論証探しの基礎

2-2主張を支える根拠

ここからは、トゥールミンの論証モデルの3要素について、例文を読みながらもう少し詳しく説明します。

文章の中で著者が最も伝えたいことが主張(結論)です。主張は、論証では「Aであることが明らかとなった。」「Aであることが示唆された。」などのように推論の結果や結論として表現されています。

例文4
裁判で彼に法的な過失はないことが証明された。だから、彼に賠償責任はない。
イラスト

例文4では、「彼に賠償責任はない」という主張の理由として、「裁判で過失がないと証明された」と述べています。この例のように、主張が提示されたら、その主張を支える理由が無いと論証とは呼べません。トゥールミンの論証モデルでは、著者の伝えたいことを「主張(結論)」といい、主張を支える理由を「根拠」といいます。文中に主張を見つけたら、その根拠は何か、そして、その根拠がどのように主張を支えているのかを吟味する必要があります。

今度は例文5を見てみましょう。

例文5
この事件について彼には責任がない。だから、彼は悪くない。

この例文では、「彼には責任がない」ことを根拠として「彼は悪くない」と主張していますが、主張も根拠と同じことを言い換えているだけなので、論証としては確実な主張を導くことができても、生産的なことは何も主張されません。Aという根拠から、Aという根拠に含まれていない「何か」を導いたときに、初めてその論証は価値のある情報を生み出すことができるのです。

主張を見つけたら、その根拠は何か、そしてその根拠がどのように主張を支えているのかを吟味することが必要です。

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。