※ これは事実を元に構成したフィクションです。
特定社会保険労務士 松林 慎二
※これは掲載時点での情報です。雇用制度は法律改正に伴い、変更される場合があります。最新の情報を常に確認するようにしてください。
2017年3月 制作
マンガ解説
求人公募の成否は、応募資格次第
このマンガのように「求める人材に出会えない」といった声を求人機関の方からよく耳にしますが、その原因の多くは求人公募情報の応募資格にあります。応募資格は、求人機関にとって求める人材に応募してもらうための重要な項目です。また、求職者側にとっては、それが自分の能力にマッチするかの判断材料となります。その応募資格の記載が曖昧だと、求人公募はうまくいきません。このマンガは極端な例ですが、がん創薬のチームリーダーの募集で、応募資格には「医学・薬学の研究経歴がある方」としか記載がありません。この記載では、求職者に「医学・薬学の研究経歴があれば応募条件を満たしている」と捉えられます。そのため、がん創薬の研究実績がなかったり、リーダー経験がなかったりする応募者が面接に現れるのも無理はありません。その逆に経験者は、応募資格から自分が採用されるかどうかの判断基準が見えず、応募を見合わせた可能性があります。経験者を求めるのであれば、実際の業務に応じて「がん免疫細胞の測定および解析実績」といったように具体的に指定すべきで、チームリーダーの募集ですから「研究主任同等の経験」といった記載もすべきでした。
求人機関への記載アドバイス
まずは求人理由、仕事内容・役割、それに必要な能力・経験を吟味し、採用基準を明確化してください。そして、それを求職者の理解できる表現で応募資格に記載します。その際に次の点に注意する必要があります。JREC-IN Portalでも、求人機関にお願いしている点です。・必要な能力・経験は、抽象的ではなく具体的に指定する
・違法な応募制限は記載しない
必要な能力・経験を具体的に指定すると応募者が少なくなると考えるかもしれませんが、具体的な記載がないと求職者も自分が必要とされているかの判断がしづらく、応募を見合わせる結果にもなりかねません。求職者は、応募資格=採用基準と考えます。その採用基準を求職者に示してあげることが、求人機関にとっては求める人材を得る近道となります。ただ、「経験○年以上」と経験を年数で限定するのは避けたほうがよいでしょう。経験3年の人が必ずしも2年の人よりも優秀とは限りません。年数を記載するなら「経験○年同等」といった表現にとどめたほうがよいです。
また、男女雇用機会均等法、雇用対策法等により「年齢」「性別」「国籍」「出身地・居住地」等を応募資格に記載することは原則できませんので、注意してください(参照:「Case8. 年齢・性別で応募を制限していいの!?」)。
専門家コメント
募集を行う際、求人機関はミスマッチが生じぬよう、求人公募情報は明確で可能な限り詳細に、そして曖昧な表現のないように記載する必要があります。特に職務内容については、求人機関が求める業務をどのような過程で行ってもらうのか、その業務を行ううえでの職務責任や他のスタッフとの協調性の有無等、行ってもらいたい業務が見えるように記載します。
そして、その業務を遂行するために必要な知識、能力、経験、資格を具体的に記載します。ただし、応募資格に対して差別的な記載(性別、年齢、障がい者等)は法律で禁止されていますので注意ください(男女雇用機会均等法第5条、雇用対策法第10条等)。
特定社会保険労務士 松林 慎二
用語解説
(e-Govウェブサイト「男女雇用機会均等法」 :
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=347AC0000000113)
(e-Govウェブサイト「雇用対策法」 :
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=341AC0000000132)
※これは掲載時点での情報です。雇用制度は法律改正に伴い、変更される場合があります。最新の情報を常に確認するようにしてください。
2017年3月 制作