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Case.4

不用意な前職調査のせいで!

コマ1 コマ2 コマ3 コマ4

※ これは事実を元に構成したフィクションです。

Trouble Shooting

マンガ解説

前職調査で求められるプライバシー配慮
前職調査は、求人機関が応募者について転職前の機関に調査・問い合わせを行うことをいいます。かつては、経歴詐称の発覚など採用後のトラブルを未然に防ぐために、多くの求人機関で前職調査が行われていました。しかし、2005年に「個人情報保護法」が施行されて以降は、調査の困難さと応募者への配慮から表立って前職調査を行う求人機関は減少傾向にあります。

ただ、横の繋がりの強い大学や研究機関のようなところでは、前職調査と認識しないままそれと同等の行為をし、結果、応募者に不利益をもたらしてしまうというケースがあります。

このマンガの場合、知り合いという気軽さで木村さんについて尋ねていますが、これも立派な前職調査です。通常、前職調査を行う場合、「個人情報保護法」により本人の承諾を得る必要があります。また、在職中の応募者に対して前職調査を行う際は、応募者への配慮として調査相手に前職調査と悟られないよう細心の注意を払う必要もあります。しかし、この求人機関は前職調査の意識が欠如していたために、木村さんへの承諾を得ることもプライバシーの配慮も怠ってしまい、その結果、不用意な前職調査で木村さんの転職活動が上司の知るところとなってしまいました。辞められなくなった木村さんからの内定辞退に困惑することになりますが、それは求人機関自らが招いたトラブルといえるでしょう。

このマンガのように意図せず本人の承諾を得ずに前職調査を行い、その結果、優秀な人材を採用できなくなってしまう、そんな事態はできる限り避けなければなりません。

求人機関の順守ポイント
電話でも面談でも、たとえ酒席でも、応募者のことを知る人間に話を聞くことが、前職調査にあたる可能性があることを認識してください。また、応募者が前職に在職中の場合は、よほどのことがない限り前職調査を行わないほうがよいでしょう。

そのうえで、どうしても前職調査を行う必要がある場合は、必ず本人の承諾を得ることと応募者のプライバシーに配慮した調査方法をとってください。また、調査項目に関しては、在籍確認のみを行い経歴詐称がないかを確認するにとどめるのが無難です。そもそもコンプライアンスのしっかりした機関では、在籍確認以上の勤務態度など本人のプライバシーにかかわる情報を提供することはほぼありません。

結局のところ、企業・機関が「個人情報保護法」を順守する限り、前職調査でさほど多くの情報は得られません。反面、トラブルを引き起こす恐れを多分にはらんでいます。であるならば、原則に立って、書類審査と面接を通じて適性を判断することを心がけてください。
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専門家コメント

職業安定法は、「求職者等の個人情報の取扱い」の条文において、労働者の募集を行う者は「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、使用しなければならない」と定めています。
また、労働省告示141号により、収集してはいけない個人情報や個人情報の収集方法等について具体的に示されています。
たとえば、収集してはならない情報として、①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項、②思想及び信条、③労働組合への加入状況、が挙げられています。
承諾を得て前職調査を行った場合でも、その調査内容において収集してはいけない情報を意図せずに聞いてしまうことがあります。最終的に別の能力不足等を理由で不採用としたとしても、求職者からは「不採用とされた理由が収集してはいけない個人情報(労働省告示141号)を基に不採用とされた」と、プライバシー権の侵害を訴えられることがあります。また、労働局より就職差別による指導を受けたり、インターネットにおいて外部向けに就職差別企業と暴露されたりする等、社会的信用を失う可能性もあります。そのため、前職調査(身元調査)はなるべく行うべきではありません。

特定社会保険労務士 松林 慎二

Terms

用語解説

個人情報保護法
個人情報について本人の権利・利益を保護する目的で、個人情報を取り扱う事業者などに一定の義務を課す法律です。
(e-Govウェブサイト「個人情報の保護に関する法律」 :
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html
職業安定法
職業の安定を図ることを目的とし、労働者の募集・職業紹介・労働者供給についての基本的なルールを定めた法律です。
(e-Govウェブサイト「職業安定法」 :
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO141.html
労働省告示第141号
労働省(現・厚生労働省)が平成11年に告示した、労働者を募集または雇用する際の労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取り扱い、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針です。
(厚生労働省ウェブサイト「平成11年労働省告示第141号」 :
http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/dl/saiyo1a.pdf

※これは掲載時点での情報です。雇用制度は法律改正に伴い、変更される場合があります。最新の情報を常に確認するようにしてください。


2017年3月 制作