論証探しの基礎

2-3根拠となるもの

イラスト

主張(結論)を支える事実が根拠です。「Cと主張をする。その主張が正しいことの証拠としてDという根拠がある。」のように、論証において主張には必ず根拠が伴います。

根拠は、誰でもが確認することができる「経験的事実」である場合と、「経験的に事実かどうかを直接確認することが困難な事象」である場合があります。ここでいう、「経験的事実」とは、個人的に経験・体験した事実という意味ではなく、実験観察、調査などの手続きによって誰でもが確認できる普遍的な事実のことです。

例文6
二酸化炭素は水に溶ける。だから、純水をビーカーに入れて大気中に一定時間放置しておくと少し酸性に変化するはずだ。

例文6は、経験的事実を根拠とする論証の例です。この例文では、「純水をビーカーに入れて大気中に一定時間放置しておくと少し酸性に変化するはず」という予測を主張する根拠として、「二酸化炭素は水に溶ける」という誰でも実験で確認できる経験的事実を提示しています。この例のような経験的事実は、論証において強力な根拠です。

論証が正しく成立しているからといって、主張が正しいとはいえません。

例文7
ジュゴンは海に生息する。海に生息する生き物は全て魚類だ。だから、ジュゴンは魚類だ。

この例文は、「ジュゴンは海に生息する」ことと、「海に生息する生き物は全て魚類だ」ということを根拠に、「ジュゴンは魚類だ」と主張しています。この論証は成立していますが、「海に生息する生き物は全て魚類だ」という根拠が明らかに間違っていて信頼できないので、「ジュゴンは魚類だ」という主張も間違いではないかといえるのです。論証が成立していれば、論理構造の正しさを示すことはできますが、それが主張の正しさを示しているわけではありません。

論証
成立している 成立していない
根拠 信頼できる 主張は正しい 主張は疑わしい
信頼できない 主張は疑わしい 主張は疑わしい

科学論文の本文には数多くの論証が含まれています。“試料と方法”の項目以外は、全ての基本構成で「DだからC」「CなぜならDだから」のように主張を展開している箇所が見つかるはずです。科学論文では、主に実験観察、調査などで得られた経験的事実が根拠として使用されますから、根拠と主張との関係を見極めて論証が成立していることを確かめながら読み進めましょう。

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。