※ これは事実を元に構成したフィクションです。
弁護士 鈴木 理晶
※これは掲載時点での情報です。雇用制度は法律改正に伴い、変更される場合があります。最新の情報を常に確認するようにしてください。
2016年3月 制作
マンガ解説
求職中には「常勤」「非常勤」という言葉に対して、よく注意する必要があります。一般的には、「週5日 、9時から17時のフルタイム勤務」を「常勤」、それ以外が「非常勤」である、と考える人が多いのではないでしょうか。
一方、このマンガのように、週5日、フルタイム勤務の勤務形態の場合でも、大学によっては「非常勤」と呼称することがあります。逆に、週に5日未満、1日8時間未満の勤務であったとしても「常勤」と呼称することもあるようです。
実は、専門家のコメントにもあるように、「常勤」「非常勤」の定義は、労働基準法や労働契約法で明確に定義されているものではないのです(下記専門家コメント参照)。
しかし、就業規則上で「常勤職員」「非常勤職員」などの定義を機関で独自に定めている場合があります。 特に国立大学では“定年までの勤務”を前提とする場合の雇用形態を「常勤」、それ以外は「非常勤」と呼ぶ慣習があるようです。このマンガでは、求人機関側がそうした慣習に従った呼称を使用していたために、求職者側と言葉の認識に齟齬が生まれてしまっているケースをご紹介しています。
また、このマンガとは逆のパターンも起こり得ます。求人機関が週5日、フルタイム勤務の有期雇用の求人を出す際に、求人機関側は一般的な意味で「常勤」という言葉を公募情報で用いたところ、求職者は「常勤」を無期雇用の意味で認識してしまった場合で、いざ雇用する際に有期雇用(非常勤職員扱い)であることが判明しトラブルになる、といったケースです。
この求職者にしてみれば、求人公募に書いてあることと実際の雇用形態が異なる結果になるわけですから、雇用前に判明するならまだしも(それも大変なことですが)、就業後に判明した場合、さらに大きなトラブルになりかねません。
このようなトラブルを避けるためにも、求職者側の心構えとして大切なのは、自分のイメージする「常勤」「非常勤」という言葉の意味にとらわれないことです。有期雇用(任期あり)×フルタイム(常勤)、無期雇用(任期なし)×パートタイム(非常勤)というケースは特に気を付けましょう。
また、求人公募の情報だけでなく、面接その他の場面で雇用形態や労働条件を、言葉の意味も含めてきちんと確認し、互いに納得してから就業するようにしましょう。
専門家コメント
「常勤」「非常勤」という言葉は、労働基準法および労働契約法では明確に定義されていません。これらは、一般的には労働時間に対して使用される言葉ですが、言葉の印象に捉われず、労働条件をしっかりと確認することが大切です。なお、労働基準法第15条において使用者(雇用主)には、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務付けられています。労働条件通知書や雇用契約書が提示されたら、内容をよく確認するようにしましょう。また、それらの労働条件の提示がない場合は、遠慮せずに求人機関に提示を求めましょう。
弁護士 鈴木 理晶
用語解説
(e-Govウェブサイト「労働基準法」 :
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049)
(e-Govウェブサイト「労働契約法」 :
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128)
(厚生労働省ホームページ「労働基準法関係主要様式」 :
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/)
※これは掲載時点での情報です。雇用制度は法律改正に伴い、変更される場合があります。最新の情報を常に確認するようにしてください。
2016年3月 制作