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民間企業インタビューInterview

「糖鎖」との親和性のある研究人材に期待

業界のトップランナーとして
社会に貢献できる仕事に喜びを感じる。

医化学創薬株式会社

取締役
八並 孝夫 氏

 

取締役 事業推進部部長 兼 主席研究員
成地 健太郎 氏 博士(理学)

 

事業推進部
竹村 拓馬 氏 博士(理学)

北海道札幌市で、糖鎖合成をもとにした自社創薬シードの探求、糖鎖の受託合成、糖鎖解析に関わる試薬販売を行なう医化学創薬。
取締役の八並氏は、ベンチャー企業で博士人材が活躍する意義を、熱意を込めて語ってくれました。起業後すぐに入社した成地氏は、自分の能力を思う存分発揮できる環境でリーダーシップを発揮し、入社2年目の竹村氏は、未来の自分のあるべき姿を見据えて日々の業務に励んでいます。3人それぞれの立場から、話を伺いました。

糖鎖に関する高精度解析技術を誇る、
北海道大学発のベンチャー企業

— 事業概要についてお聞かせください。
成地:当社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や科学技術振興機構(JST)の国家プロジェクトで開発された「糖鎖」の高精度解析技術をもとに、2010年に設立された北海道大学発のベンチャー企業です。事業は、糖鎖に関する基盤技術をもとにした創薬事業と受託合成および解析事業、糖鎖に関わる試薬販売事業の三本柱から成り立っています。
創薬事業においては、ガン患者に見られるような糖タンパク質を標的として、抗原糖ペプチドをデザインして抗体を取得し、創薬につなげていきます。また、受託事業では、さまざまな方法を駆使して、民間企業、大学の研究室といった取引先からのオーダーに合わせた合成・解析を行っています。

— 糖鎖の合成・解析という技術は近年研究が深まった分野なのですね。
八並:そうですね。これまでは大手製薬企業等でも手をこまねいていた糖鎖ですが、当社の技術を活かせばこの領域に踏み込めると認知してもらえるようになったのは、ここ数年のことだと思います。2015年に資本を投下して事業体制を整え、学会や展示会で積極的に糖鎖の世界を普及啓蒙してきた成果が徐々に現れてきたのを実感しているところです。

事業の根幹を担おうとする
意識の高い博士人材が揃う

— 成地さんが入社された経緯についてお聞かせください。
成地:私は、当社設立当時は北海道大学で特任教員をしていたのですが、実は所属していた研究室の西村紳一郎先生が当社の創業者でした。その関係で、設立2年目に声をかけていただいたのがきっかけです。

— バックグラウンドへの理解も深く、研究手法等にも精通されていたのですね。アカデミアに残る選択肢はなかったのですか︖
成地:大学のポストに残りたいという気持ちはあったのですが、就職前にも共同研究先の大学側の人間として打ち合わせなどに参加していたこともあり、「もし自分がこの会社に入ったら、こんなことができるのではないか?」と思い描いていました。ですから、声をかけていただいた機会に、思い切って飛び込もうと判断しました。

— 現在成地さんはどのような業務に関わっているのでしょう︖
成地:今は取締役と事業推進部の部長、そして研究員を兼任しています。役員としては主に機器の購入や人材の確保といった経営全般に係る業務、それから技術営業として取引先からの問い合わせに対して提案を行い、案件を遂行する業務、さらに、私にしかできない実験もあるので、研究員として実際に手を動かす立場でもあります。会社のおおよそ全ての機能をカバーしている感じですね(笑)。もともと研究以外で事業を動かすということに興味があったので、こういったある意味自由な動きをさせてもらえる環境には感謝しています。
八並:当社では、研究員も事業推進部のなかに所属します。そこには、研究だけに没頭するのではなく、社会に貢献する一企業の一員としての視野も持ってお客さまの要望に応えていこう、一人ひとりが事業の根幹を担っていこうという、会社としての意思が込められています。アカデミアではなく民間企業としてビジネスを展開する上での、いわば決意表明ですね。そんな社風と、成地が非常に高い意識を持っていることも相まって、当社の研究員は非常にマーケティング意識が強いと感じています。

優秀な博士人材の揃うJREC-IN Portalで
ベクトルの合う人材を見つける

— 成地さんはいわゆるリファラル(紹介・推薦による)採用ですが、竹村さんはJREC-IN Portal経由で就職されたのですね。
竹村:はい。博士号を取得したあとは、大学の研究基盤総合センターの分析部門で機器管理の仕事をしていました。教員や学生の実験を補助する仕事だったのですが、やはり自分の手で研究を進めたいという思いが生じました。任期が切れるタイミングでもあったので、民間企業も視野に入れて就職活動を始め、同時にJREC-IN Portalを利用し始めました。実は以前にも就職活動をしたことがあり、そのときには他のマッチングサービスを使ったのですが、企業から求められる人材像と自分自身が適合していない募集が多く、就職につながりませんでした。JREC-IN Portalであれば、自分の強みを活かせる企業が見つかるのではないかと考えたのが、利用し始めた大きな理由です。

— そこで医化学創薬との出会いがあったのですね。貴社がJREC-IN Portalを使って求人を始めた経緯についてお聞かせください。
八並:糖鎖系の専門家は絶対数が少ないため、当社の所在地である札幌で求人をかけても、まず応募がありません。さらに、採用チャネルも多くはありません。そんな悩みを抱えていたときに、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)で当社が出資を受けているJSTの担当者からJREC-IN Portalをご紹介いただきました。試しに求人募集を掲載したところ、従来のチャネルに比べ全国から多くの応募がありました。しかも専門性の高い、優秀な方ばかり。それ以来、大いに活用させていただいています。

— JREC-IN Portalにはアカデミア志向の強い方も多く登録していますが、そこは気になりませんか︖
八並:その傾向は感じますが、基本的に優秀な博士人材が登録されていますから、当社が求めるビジネスの文脈は確実に理解してくれます。そのうえで私たちにベクトルを合わせてくれる方を採用する形を取っていますので、竹村を始め、入社後は問題なく業務に取り組んでくれています。

ベンチャー企業は
博士人材が
もっとも活躍できる場所

— 採用の際に重視するのはどのようなポイントでしょうか︖
八並:糖鎖の合成経験がある方が理想なのですが、非常に研究者が少ない分野ですから、ピンポイントでマッチする方はほとんどいません。ですから、化学合成の経験がある方で、技術的なバックボーンが糖鎖の領域を受容できるかどうかを指標にしています。特殊な分野ということもあり、論文の数はあまり重視しませんね。それよりもある程度のコミュニケーション能力や、人柄の誠実さの方が大きな判断材料になります。その点、竹村は完璧でしたね。
竹村:大学の研究室にいた頃に、企業の方とやり取りをするなかで、自然と身についた部分はあるかもしれません。

— 採用を成功させるために取り組んでいることはありますか︖
八並:面接の時には皆さん緊張されています。でもそれは普段の姿ではありませんよね。普段の仕事でも、かしこまって遠慮していたら能力の半分も出せないじゃないですか。ですから、なるべくその人の地の部分を引き出すというか、リラックスして言いたいことを言える雰囲気をつくっているつもりです。
竹村:面接のときには正直、その配慮を感じる余裕はなかったですが(笑)、北海道までの飛行機の予約方法まで親切に教えていただいたことを覚えています。
八並:博士人材には、アカデミアで高いレベルの能力を身につけているにも関わらず、不遇なキャリアを歩む方も少なくありません。大手企業に就職できたとしても、評価は急に上がりませんし、その他大勢の中のひとりとして扱われてしまいます。これは私個人の考えですが、自分の能力を存分に活かせて、実力次第で評価も跳ね上がる、そして一人ひとりの影響力・重要性が高いベンチャー企業は、博士人材がもっとも活躍できる場なのではないかと思っています。ですが、当の博士人材の中でも大手志向が根強いのが現状です。ですから、できる限り親身に接し、私たちの会社のことを丁寧に伝えるよう心がけています。
それ以外に取り組んでいるのは、北海道の土地柄をアピールすることでしょうか。「こんな素敵なところで働いてみませんか?」という気持ちで、北海道の美しい風景画像をリクルートサイトにアップするようにしています。私自身が北海道に惹かれて移住したものですから、北海道を推したい気持ちが大きいのかもしれません(笑)。その効果かどうかわかりませんが、出身地が北海道以外のメンバーの方が多くなっています。

— 採用のチャネルは他にどんなものを利用していますか?学会などはいかがでしょう︖
成地:学会には、優秀な方がいれば当社にお誘いすることも視野に入れて臨んでいます。有望な人材がいたら、ポスターセッションで声をかけて、敢えて想定していないような質問を投げかけるようにしています。そうすれば、研究者としての実力と人となりがおおよそ把握できますので。
八並:私は関連企業3社の人事も担当しているのですが、3社とも共通してJREC-IN Portalで採用が決まることが理想です。JREC-IN Portalに登録している時点で優秀な博士人材であることが推定できますし、掲載・採用コストがかからないというのは大きな魅力です。それ以外のチャネルでは、動物実験などのテクニシャンであればハローワーク、事業構築などのビジネス寄りの業務であれば民間のエージェント会社を利用することが多いです。

自分の能力を活かして社会に貢献できることがやりがい

— 竹村さんと成地さんにお聞きしたいのですが、研究開発型ベンチャー企業で働く魅力はどんなことだと思いますか︖
竹村:「まだまだこれから」という部分でしょうか。最初から安定しているのではなく、自分のがんばり次第でどこまでも会社が大きくなるし、待遇も良くなるという点に大きな魅力を感じます。それから、研究以外の部分でも能力を発揮することを求められるので、自分の成長につながるという思いがあります。例えば、いずれは自分も成地さんのように事業のマネジメントを担当するポジションに行かなければいけないと思っているので、今から少しずつでも学ぼうという意識を持つことができています。
成地:ひとりの社員の主張が通りやすいのは、ベンチャー企業の大きな強みだと思います。自分のアイディアが具体化されて、それで利益が上がり、社会に貢献できる。そこに魅力を感じる人にとってはいい環境だと思います。大手企業の方が給与はいい場合もありますが、集団の中のひとりとして仕事をするのか、小さくても自分のやりたいことができる環境で仕事をするのか。特に、糖鎖技術の分野では当社がトップ企業だと自負していますので、業界のトップランナーとして仕事ができるのは大きな魅力です。

— 入社後に感じたギャップはありますか︖
成地:自分の提案した研究や試験の内容が取引先に受け入れられて実際に案件として成立したときの喜びは思っていた以上でした。自分の思い描いていたものを納品して、先方にも満足していただけるという経験は、大学ではなかったことなので。当社の場合、テンプレートで返せるものはなくて、一つひとつの試験ごとにデザインする必要があります。自分の描いたデザインでコスト面や内容の整合性を納得していただけるという部分は、大きな魅力だと思います。

— 最後に、今後の意気込みをお聞かせください。
竹村:まだ糖鎖の分野に関わり始めて1年程度ですので、まずは糖鎖合成自体の知識・経験値を高め、案件を着実にこなせるようになることが目先の目標です。最終的には、案件管理をする立場を担うことも視野に入れていきたいと思っています。「糖鎖といえば医化学創薬」と言われるような研究をしていきたいですね。
成地:取締役として経営にも携わっているので、上場を目指して事業を進めていきたいです。あとは、当社で合成した糖鎖が実際に製品(薬)を生み、最終的に患者さんに届けられるところまで創薬事業を発展させていきたいと思います。
八並:外部から投資していただいている以上、上場を目指すのは当社の責務だと思っています。そこに向けて、今は事業基盤を拡大して実りあるものにしようとしているところです。今後さらに事業の枠を広げ、社会的に価値のある会社として長く存続できるような活動をし、いつか美瑛にお取引先様にも使っていただけるような保養所を建てるのが、私の夢です(笑)。

— ありがとうございました!