演繹的論証と帰納的論証

3-1演繹的論証と帰納的論証

このレッスンでは、科学論文に用いられる論証の基本的な形式を理解して、科学論文を正しく効率よく読めるようになることを目指します。

最初に、論証の2つの形式、演繹的論証帰納的論証について説明します。

例文1
A湖ではメスの魚だけが養殖されている。(根拠①)
この魚は、A湖で捕獲された。(根拠②)
だから、この魚はメスである。(主張)

例文1を見てください。根拠①②の2つの前提からどんな主張が導き出せるでしょうか。

ここで、「A湖の魚(A)はすべてメスだ(B)」、「この魚(C)はA湖の魚だ(A)」という2つの前提となる根拠が正しいなら、つまり、「A=B」、「C=A」なら、「C=B」、つまり「この魚 (C)はメスだ(B)」という主張、も正しいことになります。このように前提となる根拠を正しいと認めると、そこから導き出される結論が必ず正しくなるような論証を演繹的論証といいます。

導き出される結論が必ず正しくなるような論証=演繹的論証

例文2
A湖でこれまでに捕獲された魚は全てメスであった。(根拠①)
この魚は、A湖で捕獲された。(根拠②)
だから、この魚はメスに違いない。(主張)

一方、例文2を見てください。ここでは、前提となる根拠①の部分が「A湖でこれまでに捕獲された魚は」と限定されています。つまり、この根拠は例文1と違って、「これまでに捕獲された」という体験が基になっています。そのため、次に釣るA湖の魚については、メスかどうか、何ら確実なことはいえず、オスである可能性もあります。このように前提となる根拠の中に必ずしも含まれていないことを主張として導き出すような論証を帰納的論証といいます。

前提となる根拠の中に必ずしも含まれていないことを主張として導き出すような論証
=帰納的論証

*注) 例文には科学的事実でない記述が含まれていることがあります。