科学論文とクリティカル・シンキング
1-4科学論文の基本構成
ここで科学論文の基本構成について確かめておきます。科学論文は複数の項目から構成されています。これらの項目とその並びは、概ね次の図に示す例のようになっていますが、論文誌によっては投稿規定で別の項目名や並びに定められていることもあります。科学論文を効率的に読むには、“序文”と“考察”に注目すると良いでしょう。(今後、本コースでは論文の項目名は“ ”で区切って表示することとします。)
本文の基本構成についてもう少し詳しく説明します。
“序文”には、研究の背景として、先行研究を踏まえた研究の位置付けや意義などが記されます。問題提起から最終的な結論を導くまでの論文全体の概略がここに示されます。論文誌によっては“序文”の代わりに“はじめに”や“序論”といった項目名が用いられることもあります。“考察”には、実験や観察で明らかになった事実から導かれる個々の主張を示して、研究の意義、今後の課題や発展性など、個々の主張に至る著者の考えが記されます。“試料と方法”“結果と分析”には、データの取得方法、分析方法、結果などが記されます。考察の内容を吟味し理解するためには、結果の解釈が妥当か、実験や調査の方法が適切であったかを確かめる必要があります。論文によっては、“結果と分析”と“考察”が1つの項目にまとめて書かれていることもあります。そして、“結語”は、論文全体で主張したいことを読み手に印象付けるために、最後にもう一度整理して示す項目です。“結論”や“まとめ”といった項目名が用いられることもあります。
問題提起は“序文”に、著者が最もアピールしたい主張は “序文”と“考察”に記されていますから、論文を読むときには、“序文”と“考察”に注目することが必要です。