングの内容のうち、特に一コマ分の授業のデザインについて書き下ろした書籍です。実際に高校や大学で教える教員による実践例もあります。
こちらもテキストとしてご活用ください。
栗田佳代子・中村長史(編)(2023) 『インタラクティブ・ティーチング 実践編2 学びを促すシラバス―コースデザインの作法と事例―』河合出版
本書は、これまで主として授業選択資料として用いられてきたシラバスをあらためて「学習者の学習を促す」および「授業全体をデザインする(コースデザイン)」ためのツールとして見直し、活用することに主眼を置いています。
東京大学大学総合教育研究センター、日本教育研究イノベーションセンター、
栗田佳代子(東京大学教授)、河上愛梨(東京大学学術専門職員)