論証探しの基礎

2-5論証を探しながら読む

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ここまでで学んだ、論証を構成する基本の3要素を確認しておきます。それぞれの関係は図のように示すことができます。

それでは、この論証モデルを参照して、次の例文を読んでみましょう。

例文10
有酸素運動は体脂肪をエネルギーとして使う。だから、有酸素運動をすると体重が減る効果が期待できる。
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まず、主張(結論)が示されます。次に、主張を支える根拠が示されます。このように主張と根拠が揃って、基本の論証になります。

例文10では、その根拠から主張が導かれた理由となる論拠は、明示的には示されていません。著者は論拠として「使った体脂肪の分だけ体重が減る」と仮定したのだと推定できます。論証モデルを参照して論拠を加筆すると、基本の3要素が含まれた、次のような文章に再構築できます。

例文11
有酸素運動は体脂肪をエネルギーとして使う。だから、有酸素運動をすると体重が減る効果が期待できる。なぜなら、使った体脂肪の分だけ体重が減るからだ。 論拠(Warrant)

文章を読んでいると、さまざまな要素を含んだ長い文が出てくることがあります。文章が複雑だと、論証が分かりにくく、一読しただけでは論証が捉えきれません。

例文12
アンモニアの工業生産には大規模なプラント設備による合成が効率的でその建設と運用には多大な経費がかかるが、低価格なアンモニアの需要があるので新たな合成技術の開発が必要だ。

例文12は、文中にいくつかの意味内容を含んでいて複雑です。このような文は、論証モデルを参照しながら、短い文に分解して書き直してみると、論証を捉えやすくなります。

まず、意味の区切りを明確にするために、読点を追加します。

例文13
アンモニアの工業生産には大規模なプラント設備による合成が効率的で、その建設と運用には多大な経費がかかるが、低価格なアンモニアの需要があるので、新たな合成技術の開発が必要だ。

次に、論証モデルの各要素を確認しながら、1つのことだけを書いた短い文に分解して書き直し、隠れている論拠も書き足してみます。

例文14
アンモニアの工業生産には大規模なプラント設備による合成が効率的だ。(根拠①)
大規模なプラント設備の建設と運用には多大な経費がかかる。(根拠②)
低価格なアンモニアの需要がある。(根拠③)
だから、新たな合成技術の開発が必要だ。(主張)
なぜなら、今までより小規模で効率の良い生産方法があれば費用を下げられるから。(論拠)

こうして書き直してみると、論証の構造が明確になり、著者の主張したいことが分かりやすくなります。このように、1つの考えを1つの文で表現することを「一文一義にする」といいます。複雑な長文に出会った時には、一文一義に書き直して読んでみると、内包される論証が理解しやすくなります。

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。