科学論文とクリティカル・シンキング
1-3研究活動として論文を読むこと
科学論文は、研究者の成果を単に記録しただけのものではありません。そこには、それまでの先人の研究成果の上に、自分なりの仮説や理論を加えて、実験や観察で得られた事実を基に、論理的な探求や推論を行ってまとめられた研究成果が示されているのです。そのことを踏まえて読むことで、他の研究者の成果を理解するだけでなく、自らの新たな研究課題を見出し、研究領域を深める機会になります。
科学論文では、著者は見出した研究課題や主題に対して、明確な主張を示します。そして、その主張が正しいことを読み手に納得してもらうために、実験や観察で得られた事実や理論を証拠として、論理的な探求や推論を行って主張を支えます。論文のクリティカル・リーディングでは、個々の文章の著者の主張や、その論理的な探求や推論の方法が正しいかを吟味しながら読むことが求められます。論理的な整合性を見極められずに内容を誤解したまま読むと、あなたの研究が誤った方向に進んでしまうことがあります。吟味しながら読むことで、明示されていない著者の考えやその研究が内包する問題点に気づき、そこからあなたの新しい研究が生まれることもあるのです。