演繹的論証と帰納的論証

3-2演繹的論証の使われ方

ここでは、演繹的論証について、もう少し詳しく説明しましょう。

演繹的論証では、前提となる根拠に主張がすでに含まれているともいえるので、根拠以上のことが主張として出てくることはなく、結論は正しくても、新しい情報は何も加わっていないことになります。

演繹的論証 ⇒ 結論は正しいが、新しいことは何もいっていない

次の例文を見てください。

例文3
識字障害の傾向を持つ生徒は、印刷された従来のテスト用紙に解答することは困難だ。(根拠①)
同じ問題を口頭で問われると、一般の生徒以上の成績を残すという研究成果がある。(根拠②)
だから、ボイスレコーダー等を活用することにより、一般の生徒と同じ問題でテストを行うことができる。(主張)

この文章の「識字障害の傾向を持つ生徒が印刷されたテスト用紙に解答するのは難しい」、「口頭で同じ問題を問われれば解答できる」という2つの根拠が事実であれば、「ボイスレコーダー等を活用すれば、一般の生徒と同じ問題でテストが行える」という主張は正しいといえます。例文3には明示的に書かれていませんが、著者は「文字を読んで解答した結果と、音声で聞いて解答した結果は、同じ能力を測定している」と仮定して、それを論拠に「一般の生徒と同じ問題でテストすることができる」と主張していることが読み取れます。演繹的論証では、根拠が正しく、根拠と主張の関係を論拠が支えることができれば、主張も正しいことになりますが、この論拠について科学的に検証してみる必要はないでしょうか。

読み取った論拠を書き加えると、例文4のようになります。

例文4
識字障害の傾向を持つ生徒は、印刷された従来のテスト用紙に解答することは困難だ。(根拠①)
同じ内容を口頭で問われると、一般の生徒以上の成績を残すという研究成果がある。(根拠②)
だから、ボイスレコーダー等を活用することにより、一般の生徒と同じようにテストを行うことができる。(主張)
なぜなら、文字を読んで解答した結果と、音声で聞いて解答した結果は、同じ能力を測定していると考えられるから。(論拠)

論拠が正しく展開されているかどうかを疑ってみることで、主張が信頼に値するものかを検討することができるのです。文章の中に演繹的論証を見出したら、主張から根拠や論拠へ正しく遡れることを確認しながら読んでください。

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。