パラグラフ構造の読解

4-1パラグラフ構造とは何か

ここまでのレッスンで、文章中に論証の各要素を見つけ、論証の形式を確かめて読むことを学びました。レッスン4では、科学論文のような論理的な文章が本来持っているはずの文章構造、「パラグラフ構造」について説明します。論文のような論理的な文章は、パラグラフ構造で書くことが望ましいとされています。このコースの目的は論文の読み方を身につけることですが、パラグラフ構造を理解するために、まず初めにパラグラフ構造で書くときの基本ルールを簡単に説明します。

ここでいうパラグラフとは、「1つの主張(結論)を導くために用いられる、論理的に相互に関連のある複数の文の集まり」のことです。それは、論証を表現するときの基本単位です。

1つのパラグラフには、原則として、1つの主張(結論)とそれを支える根拠だけを書きます。そして、1つのパラグラフは、そのパラグラフの主張を要約したTS(トピックセンテンス Topic Sentence)、TSを支える根拠をまとめたSS(サポーティングセンテンス Supporting Sentence)、TSを結論として別の表現で書き直したCS(コンクルーディングセンテンス Concluding Sentence)で構成します。図のように、TSとCSでSSをはさむように並べます。根拠が複数ある場合は、SSも複数になります。また、SSの数が少なく、パラグラフが短くなる場合には、CSが省かれることもあります。

パラグラフ構造

TS(トピックセンテンス Topic Sentence)=主張 SS1(サポーティングセンテンス Supporting Sentence)=根拠①
SS2(サポーティングセンテンス Supporting Sentence)=根拠②
CS(コンクルーディングセンテンス Concluding Sentence)=結論(主張)

次の例文1では、①がTS②③がSS④がCSとなります。

例文1
動物の体細胞クローン技術は、臓器移植の安全性に問題がある。クローン豚には、早死するものが多い、免疫機能が劣っているものがいるなど、問題事例が数多く報告されている。また、クローン豚から人間への臓器移植では、人間に移植される豚の臓器に潜むウィルスを検出できない可能性も指摘されている。クローン豚からの臓器移植は、その安全性を十分に検証してから実施する必要がある。

は根拠としてを支えていますが、「豚が感染する全てのウィルスが既知ではないはずだ」や「豚にとって無害であっても人間にとって有害なウィルスが存在するかもしれない」といった明示されていない前提や仮定が、論拠として隠れていることも推定できます。そこで、その論拠も書き足してパラグラフ構造が分かりやすいように整理してみると、例文2のようになります。

例文2
TS:動物の体細胞クローン技術は、臓器移植の安全性に問題がある。(主張)
SS1:クローン豚には、早死するものが多い、免疫機能が劣っているものがいるなど、問題事例が数多く報告されている。(根拠①)
SS2:クローン豚から人間への臓器移植では、人間に移植される豚の臓器に潜むウィルスを検出できない可能性も指摘されている。(根拠②)
豚が感染する全てのウィルスが既知ではないはずだ。(根拠②の論拠W1)
豚にとって無害であっても人間にとって有害なウィルスが存在するかもしれない。(根拠②の論拠W2)
CS:クローン豚からの臓器移植は、その安全性を十分に検証してから実施する必要がある。(結論(主張))

パラグラフのどこに論拠を書くかについては、決まりはありません。この例文では、根拠②のすぐ次に書き足しましたが、結論のあとに、「なぜなら~からだ」と書くこともあります。

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。