JREC-INは2011年度で10周年を迎えました。これを機に、これまで以上に皆様の声に耳を傾け、より使いやすく充実したサービスを提供すべく、JREC-IN利用者様による座談会を開催致しました。
なお、参加者につきましては、全求職会員様へのアンケートにおいて「座談会に参加しても良い」とご回答いただいた方の中から研究分野や現職等を考慮し依頼させていただきました。

  • 鈴木 隆弘 さん
    高千穂大学 人間科学部 准教授
  • 古田 正幸 さん
    東洋大学人間科学総合研究所 院生研究員
  • 増本 秀史 さん
    日本大学 文理学部 研究員
  • 大久保 奈弥 さん
    慶應義塾大学 特任助教(現 東京経済大学 生物学専任講師)
  • 高橋 竜一 さん
    東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任研究員
  • 田村 早苗 さん(仮名)
    国立大学 環境系 特任研究員
  • ファシリテータ:深澤 知憲
    株式会社エマージングテクノロジーズ 技術本部 人材情報室 室長

簡単な自己紹介とJREC-INの利用目的・方法・頻度を紹介していただけますか。

鈴木

高千穂大学で教員免許取得を目指す学生に対して、社会科教育の講義を行っております。JREC-INは、現職を含め2回の就職活動で活用しました。再び就職活動に使うことがないことを祈りつつ、登録は続けています。色々な大学の公募情報が最新の研究内容とリンクしている場合があり、大学の改革動向などの情報収集にも役立つ面もあるので、おおよそ1〜2ヵ月に1回程度でWEBサイトを眺めています。「教育学でこういう新分野があるんだな」といった発見に繋がる場合があります。他大学での「開発教育」に関係する講座新設情報を公募情報から知ることが出来たこともあります。

古田

平安文学、源氏物語の研究をしております。昨日大学院を修了し、これから職を探さなくてはいけない状況です。JREC-INには在学中から登録しており、マッチングメールで自分の専門分野と合う求人が出るのを期待して探しております。国文学科自体が減っているので、マッチングメールの件数も多くはないですが、年に7〜8件有るので、中でも対象年齢が低そうな求人や、希望勤務地などが合致する公募に応募したりしています。

増本

日本大学でポスドクをやっています。博士課程の時はMRI関連の研究をやっていました。現在は人工知能分野の研究を行っております。JREC-INはチームメンバーも多く登録しており、自分自身はほぼ全ての分野のマッチングメールを受け取るようにしています。自分の専門と全く関係ない情報も届きますが一応チェックはしており、興味の有るものだけ、リンク先の情報をチェックするようにしています。基本的には毎日マッチングメールをチェックしています。博士3年頃、就職を意識し始めてから登録しました。

大久保

慶應義塾大学で特任助教をしております。私もマッチングメールをずっと受けています。博士課程の頃はJREC-INがあることを知らず、今から約3年前、当時学振PDで、任期満了の約2年前からマッチングメールを見始めました。現職の特任助教の公募もマッチングメールで知り応募しました。また、2012年4月から他大学のパーマネントの専任講師の職を得ることが出来ましたが、これもJREC-INで探して応募して受かったものです。特に学振PDの頃、オーストラリアに居て、海外では日本国内の情報が届いて来ないので、オーストラリアからJREC-INを利用していました。どんな公募が出ているか興味があるので、今もJREC-INはチェックしていて、後輩や友人・知人に紹介してあげることもあります。

高橋

現職はポスドクです。農学系の研究をしています。JREC-INは博士課程の頃から就職活動用に利用していて、マッチングメールで自分の希望と合う情報が来るたびにWEBサイトをチェックしています。面白そうな公募情報には実際に応募もしています。現在ポスドクの為、マッチングメールを中心に情報収集しています。

田村

修士の後、関連分野の民間の仕事を5年ほど続けた後、大学院に進学しました。博士号はアメリカの大学で取得しましたが、一度就職していることもあり、研究よりもユーザーに直接関われる仕事の方が向いていると感じており、その方面の仕事を探しています。その過程の中で、JREC-INも専門を活かしつつ研究開発以外のアプローチが出来る仕事を掲載しているので注意してチェックしています。現在は大学で「研究員」という立場ですが、研究メインではなく、どちらかというと事務局的な役割が強いポストに居ます。

JREC-INを利用した就職成功体験談を紹介していただけますか。

大久保

JREC-INを利用して現職に就きました。前職の学振PDでオーストラリアに赴任していた際にJREC-INの存在を知り、マッチングメールを見て自分の専門性や希望とぴったりとマッチする公募情報があった際に、粛々と国際郵便で応募書類を送り続けたところ、現職に受かりました。配偶者も研究者(大学教員)で、JREC-INを利用しており、自分とは違う視点でチャンスのある公募情報を探してくれ、自分だけでは知り得ない公募情報も得られ助かりました。

増本

非常勤ではありますが2012年4月から半年間のポストを得ました。やはりマッチングメールで公募情報を知り、JREC-IN(WEBサイト)等で詳細情報を確認してから応募書類を提出したところ、面接に呼ばれ内定を得ることが出来ました。

田村

JREC-INの職種検索を利用し、興味のある公募情報に応募したところ採用されました。JREC-INで得た公募情報に応募したのは2件のみです(但し、民間の転職エージェントを利用した転職活動を中心にしている)。研究職以外の公募情報は、「総合領域」や「複合新領域」の研究分野に分類されるケースが多く、一方で当該領域にも研究職の公募情報が多い為、マッチングメールでは十分にセグメントされた情報を得にくいように感じます。研究職以外で仕事を探す際は職種検索などWEBサイトでの検索機能を利用した方が便利です。

鈴木

現職と前職(共に大学専任教員)のパーマネントポストを得ました。非常勤等の募集情報を知人のネットワークから得たことは有りますが、専任の公募情報を得られたのはJREC-INのみです。マッチングメールで興味のある公募情報があれば応募することを続け、10件程度応募して現職を得ました。当然、不合格だったケースもありますが、結果的にJREC-INで公募情報を得て、連続してポストを得ることが出来ました。

田村

JREC-INで研究職以外の求人動向を把握することが出来るので、その情報を元に同様の求人をJREC-IN以外でも探し、任期付ですが、国立の研究所(公的研究機関)に研究職以外の職員として採用されました。

ちなみに、みなさんどれくらいの件数応募されていますか。

大久保

現職を得る際は16,7件目、次の職は2件目で内定を獲得しました。

鈴木

現職を得る際は10件前後応募しました。

田村

(JREC-INを利用した応募に限定すると)2件程度応募して就職に成功しました。

逆にJREC-INを利用したが、上手く行かなかった経験も紹介していただけますか。

高橋

現職に就く前に、20件以上応募したがダメでした。現職は研究室のWEBサイトで直接情報を得て応募した結果、合格しました。

増本

今までに応募したことのある公募は全てJREC-INで見つけて応募していますが、成功したのは非常勤のみで、常勤の公募で成功したことはありません。

鈴木

不合格通知の中で「業績や研究内容は問題無いし興味深いが、今回は他の方を採用する」と書かれたことがありました。いわゆる出来レースの可能性もあったのかもしれませんが、逆を言えば研究については高評価だったともいえるわけで、それに励まされ、応募を続けたら専任ポストを得ることが出来ました。

増本

興味のある公募情報がマッチングメールで届いておらず、WEBサイトでの検索で応募期日間際になって初めて見つけ、応募出来なかったことがあります。

JREC-INを利用した際に不都合を感じる点があれば教えていただけますか。

・「出来レース」の可能性

増本

(応募するだけ無駄なので)もう少し分かりやすいと有り難いです(苦笑)

田村

募集開始から締め切りまでの期間があまりにも短いと怪しく感じてしまいますね。

大久保

あまりに専門性や経験がピンポイントでも怪しいですよね。誰かを想定しているようで。とはいえ、コネが無くてもJREC-INを使って就職できるので、あまり疑心暗鬼にならずに応募を続けることが大事だと思います。

鈴木

一般に考えられている程「出来レース」は無いと思います。事実、JREC-INで得た公募情報でパーマネントポストも得られましたし、大学では研究科や講座の新設などの理由から、公募に頼らざるを得ない状況もあります。JREC-INに出している時点で「出来レース」である可能性は低いと考えても良いと思います。

・マッチングメールなどの専門領域選択

高橋

現状、大分類を3つまで選択し、その中で小分類を1つずつ選択出来ますが、小分類が1つに絞り切れないことが多く不便です。

田村

研究職ですと「○○学」というキーワードがありますが、研究職以外の場合は、「複合新領域」や「総合領域」に含まれてしまい、(マッチングメールで)研究職も含めたその領域の全ての情報が送られてきてもあまり意味が無いので、キーワードの拾い方にもう少し自分の興味のありそうなものに絞れる方法があればありがたいです。

大久保

「総合領域」と「複合新領域」は本当に区別が付きにくいですね。私の場合、生物とともに環境保全の仕事も行っていますが、マッチングメールを受け取る分野を選ぶ際に、(分野が)重複していたり、(表示場所が)非常に離れていたりして選びにくいです。学際的な研究が増えていて大事な研究(領域)だと思いますが、そのポジションのマッチングメールが一番来にくい状況です。もしくは、来てもミスマッチだったりします。

深澤

何か解決出来る方法は無いでしょうか。

大久保

例えば文系と理系の学際的なところで「生物学」と「歴史学」が融合したものであれば、「生物学」でも「歴史学」でもヒットするようにしては如何でしょうか。新しい言葉を作るのではなく、「総合領域」に全て入れておいて、更にその学問が内包する各専門にチェックを入れておけるようにするというのはどうでしょうか。

深澤

「生物」と「歴史」の両方に出るとした場合、その情報が純粋に「生物」の人にマッチングメールが届くと恐らく不満が出ると思いますが、如何でしょうか。

大久保

「生物学」の中でも細分化されている領域を選ばせればそういうことも減るのではないでしょうか。

深澤

かなり詳細な専門領域で何が内包されているかを選ばせる、ということでしょうか。

田村

逆にそれをすると「生物」という学問の全体的な概念を理解している人が欲しいというニーズに応えられなくなる懸念があります。そういう人にマッチングメールが届かなくなるという可能性もありそうです。

深澤

もしかするとマッチングメールではなく検索表示の方に生きる提案かもしれませんね。他に複合領域におけるマッチングの改善方法は無いでしょうか。

田村

公募する側の頭の中にあるニーズが、選択肢に上手く反映されていない可能性もあります。「生物をやって来たけど他の専門も経験している人が欲しい」というニーズは、今の選択肢や選択方法だと表せられていないように感じます。

増本

私は2つ解決策があると思います。1つ目は、例えば「生物」と「文学」というキーワードを持つ情報があった場合に、「文学」というキーワードが含まれる情報は受け取らないということが出来るようにすればいいのではないでしょうか。「このキーワードは除外したい」という要望を反映させるわけで、公募を登録する側は大きな分野(生物や文学)で登録して出しますが、受け取り側が受け取らない分野を指定していればミスマッチなメールを受け取らなくて済みます。2つ目の解決策は、マッチングメールでリンクをクリックされた数を統計データとしてカウントする方法です。そうすると、100人が受け取る設定にしていたとしても何人が興味を持ってくれたかが分かりますので、キーワードのマッチング精度を測ることが出来るのではないでしょうか。
また、少し違いますが、(WEBサイトで)特定の条件で公募情報検索をした際に、興味の無い(応募することも無く、二度と詳細を見ることも無い)公募を、次回の検索時に表示させないような「非表示機能」も欲しいですね。

JREC-IN以外での就職活動方法も紹介していただけますか。

田村

民間転職エージェントを利用しています。

増本

私学特有かもしれませんが、人的ネットワークでインターネット上には出ない採用情報を得られることもあります。

高橋

学会のWEBサイトで公募情報を探すこともあります。

増本

情報の集約性という意味ではJREC-INに頼らざるを得ないのが現状です。

鈴木

JREC-INがなくなったら困る人は大勢いるのではないでしょうか。

JREC-INを利用するメリットを教えて頂けますか。

・利便性が高い

増本

不動産屋と同じで(求人情報を)色々なところへ探しに行かないといけないのは手間で、一箇所で探せるのは有難いですね。

高橋

仕事をしながら仕事を探すので、自動的に届くマッチングメールは助かります。

・研究や大学改革動向などの情報収集が可能

鈴木

新しい研究科や講座が開設されると公募が出る場合が多く、新しい学問分野や関連する他大学の動向を知ることが出来るのは便利です。現在は、パーマネント職についていますが、1〜2ヶ月に1回程度閲覧しています。

田村

研究職以外の公募情報は掲載件数が少ない為、WEBサイトで職種検索を行うと(その職種領域)全体の状況を把握出来ます。どういう機関がどういうポストを募集しているかという情報収集に役立っています。

・情報の量と多様性

鈴木

所属機関に届く情報だけでは、その所属機関の持つイメージ(例えば前職は単科大学でしたので、特定の専門イメージが強い)などにより集まる公募情報も分野に偏りがでますが、JREC-INは様々な分野の情報があるので、自分の希望する分野で公募情報を探すことが出来ます。

大久保

コネが無くても情報収集が出来るので、非常に助かっています。

お薦めのJREC-IN利用方法があれば教えてください。

鈴木

マッチングメールですかね。

大久保

マッチングメールが一番ですね。

深澤

マッチングメールの推奨利用方法はありますか?

鈴木

広めに登録することでしょうか。例えば「社会科教育」という言葉で登録すると「社会科教育講座の経済学」の公募情報も届くなど、関係しないマッチングメールが大量に届いてしまいます。でも、自分の専門領域と特定の事項で合致する複合新領域の情報が届くこともあるので、マッチングメールを見て、面白そうな公募があったら、改めてWEBサイトで検索を掛け、詳細をよく見てみることが必要だと思います。結局、最終的な見極めは自力で行うことが肝心でしょう。

深澤

マッチングメールで入ってくる情報量を多くして、且つ、WEBサイトの方を能動的に見る必要があるということですね?

鈴木

そうですね。

増本

応募したかった公募があったのですが、メンテナンスなどでJREC-INが停止していたためマッチングメールが送られなかったのか、後から検索を掛けたら公募の締め切り間際にWEBサイト上で見つけたことがありました。だから、たまには自分で検索を掛けてみるということもやった方がいいと思います。私の場合、届いたメールに関しては基本的には全て目を通すようにしていて、大久保さんのように、文系の公募があったら文系の友達に「こういう公募があったよ」と教えてあげるということをやっています。全分野のマッチングメールを受信してもせいぜい5分で目を通せる量なので、届いて欲しい情報が届かないリスクに比べれば全然負担は無いと思います。自分が応募出来る公募があっても、(自分が設定した)受信する分野がそれとは少しずれてしまったためマッチングメールが届かなければ、その情報に辿り着くことはないと思います。(マッチングメールを受信する分野を広くすることで)自分の応募出来る分野の情報が漏れる可能性は少なくなると思います。ただし、それをしていてもマッチングメールが来なかったということが、何回かあるので、たまにはWEBサイトの方を覗くということも必要だと思います。

深澤

先程、マッチングメールから応募するという話しがすごく多く、WEBサイトの方が使いやすいという方はお一人でしたので、WEBサイトは使いにくいのかと思ってしまっていたのですが、そうでもないということでしょうか。

増本

いや、使いにくいです。マッチングメールはせいぜい1日5分で見終わる量しか来ないのですが、WEBサイトだとものすごい数があって、自分が除外したいフレーズとか色々あっても、除外してしまうと、もうその公募を見ることは無いので、一方でもう少し検索対象を拡げておきたいという気持ちもありますが、やはり自分と全然関係の無い情報が引っかかって来てしまいます。

深澤

WEBサイトはとにかく時間が掛るということですね。

増本

仕方の無いことだとは思いますが。

田村

あまり便利にし過ぎると先程おっしゃっていたように、自分としては興味があったかもしれないのに漏れてしまうということは当然あると思います。その不便さを越えて自分で探すのが、就職活動を通じて経験すべきことの一つだと思います。

増本

確かにそうですね。

田村

研究職以外の公募情報は、(WEBサイトの職種検索で)職種のカテゴリーをクリックするだけで該当するほぼ全ての求人を見ることが出来るので、職種によってはマッチングメールよりWEBサイトでの検索の方が便利な場合もあります。

JREC-INへの要望や期待を教えてください。

・「JREC-IN書式」による応募書類整備

古田

それぞれの大学や研究所で書式がバラバラなので、一度作った応募書類を次に回すことが出来ないため、毎回微妙に違う書式で別の書類を用意しなくてはいけないということは大変です。

増本

もし、JREC-IN書式というものがあって、採用側がJREC-IN書式による応募を認めている形になっていれば確かに有り難いです。

古田

JREC-INには個人情報も一部登録しているので、名前や写真のデータも入れられると思いますし、それをプリントアウトすれば良いのであれば即座に書類提出も出来るようになり、応募し易くなると思います。やはり論文を抱えている時期と公募が出る時期が重なると、どうしても論文の方を優先させなければいけない事態も出てくるので、書類の書式だけでも統一されるととても有り難いですし、今登録している情報とかも有効に活用出来たら良いなと思います。すごく贅沢な話しですし、国立大学などでは(書式が)国の方で決まってしまっていることなどもあり難しいのかもしれませんが、もし出来るのであればJREC-INから働きかけて頂けたらなと思います。

・より詳細な採用情報の公開

増本

今のWEBサイトの情報ですがはっきり言って、着任するまでどういう(勤務)条件か分かりません。給与だけでなくて、各大学側が伝えたいことをきちっと書いて欲しいです。例えば数日前に見た時には、私立ですと「教授・准教授・助教全て募集」だけど助教はテニュア付きとか。そうすると任期付じゃない分類でマッチングメールが飛んできますが条件が全然違うので、もう少し分かりやすい欄が出来ていると良いです。募集職階のところでは普通に書いてあるのですが、下の方に条件が付いていて、職階では任期付では無いとなっているのに、特定の職階で着任すると任期が付いているとか。求人側の要望と今の分類方法が合ってないと感じる時があります。

深澤

一職種につき一求人になっていないということですか。

高橋

たまにそういうのがありますよ。

田村

職階で雇いたい訳では無くて、どの職階になるかはその人次第という求人ですね。

増本

但しその場合は、助教とかだと任期が付いてしまいますよ。という公募ですね。また、博士取得が採用の条件というのもあります。取得見込みで採用しても博士学位を取れなかったら内定取り消し、ということもありますね。

鈴木

文系だけかもしれませんが、採用情報では、勤務日数が明記されていたにもかかわらず、実際の着任時には週5日勤務になっていて、その後の研究にも支障をきたすとか。採用する大学側にも事情があるのかもしれませんが、もう少し採用する側とされる側の公平性というか、採用する側に比べると採用される側は分からないことが多いわけですから、その点の公正性が欲しいです。これは、採用する側にとっても大きなメリットがあるはずで、例えば「うちの大学は教育に熱心な大学だから、こういう人に来て欲しい」という正確な公募情報が示されていれば、「私には向いてないから応募をするのはやめよう」と採用される側も判断することができます。ですから、もっと大学の特色や採用条件などを、採用する大学側からもアピール出来るような欄があっても良いのではないかなと思います。

・公募側(求人機関)へのサポート

大久保

先程の鈴木さんのお話しでは無いですが、採用側も公募を出すのは結構な労力だと思いますので、求職者だけでなくて採用側も簡単に公募を出すことが出来る機能があるといいですね。例えば先程のような詳しく情報を書いて欲しいという求職者側の要望があるのであれば、JREC-IN側がチェックする欄を付けてあげるとか。

増本

例えば東京だと(1件あたりの求人に対する求職者の)倍率が100を超えるケースもある中、応募書類をいちいち見るのは大変です。そこで、こういう風に公募情報を準備すると採用側にとってマッチする求職者が来て、倍率の桁数が一つ二つ減ります、ということが実績として示されていると、採用側も工夫し易いのではないでしょうか。これを、先程古田さんがご提案された求職者が簡単に応募書類を出せるシステムを構築していくと、求職者と採用側の双方に恩恵があると思います。

鈴木

選考に直接あたる人ではなく、別の担当者が公募情報の登録を行っているケースもあるようで、誤入力や応募条件の不理解からマッチングにズレが生じる一因になっているようです。改善の余地は有ると思います。公募する側の方々からも意見を聞いて、反映させて欲しいです。

田村

かつてアカデミアではない公募に応募したときに思った事ですが、その募集は、採用する側が自分達にないスキルを持った人が欲しいと思って公募していました。アカデミアでは自分たちに有るスキルを求めている場合が多く、どういう人を雇えばいいか分かりやすいと思うのですが、自分たちに無いスキルを持った人を雇うというのは実は結構大変なようです。「こういうプロジェクトがあって、そういったプロジェクトにはどういう人を採用するといいのか」など、公募する側の相談に乗るようなサービスがあっても良いのかと思います。(自分の場合は)実際に着任してから、向こうも非常に苦労していたということが分かりましたので、そこはサポートがあっても良いのかなと思います。

増本

それはやっぱり民間とかプロジェクトでの採用でということですよね。アカデミアですと抜けた穴を補うという場合が多いので。

深澤

ただ、先程の話でもあるように大学でも、本来もっと細かく募集内容を出さなくてはいけなかった所を、(情報を)出さないことによってものすごい数の応募が来たり、逆に応募が全く来なかったりという可能性もあるので、そういう観点では公募する側へのサポートには意味があるかもしれないですよね。

増本

それは応募する側にとっても、出しても意味無いところに出さなくて済むということにもなるかもしれないですね。

・海外公募情報の充実

大久保

在外研究で科学技術動向調査などを行っている官僚に協力して頂き、各国の大学の国際公募情報等をJSTに集約し、JREC-INで見られるようになると、海外ポストにチャレンジする人が増える可能性があるのではないでしょうか。

高橋

海外にもJREC-INと同様のWEBサイトがある可能性が高いので、それと連携すると良いと思います。

・公募情報のブックマーク

高橋

自分専用の公募リストを作れるような機能が欲しいです。例えばマッチングメールで「良いな」と思う情報でも、応募するか応募しないか迷う場合もあって、迷っている間にマッチングメールが他のメールに埋没してどの公募か分からなくなってしまうこともあります。公募情報にチェックしておければ安心です。

深澤

お気に入り公募情報みたいな感じですね。

増本

更に公募の締め切り順などでソート出来たりすると有り難いですね。そろそろ締め切りが近いですよとかアラートが出たり。

高橋

そうすれば早く応募しなきゃとか、これはもう応募しないといった判断に役立ちそうです。

・キャリア相談などの人的サポート

増本

先程の民間の転職エージェントのサポートを受けておられたという話しがありましたが、私も民間に就職した同期の博士からかなり勧められて利用を検討したことが有ります。民間の転職エージェントの場合、相談に乗ってくれて「自分がどういう方向に向いているのか」など客観的にアドバイスしてもらえます。JREC-INもそういうサポートをして頂きたいと思います。

深澤

キャリア相談とかカウンセリングとかというくらいのサポートでしょうか。皆さんはどう思いますか。

大久保

私の場合、身内が別の専門分野の立場から、自分の専門分野の公募情報を見つけてくれたことは良かったです。

田村

私も良いと思います。民間の転職エージェントは自分が考えていなかった職種や業態などの情報も紹介してくれて助かっています。JREC-INは税金で運営している関係上、民間の転職エージェントとは異なりますが、応募する側としてはキャリア相談やカウンセリングがあれば当然助かりますし、博士がどういう能力を持ち、どういうことが出来るかを理解している方で相談に乗って下さる方がいるとすごく助かると思います。

増本

民間転職エージェントと連携すればアカデミック志向の人が企業へのキャリアパスを考えるきっかけにもなります。また、匿名でいいのでJREC-IN利用者で就職に成功した人に個別に相談出来る仕組みがあると心強いです。相談に乗りたくない人もいれば、協力してくれる人もいる筈なので。

・成功体験の掲載

増本

個人名や応募先は特定できなくていいので、過去の就職に成功した履歴書や研究概要などを紹介して欲しいです。

大久保

(インターネット上に)研究者を対象とした掲示板があり、大学での公募の裏話など真贋合わせてものすごい量の情報が載っていて、それを見ている人もたくさんいます。自分自身もブログを開設して学振PDやパーマネント職に通った時の話を発信していますが、かなり検索にヒットしているみたいで、そういう情報を欲しがっている人は大勢いると思います。JREC-INで利用者が自由に意見を書き込める場を用意しておけば、直接会わなくても情報を得るという分には効果が高いと思います。インターネット上にはウソの情報も溢れていますが、実際にパーマネント職を得た人の体験談等を掲載すると良いのではないでしょうか。


・利用者座談会の継続

高橋

今回のような機会を継続して設けて欲しいですね。

古田

これからどうしていけばいいのかなど、ヒントを頂けたような気がしております。本当に勉強になりました。もっとざっくばらんな形でもいいと思いますし、同じ分野の人ばかりでなくて(他の分野の人から)こういう機会に意見を聞けると有り難いです。